僕が一度も過去に取り上げたことの無い銘柄ですけど、先日、シードリル(ティッカーシンボル:SDRL)という会社が突然、無配転落し、株価が暴落しました。

この発表前の同社の配当利回りは19%前後もあり、配当に目がくらんだ情弱な投資家が沢山乗っかっていました。

僕の考える(魅力的な配当を出している会社)とは、配当利回りで2%から、せいぜい5%程度の範囲内を指します。

配当利回りが7%を超える企業は、何か投資家には見えにくい重大な問題をはらんでいる場合が殆どで、8%を超えたら、それは「倒産する危険アリ!」という警告を絶叫している状態と思ってください。

シードリルの場合、一株当たりの業績は、下のグラフのようでした。

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【略号の読み方】
DPS一株当たり配当
EPS一株当たり利益
CFPS一株当たり営業キャッシュフロー
SPS一株当たり売上高


普通、どんなにピカピカの会社でも営業キャッシュフロー・マージンは15%から30%程度です。営業キャッシュフロー・マージンはCFPS÷SPS×100で求められます。



シードリルの2013年の営業キャッシュフロー・マージンは32.1%と装置産業の会社(石油リグを操業しています)としては驚異的に高いです。

でも何だか話がうますぎるのです。

2013年の業績を良く見ると、EPSはCFPSより多くなっています。これは利益を過大に報告している会社である可能性を示唆しています。

さらに2011年や2012年には利益より配当の方が大きくなっています。こんなデタラメな経営は、ずっと続けられるわけがありません。

シードリルはオフショアの石油リグを建設し、それを石油会社に貸し出すビジネスをしています。石油リグの建設にはとてもお金がかかるので、常に市場から資金調達する必要があります。そこで高い配当を示し、株価を吊り上げていたわけです。

比較のために、普通に手堅く経営されている会社を見ることにします。プロクター&ギャンブル(ティッカーシンボル:PG)の業績は下のようになっています。

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ここでポイントになるのはDPS < EPS < CFPS < SPSという階段状になっているという点です。

これが美しい業績のグラフのポイントなのです。

2013年を例に取ると配当($2.45)は利益($3.98)の61.5%に相当しています。言い換えれば利益のうちの61.5%を配当に回しているわけです。この比率のことを配当性向と言います。

一般に配当性向は高い方が株主よりの経営をしていると言えますが、この比率が50%を超えてくると、かなりムリしていると言えます。プロクター&ギャンブルの場合、おむつなど、流行とは一切関係ない商品ばかり扱っているので、配当性向が高くてもOKです。しかし普通の企業の場合、スイート・スポットは「配当性向がこれまでの35%から40%に引き上げられた……」というようなケースであり、決して70%や80%ではないのです。

シードリルの話に戻ると、利回りと信用には、一定の関係があります。例えばクレジットカードをはしごしている、信用度の低い消費者に対してはクレジットカード金利は高い金利が要求されます。

するとありえないほど高利回りの株ばかりに投資するという戦略は、クレカ地獄の中を這いまわっている悲惨な債務者ばかりを選んでそれらの人にお金を渡しているのと同じなのです。