いつもすばらしいゲストをお招きしております「上方落語の会」。
今日のゲストはモデルのアンミカさんです。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
聞きましたら去年から初代の大阪観光大使やってはるらしいですな。
そうなんですよ。
光栄なんですけど私育った大阪は食べ物もおいしいし人は温かいし歴史もたくさんあるじゃないですか。
世界に誇る大阪を楽しみながら宣伝さして頂いてます。
お願い致します。
はい。
歴史とか人情となりますと文楽と並んで上方落語。
これ大阪の財産と思うんですけどもお好きですやろか?どうやろか?大好きなんですよ。
よかった。
やっぱり落語家さんのこの世界観を自分の頭で想像しながら楽しんでね。
もう魅力語ると切りないんですけど特に古典落語。
昔も今も人が感じる事って変われへんねんなっていうところに安心感があります。
古典落語がお好きという事で今日はちょうどよかったんです。
桂南天さん桂二乗さんという米朝一門の方の古典落語を2席お届け致します。
まずは二乗さんの「子ほめ」です。
(拍手)今世紀最大の拍手誠にありがとうございます。
ただいまから開演という事でございましてまずは出てまいりました。
名前出ております。
桂二乗でおつきあいを願う訳でございますがこの間心理学の先生というのと先生とお話させて頂く機会がございましてね。
人間の心理自分の気持ちというものは自分が分からない間に相手に伝わってしまうそうです。
自分が気付かないうちに相手に見透かされてしまうという事をおっしゃっておりまして見分ける方法があるそうでございますのでよかったら皆さん覚えて帰って頂きたいんですが2回繰り返すとこれは逆の意味になるそうでございます。
どういう事かと言いますと例えば奥さんが旦那さんに晩ごはん。
例えばハンバーグなんかを作りまして「どう?私の作った今日この晩ごはんハンバーグおいしい?」と聞きますね。
旦那さんがそれを一口パクッと食べまして「うんうんうまいうまい!」と2回言うと本当はそうでもないそうでございますね。
面白いもんでございます。
人間本当においしい物を食べた時は「うまい!」1回やそうでございましてほかにもあるそうでして例えばこの奥さんがですね旦那さんの浮気を疑ってる時なんかですね「ちょっとあんた。
あんた最近浮気してんのと違うか!?」。
「いやいやそんなんしてへんしてへん!ほんまほんま!」。
こういう時は非常に危ないそうでございます。
あっなるほどなと思いまして。
この間近所にあります居酒屋さんで1人で飲んでおりましたらたまたま隣に座ったおっちゃんがしゃべりかけてきたんですね。
「ところでにいちゃんにいちゃんは仕事は何してんの」。
「うそ言うのもなんですから知らんと思いますけども落語やってますねん。
噺家ですわ」とこない言いますと「えっにいちゃん!にいちゃんあんた落語家さんかいな!そうかいな!おっちゃん落語好き好き」と2回言うてたんでございますね。
この時点で危ないな思たんでございますがせっかく好きや言うてくれはったんで「おっちゃん落語好きなんですか?」。
「おっちゃん落語好き好き!うん!にいちゃん噺家さんやったら芸名あんのやろ?芸名何ちゅうの?芸名」。
「あっ知らないと思いますけど桂二乗といいます」言うたら「えっ桂二乗!聞いた事あるある!おっちゃんファンファン!」言うてたんでございますね。
聞いた事もないしファンでもないという…。
非常につらい告白でございましたがおっちゃんにしてみたら初めて会うたにいちゃんの気持ちを持ち上げてやろうという気があったんですかね。
なかなか人の気を持ち上げたり褒めたりするというのは難しいもんでございまして落語の方でも当然うまくいかないようでございますが…。
「こんにちはいてはりますかいな。
こんにちは」。
「おうおうまあまあこっち入っといで」。
「いやいや今そこでまんさんに会うたらね『はよあんたんとこ行ってこい』言っちまんねん。
ええ。
『タダの酒があるさかい行って呼ばれてこい。
飲ましてもろてこい』言われて来ましたんやけどな。
タダの酒っちゅうのがあったら一杯飲ましとくんなはれ」。
「えらいやつが飛び込んできたな。
うちにそんなタダの酒てなもんがあるかいな。
わしとこはな兵庫の灘の酒蔵に親戚があってな毎年樽で1丁ずつ酒を送ってくんのやがそれが今朝着いたとこや。
おまはん灘の酒というたのをタダの酒。
つまり灘とタダと聞き間違えたんと違うか?」。
「あ〜さよか。
灘でもタダでもどっちゃでも構へん。
1杯ぐらい飲ませ!気のきたない」。
「それはお前が気がきたないんやがな。
しかし飲ませ飲ませと言うたかてうちには肴も何にもないで」。
「いやわたいね何がなかったらよう飲まんっちゅうのはそんな酒飲みとは違いまんねん」。
「あ〜なるほど。
ほんまにお酒の好きな人小指ねぶってでも1升ぐらいの酒飲むっちゅうな」。
「まさかあんたわたい小指ではよう飲まんで」。
「ほなこうこ?漬物の1切れでもあったら升の隅からグ〜ッといくっちゅう酒か?」。
「いやわたい漬物でもよう飲まん性分」。
「ああそう。
ほな一体何があったらええねん」。
「そうでんなあちょっとここにこう…酢の物が欲しいおますな」。
