木曜時代劇 ぼんくら(1)(新番組)<全10回>「忍びよる影」 2014.10.22

(拍子木)
(友兵衛)火の用心。
(拍子木)戸締まりしやしょう。
(烏の鳴き声)火の…。
(鳴き声)火の用心。
(拍子木)
与力50騎同心200人とその家族たちが住み暮らす八丁堀組屋敷。
本所深川見廻り方同心井筒平四郎の家もそこにある
(いびき)ああ〜。
そうやすやすとはくたばらないから安心しろ。
(志乃)気付いてました?俺は眠りが深いたちなんだ。
知ってるだろう?はい。
ですが私たちには子どもがおりません。
あなたがよいよいになってからでは養子縁組みにだって差し支えが出ますから心配で。
「よいよい」って…。
よいか?与力同心は一代限りのお役目。
跡取りの心配などしてはお上に対して差し出がましい。
またそのような事を。
何が?それは表向きの事。
あなただって三十俵二人扶持町方同心の井筒のお家を継いだではありませんか。
継ぎたくて継いだ訳じゃない。
大体…。
「跡継ぎだった兄が死んだ時2番目3番目の兄たちが既に他家に養子に出ていたのでしかたなく俺が継ぐはめになったのだ」。
耳にタコでございます。
何が言いたい。
ですから養子縁組みの事です。
このままいけば面倒くさがり屋のあなたの事です。
兄上様たちのお子を養子でもいいとか言いだしかねません。
ですがそれは嫌でございます。
そうか。
嫌か。
だろうなあ。
私は私の里の者を入れたいと思っております。
私の里も同心の家柄。
井筒の家に引けは取りません。
もっともだ。
いいじゃねえかそれで。
そこででございます。
うん?弓之助を覚えておいでですか?え〜っと…。
佐賀町の藍玉問屋河合屋に嫁いだ2番目の姉の5番目の子どもです。
今年12になります。
いたっけなそんな子が。
よく覚えてねえが。
今では人形のようにきれいな顔形の子になりました。
ほう〜。
ですがそういう子どもはたやすく人の道を踏み外してしまうもの。
ですからもしよければあなたと私でしっかりとしつけをしてほしいと姉がそう申しておりますの。
そういうもんかな。
弓之助にまっとうな大人になってもらうためには町場に置いてはいけません。
町方役人の堅い勤めを与えてあげるのが私たちの務め。
井筒の家にあの子を迎えてやって下さいまし。
お願い致します。
あっそう。
(小平次)おはようございやす。
うむ。
小平次よろしく頼みますよ。
へい。
行ってらっしゃいまし。
ああ。
あっ。
あっ縁起でもねえ。
ああああ…。
ああ〜出がけに…。
へっいいじゃねえか。
歩いてる時に切れてこけでもしたらそれこそ大変だ。
ものは考えようってな。
