何これ?奇妙な角を持つこの生きもの。
足にはまるでナイフのような…正体は…オーストラリアにすむ飛べない巨大な鳥です。
見た目のとおり凶暴なことで知られています。
これは動物園で撮影された映像。
ヒクイドリが飼育員の1人に襲いかかっています。
柵を乗り越え間一髪で逃げ出しました。
その凶暴さからヒクイドリに与えられた称号とは…「世界で最も危険な鳥」!ヒクイドリは足にある鋭い爪で飛び上がって攻撃してくるといいます。
一体どれほどの威力があるんでしょう?そこで…。
取材班が体を張って…更に森での暮らしから凶暴さを生んだ秘密を突き止めます。
ヒクイドリの危な〜い新伝説です。
(テーマ音楽)オーストラリア北東部。
海沿いに「世界最古」と言われる熱帯雨林が広がります。
1億年以上の歴史を持つうっそうとした森。
ここがヒクイドリのふるさとです。
4月。
私たちはヒクイドリを長年観察しているガイドと共に森に入りました。
1時間ほど歩き続けた時…。
あ!ヒクイドリです。
ガイドの指示に従い刺激しないようそっと見守ります。
しばらく辺りを歩き回ったヒクイドリ。
そのまま森の奥へ去っていきました。
この一帯には80羽ほどのヒクイドリがいると考えられています。
こちらはひときわ角が大きいですね。
ガイドによるとこの辺りで一番大きなメスのヒクイドリ。
ヒクイドリはメスのほうがオスよりも大きいんです。
首を伸ばすと高さは2メートルにもなります。
身長153センチの私が横に並ぶと…軽く見下ろされちゃいます。
私たちはこのメスを「ボス」と名付けることにしました。
首には真っ赤な肉の塊。
これが火を食べているように見えたことから「火食鳥」の名が付いたとも言われています。
ぎょろりとした目は迫力満点!頭には大きな角。
役割はよく分かっていませんが角が長いほど年齢が高いんです。
立派な角を持つボスは推定35歳。
ヒクイドリの寿命は40年ほどと考えられています。
足元にもご注目。
うろこに覆われた指から鋭い爪が突き出ています。
この爪で獲物を襲うんでしょうか。
おや?何か食べているようです。
落ちていたのは木の実。
ヒクイドリは怖〜い見た目とは裏腹に植物の実が主食なんです。
こんなに大きな体をしているのに小さな木の実でやっていけるんでしょうかね?しかもヒクイドリは飛ぶことができないため食べ物は歩いて探す必要があります。
そんなヒクイドリが生きるために欠かせないもの。
それは広い縄張りです。
通常オスもメスも1羽で暮らし最大で4キロ四方もの縄張りを持っています。
食べ物を探して一日中この中を歩き回るんです。
ボスが縄張りの中にある小川にやって来ました。
ここはボスの水飲み場のようです。
水を飲み終えて移動しようとした時。
何かに気付きました。
もう一羽ヒクイドリが現れました。
角がまだ小さいですね。
若いオスです。
ボスの縄張りに入ってしまったようです。
2羽は体の大きさが随分違います。
ボスがゆっくりと若いオスに近づきます。
間合いを取ろうとする若いオス。
ボスがじわじわと近づいていきます。
突然猛ダッシュ!追い払われた若いオス。
なんとか逃げきったようです。
危なかったですねぇ。
いやまだボスが近くにいます。
見逃す気はないようです。
あっまた追い払いました。
私たちは縄張りをめぐる争いを何度も目撃しました。
ヒクイドリにとって最も大切なものは縄張り。
それを守ろうとする時「世界一危険」と言われる凶暴さを発揮するんです。
ちょっと待った!あヒゲじい。
やっぱり来ちゃいましたか。
そりゃそうでしょう。
一体どこが凶暴なんですか?ただ追い払ってるだけじゃないですかこれ。
う〜ん確かに。
実は今回私たちが観察したのは体の大きさが違う2羽の争いばかりでした。
そのため追い払うだけで激しい争いには発展しなかったんです。
え〜!あそうなの?でももし体の大きさが同じくらいであれば本気で戦います。
こういう時には凶暴さを発揮し互いに激しく蹴り合います。
へ〜あそうなんだ。
「世界一危険」と言うからにはさぞ強烈なキックなんでしょうなぁ。
ですよねぇ。
そこで…私たちはヒクイドリのキック力がどれほど強いのか実験で調べてみることにしました。
え?どうやって?身を守るための板を持ちヒクイドリを飼育している檻に入ります。
あ〜何だか怖いですな。
相手が人間であっても同じ檻に入るだけで縄張りの侵入者と見なし襲いかかってくるんですよ〜。
うわ〜強烈!飛び蹴り。
すごいキックでしょ。
そこで!板にセンサーを付けキック力を測ることにしました。
この赤い部分がセンサーです。
出ました。
今入った。
しっかりとセンサーを蹴りました。
果たしてその強さは?
