宗教的世界を表した舞台でした。
おしゃれな雑貨屋さんが集まる東京自由が丘。
こちらは家族連れでにぎわう食器店です。
そこに今大人気の器があります。
柔らかな丸みと素朴な色合い。
愛媛で作られた砥部焼です。
特に若い母親たちの間で人気なのがこちら。
きょうのイッピン…ぽってりとしたいかにも優しい形。
一筆一筆丁寧に施された絵付け。
全てが手作りの器です。
そして砥部焼最大の特徴が「丈夫なこと」。
ふだん使いの器として愛用している家族も増えているんだとか。
結構お皿を洗ってるとつるっといくんですけどあんまり割れることはないので丈夫だなぁとは思います。
子どもが結婚した時の嫁入り道具として持たせてあげたりしたいなぁとは思います。
家庭でのさまざまな用途に応じて多彩な姿を見せる砥部焼。
きょうは食卓を笑顔にする器の魅力に迫ります。
愛媛県松山市の南に接する砥部町。
およそ100軒の窯元があります。
砥部焼のティーポットを手にとっているのは最近料理好きが高じて器にも凝っているんだとか。
なんかぽっこりしていて手にもなじみやすくてある程度の重みもあって安定感がありますね。
まずはティーポットを作っている窯元を訪ねました。
創業は明治15年という老舗です。
いろんなものがあるんですね。
丼やら花瓶やら。
へぇ〜。
こんなカラフルな。
かわいらしい。
渋すぎず。
あ!これですね噂のポット。
こんにちは。
手作り手書きでしております。
40年くらい前からありますが今も変わらず厚手で丈夫で…。
ぽってりして丈夫な「砥部焼」。
生地にはかなりの厚みがあるんだそうです。
その厚みを探りにはしのさん工房へお邪魔しました。
こちらの窯元はおよそ40人の職人が一つ一つ手作業で砥部焼を作っています。
ティーポット作りを任されています。
これはティーポットの本体の部分。
厚みを測らせてもらうと…。
4.51。
およそ4.5ミリ。
これは他の陶磁器製ティーポットの標準的な厚みのおよそ1.5倍に相当します。
ではこの厚みが器にどれほどの丈夫さをもたらすのか。
耐久実験をしてみました。
ティーポットを固定しハンマーで衝撃を与えます。
その衝撃を徐々に強め器にひびが入るまで続けます。
そしてひびが入ったのは0.15ジュールの衝撃を与えた時。
4.5ミリの厚さはふだん使いの器として十分すぎる強度をもたらしていました。
この厚みには驚くべき職人技が秘められています。
砥部焼の生地は地元で採れる陶石を砕いた土です。
ティーポットを制作する時まず土に水や薬品を加え泥しょうを作ります。
そして石こうの型に流し込み成型していきます。
すごい滑らかですね。
そうなんです。
チョコレートみたいな。
しばらくすると…。
あ!ちょっと沈み始めてますね。
泥しょうが減っていってしまいました。
何が起きたんでしょうか。
ガラス板を使って中の様子を見てみましょう。
まず注ぎ口いっぱいに泥しょうを流し込みます。
その水位が徐々に下がっていくんですが型の壁面部分にご注目。
層がどんどん厚くなっていくのが分かりますか?土が固まってくるんですよ。
実は石こうの表面には目に見えない無数の細かな穴があります。
その穴から泥しょうに含まれる水分が吸収されていくんです。
壁面の濃い色の部分は粒子の大きな土が吸収されずに残り層になったもの。
これが生地になるのです。
泥しょうをほっておけば生地はどんどん厚く重くなってしまいます。
だから最も適当な4.5ミリの厚さになるまさにその時に余分な泥しょうを捨てなければなりません。
でも上から見ていれば簡単に厚みが分かるのではと思いますよね。
ところがこの上から見える注ぎ口の部分は十分な厚みにならないのであとで切り取ってしまうんです。
つまり石本さんは生地の厚みが見えないのに絶妙なタイミングを見極めなければならないのです。
下がっていく時に土の性質が分かるんですけど。
水分が多いとか少ないとか。
土のつきが悪い良いというのが。
それを見極めてこの頃合いで出せばこの厚みになるというのが分かるんです。
水位が下がるスピードや土の層の出来方を見極め見えない生地の厚みを判断していたのです。
うんいい感じですね。
じゃ出します。
そして泥しょうを捨て乾燥させて型から抜き取ると…。
お〜。
こんな感じになります。
なんかもうぽってりかわいい感じですね。
さぁ肝心の厚みは?お〜!4.56。
ほぼ一緒ですね。
今回も4.5ミリ。
先ほどと比べて100分の5ミリしか違いませんでした。
お見事!さらに見極めるタイミングはその日その日で異なるといいます。
例えば雨の日。
石こうは通常より多くの水分を含みます。
そのため泥しょうから水分を吸収するスピードはにぶるんだそう。
