NHK俳句 題「菊枕」 2014.10.22

「NHK俳句」第3週の選者は櫂未知子さんです。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願い致します。
今日の兼題「菊枕」。
こちらにあるんですね。
はい。
お見せしましょう。
私が縫ったものなんですがこの袋の中に入っております。
菊が中に入っている…。
私の場合は菊を一旦蒸しましてそれから干したんですね。
それをこういう白い絹の袋に入れて今日は持ってまいりました。
手作りの。
先ほどの私の句「さやさやと」っていうのがこの音でも分かるのではないでしょうかね。
夜がしのび来て安らかな眠りを誘ってくれると。
そういう意味を先ほどの句には込めました。
この枕はどういうふうに使うかといいますと…。
これを…。
こう…広げるというか薄く広げまして枕の上に載せて使うというものなんですね。
頭痛ですとか目の病をよくしてくれるといわれています。
かすかに菊の香りもして。
なかなかね。
どうでしょうか?今日は「菊枕」なんですけれどもゲストをここでご紹介したいんですが。
ゲストはこちらの映像にちなんだ方です。
どうぞ。
書家の紫舟さんにお越し頂きました。
ようこそお越し下さいました。
ありがとうございます。
「美の壺」のオープニングご自身もご出演してらっしゃいますが題字はもちろん紫舟さんの作品なんですね。
先ほどのこれを触ってもらおうかなと思いまして。
どうでしょうか?すごく軽いですね。
すごいいい香りが…。
これも「美の壺」にもかなうようなものでしょうかね?美しいですよね。
そして色が全然落ちないんですね。
ずっと黄色で香りも全然落ちないんですね。
先ほどの「美の壺」の「壺」という字非常に印象的なんですけれどもあれはどういうふうにして思いついた題字なんですか?今使っている題字は2代目なんですけれども1代目の蓄積があってそれが壺の中に少し入っているような。
そしてこれからも続いていく番組ですのでまだまだ入っていく余地があるような「壺」という書に仕上げています。
じゃあますますその壺がどんどんと大きくなっていって膨らみといいましょうか美がどんどん増えていくって感じでしょうかね?そうですね。
そういう少し余裕を持たせた「壺」という書にしています。
どっしりとした形になっていく可能性も秘めているという事なんですね。
そういうそれこそ字にイメージのようなものを意思を持たせるっていう事なんですかね?そうですね。
壺にもいろんな意味があると思うので情報を整理してあげるという事が私の仕事の一つかなと思っています。
後ほど…紫舟さんが俳句を作って下さいましてそれをご自身で書いて下さった作品といいましょうかね…色紙もご紹介下さい。
よろしくお願い致します。
お願いします。
それでは櫂さんが選ばれました入選句ご紹介してまいります。
まず1番です。
この「賜はりて」という辺りに非常に頂いてうれしかった気持ちがまず込められていますよね。
そこに更に中七に「かそけき音す」という。
この「かそけき」ここにはっきり言ってしびれまして。
みやびな言葉をうまくこの「菊枕」という季語と取り合わせたなと思ったんですね。
俳句で「かそけき」というのは…。
意外と少ないですね。
もっと現代的な言葉を使いそうな感じなんですけども「かそけき」を見つけてきたところがこの句の一種の手柄だと思います。
使われている言葉が特別な言葉が多くて菊枕の持つ特別感とか上品さとかみやびさをすごく感じますね。
実際作るのは特別でも何でもないんですけどね。
作り方っていうかね枕の作り方自体は。
ただ季語として非常に特別ですねやはり。
それを賜った訳ですからね。
そうですね。
では2番です。
「わぎも」に「こ」をつけまして「わぎもこ」。
こういう言葉もあるんですね。
奥さんですとか恋人を指す古くからある言葉ですね。
つまり「一つ年上」という事ですから一つ年上の奥さんというのは「金の草鞋を履いてでも」と古くからいわれています。
そのご夫婦関係と菊枕というのを取り合わせた非常に珍しい例ではないかなと。
ご夫婦のね。
では3番です。
寝ながらにして野辺を行くようなワープしていくような…。
この匂いを嗅ぐと分かるんですけども野の香りが致します。
かそけき野の匂いが寝ながらにして感じられるという。
一種の心の旅人といいましょうか。
そういう感じのする作品だと思われました。
今度は4番です。
