東野圭吾サスペンス「狂った計算〜灼熱のニュータウン殺人事件」 2014.10.25

(蝉の鳴き声)・
(坂上奈央子)ごめんね急に呼び出して。
(明日香)いいのよ…。
優しそうなご主人ね。
(自動車のクラクション)
(急ブレーキの音)
(タイヤの軋む音)
(衝突音)あなた〜!?あなた〜!!
(蝉の鳴き声)
(水面の気泡の音)
(鴉の鳴き声)
(近松丙吉)うん。
おおカレー作っといたぞ。
(春子)ん…。
なんだい?どうしたんだよ。
あぁイヤなもの見たわ。
イヤなもの?交通事故。
車に押しつぶされて…。
それも奥さんの目の前で…。
見てられなかったわ。
ふ〜んそりゃ酷いな。
あんなの見た後で病院など行きたくなかったわ。
でどうなんだ?お前の友達何て言ったっけ?里子?ああ。
それが変なのよ。
ん?転んで足を捻挫したと言うけど体のあちこちにアザがあるのよ。
あんなの転んだぐらいじゃ出来ないと思うけどな〜。
でも優しそうなご主人がいるから私が心配することもないけどね。
そんなに仲がいいのか?もうこっちが照れるくらい。
ふ〜ん。
・はい近松です。

(中川刑事)主任ホトケが上がりました。
コロシかどうかはまだ…。
場所は…?ああ分かる…。
すぐ行く。
すまん。
一人で食べてくれ。
事件ですか?いやまだ分からん。
(中川)司法解剖の結果が出ました。
死後およそ1週間〜10日の間。
つまり8月21日水曜日から8月25日日曜日前後です。
ただ死体の状況からみて死後池に沈められたと判断されます。
(署長)おいおいまだ被害者だと決まったわけじゃないよ。
死因は後頭部打撲による頭がい骨陥没。
鈍器で殴られた可能性が9割。
という事は後の1割は例えば…高い場所から転落したかも…。
そういう事かね?まあそうですか…。
(村越)身元は…?今歯の治療痕から都内の歯科医を当たってます。
他殺か事故かまだ何とも言えんか。
当面は死体遺棄事件として扱うしかないね。
はあ。
じゃしばらくは当署だけで捜査に当たります。
先入観をはさまず慎重に捜査に当たってください。
(刑事)はい。
殺人事件として先走れば関係者の人権の問題も出てきます。
まずは死体の身元割り出しに全力を注いでください。
(刑事)はい。
(割れる音)ああ「ホシが割れる」。
ゲンかつぎだな。
本庁を呼んで捜査本部を…と言ってるんだよ。
近さん…やりすぎだぞ。
ホトケの身元を証明するものが一切ないんです。
殺し以外考えられんでしょう。
やっぱりここだ。
現場100回もいいですけどケータイぐらい持ってください。
こっちの身がもちませんよ。
何だ?ああ身元が割れました。
うん。
(中川)歯の治療痕が歯科医院に残ってました。
中瀬明美29歳専業主婦。
子供はいません。
住所は西東京市みどり町3の20の7。
(中川)いませんね。
(管理人)中瀬さんの奥さん…?いやあここ一週間ぐらい見てないなあ。
最後に見たのはいつかそれが聴きたいんです。
ええ〜…いつだったかなあ。
じゃご主人の勤め先分かりますか?ちょっと待ってください。
住人名簿持ってきますから。
そういえばご主人もここ何日か見てないなあ。
ご主人も…?ええ。
どうも嫌な展開ですね。
はいもしもし中川…。
そうですか…ええ了解。
夫の中瀬幸伸から10日ほど前に家出人捜索願いが出されてます。
という事は旦那は捜査圏外ですか!いいから出せ。
無断欠勤…?中瀬さんがですか?
(田所)今週の日曜日から。
これまでにもそういう事は…?いえ初めてです。
あの中瀬君に何かあったんですか?あ…実は奥さんが亡くなりましてね。
そうでしたか…。
奥さんがいなくなったという事は聞いていたんですがねえ。
そのへんの事情をくわしく聴かせていただけませんか?え〜と…先々週の週末でしたかうちの連中と泊まりがけのゴルフに行ったらしいんですがね。
8月24日の土曜日ですね?ええ。
それが帰ったら奥さんがいなくなってたらしいんですよ。
それで週明け…先週の月曜日に捜索願いを出したそうなんですよ。
すみません。
そのゴルフに行った人呼んでもらえますか?分かりました。
飯島君。
宮沢君と立花君を呼んでくれないか。
はい分かりました。
中瀬さん奥さんとは…?それが仲のいいのひと言でしてね。
愛妻弁当ってのを毎日持って来てましたよ。
愛妻弁当ですか…?ですから奥さんがいなくなってすっかり落ち込みましてね。
お待たせしました。
その愛妻弁当は先々週の金曜日8月23日まで持って来ていた。
だから中瀬明美はその朝までは生きていたという事になります。
一方中瀬はその日の夜部下の宮沢の家に泊まり翌日から那須へゴルフに出かけています。
ところが日曜の夜帰ってみると妻の明美がいなくなっていた。
じゃ明美が死んだのは23日の午後から25日の夜までの間か。
解剖結果とも合うな。
はい。
という事は亭主はアリバイ成立か。
もちろん明美が殺されたとしての話だがね。
近さん…何黙ってる?私は中瀬が女房を殺した可能性も捨て切れないんです。
近松君!気になるんです。
一緒に行った部下の言葉が…。
ゴルフに誘ったのは…?