なっ。
はい。
ご機嫌よろしゅうございますね。
ああ?そうか?何かありましたんで?あったんだろうなあ多分。
はあ〜…。
(烏の鳴き声)うん?わあっ。
(烏の鳴き声)旦那お見回りご苦労さまです。
じいさん精が出るな。
いえ。
これは井筒様お見回りご苦労さまでございます。
鉄瓶長屋は相変わらずか?久兵衛。
はい。
深川北町にあるこの長屋。
何年か前初めて井戸のくみ換えをやった日にさびた鉄瓶が2つ出てきた事から誰が言うともなく鉄瓶長屋
表に5軒裏が10軒。
その差配つまり大家が久兵衛であり…
(2人)ご苦労さまです。
どうだい?
(おしま)いいお天気ですねえ。
(お徳)はいおしまさん。
このお徳の煮売り屋に立ち寄るのが平四郎の楽しみの一つでもあった
うめえなあ相変わらずお徳の握るお握りはよ。
硬くもなく軟らかくもなく。
ちょうどいいあんばいだ。
うれしいねえ旦那にそう言ってもらえると。
そのお言葉だけでお代は要らないってねお徳さん。
本当だよ。
なのに旦那ときたら昔っからきちんとお代払ってくれるんだからね。
死んだ亭主も言ってたよ旦那は町方にしておくのは惜しい人だってね。
たかりは金持ちからすりゃいいんだよ。
なあ小平次。
うへぇ。
(笑い声)おかしな人だよ小平次さんは何かってえと「うへぇ」ってさ。
それを言ったら井筒様だっておかしなお人さ。
岡っ引きをお供になさらないで中間の小平次さんをお連れなさってる。
俺は岡っ引きが嫌えだ。
これだもんねえ。
旦那どうも。
寅さん熊さん!旦那になんて挨拶してんだい!ちゃんと「ご苦労さまでございます」ってお言いよ。
へいへい!いいっていいって。
よかないんですよ旦那がそんなふうだからつけあがんだからあいつら!お徳さんにかかったらみんな形なしだ。
(犬の鳴き声)こら!お前たち犬を棒っきれで追い回したりするんじゃない!こら!すいません差配様。
ご苦労さまです。
いいよなこの長屋は。
差配の久兵衛はしっかり者だしお徳がここからにらみを利かしてる。
旦那私ゃ鬼じゃありませんよ。
ただの煮売り屋。
そうでもねえぜ。
この鉄瓶長屋は久兵衛とお前でもってるともっぱらの評判だ。
何にも出やしませんよそんな事言ったって。
そりゃ残念。
(笑い声)
(久兵衛)何かありましたか?いやだからな…。
いやもうよしましょうよそんな話。
あっお露ちゃん。
はい出来てるよ。
(お露)すいません。
じゃあ。
疲れた顔して。
どうなんだい富平の具合は?よくはないようですな。
これうまいっすよ。
おいしそうねえ。
いらっしゃい。
さあさあでぇこにごんぼう。
お父っつぁんごめんね遅くなって。

