昔古くからある店の商人がおりました。
その商人が語ってくれたお話です。
夜も遅くなったときのことです。
商人が急いで店に戻ろうと近道の坂を上っていきます。
このへんはひと気もなくむじなが出てよく人を化かすといわれています。
やっと坂を越えて商人が堀端に来たとき1人の女がうずくまって泣いていました。
おっ?
(泣き声)そこの娘さんいったいどうなすったんです。
なぜそんなにお泣きなさる?さあどうしたのか私に言ってごらんなさい。
私でよければ助けになりましょう。
若い娘さんがこんな夜遅くいる所ではありません。
さあ私の言うことを聞いて…。
はい。
お屋敷まで送ってあげましょう。
訳を話してみませんか。
さあ泣くのはやめて顔を上げなさい。
では…。
フッフッフッフッフ…。
フッフッフッフ…。
うわ〜!うわ!うわ〜!フッフッフッフ…。
ギャ〜!うわ〜!ハァハァハァ…。
あぁうわ〜っ!あぁ…。
(咳き込む声)大丈夫ですか?おケガはございませんか?い…いやもう大丈夫。
ハァハァ…いやぁ助かった。
身がすくみ上がった。
いったい何があったんでございます?追いはぎにでも会われましたか。
いやそうじゃないんだ。
この先のお堀端にな…。
お堀端に…?1人の女がうずくまって泣いているんだ。
こんな夜遅くに…。
ただごとではないと思ってな声をかけたんだ。
へえそれで…。
それでなその女が私に見せたんだよ。
何を?ああそれがなんだ…。
女が袖で顔をこう隠してな。
それから…。
いやいや口にするのも恐ろしい。
そうですかい。
さぞ怖い思いを…。
こう袖で顔を隠してその女が見せたっていうのはこんなんじゃなかったですかい?あっ…あ〜っ!うわ〜!ハァハァハァ…。
《よかった〜。
やっぱり町は賑やかでいい。
これで安心安心。
ん?》な…なんだいみんな。
どうした?なんで顔を見せねえんだ?そそれじゃあまるでさっきの…。
さっきとおっしゃいましたね。
きっとこうだったんじゃないんですか?あっ…あぁ〜っ!
(笑い声)うわぁ〜っ!た…助けてくれ〜!うわぁ!
(笑い声)おやおやこんなところで寝ていてどこか具合でも悪いのかな?あ…これはこれはお坊様。
な…なんで私はこんな所に?むじなにでも化かされたかな?このへんはよく出るというからな。
そういえばゆんべ町へ入っていったら人がみんなこう…。
顔がつるりんとのっぺらぼうになっていて。
あまりの恐ろしさに気を失ってしまったんだ。
それは間違いなくむじなの仕業じゃ。
見事に化かされましたな。
ハハハハハ…。
笑い事ではありません。
(半鐘の音)あれは私の店!か…火事じゃ!私の店が燃えている!それは大変。
私の店が〜!フフフ…。
アッハッハッハッ!アッハッハッハッ!あっ旦那様。
あっ旦那様。
お帰りにならないんで心配しておりました。
そんなことはどうでもいい。
早く火を消せ!え?火を?なにをのんきにしてるんだ。
火事だ!火事だ〜!
(2人)え〜!?もちろん火事などではありません。
またもやむじなに化かされてしまったのです。
しかしむじなはなぜ人を化かすのでしょう?親兄弟を人間に殺された仕返しでしょうか?それは誰に聞いてもわかりません。
なにせ目も鼻も口もないのっぺらぼうなんですから。
(笑い声)昔あるところに竹取りのおじいさんがいました。
竹でカゴやザルを作る仕事をしておばあさんと2人で暮らしていました。
その日も竹を切りに竹やぶの中に入っていくと光っている一本の竹がありました。
なんだろう?その竹を切ってみると中には小さくてかわいらしい女の子がおりました。
竹やぶの中でこんな小さい女の子を見つけてきたよ。
これはまぁなんとかわいい子だこと。
そして輝くばかりの女の子にかぐや姫と名付けることにしました。
それからというもの不思議なことが起こりました。
竹を切るたびに中からこがねが出てきたのです。
おじいさんとおばあさんはたいそう豊かな暮らしができるようになりました。
そして御殿のような立派な家も建ちました。
そしてすくすく育ったかぐや姫はこの世の人とも思えないようなそれはそれは美しい娘になりました。
そのかぐや姫の美しさは都にまで届きました。
そしてひと目見ようと多くの若者がやってくるようになりました。
そのなかの身分の高い5人の若者がかぐや姫をぜひ自分の妻にほしいと名乗りでました。
するとかぐや姫は5人の若者たち一人ひとりに珍しい宝物を探してきてくれるようにと願いました。
その宝物を持ち帰ることができた人の妻になるというのです。
