ハートネットTV「いま、伝えたいこと〜第83回全国盲学校弁論大会 前編〜」 2014.10.22

今月3日茨城県水戸市に集まった笑顔の学生たち。
全国盲学校弁論大会の出場者です。
地区大会を勝ち抜いて緊張の大舞台に挑むのは9人。
視覚障害とともに生きる不安や葛藤そしてこれからの夢をスピーチします。
それぞれ制限時間の7分の中にどんなメッセージを込めたのでしょうか。
2日にわたってお送りする第83回全国盲学校弁論大会。
今日は優秀賞5人のスピーチをダイジェストでお伝えします。
(拍手)大会のトップバッターは…内気な性格で人と話す事が苦手だった豊澤さん。
学校の文化祭をきっかけに言葉で伝え合う事の大切さに気付いた体験を語ります。
演題は…僕は16歳の10月中心視野が欠ける病気レーベル病を発症しました。
当時僕は介護士保育士を目指して名古屋福祉専門学校で福祉の勉強をしていました。
突然下がりだした視力の事を誰にも言う事ができず一人悩む日々が続きました。
何度もやめてしまおうかと思いましたが毎日担任の先生が「頑張れ」と声をかけてくれたおかげでなんとか3月まで通う事ができました。
そして2013年4月僕は名古屋盲学校に入学してきました。
再び一から高校生活をやり直さなくてはならない事に不安を感じてました。
しかも僕は小さい頃から人前で声を出して言葉を伝える事が苦手だったので友達ができるか環境に慣れる事ができるか心配な事がたくさんありました。
なかなか自分から話せずにいると周りの友達や先生方が積極的に話しかけてくれたおかげで少しずつ自分からも話せるようになりました。
充実した学校生活を送れるようになった頃僕にとって挑戦しなくてはならない事ができました。
それはクラスで決まった文化祭の劇です。
みんなで練習する中自分だけ大きな声が出せずにいると先生から「会場にせりふが聞こえないと内容が伝わらないので大きな声が出せないならあなただけマイクを使いますよ」と言われてしまいました。
自分だけマイクを使うなんて絶対に嫌だと思ったので大きな声を出せるように一生懸命練習しました。
そして文化祭当日はとても緊張しましたが今までで一番大きな声で最後までせりふを言う事ができました。
劇終了後もいろいろな人から声をかけて頂き達成感を味わう事ができました。
僕は言葉には力があると思います。
なぜなら言葉によって人の気持ちや行動が左右されるからです。
文化祭の練習で「マイクを使う」という事を言われなければ大きな声で演じる事はできなかっただろうし入学当初にクラスのみんなや先生方が積極的に話しかけてくれなければいまだに自分から話しかける事に抵抗があったかもしれません。
落ち込んでいる時に励まされたら立ち直る力となり心が折れそうな時に言われたひと言で更に傷つく事もあります。
だから言葉には力があるし大切なのだと思います。
これからは皆さんからもらった言葉の力を生かして僕が皆さんに言葉の力を与えていけるように頑張っていきたいと思います。
まずは最初の一歩皆さんに感謝の気持ちを込めていつもありがとう!ご清聴ありがとうございました。
(拍手)次は…高校1年の秋から生徒会長を務めている塩塚さん。
その活動を通して見つけた仲間との関わり方についてユーモアたっぷりに語ります。
演題は…皆さんは陰険という言葉を知っていますか?辞書で引くと「表面はよく見せかけて陰でこっそりあくどい事をする様子」とあります。
なぜこんな言葉を気にかけたかと言うと実は私は自分の事を陰険なやつだと思っているのです。
私はふだんの生活の中で第一に考えている事があります。
それはいかに楽をして生活するかという事です。
「嫌いな言葉は?」と聞かれれば努力や継続がまず思い浮かびます。
例えばテストの時。
問題から答えのヒントが見つかる事があるのでそれを見逃さないように気を付ける。
がむしゃらに勉強するのではなく担当の先生の出題傾向を考えて対策する。
このように全ての事において効率を考えて生活しています。
生徒会活動でもそうです。
みんなの上に立つという事で偉い人の気分が味わえる。
面倒と思った仕事は周りの役員に任せて楽ができる。
なので2年間生徒会長をしています。
ただ難点もあります。
事あるごとに会長挨拶やお礼の言葉などが回ってきます。
その度に原稿を考え緊張しながら挨拶をしています。
生徒会では毎年卒業生に文集を作って贈っています。
原稿を集めパソコンで入力するのですがもちろん原稿を集めてくるのは周りの役員です。
ここでは在校生全員が入力の仕事をするよう画策します。
パソコンが使えないからとか1年生だからと逃れるなんて許しません。
隣についてパソコンの起動からキーボードの配列まで逐一教えながら1人分は入力してもらいました。
時間がかかるんですねこれが。
ふだんからパソコンを使っている私一人なら1日あれば終わる事を3週間もかけてしまいました。
非常に効率が悪いのですが不思議と嫌だとは思いませんでした。
それにしても楽をしたい私がなぜこんな事をしているのでしょうか。