(久兵衛)近頃はぼけも始まっているみたいですし。
・どのくらいになる?卒中で倒れてから。
・もうかれこれ1年ですよ。
かわいそうにねえ。
私も亭主を長患いで亡くしてますから大変さが分かるんですよ。
兄妹仲がいいからもってるんですよ。
目ぇかけてやる事だな。
同じ長屋の住人なんだからよ。
(銭の音)
(足音)
(足音)ごめんください。
差配さん…久兵衛さん!?あっ。
お徳さんかい。
外でこっちに向かって走る足音が聞こえたもんですから。
そうかい。
もしかして富平さんに何かあったんじゃないかってそう思って。
お露ちゃん。
やっぱり富平さんに何かあったんだね。
いけないのかい?あんたこれ…。
死んだのは富平じゃねえ太助だとさ。
太助さん?太助が殺されたって言うんだよ。
殺された…!?お露ちゃん本当かい?お露ちゃん!本当です。
殺し屋が来て兄さんを殺していったんです。
ああっ!差配さん2階の富平さん私んとこで預かろうか?いやお役人様たちも聞く事があるらしいから。
今は動かすのは無理だ。
お前たちもいいからうちに戻ってな。
何か聞かれたら知ってる事正直にお話する事だ。
いいね?
(一同)へい。
何か気付いたかおえん。
(おえん)ううん別に。
どう?おしまさん。
私は耳が遠いし目だってかすんでるからさあ。
(箕吉)どっちにしても今日は商売は休みだ。
(お絹)バカお言いでないよ。
商売しなきゃおまんまの食い上げじゃないか。
てやんでぇ太助が殺されたんだぞ。
こんな時にな生臭え魚さばいてられるかってんだよ。
・つまりお前は富平の世話をするから一緒に2階で寝ていて太助は下で寝てたんだな?…はい。
…でうつらうつらしてたお前は夜明け前に下で話し声を聞いた。
はい。
…と思ったらどたばたと下で争う音がした。
(物音)ああっ…。
(正次郎)はっ…。
兄さん。
ざまあみやがれ次は久兵衛の番だって言っときな。
そう言ったのか?…はい。
知ってる男か?俺は勝元で働いていた正次郎ってんだ。
この間久兵衛をたたきのめそうと思ったのにこの太助に恥かかされた!長屋の連中に首を洗って待ってろと言っとけ!言っとけよ!兄さん!兄さん!兄さ〜ん!…だとさ。
何ですって!?あの逆恨み野郎が殺し屋だっていうんですか?ああ。
あれはおととしだったなあ。
えっ?ええ。
確か差配さんが以前働いてた勝元って料亭の奉公人だったあいつが差配さんに告げ口されて店を辞めさせられたとかでへべのれけでどなり込んできて。
長屋のみんなで押さえつけて旦那に引き渡したんでしたっけね。
まああん時は酔ってたしなあ。
二度とするなときつくとがめて追い返したんだが…。
けど何で今頃?しかも太助さんなんです?恨み晴らすんなら差配さんでしょうに。
あん時一番最初にあいつを痛めつけたのが太助だったじゃねえか。
太助もそう自慢してただろう。
ああそれで…。
けどそれにしたって…。
木戸番のじいさんは決まった刻限に夜回りして木戸口はきっちり閉めたって胸張って言ってる。
なあ小平次。
(小平次)へい北の菊川の木戸も怪しいやつは出入りしてねえって。
長屋の連中だって同じだ。
お徳お前誰か怪しいやつを見たか?その正次郎をよ。
回想
(足音)けど殺し屋は来たってお露は言ってる。
お露はな。
だが…あの返り血がな。
お露ちゃんがそんな事する訳がありませんよ。
仲のいい兄妹だったんだから。
そんな事ってどんな事だい?いやだから…。
お露はしばらく番屋で預かるから富平の面倒を見てやってくれねえか。
食い物と下の世話をな。
頼まぁ。
分かってますよ。
もう一つ太助を殺すのに使った刃物が長屋のどこかに捨てられてるかもしれねえ。
どぶ板の下や井戸の中まで長屋の連中も集めて捜しちゃあくれねえか。
小平次。
へい。
厠の中をさらうのを忘れるなよ。
うへぇ〜。
うへぇ〜。
旦那。
うん?差配さんは…久兵衛さんは何て言ってるんです?つまりは太助が命を落としたのも私が正次郎の恨みを買ったせいだ。
全ては私のせいなんだ。
太助は私の側杖を食ったんだ。
いやけどさ差配さんあの男が今更…。
箕吉お前にも店を休ませてしまって悪かった。
私のせいでこんな騒動を起こしてしまって…。
長屋の衆には申し訳ないと思っている。
これこのとおりだ。
差配さん…。
申し訳ない。
どうだ?ちょいとどうすんのさ八百富の包丁なんか出てきたら。
しっそんな事言いっこなしだよ。
はいはいほらほら。
ご苦労さんご苦労さん。