石作皇子には天竺の仏の御石の鉢を探しに。
車持皇子には蓬莱山にある根が銀茎が金実が真珠という玉の枝を探しに。
右大臣阿倍御主人には唐土の国の火にくべても燃えないという火ねずみの毛皮を探しに。
大納言大伴御行には龍の首にあるという五色の玉を探しに。
最後の中納言石上麻呂にはツバメが生むという小安貝を探しに。
しかし5人の若者はことごとく失敗をしてしまいかぐや姫の願いは叶えられませんでした。
この噂が帝の耳にも入りました。
それほどに美しく賢い娘なら私が一度会ってみよう。
帝はかぐや姫を訪ねました。
やがてかぐや姫が現れると帝はその輝くばかりの美しさにただただうっとりするばかりでした。
姫よ御所に上がらぬか?ともに暮らそう。
それは嬉しゅうございますが私は…。
その頃からでしょうか。
かぐや姫は月を見ては物思いにふけるようになりました。
ときには深いため息をつきうっすらと涙を浮かべていることもありました。
やがて8月15日の満月が近づくにつれてかぐや姫はシクシクと泣き出してしまうのでした。
月を見て泣くのはどうしてなのだ?おじいさまおばあさま。
実は私は月の都の者なのです。
縁あってお二人に育てられご恩を受けました。
けれども8月15日の満月の日には月から迎えがまいります。
そのことを聞いたおじいさんとおばあさんはたいそう驚き悲しみました。
帝は月に帰るというかぐや姫の噂を聞きました。
悲しいのは私も同じだ。
決して月に帰らせてはならぬぞ。
やがて8月15日となりました。
おじいさんの家のまわりは帝の家来のつわものたちでぎっしりと埋まっていました。
おじいさんとおばあさんは奥の座敷でしっかりとかぐや姫を守ろうとしていました。
そして満月が天中にあがりました。
まばゆいばかりの天空に天女と美しい車が下りてきました。
兵たちは弓矢をかまえ槍をつき立て防ごうとしました。
しかしまぶしいほどの光を浴びると誰の体からも力が抜け戦うことなどできませんでした。
姫よ迎えにまいりました。
さぁ姫。
おじいさまおばあさまお別れでございます。
かぐや姫はかたく閉ざした戸をすり抜けて天女の前に立っていました。
おじいさんとおばあさんは急いでかぐや姫のあとを追いました。
今まで本当にありがとうございました。
かぐや姫よ私たちはもっと長く共に過ごしたかった。
私もです。
おじいさまおばあさまさようなら。
かぐや姫を乗せた車は静かに夜空にのぼっていきました。
おじいさんとおばあさんはその姿をいつまでも見送っていました。
〜若旦那どうかなすったんで?うん。
ひと月ほど前から具合が悪くて寝込んでしまった。
へぇ〜。
ちっとも存じませんで。
いろいろ医者にも見せたんだがどの医者も首をかしげるばかり。
そりゃあお気の毒なことをしましたね。
じゃああっしはこれから寺に行って坊さん呼んできますから。
ちょっと待っておくれ!せがれはまだ死んだわけじゃないよ。
え?今朝ある名医にお見せしたところこれは気の病だとおっしゃる。
その思いを叶えてやりさえすれば病はたちどころに治るであろう。
それであれこれ聞いてみたんだがどうしても口を割らない。
小さい時からよく懐いていた熊さんになら打ち明けるというんだ。
そうですかい。
じゃあ早速若旦那の胸の内を聞き出してきましょう。
頼みましたよ!若旦那で何をそんなに思い詰めてるんですか?これだけは誰にも言わず死んでしまおうと思っていたんだがお前にだけは聞いてもらいたい。
けどお前笑っちゃいけないよ。
とんでもねえ病人の前で笑うもんですかい。
本当に笑わないかい?笑いませんとも。
しかしそうは言ってもやっぱり笑うだろうねぇ。
エヘヘヘヘ。
いや笑いません。
絶対に笑いませんから言ってごらんなさい。
実はね私の病は恋わずらい。
はぁ?ほらやっぱり笑ったじゃないか。
すみません。
もう笑いませんから。
しかしまた恋わずらいとは今どき珍しい。
でその恋のお相手とは?ひと月ほど前に上野の清水さまへお参りに行きました。
そこの茶店で一服してたら入ってきたのが年のころは17〜18。
お供の女中を2〜3人連れてそれはそれは水もたれるようなお方だ。
へぇ〜ヒビの入った徳利みてえな人ですね。
違うよ。
きれいな女の人を「水がたれるような」と言うんだよ。
へぇ〜あそうなんですか。
私がじっと見ているとその方もこっちをじっと見ていたかと思ったらニコっとお笑いなすった。
それじゃ向こうが負けだ。
にらめっこしてんじゃないよ。