(宮沢)中瀬さんです。
いつも?初めてです。
それも急に。
コースもホテルも段取りしてくれて…アリバイ工作のニオイがします。
考えすぎだろう。
弁当の事もある。
中瀬の女房が23日まで生きていたのは間違いない。
その後は殺す時間もない。
中瀬の行動に不審な点はないと思うが。
じゃなぜ中瀬が消えたんです?とにかく中瀬が何かの事情を知っている可能性は高い。
中瀬の足取りを追う事。
特に車だ。
これを徹底的に当たってくれ。
それから明美の交友関係を念入りに洗うんだ。
家宅捜索令状請求しますがいいですね?
(署長)ああ…。
以上だ。
(刑事)はい。
(街の騒音)
(蝉の鳴き声)
(店員)いらっしゃいませ。
いつものお願いできますか?菊とマーガレットですね?少々お待ちください。

(店員)きょうで3日目ねえ。
(店主)そうだなあ。
事故で亡くしたご主人に毎日花を買って。
かわいそうにまだ若いのに…。
(隣家の主婦)坂上さん。
ねえお茶でも飲まない?もらいもののケーキもあるし…。
ありがとうございます。
でも…主人の遺品の整理もありますし…。
ああ…大変ねえ〜。
(立花)お弁当ですか?・中瀬さんが最後に出勤された日の弁当とそれまでの弁当に何か違いはなかったかどうか。
いいえ気がつきませんでした。
いつもどおりの愛妻弁当だったと…。
そうですか…。
いやありがとうございました。
アリバイか…。
(パトカーのサイレン)管理官ご苦労さまです。
(山形)私が担当になりました。
お手柔らかに。
押収物の管理は慎重に願いますよ。
(捜査員)はい。
(山形)鑑識さんこれ採取してください。

(佐々木刑事)どうかしましたか?いやなんでもない。
ありました中瀬明美の住所録。
これが私信です。
明美さんとご主人の中瀬さんとはどういうお知り合いだったんでしょう?
(雅代)お見合いです4年前に。
明美ったら結婚前に子供が出来てお式早めたんです。
でも流産してそれからはあまり会ってないんです。
なんか明美暗くなっちゃってヤバイなあって雰囲気だったから…。
一つ訊かせてください。
はいどうぞ。
明美さん料理は得意でしたか?え〜と…普通じゃなかったかなあ。
ただいま!お〜い洗濯物たまったぞ。
どうした?具合でも悪いか?少し風邪気味で…。
じゃ寝てろ。
うまいもん作ってやるから。
もう大丈夫…。
いいから。
おい…前にお前が寝込んだ時俺何度か自分で弁当作った事があったよな?はい…。
毎日。
毎日…。
そうだったのか…。
・はい近松です。
中瀬明美の友人が出頭しました。
話したい事があるそうです。
そうか待ってもらえ。
それよりそこに中瀬の所へ来た手紙か何かないか?年賀状でも何でも。
住所と名前なるべく近い人。
早くしろ!うん…はい分かった。
春子…悪いけど出前でも取ってくれ。
ああなた着替え…。
なに…?あどうも…。
中瀬さんが浮気をしていたというのは本当ですか?
(久美子)ええ。
でも明美さんに聞いただけですから…。
男の声で明美さんに電話が…。
「ご主人が浮気してるって」。
誰からです?そこまでは分からん!ただのイタズラって事もある。
でそれをあなたに打ち明けたんですね?久美子:相手は誰なの?
(明美)そこまでは教えてくれなかった。
何かのイタズラよ。
そんなの信じちゃ駄目!多分本当よ…。
うすうすは気づいてたの。
どうするつもり?現場を突き止めてやるわ。
許せない!
(山形)中瀬の家には争った形跡もない。
血痕も発見されてない。
アリバイもちゃんとある。
中瀬が女房を殺したなんてあなたの得意な憶測にすぎないでしょう。
中瀬にアリバイは成立しません。
ん?近さんどういう事だ?状況証拠だが明美は23日の金曜日までは生きていた。
死人に弁当は作れんからな。
その後中瀬にはアリバイが…。
殺せるはずがない。
明美が死んだのは多分その前…21日か22日。
ん…?確かに死人に弁当は作れません。
生きてる人間が作ったんです。
じゃ…?中瀬です。
彼が自分で作ってたんです。
明美が死ぬ前も死んだ後も…。
証拠は?家宅捜索の時妙な感じがしたんです。
あの家はろくに掃除も整とんもされてませんでした。
ところが台所だけはきれいだった。
一家の主婦が何日もいないのに。
気づかれませんでしたか?それだけじゃ状況証拠にもならんだろ!さっき中瀬の学生時代の友人に会ってきました。
その男の話では中瀬は昔から料理を得意にしていたそうです。
「飲み会なんかでみんなが集まったときなんかも手のこんだつまみをさっと作っていた」そう言ってました。
初めは明美を殺した後のアリバイ工作のために妻の弁当に似せて自分で作ってたと思ってたんです。
けど元からずっと自分で作ってたんですよ。
それを周りの人間が勝手に愛妻弁当だと誤解していた。
中瀬はそれを利用したんです。
明美はもっと前に死んでいたんです。
おそらく自宅でないどこかで…。
亭主の中瀬に殺されて…。