見た目よりは非常に現代的な句でありまして最近はやっているんですけどね。
口角が上がるとか…。
女性でよく話をしますね。
下がるとか。
下がっていると老けて見えるからちゃんとしなさいというふうに言われますよね。
お母さんの口角が上がったという事は菊枕をして寝る事によって若返るとか病がちょっとよくなった癒えたという感じが出ているのではないかなと思われるんですけれども。
私はこのお母様が誰かのために作られたのかなと少し感じたんですけれどもこのお母様を見ている方がふだん見ないお母様の幸せな笑顔がきっと見つける事ができたんだろうなと思いました。
そうですね。
いい句ですよねこれね。
頂く方もそうだけど作ったお母様もすごくうれしい。
どなたかのために作ってそれで口角が上がると。
2通りの読み方ができるかもしれませんね。
「口角」というのを俳句の中にというのも…。
初めて見ましたね。
ですよね。
珍しいですよね。
では今度は5番です。
天女の羽衣ではありませんけれどもその「羽根よりもかろく干されて」というね声に出した時に響きのいい句なんですよこの句。
それで実際に菊枕を手にした事のある方ではないかなと思われるんですね。
本当に軽いですから持ってみると。
実感のある句だと思います。
6番です。
メーキングオブ菊枕とは言いませんけれども香りを詠んだ句はたくさんあったんですね。
しかし菊の畑菊畑を出してきた例はめったにないんですよ。
ほかの句が中七真ん中の七音が華があるのに対してこの句は一番最初の上五にポイントがある。
「一畝」。
ですから大変珍しい土臭さもちょっとあるような珍しい菊枕の句だと思われます。
一畝といえば「龍馬伝」の題字も書いてらっしゃいましたけども。
司馬太郎さんの「竜馬がゆく」の中でおりょうが庭中の菊を使って竜馬のために菊枕を作ったというお話があったかと思います。
実際私も読んでみたんですけどもおりょうさんわがままを言ってですね旅館にあった丹精込めた菊の花数百の頭をそれこそもいでしまって菊枕を作ってしまったと。
やっぱり愛する人のためにでしょうかね。
一畝以上ですかね。
一畝どころではないですね。
庭中の菊だったらしいです。
なんとわがままな方でしょうと思いました。
愛する竜馬のために。
愛する竜馬のためですね。
今度は7番です。
「松籟」というのは松のこずえを吹く風の事ですね。
ですから「吹き渡る」とまでわざわざもう一度言う必要はないかもしれないんですがそこをどうしても強調したかったんでしょうね。
嵐のような音ではありませんのでちょっと音はしているけれどもこれから自分は菊枕をして寝るのだというね。
不穏さはないですね。
嵐の持つ不穏さというか。
松籟って何となくありがたい感じが致しますので。
今度は8番です。
ミシンで縫うのとは違いまして手縫いですとどうしてもたまには脇から花びらが零れ落ちる事もあるんです。
櫂さんも手縫いで。
手縫いでやってみるとよく分かるんですが縫い目の本当に小さな所から香りが零れてきたようだという非常にいい発見のある作品だと思われます。
恐らく寝返りを打った時に少し空気が押されてそこから香りが漂ってきてとても幸せな眠りについてらっしゃるんでしょうね。
いいですね。
やっぱり香りに目をつけた。
しかも「零したり」っていうのがきれいですね。
9番です。
静かな雨ですとか雨が少ないあるいは強い雨っていうような表現はよくあると思うんですけれども「小さな雨」と表現した例っていうのはあまりないように思うんですね。
恐らくは強くなくて本当に少し降ってるなと分かる。
それが「小さな」という大きさで言った事が非常に珍しい句につながったなと思うんですね。
雨だと少し香りが立つとかそういう事でもないんでしょうか。
寝ているのはもちろん室内ですから外の気配を感じながらという句だと思うんですね。
ただ湿度がちょっと上がってくるから香りも立つかもしれませんね。
以上が入選句でした。
それでは特選三句をご紹介する前に「俳人のことば」をご覧下さい。
この句は新春の句です。
「御形」というのは七草の一つですね。
「大和島根」は日本の昔の名前ですね。
新春のこの明るい日ざしの中で七草を摘んでいる。
この日本の美しい国をいつまでも大事にしたいというそういう気分が籠もってるんです。
奈良の薬師寺へ行った時の事が頭の中にありましてねこの寒い冬の森閑とした中で回廊の太い柱がお互いに呼び合っていると。
その柱同士が何かを話し合ってる訳です。
話し合ってるんだけどそれはそうですね…うれしい声でもないけどそう悲しい声でもない訳ですね。
