(テーマ音楽)皆さんの毎日の健康のために。
「きょうの健康」です。
今週お伝えしているのはこちら。
今日は3日目になりました。
テーマはこちらです。
遺伝子研究の成果が大いに生かされている最新の薬物治療についてお伝えしていきます。
早速今日も専門家に分かりやすくお話をして頂く事に致します。
ご紹介致します。
乳腺外科で乳がんの診断治療がご専門です。
今日もどうぞよろしくお願い致します。
乳がん治療に使う薬が個別化しているという事ですがこれはどういう事を指しているんですか?遺伝子の研究が進んだ事で一口に乳がんといっても全部同じ訳ではなくていくつかのタイプがある事が分かってきました。
そのために現在は患者さん一人一人の乳がんのタイプを調べて薬を使い分けたりあるいは手術のあとではなくて手術前に薬を使った方がいいかという事などを検討しています。
乳がんのタイプはどうやって調べるんですか?がん細胞の遺伝子の発現状況を調べる事で分かるんですが手術の時に摘出したがん細胞から調べる方法が以前は一般的でしたが現在は手術前に胸に針を刺してしこりの組織の一部を採ってから調べる針生検という方法で手術前に調べる事が一般的になっています。
でも初日に自分が乳がんになりやすいかどうかという事を調べる検査があるという事でしたがこちらの遺伝子診断とは違うという事ですね?そうですね。
乳がんのなりやすさ遺伝性の方は血液検査で乳がんの発症に関わるBRCA遺伝子を調べるという事です。
これで既に乳がんという事が分かっている方の場合治療方針を決めるのは左側の「がん細胞の遺伝子を調べる」という方です。
薬の個別化という事ですが今日はこういうキーワードで順にお話をして頂く事に致します。
薬の使い分け術前化学療法新薬の開発という事ですがまずは薬の使い分けです。
この基本情報をまずは久田さんからです。
はい。
ではこちらで見ていきましょう。
乳がんはその特徴によって…この5つに分けられます。
ルミナルという名前が付いた3つはエストロゲンという女性ホルモンの刺激で増えるグループです。
乳がんの7割から8割はこのグループに入ります。
このグループの乳がんには刺激となるエストロゲンを減らす薬ホルモン剤が効果的です。
このタイプの乳がんに手術後ホルモン剤を使いますと再発や転移を半分ほどに減らす事ができるといわれています。
そして女性ホルモン以外にHER2というたんぱくによって増えるタイプもあります。
それがHER2陽性です。
ここにあるHER2陽性ルミナルBというのは女性ホルモンとHER2たんぱくの両方で増えるという事になります。
このHER2たんぱくで増えるグループにはHER2たんぱくの働きを抑える抗HER2薬という分子標的薬を使っていきます。
乳がんの薬物治療の中で最近特に進歩したのがこの抗HER2薬です。
またこのグループでは治療効果を更に高めるために抗がん剤も一緒に使っていきます。
更に女性ホルモンとHER2たんぱくのどちらのグループにも属さないトリプルネガティブ。
そして女性ホルモンで増えるグループの中のHER2陰性ルミナルBこの2つはがんの増殖能力が高いという事が分かっています。
増殖能力が高いつまり活発に活動しているがん細胞には抗がん剤が効果を発揮します。
このように乳がんではがん細胞が何で増えるのかまた増殖能力の高さでタイプ分けをしてそれに合わせて薬も使い分けていきます。
はい。
非常に複雑なんですがこれで見ますとまず女性ホルモンで増えるグループを見ましょう。
3つのタイプがある訳ですが女性ホルモンだけが関係しているこのグループの中で…どちらもHER2は陰性とありますがこの区別はどういう事なんでしょうか?2つの違いというのは増殖能力の違いを示していまして増殖能力が低いものがルミナルA。
こちらは進行も穏やかでおとなしいタイプで治療はホルモン剤だけでよいという事になっています。
一方ルミナルBの方は増殖能力が高くてホルモン剤に加えて抗がん剤も使った方がいいというものです。