少人数での学校生活はあうんの呼吸で何も言わなくても分かってしまいます。
コミュニケーションなんて面倒なものだと思っていました。
でも高等部になった今それでは何となく物足りない。
みんなとたわいのない事でもしゃべりたい。
1人ですぐに終わる事でも仲間と手間をかけてやってみたい。
うれしい楽しいと感じるためならばあの大嫌いな努力も惜しんではいないのだと思います。
単調になりがちな盲学校生活にメリハリを与えるためのスパイス。
それが陰険に人に仕事を振る事なのです。
そんな面倒な事は考えずに素直にみんなと楽しくやればいいじゃないかとも思うのですがそこはやはりあくどく策略を巡らしたい。
事を終えたあとに「我ながら陰険だなあ」とひそかにほくそ笑みたい。
さあ残り少なくなった高校生活どれだけの事を仕掛けられるか楽しみです。
陰険というスパイス皆さんもうまく使ってみませんか?ご清聴ありがとうございました。
(拍手)次は…病気で徐々に視力が落ち盲学校に入学した佐々木さん。
そこで新たな目標を見つけるまでの日々を語ります。
演題は…視力が下がり障害者になった。
気付いたら真っ暗なトンネルの中に迷い込んでいた。
進む事ができない。
「私ってこんなだったっけ?」そう考えたりしていた。
周りや自分の顔が見えなくなってきて今までは人間の上っ面にしか興味がなかった私は間違っているのかもしれないと思うようになった。
このままじゃ駄目なんだ。
変わりたい。
でも私はどんな人間になりたいんだろう。
知りたい。
だけどこの先進む道が私にあるのだろうか。
そんな時世の中に視覚障害の人が通う学校がある事を知った。
あん摩師はり師きゅう師の国家資格合格を目指す3年間のコースだった。
「あん摩?」いまいちピンと来ない。
思い立って学校を訪ねた。
玄関に飾ってある大きな文字に吸い込まれる。
「自分のことは自分でやれ天を仰いで歩け」。
ひらめいた。
「そうだ。
この学校へ行こう!」。
そう思って通い始めてすぐにくじけた。
「無理。
私にはできない」。
真っ暗なトンネルの中に座り込む私。
動く事ができずにいた。
そんな中少しだけ身についた技術で母の肩をもんだ。
とても喜んでくれた。
理療師ってすてきだなって思った。
大切な人の疲れやしんどさを少しでも取り除けたらいいな。
心からそう思った。
それがきっかけとなった。
やっぱり学びたい。
技術を身につけたい。
学校へ行こう。
仲間が待っててくれた。
先生方も力になってくれた。
つらい事苦しい事もきっと乗り越えていける。
私にとってこの学校はそんな場所だ。
1週間をクリアーした金曜日の放課後。
母とマックで飲むコーヒーは最高においしい。
いろいろな話をする。
それが私の今一番の楽しみで幸せな時間だ。
これが幸せなんだ…。
ありのままの自分になれた気がする。
学校はそんな大切な事にも気付かせてくれた。
可能性や夢も与えてくれた。
これからもどんな人間になりたいか理想とする自分を探し続ける必要があると思う。
だから今は学校へ通う。
とりあえず初めの一歩を踏み出すために。
私が迷い込んだトンネルは真っ暗だけど一本道だから大丈夫。
手を引っ張ってくれた。
背中を押してくれた。
私は一人じゃなかった。
ありがとう。
さあ笑顔で光を目指そう。
今自分の運命を強く信じゆっくりと前に進む。
私はできる。
今日も一日よろしくお願いします。
(拍手)会場にはお母さんと共にクラスメートも応援に駆けつけました。
まあまあお疲れさまでした。
ありがとうございます本当に。
就職のために2年生から参加している職場実習を通して得たものをスピーチします。
演題は…僕は高校を卒業したら就職したいと考えています。
そのために2年生の時キャリアアセスメントを受けました。
キャリアアセスメントで言われた事の一つに「自分から積極的に挨拶や返事をする事」がありました。
そして実際に実習する機会がありました。
そこで僕は化粧品のサンプルを20枚ずつ束にして輪ゴムを123重に留める作業を5日間やりました。
最初は束がずれてきて輪ゴムが留めにくく苦労しました。
けれども自分なりに工夫してやっていくうちにだんだんバランスよくできるようになりました。
この実習で僕は1つの作業をひたすら一日中作業する事が得意かもしれないと考えるようになりました。
実習で学んだ事はほかにもあります。
挨拶と返事の大切さです。
僕が実習で挨拶をすると返事をしてくれる人もいましたが返事をしてくれない人もいてびっくりしました。
僕の声が小さいのか聞こえていないのかと思いました。
学校では必ず返事が返ってくるけど会社は厳しいなと思いました。
以前から僕のクラスでは朝のホームルームで自分の目標を立て帰りのホームルームにその振り返りをしています。
その目標を自分から積極的に挨拶する事に決めました。
挨拶とはコミュニケーションの一つでもあり実習では僕がここにいますという表現でもあります。
