(実況)さあ頑張れ!決まった〜!日本銅メダル!ロンドン・オリンピックで28年ぶりの銅メダルを獲得したバレーボール女子日本代表。
しかしその立て役者10年以上代表のセッターを務めてきた竹下佳江選手は去年引退を表明しました。
次のリオデジャネイロ・オリンピックでの悲願の金メダルに向けて新生日本代表を担う若き大型セッターが現れました。
(場内アナウンス)19番宮下遥。
身長は竹下選手より18センチ高い1メートル77センチ。
高さを生かした速いトス。
相手の守備を翻弄します。
更にこれまでの日本のセッターにはなかった大きな武器…ネット際での強さも際立ちます。
日本のバレー界にも久しぶりにブロックのいいセッターが入ってきたなと。
高さがある分すごく打ちやすいです。
今年8月日本代表はバレーボール界の常識を覆す新戦術ハイブリッド6を打ち出しました。
中心選手にボールを集めるのではなく全員がスパイクを打つ超攻撃的な戦術です。
宮下選手には5人のスパイカーを自在に操る司令塔の役割が求められます。
しかし自ら前に行けない性格のため先輩スパイカーへの指示がうまく出せません。
(河本)命令するんだよそいつに!自分がスパイカーに寄っていけないので。
そういうタイプなので。
高度なプレーへの戸惑い。
連日の過酷なトレーニング。
ギリギリまで体を追い込みます。
そして初めての大舞台。
オリンピックの試金石となる世界選手権に挑みました。
世界一を目指して。
セッター宮下遥選手の成長の日々を追いました。
バレーボール女子V・プレミアリーグ唯一の市民クラブ…宮下選手は5年前15歳の時からこのチームに所属しています。
メインスポンサーを持たないため運営費は限られています。
市民の支えが力になっています。
小さなクラブから世界を目指す宮下選手は市民の誇りです。
絶対にかなえたい夢は何ですか?
(一同)お〜!え〜っと…バレーボールが終わったらすてきなお嫁さんになりたいです。
(笑いと拍手)皆さんバレーボールでの夢を聞きたいですよね?
(拍手)バレーボールでは世界一の選手になりたいです。
(拍手)宮下選手の最大の特徴は1メートル77センチの身長です。
この高い身長が攻撃に速さをもたらします。
身長が低いセッターの場合スパイカーまで長いトスが必要です。
しかし宮下選手は高い位置からトスを上げる事ができます。
スパイカーまでの距離が短くなり攻撃のスピードが速くなります。
更に宮下選手の武器は平行トスです。
一般的に背が低いセッターのトスではスパイカーが打つポイントはこの一点です。
宮下選手のトスの場合どのポイントでも打つ事が可能です。
相手のブロックを惑わします。
高い所から速く出してくれるので見やすいっていうのはあります。
同じ視界からトスが来るイメージ。
昨シーズンはVリーグの優秀選手ベスト6にも選出。
今や日本を代表するセッターです。
三重県で生まれた宮下選手。
ママさんバレーをやっていた母親の影響で3歳の頃にはバレーボールで遊んでいました。
小学校6年生で既に1メートル70センチを超える長身。
このころのポジションはスパイカーでした。
自分で言うのもあれなんですけど打ったら決まるし何しても全然うまくいくし。
自分ができたらいいやとかそういう考えしかなかったんですけど。
周りの事あんまり考えてないし。
スパイカーの性格だとは思います。
中学校に入学後転機が訪れます。
岡山シーガルズの河本昭義監督との出会いです。
そこで意外な言葉をかけられました。
「お前はセッターに向いている」。
決め手はレシーブの反応のよさでした。
レシーブがいいっていう事はイコール読みができるという事ですから。
だからまあ基本的なものは十二分にあるのかな。
クレバーな部分は最初から備わってるからその辺を生かしていけばこれは面白いなとは思いましたね。
思いも寄らないセッターへの転向。
15歳の若さで岡山シーガルズの選手に抜てき。
戸惑いだらけのスタートでした。
Vリーグ開幕戦いきなり出番がやって来ます。