石本さんはこうしたことも見越して4.5ミリのタイミンイグを計っているのです。
時間で決めてる部分もあるんですけどやっぱり細かいところ良いものを作ろうとすると感覚とか土の性質を知ることがすごく大切なことになります。
ほぉ職人ですね。
ありがとうございます。
この後取っ手や注ぎ口を付けて乾燥。
絵付けを施して窯焼きします。
およそ1300℃の高温で焼くと生地の不純物や水分が蒸発しより丈夫になるのです。
こうしてつやつやと輝く丈夫な器が誕生しました。
それは目に見えない厚みをも見極める職人の鋭い感覚が作り出したものでした。
砥部焼の器がぽってり丈夫になったのは訳があります。
それはおよそ半世紀前ある職人たちの決断によるものでした。
その一人がこの方。
8割方僕のですかねこの全ての物の中に。
1000点ぐらいあるんじゃないですか。
半世紀の間に工藤さんが創作した器の数々。
そこにはあのティーポットも含まれています。
厚みがあって丈夫な砥部焼は戦後まもなく工藤さんたちのやむにやまれぬ決断から生まれたものでした。
そもそも砥部で磁器作りが始まったのは江戸時代後期。
独特の青みがかった白磁の人気は高く明治大正時代には海外に輸出されるほどでした。
しかし昭和に入ると状況は一変。
相次ぐ不況や戦争のため多くの窯元が廃業。
器作りは農業のかたわら細々と行うものに。
その時工藤さんたちが武骨でも丈夫な器を作ろうと人々を鼓舞したのです。
更に工藤さんは絵付けにも力を注ぎました。
丸みのある温かな形には手書きのぬくもりこそがふさわしいと考え筆の技を鍛え上げたのです。
流麗な線の美しさが際立つ唐草模様。
工藤さん得意のこの絵付けは今では砥部焼の代名詞といわれています。
現在も工藤さんは若い職人たちに技術を指導しています。
手作りへの思いが受け継がれてるのです。
人々に愛される器を作りたい。
砥部焼という家族の器はそんな熱い思いから生み出されていました。
砥部焼の器にはもうひとつ特徴があります。
何だが分かりますか?ふちの部分が丸みを帯びて太くなっています。
これは玉ぶち。
ふちがかけにくくなるのはもちろんですがそれだけではないんです。
はしのさん今人気のマグカップを試しました。
口の所に厚みがあるので口つけた時に安心感とあったかみがありますね。
癖になりますね。
そう。
とても口当たりがいいんです。
この玉ぶち作るのには熟練の技が必要です。
はしのさん玉ぶち作りの名人のもとを訪ねました。
職人歴35年。
マグカップ作りはろくろを使います。
まずカップの形を作っていきますがこの時点では玉ぶちは付いていません。
全体的に肉厚に成形していきます。
さあここから玉ぶち作りの本番です。
取り出したのは「鹿のなめし皮」。
これを指で挟みながらふちの上部を整えます。
柔らかなカーブを作って口当たりを良くしていくんです。
僅かに力を入れすぎただけで潰れてしまいます。
指先の研ぎ澄まされた感覚だけが頼りです。
一度乾燥させたあと裏返し土を削って更に玉ぶちを整えていきます。
ここでのポイントは下唇が当たる部分のくびれ。
どこまでも繊細な曲線でなければなりません。
最後に全体を削って仕上げます。
これで出来上がりです。
あ…かわいらしくほっこりとした丸みが…。
すごい。
なんか味がありますね。
使う人が気持ちよく。
玉ぶちには職人の繊細な技と思いが込められていました。
今ユニークな玉ぶちが砥部焼に登場しています。
46年間絶えず新しいことに挑戦してきました。
山中さんが作ったのはこの器。
見てください。
この大きな玉ぶち。
カレーなど汁気の多い料理もこぼれにくいようにと考えました。
その作り方は山中さんならではのもの。
器のふちを薄く引きのばすと…。
それを内側へ丸め込んで玉ぶちを作るのです。
出来上がると断面はこのような空洞に。
大きな玉ぶちを付けた分中を空洞にして軽くしているのです。
しかしそれは危険なものでもありました。
焼き物屋としては多分タブーだと思うんだよ。
中に空気が入ってるんだから普通だったら割れるというか…。
空気が土の中に残ると焼いた時に膨張し破裂してしまうこともあるんです。
山中さんは膨張しても破裂しないように空洞を均等に作って密閉する技を磨きました。
そしてしっかり乾燥させた後焼き上げていきます。
失敗なんかもよくしますけど新しいものを作ってる時がやっぱりものづくりとしては充実しているような気がします。
失敗を恐れない職人の挑戦が新しい砥部焼を生み出しています。
お広いですね。
いっぱいありますね〜。
はしのさんが訪ねたのは砥部で作られた器が一同に集まるお店。
若い職人たちの手による斬新なデザインが目を引きます。
こちらが若手の作家さんで全部手書きです。