「ああなるほど。
酢の物さえあったら何も要らんか?」。
「ちょっと酢の物があってでんな造りがあって焼き魚があって天ぷらがあって吸い物があって後で寿司が出たら何にも要らん!」。
「当たり前やがなお前。
会席1人前や。
誰がそんな贅沢な事さすかいな。
いやいやこの間よそからスルメをもろた。
剣先の上等を10枚もろたんでなあそこにぶら下げてあんじゃがおまはんスルメはどやな?」。
「あ〜スルメねえ。
わたい歯が悪いさかいな。
10枚も食えるやろうか?」。
「誰が10枚も食わすかいな。
そんなもん1枚しか焼けへんで」。
「残りは生でもろて帰ろう」。
「お前どこまで厚かましいねん。
そんな事言うてたら飲ましてあげよう思てても嫌になるでな。
人にお酒の一杯でもおごってもらおう思たらもうちょっとべんちゃらてな事がでけないかんがな」。
「べんちゃらて何でんねん?」。
「たとえうそでも構わん。
相手が気に入るような事を言うのやな。
まあ手っ取り早うべんちゃらお世辞言う方法ちゅうたら年を尋ねるとええな」。
「相手の年聞くとべんちゃらになりますか?」。
「そやな。
『時に失礼な事お尋ねしますがあんさん今年おいくつで?』と。
先様でもって『45じゃ』とでもおっしゃったら『ああ45とはお若う見える!どう見ても厄そこそこ』」。
「何やけったいな事言いまんねんな。
『45とは若う見える。
どう見ても100そこそこ』」。
「100やないがな。
昔から男の厄年を42としたんや。
厄そこそこ42〜43でんな。
年を2つ3つ若う言うてはる。
これはうれしいもんやで。
『わしゃそない若う見えるか。
何もないけどちょっと天ぷらで一杯』とこういう具合になるやろな」。
「あ〜なるほどね。
けどあんたのようにうまい事45の人に出会たらよろしいで。
ひょっとあんたこれ50てな人に出会うたら難儀やなあ」。
「何も難儀な事ない。
50やと言われたら47〜48と言ったらええがな」。
「60てな事言われたら?」。
「57〜58やがな」。
「ほな70は?」。
「67〜68や」。
「80は?」。
「77〜78や」。
「90!」。
「87〜88や」。
「100!」。
「お前物考えて言いやお前!100てな人そないウロウロしてはれへんけどまあいてはったら95〜967〜8といかんかい」。
「ほなら1,000!」。
「そんなもんあるかいなお前」。
「万!」。
「お前化け物やがなお前。
万てな人がいてるかいな」。
「あんたはそう言いなはるけどね世間ちゅうのは広いで!一人ぐらいこの万てな人がいてんとも限らん。
けどひょっと万てな人に道で会うたらおもろいやろな。
『あのあんたおいくつで』。
『はい私万で』。
『万とはお若う見える!どう見ても9,996!』」。
「そんなアホな事があるかいな」。
「例えばここに子どもさんがいてますわな。
子どもさんが。
『この子いくつで?』。
『10』。
『…とはお若う見える!どう見ても7〜8と』。
こない言いまんの?」。
「お前そんな事言うたら親に怒られるわな。
子どもの時は逆や。
『10ですか!大きいした…大きい見えますな。
しっかりしてはりますなあ!12〜13に見える』とこう上に言わんないかんがな」。
「これ子どもは上に言いまんの。
おもろいもんでんな。
赤ん坊がここに寝てますわな赤ん坊が。
『この子おいくつで?』。
『1つ』。
『大きいなあ!5つ6つに見える!』」。
「お前底抜けのアホやろ。
根から葉まで言わな分からん。
赤ん坊はまた別やがな」。
「別口」。
「別口っちゅうのはおかしいけどな。
赤ん坊を褒めるのはその親を褒める事になるんやさかいよう見ないかん。
『さてこれがあんさんのお子さんでございますか。
なるほど鼻筋が通ったところはお母さんそっくり。
耳から口元へかけてはお父さんそっくり。
額の広いところなんかもう亡くなったおじいさんに似て長命の相長生きの相がございます。
実に家じゅうの人のええところばっか寄せ集めてできたようなお子さんでございます。
栴檀は二葉より芳し。
蛇は寸にしてその気を表すとか申します。
私もこういうお子さんにあああやかりたいあやかりたい』とこれだけ言うてみぃな。
親が喜んで天ぷらで一杯飲ましてくれるわな」。
「あっなるほどね。
へえへえおおけありがとう」。
「あっちょっと待ちな。
今一本つけさすさかいちょっと飲んで帰ったらどないや」。
「アホらしい。
なにもこんな所で気兼ねしながら呼ばれんかてこれだけの事仕込んどいたらわたい金輪際酒には不自由せえへんねん。
さいなら!なるほどなあ。
あんな事言うて一杯飲ましてもらう手があるとは気が付かなんだで。
早速このべんちゃらちゅうのを誰ぞにかまして一杯おごらせたらないかん。
どこぞに45〜46のやつ歩いてないかいな。
あら?向こうから歩いてくるのは伊勢屋の番頭。
あいつ45〜46おあつらえ向きや。
あいつ捕まえて一杯おごらせたろ。
もし〜!伊勢屋の番頭は〜ん!あっこっちこっち!伊勢屋のご番頭〜!」。
「よう!どないや?町内の色男!」。
「向こうのがべんちゃらうまいがなこれ!うかうかと天ぷらで一杯行こうと言いかけたがな俺。
もうあかんわちょっと。
一遍家帰ったろ。
かか今戻った」。
「まああんたかいな。