失礼します。
中瀬の営業車が出ました。
(中川)この辺りは中瀬の会社が3年ほど前に造成したそうです。
中瀬は1年前からここの担当で家のメンテナンスや定期点検で何度も巡回していたそうです。
ニュータウンか…。
これです。
うちの所轄のニュータウンの造成地にずっと無断駐車してたらしくて。
通報者の話では9月1日の日曜日から止めてあったとか…。
日曜日…?中瀬が消えた日ですね。
うん。
いいですか?押収して…。
どうぞ。
連絡。
あはい。
ありがとうございました。
(チャイム)
(インターホン)はいどちらさまでしょう。
警察の者です。
ちょっとよろしいでしょうか?はい。
失礼します。
突然ですみません。
何でしょうか?あ…。

(室内の音楽)あお伺いしたい事がありまして。
この方ですがご存じですよね?新日ハウスの中瀬さん。
ええ。
この間の土曜か日曜にこちらに見えませんでしたか?いいえ来てませんけど…。
そうですか…。
じゃ最後に来た日を覚えてませんか?1か月ほど前でしたか2年点検の時に…。
あの…その方どうかされたんですか?いや…ありがとうございました。
いいえ。
失礼ですがどなたかお亡くなりに…?え?いや…。
ああ…主人なんです。
交通事故で…。
ほう…そうでしたか。
それはご愁傷さまです。
よろしかったらお線香をあげさせてもらえませんか?以前交通課にいた事がありまして事故で亡くなったとお聞きしてはあのまま黙って帰るわけにはいきませんでした。
でいつの事です?今週の日曜日です。
日曜日というと…1日?ええ。
事故を起こした相手は…?若い男の人でした。
そうですか…。
いや長々と失礼しました。
ん?ここは涼しい。
くれぐれもお力落としのないよう。
ありがとうございます。
では…。
そうですか来てませんか。
ええ。
あ…これどうぞ。
じゃ頂きます。
お隣のご主人…事故で亡くなったそうですね?そうなんですよこの先の駅前で。
そりゃもう酷い事故だったらしくて…。
酷い事故?だってお葬式の時お棺の中も見せてもらえなかったんですよ。
あまりにも何ていうか…。
ほう。
かわいそうにねぇ。
あんなに仲がいい夫婦だったのに。
そうでしたか。
ええ…もうどこに行くにもご主人と一緒でねぇ。
(蝉の鳴き声)
(すすり泣く声)・ああ主任!ダメです中瀬を見た人間は誰もいません。
妙だな…。
出直しましょう。
埒があきませんよ!先に帰っててくれ。
え?俺は駅まで歩く。
このクソ暑いのにですか?考えたいことがあるんだ!どうぞ…ご勝手に!《中瀬が消えた同じ日に担当していた家の人間が事故で死んだ…。
ただの偶然だろうか?》・あなた!なんだ…何でこんな所にいる?あなたこそ。
風邪はどうした?それどころじゃないのよ。
里子から呼び出されて今病院に行って来たところ。
病院ってこの駅だったのか。
言いましたよ。
あこれ着替えです。
ちょうどいい所で会ったわ。
うん…。
じゃあれか?この前見た事故っていうのは…。
ええあそこですよほら。
そうか…そのとき何か変わったことなかったか?変わったことって?いや…俺にも分からん。
分からんが何か引っ掛かるんだ。
なあ…。
何だやっぱり元気ないな。
うんちょっとショックなことがあって。
何があったんだ?ううん…今は言いたくない。
まだ少し混乱してて…。
中瀬の営業車から血痕と毛髪が検出された。
血液型はA型。
中瀬明美と同じだ。
毛髪についても鑑定の結果明美のものとほぼ一致した。
従ってホシは夫の中瀬幸伸に間違いないと思われる。
よって中瀬を重要参考人として指名手配する。
容疑は殺しですか?殺しを睨んだ上での死体遺棄ということだ。
ニュータウンに乗り捨てた車はカムフラージュとも考えられる。
全力で中瀬の行方を追ってくれ…以上だ!待ってください。
愛人の件はどうなりました?もちろんそっちも洗ってもらう。
ただし人権にはくれぐれも配慮するように…いいな。
(捜査員たち)はい!この男なんですが…。
いや知らねえな。
そうですか…どうもありがとうございました。
これだけ当たって誰も中瀬を見てないってことはこの町には関係ないんじゃないですか?やっぱ…車は山形管理官が言うように逃亡の時間稼ぎのためのカムフラージュだったんじゃ…。
蟻地獄に見えんか?はあ?みんなこの土地に甘い蜜の匂いを嗅いで集まってくる。
だがいったん入り込むとなかなか抜け出せない。
中瀬もここに来て甘い毒を持った女に出会って抜け出せなくなった…。
そんな気がしてしょうがない。
じゃあ主任は…。
中瀬の愛人はこの町にいる。

(虫の鳴き声)押収物は保管庫だよな?え?めぼしいものはなさそうですね。
おい…。
はい。
はい…これ。
はいじゃないんだよ。
ほら…ん…これ。
うわあ…これぐらい自分でやればいいのに。
はいいきますよそれ…。
コルトレーンですね。
コルト…?コルトレーン知らないんですか?ジャズの神様ですよ…。