(男性)1,274ニュートンです。
(ヒゲじい)うん?1,274ニュートンってそれって一体どのくらいの力なんですか?番組のスタッフが同じセンサーに思い切りパンチをぶつけてみたところ…。
ヒクイドリのキック力のほうが上回ったんです。
ほうそれはなかなかの威力ですな。
ヒクイドリの怖さはそれだけじゃありません。
こちらをご覧下さい。
うん?なになに?ヒクイドリがセンサーを蹴った時につけた爪痕です。
わ〜裂けてます。
キックの威力と鋭い爪が組み合わさるとヒクイドリの脚は最強の武器になるんです。
なるほど。
うわ!確かに「世界一危険な鳥」と言われるのもうなずけますなぁ。
ヒクイドリ名前は「ヒクイ」ドリだけど攻撃力は「タカイ」ドリだったんだ。
ヒクイドリさん実験に協力してくれてありがとう!第2章ではかわいいヒナが登場。
「世界一危険な鳥」を震え上がらせる意外な敵が明らかになります。
今回の舞台オーストラリア北東部の熱帯雨林は世界自然遺産に登録されている豊かな森。
たくさんの生きものが暮らしています。
こちら体長わずか15センチ。
一見するとネズミのように見えますが…。
正体はカンガルー。
地球で最初に登場したカンガルーと言われています。
森で見られる鳥は370種以上。
オーストラリアの鳥の半分ほどが暮らしています。
豊かな生きものを育む森。
この森を作るためヒクイドリのあるものが欠かせません。
それはなんとフン。
丸い物が見えますよね。
植物の種がそのまま出てきているんです。
これにはヒクイドリの食べ方が関係しています。
木の実を食べる時かみ砕かず丸のみにしているんです。
そのため果肉だけが消化されて種は無傷のまま外に出てきます。
しかもヒクイドリは木の実を求め1日10キロも森の中を歩きます。
移動しながらあちこちでフンをするため広い範囲に種をまくことになるんです。
フンがあった場所を見てみると種からちゃんと芽が出ていますね。
こうしてヒクイドリの力を借りて子孫を残す植物は75種類もあります。
中にはヒクイドリだけを頼りにしている植物もあります。
この実には毒があるため体内で毒を弱めることのできるヒクイドリだけが食べて種を運べるんです。
森の恵みを頼りに生きるヒクイドリ。
ヒクイドリもまた植物たちから頼りにされる存在だったんですね。
5月。
ヒクイドリは恋のシーズンを迎えます。
ある朝いつものようにボスが食事をしているとすぐ近くにもう一羽やって来ました。
角が小さいですね。
若いオスのようです。
そろりそろりとボスに近づきます。
おや?縄張りの侵入者なのに今日は追い払いませんね。
ボスが突然しゃがみました。
この体勢実はオスに「カップルになりましょうよ」とプロポーズしているんです。
ヒクイドリの恋はメスのほうが積極的なんです。
ちょっとご説明しましょう。
メスはオスとカップルになり卵を産むとすぐに別のオスを探しにいきます。
メスは積極的にオスを誘い1年に3羽から5羽のオスとカップルになります。
子育ては全てオスの役割。
「一妻多夫」と呼ばれる仕組みです。
若いオスがボスに近づいていきます。
さあカップル成立?と思ったらそっぽを向いてボスから離れていきます。
気に入らなかったんでしょうか。
それどころかボスにお尻を向けて食事を始めました。
その時です。
ボスが猛然と若いオスに突進!追い払います。
「私の誘いを断っておいて食事なんていい度胸じゃない」なんて言ってるんでしょうか。
無事にカップルが成立すると1年にもわたるオスの子育てが始まります。
こちらは別の場所で撮影された映像です。
オスの足元に卵があります。
