もういいかい?「凄ワザ」だよ。
今夜はこれ。
だるま落としがなぜ難しいのかご存じだろうか。
その理由は胴体を抜く時に掛かる「摩擦」にある。
だるまを崩さずに落とすには摩擦を限りなくゼロに近づけなければならない。
実はこの摩擦あらゆる機械の動きを妨げるやっかいもの。
もしも摩擦がゼロに近づいたなら…。
例えばエンジン。
ピストンなどの抵抗が減り耐久性や燃費が飛躍的に向上する。
今回挑むのは重さ110キロ鋼鉄製のだるま落とし。
桁外れの摩擦に打ち勝て。
表面加工の達人たち!金属を自在に削る業界屈指の砥石メーカー。
どうだ?ツルツルだ。
対するは最先端のプラズマ技術で摩擦を魔法のように消し去るコーティング会社。
その滑り横綱級。
あ〜。
残ったすごい!難易度マックスのだるま落とし。
完全制覇なるか?ドキドキするぜ!さあ始まりました「超絶凄ワザ!」。
今回は「だるま落とし」という事で。
そうなんです。
ねえ。
そんなに真剣に考えた事なかったんですけどそう言われたらやっぱりそれは摩擦ですよね。
今日は早速対決の舞台をご覧頂きましょう。
こちらです。
「超ヘビー級だるま落とし」!鋼鉄製のだるまです。
10段ありまして…。
超ヘビー級のものを用意しました。
更にこの鋼鉄製のだるまを打ち落とすためのハンマーも今回作りました。
名付けまして…。
これはね…。
ごめんなさい。
入らない言葉ってあるんですよ。
すいません。
更に今回はこの鋼鉄製のだるまを落とすためのハンマーも作りました。
すいません。
なかなかだるま落とさせてくれないですね。
すいません。
いいですいいです。
ではこの鋼鉄製のだるまを落とすために作ったハンマー…。
仰々しい名前をつけて頂いて。
恐れ入ります。
さぞかし覚えにくかったでしょうね。
はい。
このエアバズーカですけれども鋼鉄製のだるまを水平にそして一定の力で落とす事ができます。
今回のこの鋼鉄製のだるまを摩擦がある状態で打ち抜こうとすると一体どうなるのかご覧頂きます。
いよ〜っ!こうやって打っていきます。
今ちょっと見て頂きたいんですけれども。
持っていかれてますね。
そういう事なんです。
ハンマーの当たっただるまの一段上のだるまが引っ張られているんですね。
これが摩擦なんですね。
今回の対決では表面を加工する事でいかに摩擦が減らせるかを競う。
摩擦がゼロに近づくほどだるまはずれずまっすぐに落ちるのだ。
それでは挑戦者の登場だ。
まずは…。
愛知県南部海沿いの工業地帯にその会社はある。
金属を削る「砥石」を作る日本有数のメーカーだ。
アルミダイヤモンドなど鉱物の粉を混ぜ合わせる事で4万種類以上の砥石を作る事ができる。
その砥石であらゆるものが滑らかに…。
例えば鉄道の線路。
表面を滑らかに削り騒音や振動を大幅に減らしている。
更に激しくこすれる工作機械のレールの溝。
凹凸をなくす削りで摩擦半減につなげ省エネを実現した。
今回摩擦ゼロに挑むのは9人の精鋭たち。
開発の中心となるのは…。
ツルツルの表面作りに14年の技術者人生を捧げてきた。
目標は砥石の力でかつてない滑らかさを生み出すこと。
チーム一丸でだるまに挑め!続いての挑戦者はこちら。
米軍基地に程近い座間市に本社を構えるこの会社。
従業員150人。
コーティングすなわち薄い膜で摩擦を減らす技術が売りだ。
その滑りお手並みを拝見。
右がコーティング有り。
どうだ?段違いだろう?この技術金属加工用刃物にも応用されている。
コーティングする事で耐久性が何と3倍に。
このコーティングチームを率いるのは…。
営業開発企画部のエース…人呼んでコーティング番長。
まずはうまくいかない事には話にならない。
難しい仕事ほど闘志を燃やす男だ。
2組の皆さんが今回は対決を繰り広げます。
さあまずは「チーム砥石」この話を伺われて…?だるまを落とすって子供の頃しかやった事なかったものですから加工してどうにかなるものかなと思って初めは全然自信なかったですね。
さあ対します「コーティングチーム」。