ああ。
ああって…。
これ何ていう曲だ?マイフェイバリットシングス私のお気に入りです。
お前の趣味を聞いてるんじゃないよ!ははは…。
何言ってんですか。
タイトルが私のお気に入り。
あそう…。

(脇田)これからという時に酷いもんですよ。
これからとは?坂上のヤツ名古屋の本社に栄転が決まったばかりでした。
実家にも近くなるって喜んでいたんですがその矢先にあんな事故に遭って…。
実家…ですか。
ええ坂上の実家は三重の賢島で真珠の養殖の網元をやってましていわば跡取りです。
それでずっと転勤願を出していたんです。
奥さんとの関係はどうだったんでしょう。
円満だったんじゃないですか。
2人は社内結婚でしてね東京支社に移って来てすぐ坂上が奈央子ちゃんを見初めちまって…。
猛烈に押しまくった末につき合って半年でゴールインです。
そうですか…。
あの…坂上さんジャズはお好きでしたか?はあ?ええ…マイ…マイ…フェイバリット…。
…シングズ?ああそれです。
いやあ彼はクラシック一辺倒でジャズは毛嫌いしてましたよ。
どうも…。
いや…ありがとうございました。
音楽?それだけでその坂上奈央子という女が中瀬の愛人だと言うのか?夫の坂上はジャズを毛嫌いしてました。
死んだ後妻がそんな曲を流すなんてどうにも解せません。
だからと言って中瀬の愛人だという証拠には…。
中瀬が消えたと思われる同じ日に坂上が死んだのも引っ掛かります。
ただの偶然とは思えないんです。
証拠をあげるのが先ですよ。
2人が会っていたという証拠を出してください。
話はそれからです。
村越さんそちらでも一応坂上奈央子の身辺を洗ってもらえますか?何か出るとは思えんが…。
・どうだった?やっぱり読み違いじゃないのか?ほら…。
ああ。
これだけ捜しても2人が会ってるところを見た者はいない。
そうだろう?坂上と奈央子との間に問題があったという話も出ていない。
どう考えても中瀬と奈央子を結びつけるのには無理がある。
そう思わんか?村さん。
うん?坂上奈央子を張り込ませてくれませんか?近さん…何を言い出すんだよ。
中瀬があの家にいる。
そんな気がしてならないんです。
でないとしても中瀬は必ず奈央子に接触してくるはずです。
お願いします。
そんなこと…許可できるはずないだろう。
坂上奈央子は容疑者でも何でもないんだ。
くれぐれも勝手な真似はせんでくれ…な。

(車の急ブレーキ音)奈央子と中瀬が…。
(蝉の鳴き声)主任!何ですか?こんな所まで呼び出して…。
知りませんよ勝手なことして外されても。
調べてもらいたいことがあるんだ。
まただよ…。
坂上の事故は仕組まれたものかもしれん。
えっ?!詳しい事故の状況を聴いてきてくれ。
それと坂上奈央子と中瀬がその運転手と何らかの関係がなかったかどうか当たってくれ。
主任まさか…。
早くしろ!人を使って亭主を殺したかもしれんのだ。
早く!は…はい。
・いらっしゃいませ。
・ありがとうございました。
へえ…毎日ですか。
ええもう1週間になるんですかね。
いつもあんなに沢山?ええ…菊とマーガレットばかり。
ほう。
私…いつも言ってるんです。
死んでからもあんなに思われるんだったら考えようによっちゃ幸せな方だったねって。
店長あの奥さんのこと好きなんです。
毎日もらい泣きしてるんですよ…。
うるさい!仕事を…早く!あの…マーガレットはこれですよね?ええこれですけど。
どうかなさったんですか?えっ!ああいやいや…。
じゃ私にもこれ5本ほど。
はい5本ですね少々お待ちください。
《マーガレット…マーガレットはどこに消えた?》
(クラクション)空振り!大外れですよ。
ちゃんと調べたんだろうな?何言ってんですか…。
事故の状況に不審な点はなし。
ちゃんとブレーキも踏んでる。
運転手と奈央子や中瀬との接点もなし…真っ白です。
運転手は?まだ勾留されてます。
明日保釈になるそうです。
えっ!?主任…。
行ってくれ!また?自分で確かめないと気が済まないんだよ。
だったら最初から自分で行かれればよかったのに…。
これあげる彼女にプレゼントしろ。
いませんよ!四六時中主任と一緒なんだから。
あそう。
「あそう」だって…。
早く!分かりましたよ。
(矢野)坂上さんの奥さんにも本当に申し訳ないことをしたと思っています。
一生かかっても…できるかぎりのことはするつもりです。
もう一度訊く。
本当に中瀬という男を知らないんだな?…はい。
嘘をついてるとは思えんな。
だから…言ったじゃないですか。
僕…もう行きますから…。
つき合ってられません!失礼します!どうですか…何か参考になりましたか?ああどうも…。
さっきも若い刑事さんにお話したんですがちょうど自分が臨場したんですよ。
あんな嫌な事故は初めてでしたね…。
すみませんがもう一度詳しく聞かせていただけますか。
またですか?すみませんちょっと退いてください!はい退いて…。
退いて退いて!