(権吉)旦那〜。
おいおいどうした?権吉。
ちょいと腰を痛めちまって。
年ですかね。
ほら帰って寝てろ。
ああこりゃどうもすいません。
あっ足踏むなお前。
起こっちまったもんはしかたねえか。
(小平次)お帰りです。
とどのつまり刃物は見つからなかった
お帰りなさいまし。
うん。
うん?さあご挨拶なさい。
お帰りなさいませ叔父上様。
河合屋の弓之助でございます。
市中見回りのお役目誠にご苦労さまでございます。
へえ〜。
あなた「へえ」はございませんでしょう。
いやちゃんとした口きくと思って感心してんだよ。
お前誰かに中身にあんが詰まってそうだと言われた事はねえか?えっ?かじるとうまそうな顔してるからさ。
あんこの助とかあだ名が付いてんじゃねえのかい?あだ名はくじらでございます。
鯨?海にいる鯨か?そうではなくて鯨尺のくじらです。
何でも測ってしまうものですから。
測る?はい。
叔父上様の眉と眉の間はちょうど1寸1分でございますね。
右の眉は1寸3分に髪の毛一筋ほど余りますが左の眉は1寸6分でございますね。
鼻の下は7分でして唇の差し渡しは2寸に僅かに足りません。
は…えっ?叔母上様の眉と眉の間は…。
1尺7寸。
尺と…7寸。
おお〜合ってる。
うへぇ。
2尺5寸。
尺…2尺…5寸。
合ってる。
うへぇ〜。
何か測ってる何か測ってる。
私は必ず1尺5分の幅で歩くのです。
うん。
これが基本でございます。
うん。
先生に教わりまして今ではどこでも同じ歩調で歩く事ができます。
はあ〜。
先生ってのは誰だい?手習いの師匠か?佐々木道三郎といって佐賀町の長屋に住むご浪人さんです。
三度の飯より測量が大好きなお方なのです。
測量?地面測るあれか?はい。
そうして絵図面や切り絵図など地図を作るのでございます叔父上。
「様」。
…叔父上様。
いいよんな事は。
けどな地図を作るにはお上のお許しがいるんだわ。
そいつはもぐりだ。
ばれたら大変だぞ。
そうですよ。
子どもにそんな事教えるなんて。
第一井筒の家は町方役人なのですから。
普通に暮らしていたらばれませんよ叔母上。
まあ。
それより大層面白いのです。
測る事で物と物の距離が分かります。
測ってどうする?物の有り様が分かります。
測る事で人は身の回りの狭い場所ではなくて天下国家そのものの有り様をも想像できるようになるとそう先生はおっしゃってます。
はい。
つまり受け売りか。
食え。
ねえ一体何があったんだよ。
差配さんはあんな事言ってるけどあんな綻びだらけの与太話長屋の連中だって信じちゃいないよ。
たださ…ただあのお露ちゃんが兄さんの太助さんを殺す訳なんかある訳ないんだ。
そんな事は何かの間違いだよ。
何か事情があるんだろう。
こう言っちゃ何だけど富平さんあんたが殺されたんなら分かるんだよ私ゃ。
私もさ長患いした亭主の加吉に一度ならず二度三度と「殺してくれ」って言われたもんさ。
回想お徳…お徳!あんた!?どうしたんだい?お前にこれ以上迷惑はかけられねえ。
いっその事おいらを殺してくれ頼むお徳!私ゃ臆病だからさ。
けどそのためにあの人は苦しんで苦しんで死んでった。
そん時は後悔したけど今じゃそれでよかったと思ってる。
だからさお露ちゃんがあんたの事を一思いに手にかけたんなら哀れだけど分かるんだよ。
けど太助さんを手にかけるなんて…。
ねえ何があったんだよ富平さん。
何だって?ですからその…何だあれからよくよく考えたんですけど私も年のせいか近頃はつい居眠りしちまうもんですからその間に誰か木戸を通ったかも…なんて思ったりしましてね。
へいへいへいへい。
じいさん…。
へえ私だけじゃなくて豆腐屋も2〜3日前に変な野郎がうろついてたとか言ってましたし…へいへい。
殺し屋は本当にいたのかもしれねえってさ。
・長屋の連中だよ。
お露の話を聞く前はみんな誰も怪しいやつは見なかっただの足音だって聞いてねえとか言ってたくせによ。
手のひら返しだ。
みんなお露をかばってやがる。
久兵衛さんあんたはどうだい?私は…はい。
まあいいや。
お露は自身番から一旦解き放つ。
逃げる心配もねえだろうからな。
そりゃもう私どもが。
ああそれはそうと湊屋にはもう伝えてあるのかい?えっ?築地の俵物問屋湊屋総右衛門ここの地主さ。
あんたもあれだろ?湊屋がやってる勝元って料亭で番頭してた縁でここの差配になったんだよな。
さようで。
あの正次郎ってやつも勝元の元奉公人だったそうじゃねえか。
湊屋にちゃんと話しとかなきゃ後でいろいろ面倒なんじゃないのかい?ええ。
こういう時はあんたの立場もつらいもんだ。
はいお待ち遠さま。
いつもありがとよ。
毎度あり。
あっお露ちゃんお露ちゃん。
しっかりおしよ。
お父っつぁんのお世話ありがとうございました。
後でさお煮しめ持ってってあげるよ。
富平さんの分もね。
しっかり食べなきゃさ。
ありがとう。