「たかがだるま落とし」という感じで思ってたんですけどもやるたびにいろいろな難しさが出てコーティングで何とかしてやろうという最後は自分との戦いみたいな感じですね。
そうですか。
教授どうですか?このだるま落としというのは?これは実は奥が深くてですね。
実はねこの普通に木でやる分のですねこれたたいてみれば分かるんですけど実はね約400倍くらい摩擦があるんで簡単には抜けないんですねこれ。
400倍あるんですかこれで?ええ。
へえ。
勝負の鍵を握るのは1段目。
100キロ分の重さが掛かり摩擦が最大になる。
ここをうまく抜くのが最も難しい。
加工できるのは厚み0.1ミリまで。
潤滑油を使用する事もできる。
今回両者は鋼鉄製のだるまに挑みます。
摩擦ゼロは実現するんでしょうか挑戦が始まります。
開発初日。
「チーム砥石」はだるまの動きを丹念に研究していた。
今回挑む摩擦はこのだるまの400倍。
かなり手ごわい。
早速開発の美濃島があるアイデアをひねり出した。
美濃島が提案したのは…金属同士がこすれる面積が少なくなるほど摩擦は小さくなる。
そこでだるまにスケートの刃に見立てた丸い出っ張りを作りその頂点だけでだるまを支える。
更に土台となる面はリンクのように真っ平らに削りそこに潤滑油の膜を張る。
こすれる部分の面積や凸凹を減らし滑らせようと考えたのだ。
摩擦ゼロを目指す前人未踏の挑戦。
削りの達人岩田誠司に加工が託された。
今回加工が許されているのは厚さ0.1ミリまで。
ミクロの世界にスケートの刃を正確に削り出す。
そのためには深さ0.09ミリでかつゆがみのない曲線を描く精密な砥石が必要となる。
さあ砥石作りの始まりだ。
岩田が頼るのはモニターの画像。
そして砥石が削れる音だ。
(砥石が削れる音)音の変化で削り具合を判断。
両手のハンドルを操り1,000分の1ミリ単位で調整する。
(砥石が削れる音)20分後スケート用の特製砥石が完成した。
この砥石でだるまを削ってみると…。
見よ!わずか0.09ミリの間に見事な曲線を削り出した。
狙いどおりだ。
お次はスケートのリンク。
担当は開発の美濃島だ。
極限まで平らに削ると鏡のように金属が光る鏡面加工。
実は美濃島は世界に先駆け砥石でこの加工を実現したパイオニアだ。
表面の凸凹を限りなく減らせばスケートも滑るはず。
加工すること3時間。
何と凸凹を50万分の1ミリにまで抑えてみせた。
用いるのは砥石のみ。
驚異の精度で金属の表面を加工する凄ワザだ!開発開始から10日目スケート作戦テストの日。
試験装置は手作りの振り子型ハンマー。
本番並みのパワーでだるまを打ち抜く。
鏡面加工したリンクに油を塗っていよいよ実験。
本番を想定しておよそ100キロ分のおもりを載せる。
だるまに極めて大きい摩擦が掛かる。
果たして抜けるのか?撃沈。
やはり1段目は難しい。
美濃島さん「チーム砥石」1段目がなかなか難しそうでしたね。
そうですね撃沈してましたね。
1段目がやっぱり一番難しいですか?一番難しいですね。
背が高いうえにですねすごく重たいですから…。
抜くのと傾かないと両方やらないといけないので…。
しかしあれこうやって手作業で。
そうでしたね。
あんな…あれ感覚でやってるんですか?感覚ですね。
本当に0.09ミリって出てたじゃないですか?はい。
あれ感覚なんですか?感覚ですね。
すごいですねそれって。
相手の作業見られていかがですか?いやすごいと思いましたよ。
でも1段目がなかなか…。
それだけでは抜けなかったです。
一方コーティングチーム。
届いただるまを詳細に検討する。
超ヘビー級のだるま落とし。
コーティングチームにとっても未知の領域だ。
リーダーの岡部がある作戦を打ち出す。
平らに見える金属の表面。
実は不規則な凹凸が並んでいる。
この状態でだるまが載ると一部分にのみ荷重が掛かり変形してしまう。
するとこすれる面積が増えて摩擦が大きくなってしまうのだ。
そこで岡部は高さが均一で硬い凹凸を作る事を目指す。
これなら変形せずこすれる面積も増えない。
理想の凹凸を作るにはまずは土台となる金属を極限まで平らに仕上げなくてはならない。