(署員)運転手の矢野の話では止まってる車を追い越そうとしたらボールを追って子供が飛び出して来てそれを避けようとして追突したということでした。
運の悪いことに被害者の坂上さんちょうど車の下に転がったボールを探していたそうなんです。
あんな酷い死体は初めてです。
何しろ顔が潰れてしまって…。
顔が潰れて?ええ判別できないほどの酷さでした。
じゃあどうやって身元を?奥さんが確認してくれましたから。
それだけですか…鑑定はやらなかったんですか?その必要はないでしょう。
一緒にいた友人も確認してますから…。
友人がいたんですか?じゃあ坂上奈央子さんとは静岡の高校時代から?はいでもそんなに仲よしじゃ…。
私なんかには垣根が高すぎて…。
えっ!?彼女…検事さんの一人娘なんです。
ほう…検事の娘さん。
そうだったんですか。
あの日はお母さんが倒れたらしくて…「よかったら一緒に帰省しない」と誘われて。
私も今年はお盆にも帰ってなかったから。
それであの駅で待ち合わせしたんです。
事故の状況を教えていただけますか?ご主人が駅まで送って来て奈央子さんが車から降りて私のところに来てそれからすぐ「ドーン」と聞こえて…。
あとはもう何が何だか分からなくて…。
なるほど。
あの…妙なことをお尋ねしますが坂上さんのご主人に間違いなかったんでしょうか?はあ?いやつまりその…はっきりと顔をご覧になったのかどうか…。
いえ…ぼんやりとしか見えませんでした。
と言いますと?待ち合わせは駅前の噴水広場で少し遠かったものですから。
しかしあなたも確認されたと聞きましたが。
ええ…警察の方に言われるまま調書に判を押しただけなんです。
どちらにしても私には確認のしようがないですから。
どういうことですか?奈央子さんのご主人を見たのは写真を含めてあの日が初めてなんです。
えっ!?今も言いましたように高校の同級生といっても特に親しかったわけじゃ…。
結婚式にも呼ばれなかったし。
顔を見たこともなかった…。
奈央子さんとも何年か前…。
ああすみません。
一緒に帰ろうと誘われたのはいつのことですか?事故の前の日ですけど。
前の日…?待ち合わせ場所を指定されたのはどちらですか?奈央子さんです。
《なぜ駅の構内で待ち合わせない?なぜあの暑い日にわざわざ炎天下のこんな場所で…》雨だって降るだろうなぜだ…?まさか…。
おい春子っ。
春子!どうしたんですか?ああちょっと写真見てくれ。
いいかよ〜く思い出してくれ。
お前があの駅前で見た事故で死んだのはどっちだ!この男か?それともこっちか?どうなんだ。
入れ替わった可能性があるんだよ。
分かりませんよ。
顔なんて見てなかったから。
そうか…。
あああなた。
何だ?
(里子)どうも…お久しぶりです。
ああどうも。
(春子)里子ご主人から暴力を受けてたのよ。
もう10何年も…。
10何年…!?市役所に勤めてておとなしそうな人だったのに…。
定年が近づくにつれてエスカレートしていったらしくてとうとう入院まで…。
やっと退院したと思ったら昼間電話があって「助けてくれ」ってそれで…。
行ってみるか。
ええ!?うん。
いやいや…。

(蝉の鳴き声)ああすみません。
坂上さんはどちらでしょうか?専務!
(敏子)何や!お客さん!うん。
ああお忙しいところすみません。
こういう者です。
で隆昌の事故がどないかしたんですか?お母さん亡くなられた息子さんの顔ご覧になりましたか?刑事さんもやっぱりおかしい思いますか?と言いますと?わたしら息子に会わせてもらえんでした。
ほう…!?東京の病院に着いた時にはあの子はもう顔じゅうぐるぐる包帯巻きにされて…二目と見られん顔になっとる言うてあの嫁は…。
では誰も見てないんですね?やっぱりあの嫁が仕組んだんと違いますか?なぜそう思われるんです?どうしてって…ただそんな気いがしただけです。

(女)暑いな〜いつまでも…。

(男)まめに水まかなアカンで!・
(房枝)申し訳ありません。
(真由美)ただいま!ああお客さんやったん?お帰りなさい。
お疲れさん。
(総一郎)お前からも房枝に言うとき…。
すみません。
東京から刑事さん。
確かに息子の死に顔は見てません。
そやけどそれがどないかしたんですか?死んだんは事実です。
もうそっとしといてもらえませんか。
早よ忘れたいんです。
そんなこと言うて毎日グチをこぼしとるくせに…。
後はこの娘に婿でも取って跡を継がせるしか…そう思ってます。
そら私はそれでええけど…。
義姉さんも冷たいな〜ママが疑うんも無理ないわ。
お兄ちゃんが死んでからいっぺんも来とらへんし…。
それなんですが…息子さんと奈央子さんとはうまくいってたんでしょうか?
(房枝)失礼します。
房枝さんもうええから…。
お願いします。
うちはこの辺では一番の旧家やめったな事いわんといてください。
お気を悪くされたらごめんなさい。
息子さんが暴力を振るっていたような事は…?嫁がそうなん言うたんですか?いえいえ。
帰ってもらおか!検事の娘か何か知らんが…分かったら早よ帰って!あの…ちょっとよろしいでしょうか?明日の午前中出かける用事が…。
この先の生けすで10時頃でしたら…。
すみません。
お待たせしました。
いえわざわざ来ていただいてすみませんでした。
早速ですが隆昌さんと奈央子さんの事なんですが…。
どっから見てもうまいこといってたとは思えませんでした。
ほうそれは?奈央子さんはホンマに気の毒な人なんです。
あんな坊ちゃんに嫁いだばっかりに酷い目に遭って…。
まるで奴隷みたいなもんです。
奴隷…ですか!?お正月に帰って来た時も…。
どうや出来たか?はい。
何やこれ?あんたはいつまで経ってもうちの味が覚えられねんのやな!すみませんもうここはええから廊下でも磨いてきて!ホンマに手間が増えるだけやな〜!すみません。
若奥さんは「すみません」ばっかりやな〜。
辛抱せなあきませんよ。
な…
(房枝)お正月が来ても腰の落ち着く暇もなくって…。
お待たせしました。
(隆昌)遅いやないか!お義姉さん少し座ったら?ママもちょっと手伝ってやれば…。
ええよ。
長男が嫁を連れて来たのに母親が働いてるなんてみっともないよ。
けどすごいなようあんな人見つけたな。
見つけるんと違う教育するんや。
甘やかすとつけあがるでふだんからビシッと締めつけるんや。
そうやロクに跡取りも産めやんのに…。
お前らも嫁もろうたら甘い顔を見せるな。
女房なんて教育しだいでどうにでもなる。
アイツなんか俺に絶対服従や!文句ひとつ言わせへん