最年少記録を更新する15歳2か月でのデビューです。
(実況)今中学3年生の宮下がコートの中に入りました。
しかしトスがうまく上がりません。
スパイカーとの呼吸も合いません。
更に…。
レシーブで味方選手と激突。
周りの選手を見る余裕がなく飛び込んでしまいました。
(実況)恐らく前歯ですね。
でももう夢中ですね。
結果が出ない日々。
河本監督からじきじきの指導を受けながらセッターとしての技術そして戦術眼を身につけていきました。
自分が高い集中をした時には自分のゾーンっていいますけどそういう世界に入ってすごく大胆にやりますよね。
この才能にはかけるべきだと思いますね。
頑張りきればお前は世界一になれる。
世界一のセッターになれる。
信用して2〜3歩動く練習をしてればもっといけるんじゃない?世界を目指す宮下選手にはどうしても乗り越えなければならない壁があります。
(河本)あれを全力で跳ばずにあそこに行けるゴールって…。
セッターはプレー中も頻繁にスパイカーに指示を出さなければいけません。
スパイカーは皆年上の先輩。
気兼ねしてしまいます。
ラリーが続いたこのプレー。
宮下選手はサイドの栗原恵選手にトス。
しかし栗原選手には既にブロックが2枚ついていました。
実はトスを上げる時中央には相手のブロックはいませんでした。
本来はセンターにいたこの選手に指示を出してスパイクを打たせる必要があったのです。
この人たちは頭が働かない。
キャリアがない。
いいですか?あんた英才教育されてるんだから。
できない人はできない!セッターに転向して僅か5年。
大きな試練と向き合っています。
ふだんは体育館と寮を往復する毎日の宮下選手。
この日は先輩に誘われて外出しました。
じゃあアイスカフェラテ。
(店員)大きさがSMLございます。
Sで。
うん。
おいしい。
若い子にしてはあまり遊ばないというのか…。
そうですね。
あんまり出ずに寮で休んでる事の方が多い。
一人で来る事の方が多いかもしれないです。
面倒くさい。
自分の好きな所に好きなだけいれるとか好きな所に行きたい時もあるので合わせてもらうのもすごく申し訳ないし合わせるのもちょっと面倒くさいかなみたいな。
女子になりました。
匂いまひ。
6月宮下選手は日本代表の合宿に招集されました。
いかに点数取るか。
点数多く取れるように…。
チームの今年最大の目標は3か月後に迫った…リオデジャネイロ・オリンピックを占う大事な大会です。
火の鳥…。
(一同)ニッポン!悲願の世界一へ。
真鍋監督はこれまでのバレーボールの常識を覆すある秘策を温めていました。
通常バレーボールではポジションごとに役割が分かれています。
これまでの日本代表の場合攻撃をサイドのウィングスパイカーに集める戦術をとってきました。
しかし前回のロンドン・オリンピック世界ナンバーワンのブラジル戦。
日本のサイド攻撃は完全に読まれていました。
(実況)そのまま入っている。
さあ取りたい。
江畑…ブロック!真鍋監督の新しい戦術では…セッターを除く全員がスパイカーです。
レシーブが上がると全員がスパイクを打つ体勢に入ります。
誰が打つのか相手のブロックに狙いを絞らせません。
6人全員で攻撃を繰り出す新戦術名付けて…半年間いろいろ考え抜いた末バレーボールっていうのは相手よりも先に25点15点を3セット取ればいいスポーツですよね。
ですからそこです。
同じ事をやってても多分間違いなくオリンピックにも行けないと思います。
ハイブリッド6成功の鍵は宮下選手がこれまで以上に高度な役割を果たせるかどうかにかかっています。
5人のスパイカーを自在に操る判断力と高いリーダーシップが欠かせません。
しかしスパイカーは木村沙織選手など国際経験豊かな選手ばかり。
最年少の宮下選手。
なかなか自分から声をかけられません。
(取材者)今回はいけそうですか?無理です。
怖いです。
(取材者)無理ですか?はい。
寄ってくのが本当に好きじゃないので…。