一見無造作に見えるこの作業。
しかし1,000分の1ミリの出っ張りも見逃さず削り取る必要がある。
極めて繊細な感覚が要求されるのだ。
ここからがいよいよコーティング。
この窯でだるまを変身させる。
コーティングの原料はこの金属の塊。
大きな電流によって発生させた3,000度の熱でこいつを溶かし蒸発させる。
これにより金属が原子レベルの小さな粒となる。
この時だるまに電圧を掛けその小さな粒を引き寄せる。
すると粒が均等に降り積もり硬く高さのそろった凹凸ができるという。
これが究極に滑るコーティングだ。
お手並み拝見。
まずはコーティング無し。
そして…。
お見事!しかし岡部はこれだけでは満足しない。
更なる滑りを生み出すための秘策を用意していた。
その名も…実は金属を原料とするコーティングはごくわずかだが互いにくっつこうとする性質がある。
岡部はこのわずかな力さえ嫌った。
もう一層コーティングしてその力を遮ろうとした。
原料に用いるのは金属とはくっつきにくい炭素だ。
6時間かけてダブルコーティング完了。
一体どれだけ滑るのか。
いよいよだるまを試し打ち。
最難関の1段目は抜けるのか。
お見事!抜けた!コーティングの力で桁外れの摩擦に打ち勝ったのだ。
このだるま転ばない。
さあ今のところ「コーティングチーム」がちょっと一歩リードといった感じですけれども。
そうですね。
やっぱりどこか余裕が感じられました。
被膜番長。
こっちは抜いている訳ですからね。
この時までは余裕ぶっこいてました。
あれ?このあと何かあるんですね?まあそう簡単にいかないのがこの「凄ワザ」ですからねいつも。
スケート作戦が失敗した「チーム砥石」。
その後もさまざまな形状で実験を続けていた。
しかしまだ1段も抜けていない。
そんな中思わぬ形で突破口が見つかる。
あのスケートだるまだ。
ある簡単な方法で見違えるほど滑るようになったのだ。
一体何をしたのか。
今まではだるまを刃の方向に動かしていた。
すると…。
刃の跡が残る。
油の膜が切れているのだ。
一方刃と垂直の方向に動かしてみると…。
油が切れていない。
だるまが油の膜の上を滑っている証拠だ。
垂直方向が滑る理由はこうだ。
「チーム砥石」が作った刃の先端は曲面になっている。
だるまが動き出すと隙間から油が流れ込みスムーズに滑り続けるのだ。
復活!スケート作戦!再び最難関の1段目に挑む。
321!ついに抜けた!見よ!この滑り。
最難関の1段目両チームともにクリア!しかし次回。
摩擦ゼロを目指す両チームを怪現象が襲う。
これは一体何なんだ?更に同じ加工なのに滑りが違うだるま出現。
技術者たちが行き着く先は?次回超ヘビー級だるま落とし完全決着。
究極の滑りを目撃せよ!この世に滑って面白い事ってあるんですね。
2014/10/23(木) 22:55〜23:20
NHK総合1・神戸
超絶 凄(すご)ワザ!「抜け!超ヘビー級だるま落とし〜“究極の滑り”対決〜」[字]
今回は“究極の滑り”を目指すだるま落とし対決!総重量110kg、鋼のだるまをずれずに落とせ!金属を自在に削る砥石メーカーと、滑る膜を操るコーティング会社が激突!
詳細情報
番組内容
機械が動く時、あらゆる部分に発生する“摩擦”。極限まで減らすことができれば、エンジンの燃費向上や半永久的に使える人工関節など、夢の技術が可能に。そこで今回は、重さ110kgの鋼鉄製“超ヘビー級だるま落とし対決”。だるま落としは胴体一つ一つの摩擦が少なくなるほど、ずれずにまっすぐ落ちる。挑むのは、金属の表面を自在に削る砥石メーカーと、スベスベの膜を操るコーティング会社。“究極の滑り”は実現するか
出演者
【出演】挑戦企業…ニートレックス,日本コーティングセンター,専門家…川村康文,【司会】千原ジュニア,池田伸子,【語り】福島泰樹
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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