そういう違いがある訳ですがこのように細かくタイプ分けがされてきたという事はこれが分かってきたその前と後では治療方法また治療の効果も随分変わってきたんでしょうか?以前は一律にホルモン剤や抗がん剤を使っていた時代があったんですががんのタイプを知る事でそのタイプに応じた薬を用いる事ができるようになりその結果治療成績が格段に向上してきた訳です。
また効果のない不要な薬を使う事が減りますので患者さんの体の負担も和らげる事につながります。
いい事ですよね。
はい。
そしてホルモン剤について伺っていきたいんですがこれは閉経前と閉経後で何か違いというのは出てくるのでしょうか?ホルモン剤というのは閉経の前後で種類を替える必要があるんですがこのAさんとBさんで比べてみたいと思います。
お二人とも日本人に多いルミナルAで女性ホルモンで増えるタイプなんですがAさんは抗エストロゲン剤というのを5年から10年服用するという事が中心になります。
閉経前42歳ですね。
一方閉経後60歳のBさんの方は抗エストロゲン剤も5年から10年使えるんですがこの方のホルモン剤としての中心はアロマターゼ阻害剤という事になります。
こちらを使うのが主でありこれも使う事もあるという考え方でよろしいですか?はい。
それでAさんの場合はLH−RHアゴニストも使うという…?これは生理を止める作用のあるお薬ですが2年から5年併用する事があります。
こういうふうに閉経前と閉経後で違うというのはどうしてなんでしょうか?それは閉経前と後で女性ホルモンが作られる場所が違うからなんです。
閉経前は主に卵巣という所でホルモンが作られますがこの卵巣に対して女性ホルモンエストロゲンを作れという指令を出す所がこの視床下部といわれる所でこの視床下部に対してその指令をストップさせるお薬がLH−RH阻害薬といわれます。
これですね。
生理を止める事でエストロゲンを作れなくするという事です。
一方で閉経後の方はもう卵巣機能は低下している訳ですがそのかわり副腎という臓器から…。
腎臓の上にある副腎。
そこから男性ホルモンが乳腺組織の中でエストロゲンに変換されるというそういう経路が実は働いていましてその経路をストップさせるここに働きかけるのがアロマターゼ阻害薬といわれるものです。
これらを5年間使うという事が標準的な治療になっています。
こうした違いがある訳ですね。
薬の使い分けについて伺ってまいりましたがお話をこちらに進めます。
手術の前の化学療法という事ですね。
これはどういう事でしょうか?化学療法というのは抗がん剤を使った治療の事を意味していまして文字どおりこの場合は手術の前に抗がん剤を使う治療という事になります。
…という事はホルモン剤や抗HER2薬は含まれない治療のお話今して頂く訳ですが術前化学療法というのを行う方はどういうタイプの乳がんでしょうか?先ほどお話ししたように増殖能力が低いタイプのルミナルAにはそもそも術前化学療法は必要がない訳です。
その一方でそれ以外の抗がん剤が効くといわれるルミナルBとかトリプルネガティブあるいはHER2陽性タイプのものに対しては術前化学療法を行うケースが増えています。
手術の前に抗がん剤を使う事の意味はメリットはどういう事なんでしょうか?まず第1に手術前に抗がん剤を行うと薬でがんを小さくする事で最初は温存が難しいと思われていた方でも温存療法の適用になる事がある訳です。
それから2番目は抗がん剤の効果を目で見て確認する事ができると。
術後に抗がん剤を使った場合は結果論として手術後5年10年たっても再発がなければその時初めてその抗がん剤の効果があったと判断できる訳ですがしかし術前化学療法の場合はがんが小さくなっているかどうかで効果を判定しますので半年ほどでその使われた抗がん剤の効果が判断できるという事になります。
そうしますと手術前に抗がん剤の効果を確かめておくという事で手術後どうしていくかどういった薬を使っていくかという事もある程度分かるようになってくるという事ですね?そうですね。
