この時間は歌舞伎座の秀山祭九月公演から「隅田川続俤法界坊」をお送りしました。
これで「古典芸能への招待」を終わります。
(テーマ音楽)
(鳥のさえずり)いやぁ妻がね家の庭を英国庭園イングリッシュガーデンにしたいって言うんですよ。
僕は土いじりが大の苦手。
その上イングリッシュガーデンと言われても何のことやらさっぱり。
でもね愛する妻に「あなたお願いわたしの憧れなの」なんて言われちゃうと頑張るしかないものね。
でも見て。
おじいちゃんが植えた松もあるし。
そもそもここは日本だよ。
でも草刈さん実はイングリッシュガーデンは日本にもたくさんあるんですよ。
皆さんのお隣の庭もイングリッシュガーデンかも。
え?そうなの?こちらは埼玉県深谷市の住宅地。
この家のご主人が10年かけて造り上げたイングリッシュガーデンです。
ダリアや黄色いルドベキアなどさまざまな色や形の草花が一見雑然と植えられています。
庭の奥にあるガゼボと呼ばれる東屋。
柱や天井の隙間に植物をあしらい緑でいっぱいにするのが英国風。
この庭実は花が勝手に咲き乱れているかのように見えて丹念にデザインされています。
今ガーデンニングを楽しむ多くの人が英国庭園の発想を取り入れています。
今日は日曜日。
お庭を園芸愛好家に開放するオープンガーデンの日。
自然な感じで線を引いて造ったようなお庭じゃない所がすごくすてきだなぁって思うんです。
さてこちらの庭園をご覧下さい。
道も植物も完璧な左右対称に整えられた庭。
フランスやイタリアで発展した…大陸のヨーロッパ諸国では隅々まで人の手が入ったことを誇示するスタイルが主流でした。
一方イギリスでは田園地方に暮らす貴族や富裕層が自然の野山の魅力を取り込んだ庭のスタイルを培ってきました。
こうした英国庭園が今日本で独自の発展を遂げています。
イギリスでガーデニングを学び自宅の庭に英国庭園を造った…日本の草花を巧みに取り入れて自分流の英国庭園を楽しんでいます。
似たような感性があるけどやはり日本人独特の感性があって…私はそんな感じがします。
レンガの小道にそって愛らしい季節の花を植えるのは英国スタイル。
しかし目につく所には日本風に剪定した松の木が植えられ英国庭園に溶け込んでいます。
日本とイギリスの美意識が融合した和のイングリッシュガーデン。
今日は日本各地にその奥深い魅力を訪ねます。
まずは和の草花の絶妙な生かし方から。
北海道恵庭市にある銀河庭園。
東京ドーム2個分の面積を持つ広大な英国庭園です。
噴水を中心にしたこちらの一角。
北米原産のアスターが咲き誇りその向こうに日本の草木。
いずれも色づき始めています。
赤くなった…黄色く色づいた…くっきりとした赤と黄色そしてアスターの淡い紫が新鮮な取り合わせです。
この庭園を造ったのはイギリスでトップデザイナーとして名高い…その土地の植物を自在に生かす庭造りが得意です。
バニーさんと一緒に植物を選んだ山口百合子さんです。
北海道で魅力を発揮する和の草花について綿密に打ち合わせをしました。
未経験の寒さだったと思うんですね。
若い頃にスウェーデンに住んでたことがあるって言ってましたけど「スウェーデンと同じぐらい寒いわね」ということで。
使いたい植物が使えないということもあると思うんですけどもそれでよけい植物選択についてはこっちに住んでいる私に聞いたところもあったんですが使えないものもあるけれどもこっちでしか使えない…秋和の草花を巧みに用いた演出があります。
それがこちら。
夏の終わりに咲く水無月の花が立ち枯れています。
イギリスには草花の枯れた色合いを生かす伝統があります。
花びらの多くが落ち黒い実の部分があらわになった…一面に広がる黒と褐色がイギリス人好みの渋みのある味わいを生み出しています。
水無月の花は咲いている時は白枯れるとピンクに色づきます。
バニーさんは枯れ色が映える和の草花を選び日本ならではの英国庭園を完成させました。
今日一つ目のツボは…英国庭園のもう一つの伝統。
それは地形を生かすこと。
この庭園は2つの山に挟まれた平地にあります。
(風の音)山の間を強い風が吹き抜けていきます。
(風の音)バニーさんは風の通り道にススキやイネ科の和の草を植えました。
日本には柔らかくボリュームのある穂を持つ草が豊富です。
この地に吹き抜ける強い風を受けると不規則で楽しげなダンスを見せてくれます。
(風の音)風を感じられますし風を見ることができると思います。
お庭っていうのは人間と自然の合わさった芸術というか勝手に作ったものじゃなくて…それが一番いいと思うので。
ここが違う場所だったらまた違うお庭を造ったと思うんですよね。
続いて斜面を生かした光の演出をご覧いただきましょう。
それは秋の日没前最も味わい深いものになります。
西の山に落ちていく夕日が東の山を強く照らしています。
斜面の草木は秋の夕日を綿密に計算して植えられたものです。
夕日を受けて輝くギボウシ。
黄色い葉が夕日に照らされるよう配置されています。
階段を登りきった山頂。
夕日がつくる建物の影。
それが切れる所に姿を現すのは日本の野山に生える…まばゆい秋の夕日が真っ赤に紅葉したシャラノキを輝かせます。
風や光までをも巧みに計算して生み出された光景です。
和のイングリッシュガーデンか。
そう言われてもどうすれば…?
