NHK高校講座 物理基礎「“熱”ものがたり」 2014.10.22

(黒田)いつもと違った視点で物理を考える。
今回は…お話頂くのは結城千代子先生です。
先生よろしくお願いします。
(結城)よろしくお願いします。
今日は熱についてのお話ですけれども熱いというとまず火を思い出しますね。
先生人類はいつごろから火を使うようになったんですか?実ははっきりは分かっていないんですね。
でも自然の火を利用した跡はなんと100万年以上前の遺跡からも見つかっているようなんです。
想像つかないね。
熱の利用は人類の生活を豊かにしていったといえるのではないでしょうか。
今日は「熱ものがたり」と題してまず…この3つの視点で考えていきたいと思っています。
温かさの程度を知るための道具である温度計。
これがもしも私たちの周りになかったらちょっと困りますね。
やっぱり暑いとか寒いとかって人それぞれの主観だから基準はないとね。
まさにそのとおりなんですね。
これは客観的な基準がないと温度が説明できないという事です。
それで温度計を初めに作った人が実は「力学ものがたり」に出てきたガリレオ・ガリレイです。
(熊谷)出たガリレオ。
やってくれるね。
さすがだわ。
イタリアの天文学者であり科学者である…ガリレオは1600年ごろ世界で初めて温度計を発明したといわれている。
ガリレオが作った温度計がこれです。
ガリレオは温かさの程度を知るためにどうやったら分かるかと考えたんですね。
空気が温度によって膨張したり収縮したりする事に気が付きます。
この上のガラスの球の所に空気が入っていてこのガラスの管の中にも空気が入っているんですがそれを温めてこの水にすとっと立ててしばらくすると水が吸い上がりますね。
そうして水面が温度計の液面に当たります。
周りが温かくなると中の空気が膨張する。
膨張するから。
そうです。
膨張して液面を押して液面が下がりますし冷たくなれば逆の事になる。
こういうふうにしてガリレオは温度を測る事ができた訳です。
当時の基準の温度と今ってやっぱり違ったんですか?そうですね違っていました。
当時はさまざまな温度基準があったんですけれども…。
熊谷君今の温度基準は知ってますか?それはもちろん。
セルシウス温度ですよねセ氏温度。
そのとおりですね。
当時はあの〜アルコール温度計やそれから更に高温や低温を測る事もできる水銀温度計などもどんどん作られていった訳なんですけれども目盛りの方も最高温度と最低温度何基準にするかこれがさまざまに競い合われていたんです。
面白いところでは高い方の温度がバターの溶ける温度なんていう基準もあったんですね。
バターか…。
結局セルシウスの考案した温度が今使われています。
スウェーデンの天文学者…1742年セルシウスは温度計の基準として0度を水が沸騰する温度100度を水が氷になる温度とする事を呼びかけた。
先生今のと逆ですね。
そうなんです。
最初は逆だったんですね。
そうなんですか。
1742年の事だったんですけれどもその数年後に実用の温度計として作られた時にそれが逆転していまして今の氷の0度とそれから沸騰の100度。
これが普及して今の使われているセルシウスの目盛りの温度計になります。
日本には温度計はいつごろ伝わったんですか?ちょうど江戸時代鎖国をしていた頃です。
鎖国か…。
オランダから伝わって長崎を経由して入ったと思われてます。
その温度計を今度は自分でまねをして作った人がいるんです。
日本の人で?その人物とは江戸時代中頃学者戯曲家陶芸家更には発明家として活躍した…1768年オランダ製の温度計を参考に「寒熱昇降機」と名付け3年をかけて作り上げた。
面白いのはその時に使った目盛りなんですけれどもオランダ渡りの数字を書いてある以外に日本人に分かりやすいようにとても寒い「極寒」。
更には寒い「寒」。
そして「冷」。
暖かい「暖」。
もうちょっと暑い「暑」。
「極暑」。
意外に分かりやすい事を数字の脇に書き入れていたようです。
中身って何を利用して…?多分アルコールだと思われてますね。
この平賀源内の温度計のあとに少し幕末ごろまで時代は飛びますけれどもそのころに日本独自のやはり別の温度計が考案されてるんです。
福島県北部に位置する…江戸時代この伊達地方は養蚕が盛んで蚕の都として全国的に知られ栄えました。
幕末人工的に温度を管理し蚕を効率的に飼育しようと温度計を考案したのが伊達地方の養蚕農家…それまで勘に頼っていた温度管理がこの目盛りの付いた温度計でできるようになりました。
蚕が当たる計器…中村善右衛門は…という蚕の飼育の手引書を書き蚕当計と共に売り出し普及に努めました。
養蚕農家は温度計を使う事で温度調節ができるようになり繭の品質が向上し生産が安定しました。
また伊達地方の養蚕農家ではたくさんの養蚕日誌が残されています。
