くらし☆解説「無国籍者をゼロに」 2014.11.19

生字幕放送でお伝えします岩渕⇒こんにちは。
きょうのテーマは無国籍者をゼロに国籍を持たない人たちについてです。
世界では国籍のない人たちが1000万人いるといわれ、日本でも500人以上がさまざまな問題に直面しています。
国連はそうした無国籍者を10年以内にゼロにする目標を掲げ世界各国でキャンペーンを始めました。
担当は二村伸解説委員です。
無国籍者が1000万人もいるというのに驚きました。
なぜ国籍を得られないんでしょうか。
二村⇒まず国籍とは何か、ということなんですが特定の国家に所属する資格なんですね。
国籍を得ることによって国から保護され政治的、社会的な権利が与えられます。
選挙にも投票できます。
通常は、親の国籍あるいは生まれた国のいずれかの国籍が得られるんですが民族や宗教差別、そして、親の事情などによって、生まれたときに国籍を得られないケースまた国家の消滅や、政変などによって国籍を失ったケース、というのがあります。
こういう人たちが無国籍者と呼ばれます。
この人物は誰だか分かりますか?アインシュタインですか?そうなんです。
アインシュタインもドイツ国籍がなくなったあと5年間無国籍者だったんです。
現在世界では国籍がない人が1000万人そして10分に1人無国籍者が生まれていると言われています。
増え続けているんですね。
無国籍者が多いのはミャンマーやアフリカのコートジボワールやタイなんです。
こうした世界の無国籍者をゼロにしようと国連難民高等弁務官事務所は今月世界各国でキャンペーンを始めまして日本でも写真展が開かれているんです。
こうした写真が展示されているんですがミャンマーのロヒンギャと呼ばれるイスラム系の少数民族の男性です。
国民として認められずに土地を没収され移動や教育の自由も認められていないんです。
多くが貧困に苦しんでいまして船で周辺の国々に逃れているんです。
イラクの女の子ですクルド人の一部など国籍を認められていない人たちがイラクやシリアに大勢います。
ウクライナの夫婦です。
ソビエト連邦の崩壊によって多くの人たちが国籍を失って今でも60万人が国籍を持てないままです。
国籍がない人たちは、どんな問題に直面しているんですか。
どの国からも国民として認められていないので基本的人権や自由が保障されていません。
外国でトラブルになっても守ってもらえません。
子どもたちは学校に行けなかったり仕事に就くのも簡単ではないです。
生活保障を受けられず病気になっても治療を受けられないという人が世界には大勢います。
深刻な状況ですね。
先週来日したグテーレス高等弁務官に話を聞いたんですが日本も無国籍の問題に積極的に取り組んでほしいと政府に要望しています。
想像するといかに大変か分かりますね。
無国籍者は日本にもいるわけですよね。
そうです。
法務省の発表ですと、ことし6月現在で599人に上っています。
日本人の親が離婚などの理由から子どもの出生届けを出さなかったために国籍がない人という問題がニュースで取り上げられましたが、この場合は戸籍がない人です。
この場合は戸籍がなくても日本人であるので無国籍ではないんです。
日本で暮らす無国籍者は、日本で生まれた、難民あるいは難民認定を待っている人たちの子どもあるいは、母国自分の国が消滅してしまった人たちなんです。
さらに在留資格がないために子どもの出生届けを出さずに子どもが無国籍者になってしまったケースもあります。
実際には、この数よりも多いのではないかとみられています。
日本でも国籍の問題に取り組んでいるNPOの代表で早稲田大学准教授の陳天璽さんもかつて無国籍者だった方です。
多くの苦労があったと話していました。
出入国は大変でした。
毎回毎回ビザを取得したり入国するときどこにも入れないこともあった。
就職の面でも壁はありましたね。
海外に行くような仕事に就きたいというときもそういったツールが自分にないので就職することは、難しい。
生まれてきて、その人たちには生まれてきたからには権利を与えられるべきだと思うんですよね。
無国籍だからといって差別を受けるのではなくその人たちが生きているその人たちが存在すること自体まず認めていく。
世界に1000万にいるという無国籍者をゼロにすることはできるんでしょうか。
グテーレス高等弁務官は難民問題は紛争が原因だけに解決が難しい。
ただ無国籍の問題は各国の制度の改正によって解決できると10年でゼロにすることは決して不可能ではないと話しています。
とはいえ簡単ではないですね。
国籍を持つ権利は世界人権宣言あるいは、子どもの権利条約などによって規定されているんですが法律によって国籍を得られない人もいれば、政治的な理由で国籍が認められない人個人的な事情で国籍がない人もいるわけです。
ただ子どもたちには何の罪もないわけですから、普通に学校に行って病気になったら病院で手当てを受けられるように法律や社会制度の整備が求められています。
日本では何ができるでしょうか。
まずは理解することです。
先ほど紹介した無国籍者の写真展はきょうまで衆議院議員会館で開かれていましてあさって21日から羽田空港国際線ターミナルで開かれます。
無国籍者の問題は日本ではなじみがないだけに、まずは問題を多くの人に知ってもらおうと開かれています。
初めて無国籍者のことを知り何とかしなくてはならないと思った、と話す議員もいました。
同じ省庁でも部局や担当者によって無国籍者に該当するかどうか解釈や扱い方が異なっているのが現実です。
もっと認識を共有して一本化することが必要だと思います。
無国籍者を守るための法整備を求める声も聞かれます。
無国籍者を保護するための条約は2つあります。
1954年に発効した無国籍者の地位に関する条約もう1つが1961年の無国籍の削減に関する条約です。
上のほうは82の国、下は60の国が加入していますが実は日本はどちらの条約にも加入していないんです。
どうして加入していないんですか。
法務省や外務省に聞いたんですが日本は無国籍だからといって問題が起きているわけではないんです。
条約に加入する必要性がないというのがその理由だというんです。
日本では無国籍であっても在留資格があれば通常の行政サービスが、受けられるわけです。
ただ現実には差別に苦しむ人結婚を諦めざるをえなかった人もいるんですね。
国籍がなく困っている人がいるのも、事実です。
これまでそうした声がどこにも届かなかったために社会が動かなかったということが言えるんじゃないでしょうか。
世界の無国籍者をなくすための取り組みが始まったこの機会に日本でもこの問題に目を向けてほしいといった声がいろんな方から聞くことができました。
まず実態を調査し問題点があれば改善していくことは、もちろんなんですが国際的な取り組みを後押しするためにも、条約への加入を、検討することも意味があるのではないでしょうか。
子どもを救うためにも市民の側から声を上げていくことが重要ではないでしょうか。
二村伸解説委員でした。
次回のテーマです。

救助や介護に利用できるロボットに応用することなどを目指している人工知能についてです。
担当は、三輪誠司解説委員です。
2014/11/19(水) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「無国籍者をゼロに」[字]

NHK解説委員…二村伸,【司会】岩渕梢

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出演者
【出演】NHK解説委員…二村伸,【司会】岩渕梢

ジャンル :
ニュース/報道 – 解説
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
情報/ワイドショー – 健康・医療

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