3年生になり勉強も部活も忙しくなってきましたが就職に向けて実習に力をつけていきたいと思います。
実習では人とコミュニケーションをとりながら楽しく働き今やっている挨拶や返事を自然にできればいいなと思います。
ただここ数か月で僕の目はかなり悪くなってきています。
焦らず今の自分と向き合いできる事から一歩一歩前に進んでいきたいと思います。
よし!就職に向けて頑張ります!ご清聴ありがとうございました。
(拍手)優秀賞の最後は…高校では軽音楽サークルに所属している幅岸さん。
友人たちとの出会いを通して消極的だった自分が前向きになれたといいます。
これからどのように生きていきたいか今の思いを語ります。
演題は…「私だけの私らしい人生を切り開いていきたい!」。
「ハンディがあっても人生を楽しむんだ!」。
自分は限られた時間の中でどういった生き方をしたいのかを考えた時こういった思いを強く抱きました。
私は生まれつき弱視です。
黒板は見ても単眼鏡や眼鏡を使わないとはっきりと見えません。
人と話す時も1mくらい近づかないと表情を読み取る事ができません。
小さい頃から「目が小さくて変なの!」「目が白くておかしい!」など幼稚園の友達や見ず知らずの子どもから私の目について言われてきました。
幼いながらも健常者の方と障害者の自分との間に距離を感じていました。
病気の事を考えていない時はさまざまな職業への憧れを膨らませていました。
…が小学6年生の時を境に将来の夢を描けなくなりました。
「こんな仕事をする人になりたい!でも現実的には…」と周りの先輩方の進路を決める様子を見て現実を知り活力をなくしそして目標を失ってしまいました。
そんな日々を3年間過ごしてきたある日歌手になるため頑張る友達と出会いました。
当時の私は毎日のレッスンやイベントを学業と両立し自分の夢をしっかりと持っている彼女を羨ましく思っていました。
出会って約1年夢について語り合った時の事です。
彼女に対する私の気持ちを打ち明けると「周囲の反対にも負けず自分の素直な気持ちを一生懸命伝える努力をし現実と闘ってきた」と語ってくれました。
私は「全て自分で決めている」という事に正直驚きました。
そのような姿勢に心打たれ「この子のように強く生きたい。
私も頑張らなくちゃ」と励まされました。
しかし今年の夏緑内障と診断を受け2度にわたる手術をする事になりました。
手術のリスクの話や通院の度に目薬が変わり本当の意味で病気との闘いが始まったように感じ戸惑いでいっぱいでした。
それまで何となく就職への希望がありましたが将来への不安が一層強まり専攻科への進学を考えた瞬間でした。
切実に自分と向き合ったのです。
どちらにしても学力や社会性理解力やコミュニケーション能力挙げると切りがないほど私に足りないものがいくつもあります。
ですが社会に出ていろいろな事を学びたいという気持ちが芽生えました。
私は見えづらさから人に支援を依頼しなくてはならない事が多いので何がどういうふうにできないのかを伝え理解をしてもらう努力をしなくてはなりません。
また支援をしてもらうからには私にできる一つ一つの事を精いっぱい行いたいです。
そしてもう一つは自分の道は自分で決める事です。
しっかりと考えて選んだ道ならどんなに苦しくても後悔せずに頑張れると思います。
高校を卒業する日は刻一刻と近づきその後の進路や自分と向き合う時間これまで以上に苦労する事が増え諦めそうになるかもしれません。
それでも今まで感じてきた事や見てきた事を生かし私だけの人生を切り開いていきたい!ご清聴ありがとうございました。
(拍手)第83回全国盲学校弁論大会。
明日は特別賞と上位3位までのスピーチをお伝えします。
2014/10/22(水) 20:00〜20:30
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV「いま、伝えたいこと〜第83回全国盲学校弁論大会 前編〜」[解][字]

盲学校生が熱弁をふるう全国盲学校弁論大会。予選を勝ち抜いた9人が茨城県水戸市で開かれた全国大会に臨んだ。2日にわたってこの様子を伝える。初日は優秀賞5人の弁論。

詳細情報
番組内容
10月茨城県水戸市で行われた第83回全国盲学校弁論大会。予選を勝ち抜いた9人が熱弁をふるった。2日にわたってこの様子を伝える。初日は優秀賞5人の弁論。人と話すことが苦手だった18歳の男性が盲学校生活を送る中で発見した気づき。高校を卒業する日が刻一刻と迫る中、自分の進路と向き合い続けている17歳の女性の決意など。さまざまな葛藤と向き合ってきた弁士たちがいま伝えたいこととは何か。彼らの思いに耳を傾ける
出演者
【語り】河野多紀

ジャンル :
福祉 – 障害者
福祉 – 音声解説
福祉 – 社会福祉

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

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