今時分までどこ行っとりなはったんや?あんたがフラフラ出歩いてる間うちはえらい出銭やで」。
「何やその出銭ちゅうのは?」。
「隣の竹はんのとこ今朝子どもが生まれたっちゅうて長屋の祝いのつなぎで50銭出しといたがな」。
「えっ!竹やんとこに子どもができた!うわ〜ちょっとわい行ってくるわ」。
「あんたどこ行きなはんね」。
「子ども褒めに行くのやがな!」。
「やめときぃなあんた今向こう喜んではんねんで!あんたが行ったら泣かはるがな」。
「何を言うてんねん。
ちゃんと仕込んだんで大丈夫じゃ。
お〜い竹やん!竹やんいてるかいな」。
「お〜誰思たら喜ぃ公かいな。
まあまあこっち入っといで」。
「竹やんとこ聞いたら何やねえらい災難があったんやてね」。
「お前何を聞いてきたんやお前。
うちはお前子どもが生まれて喜んでんねや」。
「あっそうそう!竹やんとこは喜んでんねん。
長屋は50銭取られて皆ぼやいてる」。
「お前はっきり言うやつやな。
あんな事してもらいでもよかったんやで」。
「今日は子ども見せてもらいに来たんやけど」。
「上がってゆっくり見たって」。
「そらゆっくり見せてもらうで。
先に50銭払うたんやさかい」。
「人の子を見せ物みたいに言いやがんなお前は。
その廊下ずっと奥へその襖シュッと開けたら前に寝てるわ」。
「ああなるほど襖開けたら寝てるか。
よいしょっと。
あら!また竹やんこら大きな子やな!」。
「大きいやろ?産婆はんも大きいなっちゅうてびっくりしてたわ」。
「ほらびっくりするでお前これええ!子どものくせにこれハゲちゃんでしわくちゃで入れ歯ガタガタ…」。
「それおじいさんが昼寝してんのやがな!」。
「これおじいさん!?」。
「お前どこぞの世界に子どもとオジン間違えるやつがあんねや。
子どもはその横や。
おさきの横に寝てるやろ。
産婦の横に寝てるやろ」。
「え?おさきさんの横に寝て…あっこれかこれか。
これかいな。
何や。
うわ〜こらまた小さいもんやなあ!ええ?これ育つか?」。
「育つわアホ!験の悪い事言わんといてくれ」。
「うわ〜これ…うわ〜動いてる。
ハハハッ動いてる。
竹やん動いてる!」。
「そら動くわいなお前。
生きてねんさかいに」。
「赤い顔してなあゆでたんか?」。
「何でやねんお前。
赤いさかいに赤子は赤ん坊っちゅうねや」。
「なるほど。
赤いさかいなうん。
これ。
『おっちゃんお越し』って言うてみい。
フフッ。
『お越し』って。
こら!」。
「お前何を言うてんのやお前!」。
「行儀教えたってんねん。
こんなん小さい時分から仕込まなあかんねん」。
「いやそんなもんがお前物言うかいな」。
「えっこの子物言わんの?まあ〜かわいそうに」。
「わしゃお前がかわいそうやわ!生まれたての子どもは物言わんのや」。
「生まれたての子ども物言わんの?割と不便なもんやな。
あら!何や竹やんこの子手首に輪が入ってるな」。
「おう。
よう肥えてるさかい肉が盛り上がって手首に輪が入ってるように見えたんや」。
「小さいくせに手首に輪入れてな大きなったら足に鎖つないでもらえ」。
「お前ろくな事言わんな。
ちょっと黙ってえ」。
「何や竹やんこの子紅葉みたいな手ぇしてるな!」。
「初めてうれしい事言うてくれたがな。
紅葉みたいにかわいらしい手やろ?」。
「なあお前こんなかわいらしい手でおっちゃんの50銭よう取った」。
「返すわアホ!気兼ねでもろうてられへんがな!」。
「冗談言うて…あっ!あっ!竹やんこの子人形さんみたい!」。
「もうそれでええ。
何も言いな。
今のひと言気に入ったがな。
人形さんみたいにかわいらしいやろ?」。
「いやいやこないして寝てるやろ。
腹押さえたらキュ〜キュ〜キュ〜!」。
「殺してしまうわもう!触るな触るな!」。
「けど竹やんこの子うまい事褒めたら一杯飲ましてくれる?」。
「1杯でも2杯でも飲ますさかいもうおかしな事言いなや」。
「大丈夫。
今日はちゃんと仕込んでんのやさかいな。
さてこれがあんさんのお子さんでございますか?」。
「お前何を言うてんねんなお前。
最前からずっと見てるやろ」。
「なあ鼻筋がシュ〜ッと通ったとこなんかお前鼻が鼻…鼻低いなこれおい!口元もうわ〜褒めにくい」。
「おいおいおいおい!そんな事言わんと褒めたって」。
「そら褒めないかんねんけど…あっ!額の広いところなんかは亡くなったおじいさんに似て長命の相が…」。
「おじいさんそばに生きてるがな!」。
「おじいやん怒りな。
教えたやつが悪いねん。
えらい事言うてもうたな。
時に失礼な事お尋ねしますがあんさん今年おいくつで?」。
「そらお前誰の年を聞いてんのや?」。
「この子の年」。
「アホな事言いなや。
おいくつにも何も今朝生まれたとこやがな」。
「今朝とはお若う見える!」。
「もうアホな事言いなや。
今朝で若かったらどないやねん」。
「どう見てもあさってぐらいや」。
(拍手)桂二乗さんの「子ほめ」でございました。
いかがでした?初めお客さんへの心理学といいますか2回言うのね。
「ああそやわ」ってうなずくところとかやっぱりどの時代もどの国も子ども褒められたらうれしいですね。
そうですね。
日本ではあんな形なんですけども韓国ではどんなふうに褒めますんやろな。