だけど何か支え合っているそういうささやきを感じました。
それでは特選句です。
まず三席はどちらでしょう?守山由美子さんの句です。
二席の句です。
迎原夫さんの句です。
一席はどちらでしょう?妙中正さんの作品です。
この句はちょっと続編を詠みたくなるような句で例えば奥さんの側から作りますと「兄の君は一つ年下菊枕」というような句にできるんですよね。
だからご夫婦が相聞といいましょうかお互いに句を贈り合えるようなそんな楽しさを持った句だと思ったんです。
それで一席になりました。
「一つ年下」。
年下の男の子いかがでしょう?いいですね。
「せ」というのは兄という字でいいんですか?兄という字で。
背中の背と書く場合もありますけれども。
「兄の君」いいですね。
いいですよね。
和歌の言葉といいましょうかね。
そうですね。
以上が今週の特選でした。
ご紹介しました入選句とそのほかの佳作の作品は「NHK俳句」テキストに掲載されます。
俳句作りのためになる情報も参考になさって下さい。
続きまして…入選までのあと一歩を教えて頂きます。
投句を見ますとせっかく文語を使って下さってるのにちょっと文法的に間違っているといいましょうか。
難しいですからね。
難しいですからね。
ではちょっと一句を例に挙げてみたいと思います。
なかなかいい句でありましてただ今真ん中読み上げてみて「つみ上ぐ書や」。
六音。
六音なんです。
一音足りないんです。
よく見てみますと「つみ上げる」という口語を「つみ上ぐ」を使ってくれたまではよかったんですけどもこれ下二段活用ですから下に「書」が来てますよね。
「つみ上ぐる」にならなければならないんです。
連体形で。
五七五がどっしりと座りまして聞こえのいい句になったのではないかなと思われます。
やっぱり心配になりましたら電子辞書などでちょっと引いてみて調べるといいと思うんですね。
例えば「つみ上げる」というのを引いてみます。
口語で「つみ上げる」を引いて。
でも文語はなかなか…。
その脇に実は書いてあるんです。
「文」と書いてある。
「文」と書いて「つみ上ぐ」と書いております。
活用も。
活用も「下二段」と書いてありますのでじゃあ物に続く時には「る」がつくんだなとかね分かりますので是非ご参考になさって下さい。
そばに辞書を置いてと…。
そうです。
辞書が一番大事です。
どうぞ参考になさって下さい。
次は櫂さんの年間テーマ「日本の季語遺産」。
今日は「菊枕」。
はいそうですね。
菊は「きく」という読み方しかしないんですね。
やっぱり中国から来たという事が分かります。
もともと観賞用で来たものなんですけどももちろん薬用としても用いていたと。
その分ただし売ってないもんで私自分で作るしかないってさっきから言ってますけど。
本当にありがとうございます。
最初生で干して大失敗しちゃいまして。
カビが生えたりとかいつまでも乾かないとかそういう失敗を繰り返して今の蒸して干して縫うという3段階。
その蒸す時間もいろいろ工夫なさったんですね。
2分ぐらいがいいかなと。
やっぱりその手間が何とも…。
喜びですね。
手間をかけていつか出来上がる日を待っているというか自分で作り上げる喜びというのがこの季語にはあると思うんですね。
そういう句もあるんですね。
はい。
その中でこういう句がございました。
仕上げてそれで終わりではない。
手にかすかなる香りが残っている。
しつこくはなくて何とも言えぬ幸福感をもたらしてくれる香りであるというね。
派手さはないけれどもとても実感のあるいい句だと思われました。
作るまでの喜びも含めてという事ですよね。
そうです。
さあ今度は紫舟さんが俳句を作って下さいました。
そしてそれをご自身でお書き頂いた色紙をご紹介頂けますか?女性のおしゃべりを聞いてみますと第一声によく「やっぱり」とか「でも」とか「しかし」とか「ちょっと」とか…。
確かに。
そんな言葉ばかりなので話も終わらず秋の夜長の長話。
なるほど。
確かにそうですね。
あんまり意味のない言葉を挟みながら否定してる訳でもない「でも」とか。
最初に「でもでもでも」とか。
「でもでもでも」なんですよね。
そうですね。
相手を後半の文章で否定しないように「でも」とか。
あんまり接続詞としての意味が…。
意味がないですね。
「けれども」もよく使いますけどね。
「そう思いますけれども」とかね。
「やっぱり」もよく使いますね。
「やっぱりやっぱり」。