(戸をたたく音)誰だい?・
(久兵衛)私だよ。
差配さん。
ちょっといいかい?どうぞ。
今お茶入れます。
残り物で悪いけど。
ありがてえ。
今夜は何にも食べちゃいないんだ。
体に毒ですよ差配さん。
そうだね。
あんたなら大丈夫だね。
えっ?もろもろの事あんたなら仕切ってけると思ってさ。
何ですか?やぶから棒に。
なに今度の事でもあんたにはいろいろと世話になったからさ。
あんたはしっかり者だ。
差配さんに褒められるなんて何だか怖いよ。
そうかい怖いかい。
お露を引っ張るおつもりらしいな井筒の旦那は。
えっ?引っ張って本当の事を白状させんだろうよ。
それが旦那のお役目だからね。
太助には夫婦約束をした女がいたって知ってたかい?…えっ?所帯を持ちたいってね。
先に相談された事があったんだが。
浅草の水茶屋の女で私は勧めなかったがね。
だが時々隠れて会っていたようだ。
それがどうかしたんですか?どうもしないさ。
そういう女がいたってだけの話だ。

(ざわめき)おいごめんよ。
おいおいおいおいおいおい…どうした?旦那大変ですよ。
差配さんが逃げちまったんですよ。
そうですよ。
ああ?この書き置き残して夜逃げしちまったんです。
見せてみろ。
へい。
ちょっと旦那何て書いてあるんですか?声に出して読んでおくれよ。
そうだそうだ。
つまりだこのまま自分が鉄瓶長屋にいたらいつかまた正次郎が襲いに来るに違いない。
長屋のみんなにもこれ以上迷惑をかける訳にはいかねえからここを出ていく。
だから久兵衛がここにはいない事を皆心して世間に広めて正次郎を近づけないようにと。
まあそんな事だな。
世間に広めるってどういう事です!?お人よしにも程があるってもんだ。

(戸が開く音)差配さんが出てったよ。
昨日私んとこに来たんだ差配さん。
後の事は頼むってさ。
あんたんとこにも来たんだろう?自分は出てくからうそをつき通せって。
そう言われたんだろ?殺し屋なんていやしない。
正次郎だって来てやしない。
みんなあんたの作り話だ。
お露ちゃんあんたどうして太助さんを殺したんだい?どうしてなんだよお露ちゃん。
あんなに仲の良かった兄さんを何であんた手にかけたのさ。
後生だから話しておくれよお露ちゃん。
そうじゃなきゃ私ゃあんたをかばいきれないじゃないか。
頼むからさお露ちゃん話しておくれよ。
お父っつぁんがあんな様子じゃお嫁になんか来られないって。
えっ?嫌だって言ったんだって。
寝たきりのお父っつぁんがいるこの家に来るのは。
女かい?太助さんにはつきあってる人がいるって差配さんが言ってたけどその人がそんなふうに言ったのかい?それで太助さん出てくって言ったんだね?だからあんたとけんかになってそれで…。
出ていったりしないって。
私を独りになんかしないって。
兄さんそう言って…。
えっ?・
(富平のせきこみ)まさか…。