へぇ〜。
ちなみにこれがハートになってる。
え!ハート。
キュートなハートが印象的なカップ。
そしてデザインにパズルを巧みに取り入れた作品。
こっちもカラフルですね。
季節を感じるような。
はい。
ね。
こちらを作ったのは女性。
明るい気持ちで食卓を囲んでほしいという願いからカラフルな顔料を使っています。
職人一人一人の個性が今砥部焼に多様性をもたらしています。
はしのさん最後に今大注目の砥部焼があると聞いて訪ねました。
こんにちは。
こんにちは。
おじゃまします。
いらっしゃいませ。
どうぞ。
早速猫ちゃんが。
アハハハハ。
店長です。
店長!よろしくお願いします。
はい。
ありがとうございます。
社長で自ら器を作る…優しい色目が多いですね。
そうですねはい。
大西さんは子ども用の食器作りに長年取り組んできました。
これはシンプルで子ども用っぽくないというか…。
こちらは子ども用のすごく使い勝手のよい器なんですよ。
この器は今全国から注文が殺到している人気の砥部焼です。
ある仕掛けが人気の理由なんですが…。
分かりますか?はしのさん使ってみると…。
あ〜すくいやすいです。
内側にそりがありまして御飯粒とか全部スプーンに載っていく形になっています。
実はこれ小さな子どもでも食べ物を上手にすくえる器なんです。
すくいやすい理由がこの突起。
突起に沿ってスプーンを滑らすと具がうまく載りこぼさずにすくい上げられるという仕組みです。
砥部焼に重みがあって安定していることもすくいやすさにつながりました。
見た目には本当にシンプルなのでこんなカラクリがあるということに気づかないですけどちょっとした工夫でこういうことができるんですね。
実際にこの器を使っているご家庭におじゃましました。
1歳から6歳までの4人の子どもたち。
うまくすくえるかな?よく食べますしこぼさずに食べるので片づけも楽でいいです。
この器は大西さんが東京の企業と共同開発し去年完成させました。
今まで作ってきた試作になるんですね。
はい。
現在の形になるまで何度も試作を繰り返したといいます。
すくいやすさの鍵は突起の位置にありました。
例えばこちら突起は高い位置にあります。
スプーンですくうとこのとおり。
器の外にこぼれてしまいました。
そしてこちらは突起が低すぎスプーンがうまく引っかかりません。
そして到達したのが今の器の位置でした。
やっぱり最新型が一番いいですね。
気持ちよくきれてくれます。
この食べ物がすくいやすくなる魔法のカーブ。
実は大西さんの指がポイントだったんです。
どういうことかというと…。
大西さんが指を当てるだけで突起が浮き出てきます。
指そのものが絶妙なラインを作り出しているんです。
この指とこの指のこのラインで作るんですね。
すくいやすさの秘密は機械ではない人の持つ自然なカーブにありました。
手作りの砥部焼ならではの技が食卓に笑顔をもたらしたのです。
食卓がねこぼすことによって親が怒る家庭もあるじゃないですか。
そうなると子どもは食べることが嫌になるんじゃないかなと思って。
ですからそういう感じですくいやすい器のおかげでごはんがおいしくなったと。
更におじいちゃんおばあちゃんにも使えるようなそんな可能性を秘めた器じゃないかなぁと思ってますね。
器をより多くの人々に使ってもらえるのならどんな苦労も惜しまない。
そんな職人の遺伝子が脈々と受け継がれる砥部焼。
これからも家族に寄り添いながら手作りのぬくもりを伝え続けていきます。
2014/10/26(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
イッピン「ぽってりやさしい 家族の器〜愛媛 砥部焼〜」[字]
今回のイッピンは、愛媛の砥部(とべ)焼き。ぽってり優しい姿と丈夫さで、今、母親たちの間で大人気!家族に笑顔をもたらす魔法の器の秘密とは?はしのえみが探る。
詳細情報
番組内容
今回のイッピンは、愛媛の砥部(とべ)焼き。ぽってりと優しい姿と丈夫さで、今、母親たちに普段使いの器として大人気。おしゃれで、壊れにくいティーポット、とても口当たりのよいマグカップ、カレーがこぼれないお皿、そして幼児がご飯をこぼさずに食べることができる皿も近年生み出された。家族を笑顔にする魔法の器の魅力と、その開発に挑んだ職人たちの感動秘話をイッピンリサーチャーはしのえみさんが探る。
出演者
【リポーター】はしのえみ,【語り】平野義和
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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