(房枝)結婚した途端坊ちゃんの別の顔に気づいたんやってそうグチこぼしとったことがありました。
別の顔…それからはずうっと私は坊ちゃんの人形みたいなもんやってそう言うてはりました。
人形か…やりきれんな。
三重…!?近さん。
三重ってどういうことなんだ?まさか坂上の実家じゃないだろうな?そうなんだな?どういう事なんだ説明してくれ!あなた坂上奈央子が検事の娘だと知ってたんですか?全くあなたって人は…!いいかね!思い込みや独断で勝手に動かれちゃ捜査に支障を来たすんだ。
分かってんのかね!あのお話があります。
(村越)な〜に…!?事故で死んだのは中瀬だと?はい。
家の定期点検を重ねていくうちに奈央子と中瀬の間に関係ができたんでしょう。
そしてあの日中瀬を夫の坂上に仕立て坂上の顔を知らない同級生の明日香に見せた。
証人作りのためです。
だが計算外の事故が起きて中瀬が死んでしまった。
私はそう見てます。
バカバカしいどっからそんな発想が出てくるんだ。
愛妻弁当です。
愛妻弁当!?はい。
中瀬は周りの誤解のお陰で女房殺しのアリバイ作りに成功した。
今度は奈央子と共謀し第三者を使って奈央子自身のアリバイを作った。
その時点まで坂上が生きていたと思わせるためにです。
じゃあ…坂上は?恐らくもう生きてはいないでしょう。
動機は…?奈央子と中瀬の間に不倫の証拠はない。
奈央子と亭主の坂上の間にも不仲を裏づける証拠はない。
あんたの説は動機も証拠もないただの推論ばかりだ!動機ならあります。
ああお帰りなさい!ごめんねすぐに支度するから…。
そこに座れ!え!?座れって言ってるんだ。
どうしたの?どこ行ってた?友達と会ってたの。
男か?違うわよ恵子よ。
あなたも知ってるでしょう?亭主が仕事から帰って来て飯も用意してないとはどういうことだ!だから…。
ふざけるな!何だその目は…俺をバカにしてるのか!
(テーブルの砕け散る音)おい!明日から買い物以外は外に出るな。
どうして!?家の事だけやってればいい!そんな…ひどいわよ!何がひどい。
お前には贅沢させてやってるんだ。
当然だろう!俺が帰った後は電話にも出るな。
分かったな!風呂入ってくる。
私…もう一度勤めに出ようと思ってるの。
ああ…!?家の中にずっといるなんてイヤ外の世界に出たいの。
俺がいないと何もできないくせに。
バカな事を考えてる暇があったらさっさと飯の支度でもしろ!話はよく分かった。
でもな近さんそれだけで死体が入れ替わったとはどう考えても無理がある。
坂上を殺した後中瀬が事故で死んだというのはあまりにも偶然性が強すぎて飛躍がありすぎる。
そうだろう?しかし…。
どっちにしても奈央子は検事の娘なんです。
めったな事で手を出せんでしょう。
検察に睨まれたカエルですか。
人権の事を言ってるんだ!あんたの臆測だけでもしもシロだったらどうする!事は我々だけの責任問題じゃ済まないんだぞ!被害者の人権はどうなるんですか?いたずらに被疑者の人権を尊重した結果どうです?野放しにされた人間が引き起こした重大犯罪ばかり…。
そんなもの私に言わせれば人権尊重でも何でもない。
手をこまねいて見ているだけの傍観者にすぎません。
あんたと議論するつもりはない!村越さん。
あなたからもよく言い聞かせておいてください。
(ドアの開閉音)村越:近さん分かってくれ。
これ以上憶測で動かんでくれ。
中瀬が女房を殺した。
それだけじゃ不満か?
(絹恵)あの日は確か静岡に行かれる前に家に見えて留守にするからよろしくって…。
その時何か変わった様子は?そうですね〜…隣の奥さんにしては珍しく話し込んでいかれましたかね〜。
30分ぐらいかしらいつもは口数が少ない方ですがその日にかぎってご自分からお話されてね。
坂上さんが出かけた時ご主人の顔はご覧になりました?いいえ見てませんけど。
どうかしたんですかお隣さん?いや…。
ご主人が亡くなった後お隣には行かれました?ええ何度も行きましたよ。
ふだんと違ってるようなことなかったですか?う〜んそうですね〜特には…。
いや何でもいいんです。
どんなささいな事でも…。
お食事ですかねえ。
食事!?何日か前にちらし寿司を持って行ったんです。
その時に…。
はい。
すみません冷凍食品と氷ですか!?そうそれもいっぱい。
あんなに沢山何に使うのかしらね〜?うん!?ここ涼しい…坂上奈央子の家の家宅捜索をさせてください!どういうことだよ?理由を話してくれ!あの家の2階に遺体があります。
恐らく坂上の…。
何!?聞いてください。
彼女は毎日のように薬局やコンビニで大量のドライアイス氷を購入してます。
この足で調べて…。
それだけじゃなく毎日持ちきれないほどの花を買っています。
ですが坂上の祭壇には申し訳程度の菊の花しか供えられていないんです。
腐敗と臭いを防ぐためです。
恐らく坂上はあの家で中瀬に殺されてますね。
奈央子が隣の家にいた30分の間に…。
その後同級生を利用して坂上が生きているように見せかけアリバイを作ったんです。
ところが不慮の交通事故で中瀬が死んだ。
(急ブレーキ音)それで坂上の遺体を隠した。
そういう事か?はい。
考える必要もないでしょう!近松さん!あなたは一体何を考えているんです!私の言った事を何も聞いてないんですね!確かに作り話としては面白いかもしれません。
けどそんな事で令状を請求できるわけがないでしょう!村越:近さん管理官の言うとおりだ。
それだけじゃどうにも動けんよ。
なあ分かってくれ・マイフェイバリットシングズ
(虫の鳴き声)
(ドアの開く音)どうぞ。
はあ頂きます。
きょうはおかけにならないんですか?ええ!?いや…これです。
この前お宅で耳にしてからすっかり気に入りましてね。
それが何か…?中瀬さんの車の中にも同じものがありました。
お二人は関係があった。
私はそう見ています。
同じ曲が好きだというだけでどうしてそういう事になるんですか?随分乱暴な考え方ですね。
中瀬さんは家に仕事に来ていただけです。
そんな男性とどうして…。
先日三重に行って来ました。
三重!?賢島です。
賢島へ?はい。
房枝さんから大体の事は聴きました。
あなたがご主人からひどい扱いを受けていたということ…。
話していただけませんか?お話することはありません。
明日香さんからも話を聴きました。
一部始終をです。
お引き取り願います。
単刀直入に訊きます。
事故で亡くなったのは中瀬さんじゃないんですか?じゃ主人はどこに行ったっていうんですか?妙な臭いがしませんか?お2階拝見させてもらいます。
やめてください!お断りします!