大人になったらかわいいよりすてきだって言われる方がうれしいだとか赤ちゃんや子どもの頃は健康そうとかこんな子になりそうっていう才能的なところを褒められたらうれしいかなって。
未来を褒める訳ですね。
はい。
アンさんどない言われてましたんや?私ちっちゃい頃コンプレックスだらけの子どもだったんですよ。
ぽっちゃりした。
大人になったらきっときれいになるとかねそういうふうに言われて育ちました。
そのとおりになりましたな。
ありがとうございます。
すばらしいですな。
今日は「子ほめ」という事でああいう日本風の褒め方を教えましたけどあれはやらん方がよろしいねん。
多分通じへんと思います。
というとこで続きましては後半は桂南天さんの「ちりとてちん」お聴き頂きます。
ではどうぞ。
(拍手)ありがとうございます。
よろしくおつきあいを願いますが噺家というのは誠にありがたい商売でございましていろんな所でお呼ばれというのを致します。
お呼ばれ。
これはうれしい楽しいもんでございますが「旦さんお邪魔致します。
おめでとうさんでございます!家でゴロゴロしておりましたら何やお誕生日でございますんで『お酒のお相手を』と言うて頂きまして寄らして頂きました。
お誕生日やそうでございますな。
おめでとうさんでございます」。
「おおきにおおきに。
よう来てくれた。
さあさあそこへ座っておくれ」。
「旦さん今日はお誕生日!お年はおいくつになられたんでございますか?おっしゃっとくんなはれ。
てれなはんな!言いますかいな!口が堅うございます私。
おいくつ?えっ50…56!あらまあお若う見えてはりますなあ!56もいってはるように見えしまへん!へえ!横顔やなんか55に見えてますけどね」。
「お前おかしなべんちゃらすんのやないがな。
いやいや有り合わせのもんが並べてあるだけで何にもない。
お酒だけはちょっとええのが手回った。
京都の知り合いが送ってきてくれたんじゃが白菊というお酒や。
あんたこれ知ってるかいな?」。
「旦さん何でございます?白菊!それが手に入りましてございますか!旦さんご存じございませんか?その白菊というのは京の伏見屋の銘酒でございます。
へえ!昔はかぞくさんだけが飲んではったお酒でいやかぞくさんいうてもおじいちゃんおばあちゃんお父さんお母さんお兄ちゃんお姉ちゃんやなしに華の族華族さん偉いさんだけが飲んではったお酒で我々庶民の口には入りまへんでした。
まあまあ今入る事は入りまんねんけど数が少のうございます。
手造りで。
ええ。
好きな人の間ではそれ白菊とは呼ばれておりません。
幻の酒いわれております。
それを私が頂戴するんでございますか?早速…あっ!ここに小さな猪口お猪口が出ておりますけれどもお誕生日でございますんでこっちの大きな湯飲みでお祝いさして頂きます。
その方がお祝いが盛大になりますんで。
旦さん自らのお酌で恐縮でございます。
あら!白う濁っておりますなあ。
いわゆる濁り酒というやつでございますか。
ねえこの色の白いところから白菊というきれいな名前が付いたんでございましょう。
頂きます。
頂戴。
旦さん。
旦さん!もうここでええお酒独特の麹の香りがプ〜ンとしております。
鼻から引き付けられるようでございます。
頂きます!頂戴致します!お誕生日おめでとうさんでございます」。
「あ〜っ!旦さんまさしく銘酒でございますな!…と申しますのは昔からええお酒というのは飲むと思わんでも酒の方から勝手に口へ入ると申します。
今がそうでございます!へえ!私飲もうと思てしまへん!白菊て初めてどんな味かいなと思て湯飲みのここへ私の下唇ベチョッとつけたらいきなり酒の方から勝手に口の中へド〜ド〜ド〜ッ!流れ込んでまいりまして私飲みながら『君何をすんねんな』と思てたような次第で。
頂きます。
頂戴致します。
へえ」。
「あ〜っ!結構です。
引っ掛かりまへんな。
え〜もうぼちぼちと!ゆっくりと立て続けに2杯もついで頂いたら足取られてわやになります!ゆっくりゆっくり!ぼちぼちゆっ…ですか?ですか?開けるつもりなかったんだけどね勝手にキュッキュッと入りましてえらいすんまへん頂戴します。
へえ」。
「いや〜旦さんうちの死んだオバンが言うとったんでございますけど初めての物初物頂きましたら75日寿命が延びるてな事申しまして私この白菊で長生きさして頂きます。
ありがたいこってございます」。
「そない大層に言わんかて気に入ってもろたら結構や。
どんどんやっておくれ。
まだぎょうさんあるさかいな。
つまんでもらわないかんねんけどなあんたの口に合うやどや分からんねんがあんた鯛のお造りどないや?」。
「鯛のお造り!初めてでございます。
旦さん!」。
「んなアホな。
鯛の造りぐらい食べた事あるやろ」。
「いいえ初めてで!いや鯛の塩焼きこれは頂いた事ございますけど生のお刺身は頂くの初めてで!何でもその辺まで粋のええ鯛が来てるといううわさは小耳に挟んでおりましたですけど。
これが鯛のお造りでございますか!上品なもんでございますなあ。
お行儀がよろしゅうございます。
ちゃ〜んと整列致しまして。
これワサビもほんまもんのワサビ!ほんまもんのワサビですか?これ。
粉水で溶いたやつやなしに。
うれしゅうございますな。
ほなワサビちょっとお醤油で溶かして頂きまして。
ほな鯛のお造り端の1切れだけ頂戴致します。