(チャイム)ピンポーン…あっ。
そういえば今日はね強力な助っ人を頼んでます。
こんにちは。
ああいらっしゃい!こちら友達のガーデナーの吉谷さん。
あのねいきなり「イングリッシュガーデンが欲しい」なんて言い出して困ってるんです。
妻は言い出したらきりがないから。
なるほど。
草刈さんそれでは寄せ植えから始めてはいかがですか?寄せ植えって何です?それがイングリッシュガーデンと関係があるんですか。
草刈さんイングリッシュガーデンは多種多様な植物を組み合わせる事で成り立っているんですよ。
そうなの?植物を組み合わせて楽しむのに日本の気候は最適なんですよ。
長野県蓼科高原にあるイングリッシュガーデンです。
日本の英国庭園ファンの聖地と言われています。
ここを訪れたイギリス人がまるでふるさとのようだと感想をもらすといいます。
この庭園の秋の主役はダリアです。
秋の女王と呼ばれるダリアは中米原産です。
日本にやって来た後3,000を超える品種が生み出されました。
ダリアは日本の気候の中でいっそう美しくなりました。
花の色は昼と夜の気温の差が大きいほど鮮やかになります。
加えて日本は夏と冬の寒暖の差も大きいため多彩なダリアが育ちます。
草花を選び配置した…日本の気候はイギリスに比べ豊富な草花を育てるのに適していると言います。
いろいろな植物が…イギリスではほとんど見られない多彩なダリアが咲き乱れる風景。
これらに見事な調和をもたらしているのはガーデナーの技術なんです。
今日二つ目のツボは…個性の強い色や形の花を調和させるテクニックがあります。
花ではなく葉をご覧下さい。
緑の葉と銅葉と呼ばれる黒みがかった葉が組み合わされています。
黒と緑が緩やかな層を成し高さや色などがまちまちのダリアに統一感をもたらしています。
イギリス伝統の手法です。
いろいろな花壇を見ていた時に…かつてイギリスには世界中の植民地から多くの草花が持ち込まれました。
そしてそれらを庭園の中に巧みに組み合わせる技術が磨かれました。
その技術が多様な草花を育てるのに適した日本で見事に生かされています。
続いて蓼科の気候を生かして考え出された組み合わせをご覧下さい。
ケイ山田さんが造る…昼夜の寒暖の差が著しい高原の秋。
クラブアップルの木は夜から朝にかけての冷え込みで葉を落とします。
枝の隙間からふんだんに秋の日ざしが注ぎ気温が上がるためガーデンシクラメンが鮮やかに咲きます。
花と葉が落ちた木のユニークな組み合わせ。
日本の気候風土を生かした英国庭園の美です。
ああきれいだなぁ。
吉谷さんさすが。
この寄せ植えは黄色い葉っぱに合わせてお花の色も統一しました。
実はこの黄色い葉っぱギボウシといって日本原産の植物なんです。
うちの庭にも応用できますか?そうですね。
イギリスでは「庭はもう一つの部屋」とも言われてるんです。
こうしてお茶を飲んだり楽しくおしゃべりする場所でもあるんですよ。
ああいいですねぇ。
あ…このテーブルサビが。
おじいちゃんの代からだから仕方がないんですけど。
そろそろ買い替えた方がいいですかね。
草刈さんこのサビがいいんですよ。
え?サビが?そうこの「古び」がいいんです。
このままでいいんですか。
それは時の流れを感じさせる英国庭園ならではの演出なんですよ。
女子大が所有するイングリッシュガーデン。
26年前に造られて以来一般には非公開で秘密の花園と呼ばれています。
日本のガーデンデザイナーが正統派イングリッシュガーデンの美意識を追求した庭園です。
この庭園のシンボルがメインストリートの中央にぽつんと置いてある石のコンテナ。
26年間手入れされることなく野ざらしのままです。
雨風によってコンテナは黒く変色し始めています。
このような状態はイギリスでウェザードと呼ばれ賞賛されてきました。
やっぱりこの庭と同じように…そうですね一緒に…何でしょうね…長い時間をかけてツタが這った家屋。