高さのある宮下選手には更に重要な役割が与えられました。
これまではブロックを中央で専門に行うミドルブロッカーがいましたがハイブリッド6ではいません。
セッターの宮下選手がその役割も担います。
ブロックのあとすぐにトスを上げなければなりません。
ジャンプとダッシュの繰り返し。
下半身に大きな負担がかかります。
もちろんラリーが続いたあととかは本当に…ヘロヘロになるぐらいきつい。
チームの勝敗を左右する重要な役割を任された宮下選手。
しかし自分が日本代表を引っ張っていこうという気持ちにはまだなれないでいました。
代表合宿は1か月。
短期間にスパイカーとのコンビネーションを合わせなければなりません。
しかし…。
スパイカーの長岡選手と位置取りが重なりトスの体勢が崩れます。
更にこのプレー。
またも長岡選手と。
声をかけられず自分でトスを上げられませんでした。
すかさず戦術の確認をします。
宮下選手は黙って聞くばかり。
ところが長岡選手が意見を求めたその時。
自分の考えを思い切って口にしました。
長岡選手との息が徐々に合い始めました。
なかなか自分から行けなくて失敗したところがあったのでちょっと近づけないオーラがあってもひと言ふた言でも自分から言ってみようと…。
世界選手権まで1か月。
その前哨戦となる大会が開かれました。
ハイブリッド6の仕上がりを見る絶好の機会です。
初戦。
日本より平均身長で12センチ高いロシア戦。
(実況)長岡!5人が同時に走り込み相手のブロックに的を絞らせません。
更に…。
(実況)ブロック!はまった!はまった!
(実況)大野か石井か!ここから日本は4連勝。
(実況)日本どうやってマッチポイントを最後の1点を取るか。
長岡だ!順調に勝ち進むかに見えました。
優勝を決める最終戦の相手はオリンピック2大会連続金メダルのブラジルです。
身長1メートル96センチ最高到達点3メートル16センチミドルブロッカーのタイーザ選手が立ちはだかります。
ハイブリッド6で世界の頂点をねらえるのか。
その成果が試されます。
ライトに上げたトスは2枚ブロックに捕まります。
レフトでも。
センターでも。
どこに上げてもブロックが2枚つかれてしまいます。
ハイブリッド6。
全く歯が立ちませんでした。
銀メダルっていう事は上が目指せるのでもっと頑張ろうって火が付きました。
まずは世界選手権でこの悔しさをぶつけたいです。
世界選手権での巻き返しに向けて残された時間は3週間。
相手のブロックをどうすれば崩せるのか。
日本代表は世界トップクラスのブロッカーの特徴を細かく分析していました。
例えばブラジルのミドルブロッカーのタイーザ選手。
サイドへ素早く移動しネットをはるかに越える高いブロック。
移動開始からブロックの最高地点に達するまでの時間僅か1.12秒。
世界トップクラスのブロックを打ち破るにはトスを上げてからスパイクを打つまでの時間を1.1秒以内にするしかありません。
2人ブロックをバサッと来られるとやはり今の日本の選手誰が打っても相当厳しいでしょうね。
ですから少しでもセッターからのトスを速く。
少なくともやっぱり1.1秒以内にはセッターがトスを上げて打っとかないと相手の高いブロックを…2人を分散できない。
宮下選手はより速さを求める練習に取り組みました。
しかし…。
速さを追求すればするほどトスが微妙にずれスパイカーとのタイミングが合いません。
更に全員に同じトスを上げればいい訳ではありません。
ジャンプ力や助走の距離が違うため打ちやすい位置が違います。
何度も何度もトスを上げそれぞれの特徴を丹念に探ります。
世界選手権が目前に迫ったこの日全体練習を離れ一人練習する宮下選手の姿がありました。
スパイカー一人一人のプレーをイメージしトスを上げ続けます。
セッターとしてチームを引っ張る自覚が芽生え始めていました。
仲間のためを思う気持ちとかそういうものが絶対試合の大事な一本とか勝負どころで自分たちのいい力に変わるなって思ったので…。