これには天候や蚕の成長餌となる桑の出来などが詳しく書かれています。
養蚕の失敗や成功の記録を残す事で次の成功に結び付けようとしたのです。
これらの記録はまさに科学実験の記録でもあります。
ここにビーカーを2つ用意しました。
このビーカーには水が入っていますが熊谷君これ物理的に言ってどう違いますか?はいこれは習いました。
温度が違うこっちの方が熱い。
熱いっていうのは分子運動が激しいっていう事ですよね。
そのとおりですね。
熱いとはどういう事か熱とは何かという事昔から人はすごく深く考えようとしていました。
そして今熊谷君が言ってくれた分子運動。
この分子という考え方はものは粒で出来ているという考え方ですね。
これは古代ギリシャの時から述べられていた事です。
古代ギリシャの哲学者…デモクリトスは…そしてその粒の運動が物質の性質を表していると考えた。
ギリシャ・ローマ時代の終わりとともに粒であるの方はちょっと忘れられてしまうんですね。
忘れられちゃうんですか?はい。
それでその考えはそのあとルネサンスの時代になるまで復活してこないんですね。
ルネサンスというのは14世紀から16世紀にかけてのヨーロッパで起こった古典を復興させようというそういう運動で…。
そこでものが粒であるそして粒の動きがものの状態を表している性質を表しているという考えに再び脚光が当たるようになります。
それで今の考えになったんですか?だといいんですけども実は当時別に熱素という考え方カロリックというんですがそれがあったんです。
熱素?何かといいますと…例えば空気中には目に見えない酸素や水素がありますね。
同じように熱いものの中には熱素という物質があると考えられていたんです。
ですから熱いものが冷めて周りが温かくなるという事は熱素が移っていったというふうに考えられていました。
この分子運動論と熱素という考え2つ。
この熱素の方がとても力を持ってたんです。
多くの科学者が信じていましたしとても分かりやすい考え方ですね。
その論争の決着っていつごろついたんですか?それは19世紀まで待たなければならないんですね。
論争に決着をつけたのがイギリスの物理学者…大学で研究職に就く事なく家業の酒造りをしながら研究を行いエネルギー熱量の単位ジュールとしてその名が使われている。
ジュールは電気の研究をしていたんですけれどもその時に水の中に導線を入れて電流を流すと水が熱くなる事に気が付きます。
これはものが熱くなるんですからどこかから熱素が伝わってきたのではないかと考えるんですけれどもどこも温度変化がないのでこの熱素どこから来たんだろう。
ジュールは今度は実験で熱はどこから現れるかを考えてみていくんです。
先生これがジュールが使った実験装置なんですか?実は仕事を熱に変えられる実験を行ったんですが大変有名な実験なんですがそれを分かりやすく作り直したものです。
このおもりを糸で巻き上げていきましてここまで巻き上げてそして上の回転軸を離すとスッとこれが落ちていくんですね。
それと同時に中の歯車が回転するようになっています。
そしてその時の温度変化を測るんですね。
そのために温度計が用意されていますしまたこの落下した位置を知るための目盛りも付いています。
実際にやってみましょうか。
はい。
じゃあいきます。
どんどんおもりが上がっていきますね。
あともうちょっと。
先生これくらいですか?はいそうですね。
じゃあ手を離します。
いきます。
お〜。
お〜すごい回転してるね。
このように羽根を回転させる事で中の温度変化を確かめる事ができます。
では現代の機械を使ってちょっと試してみましょう。
そうですね。
実際に温度を上げてみようという事で用意したのはこちら。
これは調理器具のミキサーだよね。
そうここに刃が付いていて羽根車の代わりになっています。
今容器には水が入っていて…熊谷君ここに温度計を挿して。
よ〜し分かったよ。
はい温度は何度になってるかな?22.2度だね。
うんじゃあ水をかくはんさせてみましょう。
スイッチオン。
はいここまで。
1分経過しました。
今は23.9度だからもともと22.2度だったから1.7度も上がったのか。
上がったね。
回転運動が水の温度を上げましたね。
このようにジュールの実験を基に熱くなるという事は熱素という物質が伝わってくる訳ではなくて分子の運動が激しくなるという事が分かってきた訳です。
ジュールはこういった実験を繰り返していって熱と仕事が比例関係にある事を示します。
最終的には1calの熱量が4.2Jの仕事に相当するという事が示せた訳ですね。
そしてこのように熱力学の法則はだんだん確立されていく訳です。
熱を使ってものを動かす。
動力としての歴史です。
熱を動力としたものって蒸気機関がありますよね。
そのとおりですね。