端の1切れ。
うわ…。
きれいな身でございますなあ!きれいな身や!透き通っとります!新鮮な証拠で!きれいな身やな!ええ!こんなきれいな身ぃやったら休みの日うちの嫁はん耳へぶら下げて歩かそかいな。
きれいな身でございます。
鯛のお造りほなこのワサビ醤油つけさせて頂きます。
ほな頂きます。
頂戴致します。
鯛のお造りどんな味でございましょう?初めて頂きます。
頂きます。
頂戴致します。
お誕生日おめでとうさんでございます。
うん!うん!歯応えがシコシココリコリと…あっ辛っ!辛っ!あ〜辛っ!ワサビ鼻へ来た!辛っ!辛っ!こう辛いとお酒飲まなしょうがおまへんなこれ」。
「ふう〜!結構です旦さん。
私鯛も初めてで合わせて150日長生きさせて頂きます!」。
「もういちいちそない大層に言わんかてええちゅうねん。
あ〜これも食べておくれ。
大した事ないねやけどなうちの家内がこしらえたんや。
あんた茶わん蒸しどないや?」。
「茶わん蒸し!?初めてでございます旦さん!」。
「んなアホな。
茶わん蒸し初めててな人があるかいな」。
「いいえ初めてで!これが茶わん蒸しでございますか!茶わんを蒸してるんでございますか?え?あっ中身を!やっぱりねそうやないかいなと思たんです。
まさか茶わん蒸してそのまま茶わんガジガジとかじる訳はないと思て。
ほな頂戴します。
鯛のお造りちょっとこっちへ引っ越し。
宿替えさして頂きましてこの茶わん蒸し頂きます。
熱っ!あっ熱っ!熱っ!これ茶わんごと蒸したらこない熱なります?熱っ!熱っ…!私ちょっと手が猫舌なもんでこれ…。
蓋が載ってるんでございますか。
よっといしょ。
うわうわうわ〜!これゆずの皮が載ってるんでございますか。
ええ香りがしておりますなあ。
黄色う固まってございますがどういう事?はあ…おだしに卵入れはって!まあ贅沢なもんでございますなあ!ほな頂戴致します。
おお中から具が出てきたんやございますでんな!具が!大きいエビが入っとりますなあ!ええエビが!大きなエビが!あらあらあらこれこれカマボコカマボコカマボコ!カマボコ分厚く!カマボコカマボコ!おお〜シイタケシイタケシイタケ!シイタケシイタケ!うわうわ大きいシイタケ!おお〜ミツバミツバミツバ!」。
「いちいち具の名前言うてもらわんでも分かるけどな」。
「あら旦さん何です?これ。
茶色い軟らかいシワシワッとしたもん出てまいりました。
何でございます?茶色い軟らかいシワシワッとしたもん。
何です?えっ?アナゴ!あっこれが!あの田んぼピョンピョン跳んでる…。
えっ?『そらイナゴ』。
あ〜さようですね。
頂きます。
頂戴致します。
へえ。
茶わん蒸し初めてでどんな味で…。
フッフッフッフッ…頂きます。
頂戴します。
お誕生日おめでとうさんでございます」。
「とろけますなあ!結構ですなあ!私こういうアナゴとかおなごとか好きですねえ。
おだしも頂戴致します。
フッフッフッ」。
「熱いけどおいしゅうございますな。
あら黄色い小さい丸こいもんがピョコンと飛び出しました。
これ何でございます?黄色い小さい丸こいもん。
えっ?ぎんなん!あっこれが!いや私前々からぎんなんてどんなん思てたらこんなん!?」。
「あんた面白い人やな。
ぎんなん一つで遊ぶやないかいな。
これこれこれどうしました?何?ウナギが焼けてきた?ああそうか。
喜ぃさんあのな店頼んでたウナギが焼けてきたらしい。
炊きたてのごはんがあるさかいな一杯飲んだあとにごはんの上へウナギ載せて丼にして食べて帰って。
遠慮する事ないで。
ごはん食べて帰ってや」。
「ごはん!初めてでございます旦さん」。
「んなアホな…。
ごはん初めててな人があるかいな。
しかしあんたはうれしい人じゃな。
何を出してもそないして『おいしいおいしい』と喜んで食べてくれる。
こっちの気持ちがええ。
そやさかいにやななんぞおいしいもんができたら喜ぃさんに食べてもらおうか土産物もろたらお裾分けしよかとそういう気持ちになるもんじゃないかいな。
それに比べてなあんたに比べていやこんな事言いとうもないけどもこの裏に住んでる竹っちゅうのいてるやろ!竹!あの男憎たらしい男やで。
あんたみたいにもの喜びというのをした事がない。
大概喜ばんわ。
あ〜また珍しいもん出しても喜ばん。
『あ〜知ってます知ってます。
前に食べた事あります飲んだ事あります百っぺら遍食べてますてな事じきに言うねん。
嫌になってくるで。
いや毎日うち来よんねん!あの男毎日うち来んねんけどな時刻が決まってはる。
お昼どきや。
私がごはん食べてるとね『こんちは〜』ちゅうて上がり込んできよってな『今日のおかずは何でんねん』てな事言うて目の前座り込む。
しょうがないさかい『お前も食べるか』ちゅうてごはんよそうて出したるやろ。
あんたみたいに『おいしい』と言うて食べた事がないな。
出したごはん見るなり『あら!悪い米使うてまんな』。
こうや。
一口食べたら『炊きようが悪いわ』。
おかずつまんでは『味付けが下手くそ!』。
ボロっかす言うて飯5杯食うて帰んの。
これが腹立つじゃろ。
ほんままた珍しいもん出しても喜ばんわ。
『あ〜知ってます!前に食べました。
百っぺら遍食べてます』てな事言うねや。
あっ!そうこの間もむかついた事思い出した。