なんとお嬢さんの膝に置いてあった茶袱紗が忘れてある。
「これはあなたのではございませんか?」と手から手へ渡してあげるとお嬢さんが丁寧におじぎをなすってまた茶店へ戻り紙にさらさらと歌を書いてくだすった。
「瀬をはやみ岩にせかるる滝川の」と書いてあるじゃないか。
な何も泣かなくたって。
瀬をはやみ岩にせかるる滝川の。
ヤケドのまじないですかね?バカ−!これは百人一首にも入ってる崇徳院様の有名なお歌で下の句が「われてもすえにあはむとぞおもふ」。
それが書いていない。
その意味は今はここでお別れしますがいずれすえには嬉しくお目にかかれますようにというお嬢様のお心なんだ。
あたしゃ嬉しくって嬉しくって。
それからというもの何を見てもお嬢さんの顔に見えて…。
お前の顔までがだんだんお嬢さんに見えないね。
話はわかりました。
ようござんす。
若旦那がそんだけ思い詰めたもんならなんとかしてあげましょう。
で相手はどこの方なんですか?それがわからないんだよ。
わからねえ…う〜ん。
わからないと言ったって日本に住んでんだろ?そりゃそうですが。
そんなら江戸中探してごらん。
江戸中探してわからなかったら日本中しらみ潰しに探しておいで。
せがれの命はあと5日しかもたないんだそうだ。
だから5日のうちに探し出すんだ。
もしせがれに万一のことがあったらあたしゃお前さんをせがれの仇として討ち果たすからね!さて熊さん必死になってあっちこっち探しましたがなかなか見つかりません。
こうなったら大きな声で歌を読みながら歩くしかねえ。
そして明くる朝。
瀬をはやみ岩にせかるる…。
ちょいと豆腐屋さん。
何言ってやんでぇ。
人を豆腐屋と間違えてやがら。
瀬をはやみ岩にせかるる滝川の。
あれずいぶん子供が集まってきたな。
客寄せじゃねえんだ。
あっち行け。
熊さん人の集まりそうなところを回ってその日の夕方。
あれ?また来たね。
床屋を18軒も回ったから顔なんかもうひりひりして…。
ちょいと休ませてもらうぜ。
おうちょいと急ぐんだけどやってもらえねえかい?あっ先客か。
私ならいいですよ。
もうどこも剃るところがないんだから。
すみませんね。
じゃあひとつ頼まあ。
しかしバカに急ぐんだね。
うん。
お店のお嬢さんの具合が悪くってね。
どんな病で?それが恋わずらいよ。
恋わずらい?ん?お嬢さんの恋の相手を探せというんで江戸中探し回ったがどうしてもわからねえ。
こうなったら日本中探せってんでこれから俺が九州へ出かけようってわけだ。
何か手がかりでもあるのかい?なんでもお嬢さんがそいつに歌を書いて渡してあるんだそうだ。
瀬をはやみ…。
それだ〜!見つけた。
瀬をはやみ岩にせかるる滝川の。
おや?なんでその歌を。
え?もしかしててめえんとこにその恋の相手がいるんだな。
さあ俺んとこのお店へ来い!バカ言うな。
てめえこそ家に来い。
何しやがる。
何…。
2人とも待った待った。
というわけでお互い探している相手が見つかりました。
こうして歌のとおり若旦那とお嬢さんは再会しめでたく結ばれたということです。
2014/10/26(日) 09:00〜09:30
テレビ大阪1
ふるさと再生 日本の昔ばなし[字][デ]
「のっぺらぼう」
「かぐや姫」
「崇徳院(すとくいん)」
の3本です。みんな見てね!!
詳細情報
番組内容
私たちの現在ある生活・文化は、昔から代々人々が築き上げてきたものの進化の上にあります。日本・ふるさと再生へ私たちが一歩を踏みだそうというこの時にこそ、日本を築いた原点に一度立ち返ってみることは、日本再生への新たなヒントになるのではないでしょうか。
この番組は、日本各地に伝わる民話、祭事の由来や、神話・伝説など、庶民の文化を底辺で支えてきたお話を楽しく伝えます。
語り手
柄本明
松金よね子
テーマ曲
『一人のキミが生まれたとさ』
作詞・作曲:大倉智之(INSPi)
編曲:吉田圭介(INSPi)、貞国公洋
歌:中川翔子
コーラス:INSPi(Sony Music Records)
監督・演出
【企画】沼田かずみ
【監修】中田実紀雄
【監督】鈴木卓夫
制作
【アニメーション制作】トマソン
ホームページ
http://ani.tv/mukashibanashi
ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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