(玄関のチャイム)
(玄関の戸の開く音)失礼します。
近さん!村さん…。
こちらの父上から連絡があった!言っただろう!事はこちらの人権問題に関わるんだよ!近さん待ってくれ!堪えてくれ!なあ頼む!堪えてくれ!近さん!お帰りなさい。
事件終わったんですか?謹慎だ。
えっ?坂上:おい水くれ。
聞こえないのか?水だよっ。
きょうが何の日だか分かる?あ〜?覚えてない?だから何?結婚記念日よ私たちの…。
ふん…。
それがどうした?もう一度あの頃に戻りたいそう思って…。
なんだその顔は…。
当てつけのつもりか?!
(器が割れる音)そんな目で俺を見るなっ。
お前のためにこの家を買ってやったんだろ。
少しは感謝したらどうだ。
ふざけやがって。
いえ〜っ。
何様のつもりだ〜。
(割れる音)俺を何だと思ってんだ〜。
うお〜っ
(ガラスが割れる音)
(風鈴の音)
(春子)あなた…。
お茶がはいりましたよ。
ん?ああ…。
あの人どうした?里子さん…。
家に戻っちゃった。
え?私がいないと主人がダメになってしまうからって。
里子言ってましたよ。
うちの人は子供がそのまま大人になったみたいな人だって。
でもやっぱりどうしても見捨てられないのよねって。
よく分からんな。
ご主人のことが怖いってところもあるんじゃないのかしらねぇ。
まぁそれからは何も言ってこないからしばらくは暴力も収まってるってことじゃないのかしら。
お前花言葉詳しいか?花言葉ですか?うんあの花…。
あれっ?お茶じゃないのか…。
たまには紅茶もいいでしょう…。
昼下がりにあなたと紅茶を飲むなんて何年ぶりかしらね〜。
そうか…。
春子今度こそ辞めることになるかもしれん。
覚悟してくれ。
おい中川を出せ。
近松だ。
中川すぐに紅茶の専門店をあたってくれ。
喫茶店のだ。
ん?そうだな奈央子の家から半径10kmいや…20kmだ。
・マイフェイバリットシングズ中瀬:いらしてたんですか?ええ。
うれしいな。
まさか会えるとは思ってませんでした。
ここ…よろしいですか?どうぞ。
どうですこの店…気に入っていただけました?ええとても。
よかった。
いいでしょう…この曲。
どこかで聞いたことが…。
サウンド・オブ・ミュージックです。
ああ…。
お嫌いですか?こういうの…。
いえ…。
ただうちでは主人がクラシックばかりで
(ウェイトレス)お代わりいかがですか?いえけっこうです。
中川:ありました。
心泉茶苑。
住所は八王子市桜町…
(蝉の鳴き声)
(蝉の鳴き声)何度もすみません。
ご主人はどこにいるんですか?またそのお話ですか?いい加減に…。
やっと見つかりました。
あなたと中瀬さんがひそかに会っていた場所が。
さっきまで見えていたと店の主人が教えてくれました。
中瀬さんの面影を追うように何時間もぼんやり座っていた。
本当に悲しそうな顔だったそう言ってましたよ。
中瀬:憎い…。
あの男が憎い。
やっぱり殺すしかないよ。
君をこんな目に遭わすなんて…。
いいの私なら。
あなたとこうして会えるだけで。
いやだ僕は。
やっぱりやろう。
それしかないよ。
今やらなければ君はこのまま一生生き地獄だ。
僕だって同じだよ。
奈央子のいない人生なんて考えられない。
頼む。
言うとおりにしてくれ。
大丈夫だ僕たちのことは誰も知らない。
僕さえ疑われなければすべてはうまくいくそれでもまだ私はためらっていました。
そんなに恐ろしいことがうまくいくはずがないって思っていました。
でもその時…。
(車のドアが開く音)あっ。
明美…。
この女があなたのことを?!う〜うっ。
(悲鳴)明美っ。
やめろっ。
やめろ!バカな真似はよせっ。
止めないでっ。
奈央子逃げろ!あ〜。
やめろっ。
やめてください。
きゃあ〜。
あ〜っ。
や〜っ。
やめろ〜っ中瀬さんが殺される。
中瀬さんを失ったら私にはもう何もなくなる。
そう思うと…。
(争う声)
(叩きつける音)もう後戻りはできない。
そう思いました。
彼女があなたの背中を押した。
そういうことですか?後は計画を実行するだけでした。
中身は刑事さんがおっしゃったとおりです。
たったひとつだけ大きな間違いを除いては…。
間違い?