蒸気の利用は大昔からいろいろ考えられていたんですが脚光を浴びるのは18世紀になってからになります。
蒸気機関を実用的に開発したのがイギリスの機械工だった…ニューコメンは炭鉱の湧き水対策として水くみの重労働を機械に肩代わりさせるために蒸気機関の装置を作り上げた。
このニューコメンの作った蒸気機関石炭で温めるんですがこの石炭1.5kgってどのぐらいだと思いますか?1.5…こんぐらい。
これぐらいかな。
こんな感じですね。
少なくてもこ〜んなじゃなくてこんな感じ。
この1.5kgの石炭があると5分間動かすと人間でいえば3時間半馬でいうと45分弱ぐらいかかるような重労働が蒸気機関で水くみ…くみ上げれる事ができたんです。
ニューコメンの蒸気機関を改良し新しく開発したのがイギリスの技術者…ワットが開発した蒸気機関によって炭鉱での水くみの効率が上がった。
ワットと言った時お二人あれ?って思いませんでした?思いました。
仕事率の単位ですよね。
そのとおりです。
ワット改良したその機械を実はみんなに貸し出そうとしたんですがどのぐらい能率がいいか示したかったんです。
そのために馬1頭がどのぐらいの仕事ができるかという事と比較するような形の単位を作ります。
これが馬力という単位です。
それがこれですね。
よいしょ。
はいこのように馬にこの軸を引かせるんですね。
この軸はこの先井戸の水くみになっててこれが回転する事によって水がくみ上がってくる訳なんですがその時にこの軸から出ている腕木の長さとそれからその腕木を引く力これを測定できるようにしてあります。
そうすると馬1頭がある時間決められた時間の間にどれだけグルグルと水をくみ上げる事ができるかが分かる訳です。
そうして1馬力という単位を決めました。
つまりこの馬は一生懸命引っ張って…その分水がくみ上がってくるという事ですね。
これを1馬力と付けたんです。
今の単位でいうならばNm/s
(ニュートンメートル毎秒)とかまたJ/s
(ジュール毎秒)といえる訳です。
そしてその功績を記念してWという単位が作られたんですね。
ほかにも蒸気機関を利用して水くみ以外の機械いろいろ作っています。
ピストンの上下動をこう回転運動に変えていくなんていう事も考えられていってこの蒸気機関と呼ばれるものがどんどん発達していく事になるんです。
ワットが開発した蒸気機関は炭鉱の水くみだけではなくさまざまな業種の動力源に使われていきました。
これによって産業構造が大きく変わり蒸気機関は産業革命の原動力になっていきます。
19世紀の初めには蒸気機関車が発明され実用化が進められていきます。
蒸気機関の実用化は鉄道や船などの交通機関を発達させていきます。
19世紀から20世紀にかけて燃焼を機関内部で行う内燃機関が発達を始めます。
自動車の登場です。
燃料としてガソリンが使われるようになると自動車の時代が始まり現在まで続いていきます。
蒸気機関や内燃機関の発達とともに蒸気の力で直接回転運動を作る蒸気タービンが開発されていきます。
20世紀半ばにはシリンダーとピストンを利用した蒸気機関から蒸気タービンへの移行が始まり発電所などの大型プラントに使われていきます。
現在も蒸気は発電所でなくてはならないものとして活躍しているのです。
熱のお話というのは実用と理論がこう絡み合って発展してきたたくさんの人の関わった歴史でした。
「熱のものがたり」はほかの物理の分野と少しばかり趣が違って人間の生活の歴史そのものといっていいと思います。
そうですね。
はい。
2014/10/22(水) 14:20〜14:40
NHKEテレ1大阪
NHK高校講座 物理基礎「“熱”ものがたり」[字]

「熱」を通して、熱についての考え方の変化や科学技術の発達と産業への実用化の歴史に迫ります。学習ポイントは(1)温度計の歴史(2)熱とは何か(3)熱の実用の歴史

詳細情報
番組内容
温かさの客観的な基準となる道具「温度計」は、ガリレオによって考案され、熱や仕事についての科学的な考え方のもととなった。17世紀、ジュールは、実験と観察により、熱と力学的仕事とが比例することを示し、熱がエネルギーとして測定可能な量となった。その後、ワットなどの蒸気機関の開発により、蒸気の力は動力として使われ、産業革命へとつながった。【講師】結城千代子(サイエンスライター)【司会】黒田有彩、熊谷知博
出演者
【講師】サイエンスライター…結城千代子,【司会】黒田有彩,熊谷知博

ジャンル :
趣味/教育 – 中学生・高校生
趣味/教育 – 大学生・受験
趣味/教育 – 生涯教育・資格

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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