2〜3日あれが顔見せなんだんじゃ。
こっちは助かってた。
またしばらくしたらひょっこり顔出しよってな『お〜竹。
長い事顔見せなんだがどこぞ行ってたんか?』ちゅうたら『ええちょっと長崎まで遊びに行ってきました』。
こんな事言うとんねん。
ホラ吹いとんねお前。
んなもんお前仕事もせんとブラブラ遊んでるような男が長崎まで行ってこれるような銭持ってるかいな。
わしゃ突っ込んでやろう。
うそ暴いてやろうと思てな『おう竹。
長崎へ行ってきた?わしゃ行った事ないけども長崎という町はどういう町やった?』と聞いたらあいつ何ちゅうたと思う?『あれ旦さんご存じございませんか?行ってみたら分かります。
名前のとおり長〜い町でした。
よ!』てな事を言いよる。
腹立つじゃろ?『長い町でした』はええけどこのしまいの『よ!』ちゅうのがむかつくじゃろ?あの男一遍ギャフンと言わしたらないかんと思うてんねんけどなこらここだけの話にしといておくれ。
これこれこれこれ!これ!皆でそっちで何をゲラゲラ笑うてますのじゃ?何を笑うてますのじゃ?何?『面白いもんがある』。
話の種やこっち持ってきなはれ。
何がそない面白い?な…何じゃ何じゃ?このお皿の上に載った黄色い四角いもんは何じゃ?え?『豆腐の腐った』?あっ!わしやわしや!やっこ豆腐半分食べて水屋へなおしといたんや。
コロッと忘れてるがな!えらい事した。
あれから10日ほどたってはるでおい。
えらいもんじゃな〜。
あの白いきれいな豆腐が10日もたつとこれ黄色う縮んでしもて赤や青のカビが生え…ブハッ!臭っ!臭っ!えらい臭いするわ!ゲホッ!喜ぃさんけど…面白い!面白い!こんな色になんねやな。
ちょっと見てみなはれこれ!豆腐の腐ったやっちゃ!」。
「豆腐の腐ったん!初めてでございます旦さん」。
「あんた食べる気ぃかいなあんた。
なんぼもの喜びするあんたでもこりゃちょっと食えんで。
しかしなあ世の中には妙な人がおってこういうのをしゃれてる。
おつやっちゅうて口へ入れる人がおんねん。
ああ」。
「喜ぃさん。
意外と近所におるやないかいな。
いやこの豆腐の腐ったんをあの裏の竹に食わそうやないか。
このままでは豆腐の腐ったんやっちゅう事が分かるさかいな潰して味でもつけて上等の折へ入れてどこぞの名物名産珍味やっちゅうてあいつの前へ出したんねん。
ほなあの男知らんとは言わん。
知ってるっちゅうに違いない。
知ったかぶりやさかいな知ってるっちゅうに違いない。
『ほな食べるか?』っちゅうたら食べよるでこれ。
おい。
これ口ん中へ入れたらどんな味がするやろな?あいつがこれ口へ放り込んでもがき苦しむ姿見ながら2人でチビチビやろうやないかいな」。
「やりまひょやりまひょ。
誕生日にええご趣向でございます」。
「やろうやろうやろう!わしの誕生日が盛り上がってきたな。
よしほなこれうわえらい臭いする!うわっ!えらい臭い!臭っ!これまず潰さないかん。
これまずこのお豆腐をうおっ!うおっ!おおっ!臭っ!お箸入れたら中から臭いがボヨヨンと出てきた!臭〜っ!うわえらい豆腐って腐ったらこんなに…。
うわ〜臭〜っ!喜ぃさん不思議なもんじゃな人間あんまり臭いと笑うてしまうなこれ。
えらい…うわ〜!えらいこっちゃ!勝手に鼻が詰まってきました勝手に。
勝手に…お〜っ!自己防衛本能というやつかな。
うわ〜臭っ!あ〜!臭っ!けどなこれ味付けせないかん。
味付け。
そこのお刺身のお醤油ここへ入れてくれるか?お醤油を醤油。
そうジョボジョボッと。
そうそう!うっ!う〜っ!うお〜っ!臭っ!ああ〜たまらんな!おお〜っ!おっ醤油入れたら彩りが出たやないかい!こ…こんな色のつくだ煮見た事あるでおい。
あるある…お〜!えらい臭いする!けどなこれ腐ってるもんじゃでな。
あの男あたったらいかんのでな毒消しにそこのワサビ入れとこかワサビ。
構へん。
たまの懲らしめや。
ムチャクチャしたったらええねん。
ここへ入れここへ。
ボチャッと。
うおっとうおっと!おおっ!あっ!ワ…ワサビ入れたら刺激臭に変わるやないか!臭っ!えらい臭いするこれ!また毒消しにそっちから梅干し持ってきなはれ。
梅干し。
梅干し種抜いてびぃだけ2つほど!梅干し種抜いてびぃだけ2つほど!いや鼻が詰まってますのじゃ!」。
(笑い)「分かるじゃろ?ボチャッボチャッとご苦労さん。
おうそうそう!おお〜っ!おうっ!梅干し入れたら酸い臭いが混ざってこれ!おおっ臭っ!えらい臭いするで!けど喜ぃさんええ?これあの男があたったらいかんというのでじゃで。
毒消しにワサビと梅干し!2つも入れてるとここれ私の良心かな?これは。
うわっ臭〜っ!さあさあさあ!出来上がりました。
これはあいつの前へ出したらないかん。
名前を付けないかん。
喜ぃさんあんた考えておくれ。
あの男も何じゃかんじゃ言うて本読んだりして物知ってますのじゃ。
そやさかいほんまにある名前でもいかんし皆目ない名前でもいかん。
そや!あの男長崎行ってきたっちゅとんねんなあ。
長崎の名産っちゅう事にしようやないか。
長崎の名産であるようなないようななんぞそんな名前ないかいな?」。
「これ難しゅうございますな。
何でございます?長崎の名産であるようなないよう…旦さんこんな名前どうでございます?」。
「ほうどんな名前や?」。