(水滴の落ちる音)山形:言ったはずだぞ。
事はこちらの人権問題に関わる…この中だったんですね…ご主人は…。
これは…。
中瀬…。
事故で亡くなったのは本当にご主人だったんですか…。
計画では私がお隣に行っている間に中瀬さんが家に入って主人を殺す予定になっていました。
でも待っていたのは中瀬さんじゃなかった…。
なぜ主人がそこにいるのかまるで分かりませんでした。
中瀬さんは来なかったんだろうか?もしかしたら最後の最後で罪の意識におびえたのだろうか?そう思うと不思議にホッとしたのを覚えています。
(タイヤの軋む音)あなた!?あなた!!やっとこれで主人から解放される。
中瀬さんと一緒になれる。
そう思いました。
あの叫び声は快哉の叫びだったんです。
でもそれもつかの間のことでした。
ご苦労さまでした。
お力落としなく…。
その時初めて事情を知りました。
中瀬さんはあの男を殺そうとして逆に…。
うわ〜っ何もかも計算が狂ったということですか?ご主人は知っていたんでしょうね。
あなたと中瀬さんのことを。
えっ?中瀬さんの奥さんに男の声で電話があったそうです。
中瀬さんが浮気をしていると。
恐らくあなたのご主人だった。
私はそう見ています。
お二人の関係を知って身を引かせようと思ったんじゃないでしょうか。
名古屋への転勤もお二人を別れさせるためだった。
そんな…。
だったらどうして自分で。
言えば永久にあなたを失う。
そう思ったのでしょう…。
もしかしてあなたたちの計画にも気づいていたのかもしれません。
やっと分かったことがあります。
下の祭壇になぜマーガレットがないのか。
どうしてもそれが分からなかった。
「心に秘めた愛」マーガレットの花言葉だそうですね…。
中瀬さん…。
お別れね…。
あの男の仕打ちがひどくなったのは私が子供を欲しがるようになった頃でした。
子供?あの人にとって子供は邪魔だったんです。
私を子供に取られる。
甘えられる存在を失ってしまう。
だから…。
でも私はどうしても子供が欲しかった。
子供が出来ればあの人も変わってくれるそう思って…。
(ため息)でも…。
その頃から毎日ひどくなるばかりでした。
くる日もくる日も顔色をうかがって神経をすり減らす…。
その繰り返しで…。
そのうちわけが分からなくなってきて戻ることも進むこともできなくなってしまったんです。
長い真っ暗なトンネルの中で出口も入口も見えないままポツンと置き去りにされたような気持に。
自分は無力で何もできない女なんだ。
そんなふうに自分を責めて…。
心は…ずたずたになっていくばかりで。
なぜ逃げなかったんですか?そんなひどい男。
どうやって逃げるんです?あの家は密室なんです。
檻なんです。
檻の中に閉じ込められたまま一歩も動けないんです。
別れてくれって頼んだこともありました。
中瀬さんとつき合い始めた頃たった一度だけ。
その時に…初めて暴力をふるわれたんです。
お前と別れるくらいならお前を殺して俺も死ぬって…。
ありがとう…。
大切な話をよく打ち明けてくれました。
あなたの罪は重い。
決して許されることではない。
しかしこれだけは言いたい。
あなたならやり直せる。
罪を償った後きっともう一度やり直せる。
元のあなたに戻って生き直してください。
それを言いたかったんです。
ずっと。
最後にひとつだけ聞かせてください。
中瀬さんの遺体をどうするつもりだったんですか?分かりません。
自分でも…。
ただあの人は私を救ってくれたたった一人の人なんです。
今までの世界とは別の世界があることを教えてくれました。
だから…あの人が朽ち果てるまでずっと一緒にいたかった。
ただ…それだけなんです。
近さん覚えてるか?20年前駆け出しだった俺はあんたと同じ署に赴任した。
俺にとっては先輩だった。
まぶしいくらいのな…。
俺は近さんに憧れた。
将来はこんなデカになりたいと思った。
なぜだか分かるかい?優しさだ。
俺は近さんの優しさが好きだった。
あんたの優しさに憧れたんだ…。
2014/10/25(土) 14:00〜15:55
テレビ大阪1
東野圭吾サスペンス「狂った計算〜灼熱のニュータウン殺人事件」[字]

貯水池殺害主婦の夫も行方不明? 同時刻に起きた難事件に挑む熟練刑事の執念! 消えた白い花束の謎…。

詳細情報
番組内容
東京・多摩南署の管轄内にある貯水池で、死後1週間から10日の女性の殺人死体が上がった。翌日、被害者は主婦・中瀬明美と判明。明美は10日ほど前に夫の中瀬幸伸から家出捜索願いを出されていたが、その中瀬も行方不明になっており、勤務先を無断欠勤していることが判明する。ベテラン刑事・近松丙吉は、部下の中川とともに中瀬の会社へ聞き込みに走る。
番組内容続き
中瀬と共にゴルフへ行った人間もおり、その直前まで中瀬が愛妻弁当らしきものを持参していたことなどから、中瀬のアリバイは成立していると見られた。しかし近松だけは中瀬の行動にどこかアリバイ工作めいたものを感じる。中瀬夫婦の部屋の家宅捜索が行われた際、近松はほとんど掃除されていない部屋の中で、台所だけがきちんと整理されていることに疑問を抱く。
出演者
伊東四朗・角野卓造・八嶋智人・細川直美ほか
原作脚本
原作:「嘘をもうひとつだけ」(狂った計算)東野圭吾

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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