9月。
頑張って下さい!ありがとうございます。
宮下選手は世界選手権の舞台イタリアに出発しました。
世界のバレーボールファンが注目する4年に一度の祭典世界選手権。
(「君が代」)世界一を目指す新生日本。
真価が問われます。
宮下選手の高速トスから次々と得点が決まります。
世界ランキング3位の日本。
1次ラウンドを突破しました。
2次ラウンドの初戦相手は世界ランク23位のクロアチアです。
(実況)立ち上がりに3連続ポイントがありました。
前に落とした。
しかし宮下選手の様子がいつもと違います。
(実況)どうだ?あ〜止めた〜。
着地でよろめく宮下選手。
左足にサポーターが巻かれていました。
(実況)さあ宮下誰を使うか?木村。
トスがうまく上がりません。
(実況)日本同点に追いつかれました。
セットカウント2対3。
まさかの敗戦です。
日本はここまで4勝3敗。
あと1つ落とせば2次ラウンドでの敗退が決まるところまで追い込まれました。
ハイブリッド6を完成させるためのハードなトレーニング。
連戦に次ぐ連戦。
足に疲労がたまっていました。
(手拍子)世界ランク4位高さが武器のイタリア戦。
宮下選手はスタメンを外れました。
第1セットを落とし第2セットも6点をリードされた場面。
宮下選手がコートに入ります。
しかし…。
イタリアの高さを前に第2セットも落としました。
後がなくなった第3セット。
序盤からリードを許す苦しい展開です。
宮下選手痛む左足で飛び込みます。
こぼれ球にも。
左足で。
宮下選手粘りを見せます。
(実況)平行トス!これは速い攻撃でした。
しかし…。
(実況)石井のスパイクはブロック!23対15。
残り2点でゲームセット。
ボールは宮下選手へ。
全員が動き出します。
痛む足で渾身のジャンプ。
選んだのはバックトス。
ミドルブロッカー追いつけません。
ハイブリッド6の理想の形がついに出ました。
最後まで粘る日本。
惜しくもアウト。
敗退しました。
すいません。
自分の体も全然もたなくてすごい…いつケガしてもおかしくないような状態の足ですごいもやもやしながらだったんですけどこういう大舞台を経験させてもらって…結果は出なかったですけど結果以上の経験っていう財産を日本に持って帰れるのはすごいよかったと思います。
帰国した宮下選手練習を再開していました。
日本代表の次の戦いは来年8月。
リオデジャネイロ・オリンピックの出場権を懸けた挑戦が始まります。
スパイカーだったらもう本当100%ここにはいないと思うしもしかしたらバレーもしているかしていないか分かんないくらいだったけどセッターになって本当に世界が広がったと思います。
金メダル取りたいです。
バレーボール日本代表宮下遥選手二十歳。
世界一のセッターを目指して金メダルへのトスを上げ続けます。
2014/10/23(木) 01:55〜02:40
NHK総合1・神戸
アスリートの魂「世界一へのトス バレーボール 宮下遥」[字]
バレーボール日本代表の若きセッター、宮下遥選手。武器は身長177センチの高さを生かした高速トス。悲願の五輪金メダルのキーマンとして期待される。20歳の挑戦に密着
詳細情報
番組内容
リオ五輪で金メダルをとるため、今、宮下遥選手が挑んでいるのは、相手のブロックが整う1.1秒以内の攻撃を可能にする、速さと正確さを兼ね備えた“止まるトス”だ。正確なトスはアタッカーの打ちやすい位置で失速し止まっているように見えるという。真鍋ジャパンが掲げるハイブリッド6では、目まぐるしくポジションを変えるアタッカーを自在に操る戦術にも挑む。世界一を目指す宮下選手の新たな挑戦を追う。【語り】萩原聖人
出演者
【語り】萩原聖人
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – スポーツ
スポーツ – その他の球技
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