「長崎名産『あるよでない』というのはねえ」。
「そのままやないか!もうちょっとひねれんかえ?」。
「難しゅうございます。
あら?奥のお座敷から三味線の音色が聞こえてございますが…。
えっ何です?ほうお嬢さんがお稽古!さよか!結構でんなあ!」。
・「ちんとんしゃんちりとてちん」・「ちりとてちん」「旦さんただいまのどうでございます?『何が?』って最前の三味線の音色!『ちりとてちん』というのはいかがでございます?」。
「『ちりとてちん』?それがこんなもんの名前になるかえ?長崎の名産じゃで!いっぺん言うてみよか?口に出して言うてみよか。
長崎名産『ちりとてちん』。
合うなあおい!合うやないかいな!よ〜しよし決まった!うお〜これえらい臭っ!えらい臭いする!これえらい臭いするけどなそっち持っていって上等の折へ入れて蓋して半紙かけてなあんたの字で書いといておくれ。
長崎名産平仮名で『ちりとてちん』と。
それらしい見えるようにな最後の『ん』をこう…上へグルッとこう…回しといて。
『ちりとてちん』とこう書いておいてもらおうか。
ほんでまたあの男なんぞ理屈言うやろな。
その『ちりとてちん』の肩へ『元祖』と入れといてもらおうか。
それからじきに竹呼びにやってや。
喜ぃさんあの男掛かるかいな」。
「掛かります掛かります!豆腐の腐った『ちりとてちん』やなんてどんな顔して食べまっしゃろな」。
「さあさあそれがこっちの楽しみや。
えっ何?『竹が来た』。
竹が来たらしい。
喜ぃさん静かにしてなはれや」。
「旦さんお邪魔します〜!」。
「おお来た来た。
竹竹竹よう来てくれた。
さあさあさあこっち入ってそこへ座っておくれ。
よう来てくれましたな」。
「聞きましたで旦さん!お誕生日やそうでございますなあ!何でもうちょっと早う知らしてくれませんのや。
もうちょっと早う言うてくれたらなんぞ持ってきまんねや。
急に言われたさかい手ぶらでんがな!ほんま。
誕生日祝?しかしええ年してよう誕生日祝てな事しまんな。
そんな年寄りのするもんやおまへんで。
いくつになりましたんや?56!プ〜ッ!ええ年して恥ずかしい!ようそんな年で誕生祝するわ!昔は人生50年いうたもんでっせ!ズルズル長生きして!ああ喜ぃさんあんたも来て飲んではりまんの?あんたもタダの酒はよう飲みに来まんなあんた。
えっ何?『お酒珍しいの飲んでる』。
ほんまでっかいな!何ちゅう酒です?言うてみなはれ!大概の酒知ってまんがな。
え?珍しいてどんな酒でんねん。
大概の酒知ってます!何ちゅう酒です?言うてみなはれ!何?えっ?『白菊』。
プ〜ッ!しょうもな!ようそんなん飲んでるわ!大人が!女子どもがひな祭りの甘いベタベタの酒や!うまい事も…よう知ってます!百っぺら遍飲んでますわ!うまい事も何とも…しょうもない酒や!んなもん要らん。
え?うまい事も何とも…!珍しい事ない!よう知ってます!え?『要らんのか?』呼ばれまんがなあんた。
つきあいやがな飲まなんだらつきあい悪いな思われまっしゃろ。
ささっ入れとくんなはれ入れとくんなはれ。
ええ知ってます知ってます!珍しい事おまへん!百っぺら遍飲んでます!こんなもん何が珍しい。
ようこんなもんうれしい言うて飲んでまんなあ。
甘いベタベタの酒や。
しょうもない酒や。
アホちゃうか?ようこんなん飲んで。
別にうまい事あれへんがな。
よう知ってまんねんほんまに。
うまい事も何ともしょうもない酒や!アホみたいな…ほんまアホちゃうか?こんな酒飲んで喜んで。
しょうもない。
アホみたいなうまい事も…甘いベタベタアホちゃうかほんま。
うまい事…いや呼ばれまんがな。
おめでとうさんおめでとうさん。
よう知ってます。
百っぺら遍飲んでます。
うまい事も何ともしょうもない。
いや呼ばれまんがな。
しょうもないしょうも…」。
「しょうもな!ベタベタや!甘っ!ようこんなん飲んでるわ!アホ…」。
「甘〜っ!ベタ…」。
「あ〜っ!お代わり」。
「どないやねん!飲むねやったらなんぼでも飲んでくれたらええねんけどなあと鯛の刺身に茶わん蒸しウナギぐらいしかないねんけどもな。
あ〜お前につまんでもらおうと思っても何にもないねん。
そんなもんしかないねん」。
「旦さん何です?鯛の刺身茶わん蒸しえ?あとウナギ。
しょうもない。
そんなもんしかおまへんのかいな?私もう大概のもの食い飽きてまんねん。
日本国中旅して回ってまんねん。
珍しいもんばっかり食うて回ってまんねん。
なんぞ珍しいもんおまへんのか?なんぞ珍味てなもんおまへんのかい?」。
「何じゃて?珍味が食べたい?いきなり。
珍味からいくかい?珍しいもんあんねん。
うん。
珍しいもんある。
珍味あるで」。
「珍味どんなもんです?言うてみなはれ!」。
「大概珍しい。
お前さん知らんやろうと思う」。
「いや大概のもん知ってます。
何でも言うてみなはれ」。
「いやいやほんまに珍しいらしい。
何でもな長崎の友達が送ってきてくれたんじゃがな」。
「長崎!私この間まで行ってましたがな。
大概知ってます!どんなもんです?言うてみなはれ」。
「そうか?ほな言うてみようか。
いや多分知らんと思う。
珍しいらしいねんけどな。
あのな長崎名産…『ちりとてちん』っちゅうんやけどな」。
「知ってまんがな私!」。
「知っとるか?」。