やっぱりしゃべり言葉をうまく五七五にはめた辺りが面白いですね。
ありがとうございます。
なかなかできる事じゃないんで。
「夜の長し」というところに落としていった辺りが最後に重量感を増すという感じで面白い句だと思われます。
でもお作りになっていかがでした?難しいですね。
難しいですけれどもどの言葉を使うのかっていうのを考えていく過程っていうのがすごく頭がクリアーになっていくような感じがしますね。
書で字を書く時に字を選ぶのとご自分の作品一句を作る時に言葉を選ぶのとどっちが難しいといいましょうか…。
俳句です。
俳句ですか?言葉はたくさん出てくるんですけれどもそれがルールの中にきれいに置き換える事ができない。
その中に収まらなかったりとか。
なるほど。
書で使う頭の筋肉というかそれと俳句で使う頭の筋肉といいましょうか…違いますか?俳句で使う筋肉は私はまだ持ち合わせてないようでした。
じゃあこれからジムに通ってという感じでしょうかね。
でもルールといえば十七文字。
そしてそちらそれこそ空間の中に…。
そういう意味ではある種共通するところもあるような気も…。
そうですね。
ある程度ルールがあるからこそできる表現だと思いますね。
やっぱり五七五というまず音がありますね。
音数がありますよね。
素数は美しいですよね。
素数ですね素数…。
素数と言った人は俳人ではいませんよね。
確かに素数ですね。
これが面白い言い方で。
やはり筆を持って書くっていうのは紙というスペースがありますよね。
その時にはやっぱり筆持った時っていうのは無心になるものなんですか?そうですね。
あまり何も考えていなくてでも書いている時に字を見ている訳ではないんですね。
どこを見てるんですか?筆先を見ている訳でもなく自分でも書きながらどこを見てるんだろうと。
余白を見ていたりとか全体を見ていたりとか筆先を見てるって事はあんまりないですね。
我々俳人もよく色紙を書いてくれと言われるんですが非常に困るんですよね。
やっぱり筆先ばっかり見ていて全体出来上がった時「あっ駄目」っていう事があるんですがやっぱりそれは筆ばっかり見てるからですか?全体のバランスを見ながら書く方が作品の色紙の中の中心にバランスがとれるのかもしれないですね。
余白を見つめる。
これはすごい斬新です。
余白が生まれるんじゃなくて余白を見ながらですね。
そうですね。
あと面白かったのはフランスのルーブル美術館の方とお話をしていて日本の事が大好きで映画を見たり小説を見たりして日本のそぎ落とされた中でその余白の中を想像したり空想したりするのがほかにはない文化だとおっしゃっていましたね。
あちらの方も分かって下さるんですね。
そうですね。
余白の美ですね。
ありがとうございました。
ここで投稿のご案内をさせて頂きます。
この間に櫂さんは…。
早変わりを致しました。
「ねんねこ」ですね。
年配の方はご存じだと思いますが赤ちゃんをおぶいひもで背負ってその上に羽織ると。
そしてちょっとおまけで持ってきましたが。
ちょっと横を向いて頂くとここに赤ちゃんがいる訳ですね。
赤ちゃんが入れるようにおんぶできるようにゆとりを持って仕立ててある防寒具ですね。
どうでしょう?触ってみましょう。
赤ちゃんがいると思って下さいね。
ガラガラガラと。
この私の顔を見ないように。
赤ちゃんにとっても空気の層で温かく包まれつつお母さんにとっても背中の所を温かくしてくれるのですごくお母さんも安堵するのかなと思います。
是非たくさんお寄せ下さい。
今日はありがとうございました。
お待ちしております。
今日はこの辺で失礼します。
2014/10/22(水) 15:00〜15:25
NHKEテレ1大阪
NHK俳句 題「菊枕」[字]

選者は櫂未知子さん。ゲストは書道家の紫舟さん。俳句が一字でがらりと変わるように、書も線と余白のバランスで表情が変わる。既成概念に捉われない点も似ているという。

詳細情報
番組内容
選者は櫂未知子さん。ゲストは書道家の紫舟さん。俳句が一字でがらりと変わるように、書も線と余白のバランスで表情が変わる。既成概念にとらわれない点も似ているという。【司会】桜井洋子アナウンサー
出演者
【出演】紫舟,櫂未知子,【司会】桜井洋子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格

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