もちろんその効果が目で見て分かるという事は患者さんにとっても薬が効けばしこりやわきの下のリンパ節転移が小さくなるという事が実感できるので治療を続けていく上での励みになるという面もあります。
術前に抗がん剤を使って小さくなる効果があるぞという事でうまく効いてがんが消えてしまうところまで行く事はないんでしょうか?実際には患者さんの10から20%程度でがんが完全に消える事がいわれておりまして特にHER2陽性とトリプルネガティブは消失率が高くて術前の薬物療法でがんが完全に消失するとがんを発症していない方に匹敵するぐらいの予後が期待できると報告されています。
すばらしいですね。
今は術前化学療法抗がん剤を使うお話頂きましたが手術前にホルモン剤や抗HER2薬を使うという事もあるんでしょうか?はい。
HER2たんぱくで増えるタイプの乳がんには抗がん剤に加えて抗HER2薬を使うと。
こういう事で治療効果すなわちがんの消失率が上がるという事がいわれています。
また閉経後のルミナルタイプの方にホルモン剤を術前投与する事によってがんが小さくなり乳房温存率が上昇するという事も報告されています。
それではお話が続いて新薬の開発です。
これは我々も期待したいんですがどういう状況でしょうか?乳がんはがんの中でも遺伝子研究が特に進んでいるがん種でありましてタイプごとの特徴に合わせた薬が次々開発されています。
今現在でももう30種類以上が保険で認められてる状況で中でも注目されているのが昨年9月に保険承認されたT−DM1というお薬です。
どんな薬なんでしょうか?このお薬はトラスツズマブという抗HER2薬にDM1という抗がん剤が組み合わされている全く新しいタイプのお薬です。
1つの薬で抗HER2薬と抗がん剤を兼ねているという事ですか?そういう事です。
DM1というのは昔からある抗がん剤だったんですが効果は高いんですが全身の副作用が強すぎて実際にはあまり使われていなかったんです。
しかしHER2たんぱくにこのお薬をくっつける事でHER2陽性の乳がん細胞の所にだけ狙い撃ちで効果を発揮すると。
こういう画期的なお薬です。
従って副作用が少なく治療効果を引き出す事ができるようになりました。
現況ではこれはどういった方を対象に使っていらっしゃるんですか?今現在は手術ができない進行乳がんあるいは再発乳がんにしか適用がないんですが効果が極めて高いのに引き換え副作用が逆に少ないというメリットがあって患者さん方には非常に恩恵があるというふうに感じております。
こうした薬の組み合わせによってすばらしい高い効果が生まれてくる。
こういった技術がますます発展するのを本当に期待したいですね。
はい。
一連のお話今日はありがとうございました。
ありがとうございました。
2014/10/22(水) 13:35〜13:50
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 遺伝子で変わる 乳がん最新治療「薬は個別化」[解][字]
遺伝子研究が進む乳がん。がんの遺伝子タイプを調べ、薬物療法は個別化される時代に。最適な薬の選択が可能になることで、より高い効果が期待される。開発中の新薬も紹介。
詳細情報
番組内容
今、最も遺伝子研究が進んでいる乳がん。特にこの遺伝子研究の成果を生かしているのが薬による個別化治療だ。乳がんだからと一律に同じ治療をするのではなく、がん細胞が作り出すタンパクなどを調べて5つの遺伝子タイプに分類し、それぞれに最適な薬が選択できるように。手術の後だけでなく、手術前から薬の使用を検討するなど、遺伝子研究の成果のおかげで、乳がん治療は急速に進歩している。期待される現在開発中の新薬も紹介。
出演者
【講師】昭和大学教授…中村清吾,【キャスター】濱中博久,久田直子
ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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