「大好物でんがな!長崎で朝昼晩と食うてましたがな!うまいもんでっせあれ!けどねこのごろ偽物が出てきてねうまい事おまへんねん。
ほんまもんやないとおいしい事おまへん。
友達が送ってくれはった?ひょっとしたら偽物や分かりまへん。
私がほんまもんかどうか見てあげますわ。
こっち持ってきなはれ」。
「あ…そう。
へえ〜。
偽物が出てんの?へえ〜!そこまで言うか。
これ!あったじゃろ?ちょっと持ってきてくれるか?友達が送ってくれた長崎名産『ちりとてちん』。
竹がよう知ってるらしいわ。
長崎で朝昼晩食べてた言うて。
こっち持ってきてくれるか?はいおおきご苦労さんご苦労さん。
ありがとうありがとう。
おおけありが…。
こら!こら!ゲラゲラ笑いな」。
(笑い)「持ってきたらそれでええ。
奥へ入ってなさい。
奥へ入ってなさい。
えっ何?『これ食べるの見たい』」。
(笑い)「そこで見せてもらいなさい。
竹これやけどな」。
「えっどれです?あっ!これこれこれこれこれ!久しぶり〜!長崎名産『ちりとてちん元祖』。
ほんまもんやがなこれ!ほんまもんですわ!ほんまもんは『元祖』と書いてまんねん。
偽物は『本家』と書いてまんねん。
本家やないとおいしい事ない。
開けさしてもらいます。
いよっとしょよっ!ブハ〜ッ!臭〜っ!」。
「『臭っ』てお前さんよう知ってんねやろ?」。
「懐かしい臭いやわ!この臭い嗅いだら長崎の情景がパッパッパッと浮かびますわ。
ハハハッ。
オランダ坂」。
「ほんまかいな?おい」。
「オホッ!えらい…う〜っえらい臭いする!どうぞ旦さんオホッ!オエッ!旦さんどうぞお先。
えっ要らんの?喜ぃさんは?えっ?『要らん』。
何で?2人何で?臭い臭い?あかんたれやな!これ腐ってんのと違いまっせ。
これ発酵食品っちゅうんです」。
(笑い)「これやからオエ〜ッ!ほなお先頂きます。
よろしいか?いや大好物です!長崎で…うわ〜!頂きます。
大好きです。
ええ!けど珍味ですさかいそんなガツガツ食べるもんやおまへん。
お箸の先にちょっとこれで十分です。
ウエッ!大好物です。
ええいた…ウエッ!頂きます。
目ピリピリッと来ましたけどね。
しおりに書いてあると思います。
『ちりとてちんはまず目で味わえ』とこう書いてあります。
それから…ヘクション!鼻へツ〜ンと来ました!鼻へツ〜ンと来た時が食べ頃いわれてます。
お先いた…オエ〜ッ。
頂きます。
うわ…頂き…。
お〜っ!」。
「…おいしい〜!」。
「ほんまかいな?お前さん目から涙出てはるで」。
「涙出るほどおいしいですわ!」。
「そうか。
わしら食べた事ないけどな『ちりとてちん』って一体どんな味がすんねん?」。
「ちょうど豆腐の腐ったような味ですわ」。
(笑い)
(拍手)桂南天さんの「ちりとてちん」でございました。
どうでした?いや〜同じ演目でも時代とか人によって全然また違ってすっごく面白かったです!本人喜びますが。
声あげて笑いました。
初めてですか?南天さんの落語。
南天さんのは初めてだったので。
南光さんのお弟子さんですよ。
なるほど。
雰囲気似てますやろ?はい。
この「ちりとてちん」というタイトルけったいなタイトルやねんけどどっか耳に残ってません?NHKさんのドラマで…。
朝のドラマでやってましたね。
「連続小説」。
はい。
あのおかげで女性の落語家が増えたんです。
あれから。
いい事ですね。
また拝見してみたいです。
今からでも遅くはないですよ。
若手新人大型噺家。
えっ私が?はい。
もう若手じゃないので40代で。
米朝師匠春團治師匠に比べたら若手。
半分ぐらいや。
そうでございますね。
なんとか今から…。
紹介しますよええとこ。
いやいや座って見て笑う方で。
その方が楽ですかな。
はい。
そうでございますね。
分かりました。
今日はどうもありがとうございました。
というところで今回の「上方落語の会」これでお開きでございます。
それではまた!2014/10/24(金) 15:15〜16:00
NHK総合1・神戸
上方落語の会 桂二乗「子ほめ」、桂南天「ちりとてちん」[字]
▽「子ほめ」桂二乗、「ちりとてちん」桂南天▽NHK上方落語の会(26年10月2日)から▽ゲスト:アンミカ(モデル・タレント)、ご案内:小佐田定雄(落語作家)
詳細情報
番組内容
桂二乗の「子ほめ」と桂南天の「ちりとてちん」をお送りする。▽子ほめ:酒をおごってもらいたい男、年齢を若く言えば喜んで一杯飲ませてもらえると教えられる。友だちの家に子供が生まれたことを思い出し、ほめに行くが…。▽ちりとてちん・何事にも知ったかぶりをする男を懲らしめようと、ある食べ物を綺麗な器にいれ「長崎名物ちりとてちん」として男に出すと・・・▽ゲスト:アンミカ▽ご案内:小佐田定雄
出演者
【ゲスト】アンミカ,【案内】小佐田定雄,桂二乗,桂南天
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落語
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劇場/公演 – 落語・演芸
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