伝統を重んじるイギリスでは長い時間をかけて初めて醸し出される重厚な趣が愛でられてきました。
この庭園ではイギリスでは使われないある物を巧みに取り入れています。
石を主体にしたロックガーデン。
石にはびっしりとコケが生えています。
日本庭園のような趣を感じさせる光景です。
湿度の高い日本ではイギリスでは見られない青々としたコケが育ちます。
日本人が古くから愛でてきたコケが時を経た味わいを愛でる英国庭園の美学をさらに発展させたのです。
今日最後のツボは…2010年イギリスで開かれた世界最大のガーデンコンテストの模様です。
コケを大胆に用いた英国庭園で高い評価を得た日本人がいます。
イギリスで「コケ男」と呼ばれています。
この時に展示された石原さんの庭園です。
東屋の大部分が青々としたコケで覆われています。
東屋の中からはガラス越しに水の流れが見える仕掛けです。
光の揺らぎがコケをいっそうみずみずしく見せています。
コケは建物や家具などと絶妙に調和しています。
石原さんが今年手がけた最新作です。
中央にある東屋。
天井にはガラス越しに水の流れを見ることができます。
豊かな水が建物の壁に張り巡らされたコケを潤おす。
そんなイメージです。
コケの上にはさらにさまざまな植物。
緑の壁と呼ばれています。
これほどたくさんの緑がある事に気づかせてくれます。
すごい山に行ったり海に行ったりすると心が落ち着きますよね。
ただそれは自然でしかない訳です。
そこにコケが絶対的に必要。
石原さんの手がける庭園では人の目の届きにくい所にも丹念にコケが植えられ年月を経て自然とこけむしたかのように感じさせます。
庭造りに生かされているのは石原さんが子どもの頃に親しんだ原風景です。
これは里山なんです。
私は長崎の生まれで家の周りに小さな棚田がいっぱいありまして家の裏には小さな森があってその森でよく遊んでたんです。
その小さい時の思い出。
それがやっぱり僕のデザインのベースにあるわけなんですね。
石原さんの心から離れることのないもの。
それはかつて日本人の暮らしのすぐそばにあった豊かな里山。
一方産業革命によって国土の荒廃を経験したイギリス。
英国庭園はイギリスの人々が豊かな野山を取り戻したいという願いから広まったものでした。
緑豊かなふるさとへの思い。
それがこけむした和のイングリッシュガーデンの中にも受け継がれているのです。
こんな寄せ植えなら和風の庭にも合うと思いますよ。
そうですね。
楽しみだ。
まずはこれを妻にプレゼントしようと思います。
きっと喜ぶと思います。
庭は2人でこれからゆっくりとイングリッシュガーデンにしていきます。
もちろんおじいちゃんの植えた松も生かして。
家+庭で家庭。
まずは小さなイングリッシュガーデンを皆さん作ってみませんか?年々深刻度を増す地球温暖化。
2014/10/26(日) 23:00〜23:30
NHKEテレ1大阪
美の壺・選「和の英国庭園(イングリッシュガーデン)」[字]
身近なテーマを中心に、美術鑑賞を3つのツボでわかりやすく指南する新感覚美術番組。今回は「和の英国庭園」。案内役:草刈正雄
詳細情報
番組内容
野山のような自然らしさを表現する英国庭園。日本で独自の発展を遂げ、「和のイングリッシュガーデン」ともいうべき、新たな美が生まれている。起伏に富む地形や、風や光を巧みに用いた表現。日本独特の気候が育む多彩な植物を調和させるガーデナーの技。苔(こけ)むした岩や東屋(あずまや)によって、人と庭が共に暮らした時間を実感させる演出など、英国伝統の庭が日本の美意識と融合することで生まれる新鮮な味わいを楽しむ。
出演者
【出演】草刈正雄,礒野佑子
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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