(お露)そんな事しちゃいけないって言ったんです私。
そんな罰当たりな事しちゃいけないって。
太助さん…富平さんを楽にしようって言ったのかい?そうなんだね?
(お露)お父っつぁんはもう死んでるようなもんだからって。
お父っつぁんだって分かってくれるって。
お父っつぁんだってそれを望んでるんだって兄さんそう言って聞かなくて。
けどそんなの都合のいい言い訳だっていくら言ったって聞いてくれない。
兄さんはあの女の言いなりになっていたんです。
あの女に…あの女に取りつかれていたんです。
回想死んでるようなもんだろう。
(いびき)
(お露)そんな兄さんに…お父っつぁんを殺させる訳にはいかない…。
だから…だから私…。
いいよもう。
もういいから分かったからもう分かったからね。
殺し屋は来たんだ。
来たんだね本当に。
あんたんとこに来たんだ。
お徳さん…。
包丁はどうしたんだい?洗って台所に。
知らんふりしておくんだよ。
いいね?お徳さん…。
いいかい?今の話は忘れるんだ。
差配さんもそれを望んで自分から姿を消してくれたんだからね。
いいかい?一度ついたうそはどんな事があっても最後まで死んでもつき通すんだ。
いいね?お徳さん…。
いいから。
それでいいんだから。
(鶯の鳴き声)あなた。
あなた。
うん?何かあったのでございますか?ああいや別に。
事は収まった。
あっ旦那。
煮しめまだかい?もうすぐですよ。
お露の事だがな。
久兵衛がああ言って姿を消した以上太助殺しは正次郎の仕業って事でな収まりそうだ。
さいですか。
本当に殺し屋はいたんだろうな。
いますよ。
私んとこだって何度も来た事あったから。
誰んとこだってふいにやって来るもんですよ。
そうか。
さっ出来ましたよ。
ああありがとよ。
小平次さんもどうぞ。
ああはい。
アチッ。
こりゃなかなか熱い。
ハッハッまるで子どもみたいなんだから。
そうだ旦那。
うん?お露ちゃんと富平さんここから別の所に移しちゃいけませんかね?どうです?移す?そうかその方がいいか。
太助さんがいないんじゃ店このままやらせるって訳にもいかないし差配さんが親しかった猿江町の大家さんに頼んでみたらどうでしょう?お前が口利いてくれりゃ心強いや。
…にしても熱いこれ。
あっ。
ああ。
(笑い声)
10日後の事である
おお〜まだ冷えますね。
あっそうだ。
ここの地主の湊屋総右衛門からこの度は不始末をしでかし申し訳ねえと使いが来た。
速やかに次の差配人を手配するからそれまでの間はよろしくご配慮願いたいってさ。
ここの差配さんは久兵衛さんしかいませんよ。
妙なやつが来たらたたき出してやりますから。
穏やかじゃねえなあ。
俺もこれからは自身番に立ち寄るついでだ毎日ここには顔を出す事にするからさ。
そうですか。
長屋の人たちにもいさかいは起こすなってきつく言っときますから。
頼りにしてるぜ。
まあどうせお前の店に立ち寄るんだからなこっちにしたら大した手間じゃねえや。
まあ旦那ったら。
(笑い声)
(烏の鳴き声)縁起でもない。
あっちにお行き!お前だって生きてんのにな。
(富平のせきこみ)お父っつぁん大丈夫?だ…ゴホッ。
(佐吉)官九郎石でも投げられたか。
おしまさんこれちょっと食べてみて。
春の足音が鉄瓶長屋に近づいていた。
…と同時にえたいの知れぬ足音も近づきつつあったのだが…

今はまだ深い眠りの中の平四郎である

(烏の鳴き声)
(2人)あっ。
このバカ親父が!10両のかたに娘を売り飛ばす約束をしてきちまったんですよ!こきやがれこのスットコドッコイ!博打は治らねえ病と同じさ。
捨てりゃあいいのさ。
あの人は何か心に引っ掛かるものがあるようです。
何ですか?この木っ端役人が。
佐吉と申します。
ふん!さてどうなる事やら。
2014/10/22(水) 01:25〜02:10
NHK総合1・神戸
木曜時代劇 ぼんくら(1)[新]<全10回>「忍びよる影」[解][字][再]

宮部みゆきの傑作時代劇人情ミステリーをドラマ化。江戸深川の鉄瓶長屋から次々と店子が姿を消してゆく。この不可解な事件を、“ぼんくら”同心・井筒平四郎が暴いてゆく。

詳細情報
番組内容
本所深川見まわり方同心・井筒平四郎(岸谷五朗)は、深川北町にある鉄瓶長屋の煮売り屋・お徳(松坂慶子)の店に立ち寄るのが日課であった。ところが、その長屋で不幸な殺人事件が起こり、差配人の久兵衛(志賀廣太郎)が長屋からこつ然と姿を消してしまう。平四郎は、久兵衛が事件の裏に隠されたやむにやまれぬ事情のために姿をくらましたと知り、事の真実を伏せたままにする道を選んだのだった。しかしその裏には更なる陰謀が…
出演者
【出演】岸谷五朗,奥貫薫,風間俊介,加部亜門,秋野太作,志賀廣太郎,岸部一徳,松坂慶子,【語り】寺田農
原作・脚本
【原作】宮部みゆき,【脚本】尾西兼一
音楽
【音楽】沢田完

ジャンル :
ドラマ – 時代劇
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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日本語(解説)
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