メスが1回に産む卵は最大7個ほど。
これをオスがたった1羽で50日間も温めます。
卵から離れるのはごくたまに行う食事の時だけ。
ほとんど飲まず食わずで温め続けます。
いよいよふ化が始まりました。
いかつい姿の親とは大違い。
ヒナはかわいいですね。
さあ子育ての本番はここから。
お父さんがヒナの体を支え立たせようとしています。
ヒクイドリが生きていくために一番大切なのは歩くこと。
生まれた直後から歩く練習が始まるんです。
お父さんはぴったりとヒナに寄り添います。
1か月もたつと子どもたちはしっかり歩けるようになります。
続いては食事のレッスン。
お父さんは子どもたちに食べられる物を教えます。
食べ物を目の前に置きついばむ練習までさせているようです。
生まれて5か月ほど。
子どもたちの体の毛が次第に黒っぽくなってきます。
もう食べ物も自分で見つけられます。
あやぶに何かいます。
オオトカゲです。
子どもを襲うことがあります。
お父さんがオオトカゲに気付きました。
子どもたちはまだ気付いていません。
その時。
(うなり声)お父さんが突然うなり声を上げました。
(うなり声)危険を知らせる合図です。
急いでお父さんのもとへ戻る子どもたち。
お父さんはいざという時には自慢の脚で敵を撃退することもあります。
頼りになる強〜いお父さんなんです。
そんなお父さんが最も恐れる相手がいます。
(鳴き声)ある日。
子どもたちが食事をしていた時のことです。
目の前に大きなヒクイドリが現れました。
巨大な角。
あのボスです。
親子はうっかりボスの縄張りに足を踏み入れてしまったようです。
おや?子どもがボスに近づいていきます。
まだ怖さを知らないんでしょうか。
お父さんは茂みに隠れて様子をうかがいます。
うわっ!ボスが子どもたちに猛突進。
子どもは逃げ惑います。
相手がたとえ子どもであってもヒクイドリは縄張りの侵入者に決して容赦しないんです。
ちょっと!子どもまで追い払うなんてやり過ぎですよ。
これじゃ「ヒクイ」ドリじゃなくて「ヒドイ」トリですぞ。
あ〜随分怒ってますねヒゲじい。
はい!そもそもメスは子育てだってオスに任せっきりでしょ?それなのに子どもにこんな態度を取るなんて許せませんなこれは!まあまあヒゲじい。
実はメスにもいろいろと事情があるんですよ。
どんな?先ほども言ったようにヒクイドリは一妻多夫。
メスは複数のオスとカップルになり1羽でも多くの子どもを残そうとします。
ああそうでしたな。
こうする理由は子どもの多くが死んでしまうからなんです。
オオトカゲやニシキヘビなどたくさんの天敵がいるためお父さんが頑張っても生まれて1年で7割もの子どもが命を落とします。
え〜そうなんだ!でもそんなに危険なら夫婦で一緒に子どもを守ればいいじゃないですか。
それがそうはできない事情があるんです。
ヒクイドリは食事をするために広い縄張りを必要としていましたよね。
ああ一日中木の実を食べ歩いてましたよね。
縄張りにある木の実ではお父さんと子どもたちが食べていくだけで精いっぱい。
とても夫婦2羽の食事を賄うことはできないんです。
そうか。
だから夫婦で一緒に暮らすことができないんですな。
はい。
メスが確実に子孫を残すにはたくさん卵を産むしかありません。
そのためには食べて栄養をつけなければならないのでメスは特に縄張りを一生懸命守るんです。
う〜んなるほどね。
一妻多夫のヒクイドリのメス「タフ」じゃないといけないってわけですなぁ。
第3章では子どもたちが走って跳んで元気全開!いよいよ脚力強化のトレーニングが始まります。
オーストラリアの豊かな熱帯雨林の象徴とも言えるヒクイドリ。
今数を減らし絶滅の危機にあります。
ここは海辺の町ミッション・ビーチ。
住宅を造るため森の開発が急速に進んでいます。
(ブレーキ音)ここでは交通事故に遭うヒクイドリが後を絶ちません。
中には命を落とすものもいます。
町では標識を立てドライバーに注意を促していますが完全に防ぐことはできません。
近年の異常気象もヒクイドリを脅かしています。
大型化するサイクロン。
3年前には史上最大規模のものがオーストラリアを襲いヒクイドリのすむ森も大きな被害を受けました。
強い風で木々が倒されただけでなく大量の木の実が熟す前に落ちてしまいました。
そのためヒクイドリは深刻な食糧不足に陥り今もその状態は続いています。
そんな中おなかをすかせ町に出てくるヒクイドリも増えています。
そこで人々が保護に乗り出しました。
ヒクイドリのために果物を用意し森の中で与えることで町に出てこないようにしているんです。
森で果物を与えることで…ヒクイドリがいつまでも森で暮らせますように。
そう願わずにはいられません。
ヒクイドリのお父さんと子どもたちはどうしているでしょうか。
いました。
卵からかえって6か月ほど。
みんなりりしい顔つきになってきましたね。
突然1羽が猛ダッシュ。
このころになると長い距離を頻繁に走るようになります。
今度はキック。
子どもたちは遊びを通して脚の力を鍛えていきます。
こちらはまだまだ遊び足りない様子。
随分体力も付いてきました。
おっと木を相手に飛び蹴りの練習でしょうか。
まだかわいらしいキックですね。
森に何やら落ち着きのない子どもがいます。
あ!大人のヒクイドリに追いかけられています。
このヒクイドリ実はお父さんなんです。
たくましく成長し食べる量も増えてきた子ども。
もうすぐ親と同じ森では暮らせなくなります。
(鳴き声)呼んでも応えてくれないお父さん。
お父さんは何度も何度も追い立て子どもに独り立ちを促します。
生きるために広大な森を必要とするヒクイドリ。
厳しいようですがこれが親子の定めなんです。
子どもはやがて森の奥へと消えていきました。
「世界一危険な鳥」ヒクイドリ。
その荒々しい姿は森で命をつなぐためのひたむきさの表れでした。
そして愛情深い父親の子育て。
旅立った子どもたちもきっと親譲りの丈夫な脚で森を突き進んでいくことでしょう。
(秀吉)極め付けは今じゃ!2014/10/26(日) 19:30〜20:00
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「世界一危険な鳥!ヒクイドリ」[字]
「世界一危険な鳥」と呼ばれるヒクイドリ。オーストラリアの密林にすむ巨大な鳥だ。ナイフのような鋭い脚で人を襲うこともある。キック力実験を交え、凶暴さの秘密に迫る。
詳細情報
番組内容
「世界一危険な鳥」と呼ばれるヒクイドリ。オーストラリアの密林にすむ飛べない鳥だ。背の高さ2m、体重70kgにもなる巨体を持ち、脚にはナイフのような鋭い爪。性格も超凶暴だ。縄張りに侵入者を見つけると突進し、強烈なキックで追い払う。ときには人に襲いかかることも!なぜそれほど凶暴になったのか?番組では世界遺産の森でヒクイドリに密着。さらにキック力の測定実験も敢行。世界一危険な鳥の素顔に迫る。歌:平原綾香
出演者
【語り】首藤奈知子,龍田直樹,豊嶋真千子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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