(四季)お名前は?
(萌絵)西之園萌絵です。
初めまして真賀田博士。
あの私は…。
(四季)165に3,367を掛けると幾つかしら?55万5,555。
どうしてこんな計算を?あなたを試したのよ。
計算のできる方だと思ったから。
でも7の掛け算が不得意のようね。
最後の桁だけ時間がかかったわ。
別に不得意ではありません。
7は好きな数字です。
いいえ。
あなたは気が付いていないのね。
初めて九九を習ったときあなたは7の段が不得意だったはずよ。
7は特別な数ですものね。
数字の中で7だけが孤独なのよ。
あの…。
博士は15年間もこの研究所の地下に閉じこもっていらっしゃいますよね?どんな変化がありましたか?私は自分の自由意思でここにいるわけではありません。
従って私の思考の変化は積極的なものとはなり得ません。
直接人と会うこともないんですよね?自分の知っていることは質問しないで。
会話にそのような導入部は無用です。
接続詞もいりません。
脈絡というものに興味はありませんから。
15年前ご両親を殺したのは本当ですか?対処が迅速ね。
それに思考が飛躍する特徴がある。
それがあなたの一番の才能よ。
真賀田博士なぜご両親を殺害したんですか?なぜかという問いには答えられません。
どうやって殺したのかならお話しできますけどね。
目撃しましたから。
目撃したというのは…。
お人形がやったのです。
お人形?人形が人を殺したのですか?さあ。
どこかへ行ってしまいましたね。
真実というものは他人の理解とは無関係です。
それはつまり博士の別の人格が殺人を犯したということですか?それもたぶん間違いです。
私の中に別の人格がいることは本当です。
でも私の中の他の人たちは私の両親を知らないのです。
どうしてそんなことが分かるんですか?1から10までの数字を2組に分けてごらんなさい。
そして両方ともグループの数字を全て掛け合わせるの。
2つの積が等しくなることはありますか?ありません。
片方のグループには7がありますから積は7の倍数になりますけどもう片方には7がないので等しくはなりません。
ほら7だけが孤独でしょ?私の人格の中で両親を殺す動機を持っているのは私真賀田四季だけなの。
私だけが7なのよ。
動機は何ですか?お外で遊びたかったのかしら。
そんな動機…。
あなたのご両親はあなたにとってどんな存在なの?私の両親…。
あなたも私と一緒ですね。
えっ?両親が目の前で殺された。
《嫌〜!》あれは事故です。
4年前あなたはその事故を見たのですね?はい。
あなたは泣きましたか?はい。
そこに犀川先生もいた。
犀川先生をご存じなのですか?あなたは犀川先生が好きなのですね?犀川先生は父の研究室の学生でした。
私は小さいころから犀川先生を見ています。
大変頭の良い方で発想が柔軟です。
尊敬に値します。
答えになっていません。
答えはイエスです。
犀川先生が私に会えとおっしゃったのね?いいえ。
私の独断です。
私はただ真賀田四季博士に興味があったのでここに来ました。
素直な方ね。
よろしい。
あなたに与えられた面会時間は残り13秒ですがもう少しだけ質問を許しましょう。
あなたは…。
誰ですか?あっ…これは驚きました。
それが人間の思考の切れ味というものなの。
あなた今それを急に思い付いたでしょう?素晴らしい。
それが機械にはできません。
私が誰かなんて質問人工知能には思い付きませんものね。
あの…。
私は真賀田四季です。
西之園萌絵さんあなたにお会いできて楽しかったわ。
あっ待ってください。
博士またお会いできますか?あなたへの興味が失われなければ。
あるいは…。
いつ?全てがFになったら。
F…。
(犀川)まさかあの真賀田四季博士に本当に会ってくるとは。
(犀川)あ〜僕も一緒に行きたかった。
それは真賀田四季博士への興味ですか?それとも私への…。
前者だ。
ヘヘヘヘ。
とっても奇麗な方でしたよ。
君は真賀田四季という天才プログラマーの価値を理解していない。
ネット環境が飛躍的に改善したのも衛星が正確な情報を地球に送信できるのも全て真賀田四季博士のおかげだと言っても過言ではないんだよ。
うらやましいよ。
ホントにうらやましいよ君が。
珍しいですね犀川先生がそこまで熱を上げるなんて。
当然だよ。
彼女は間違いなく世界最高の頭脳の持ち主だ。
最も神に近い人間と言ってもいい。
それほど真賀田四季という存在は…。
だったら先生も一緒に行きましょうよ。
あっつ!ねえもうすぐゼミ旅行ですよね?ことしは真賀田研究所がある島に行くのはどうですか?使われなくなったキャンプ場もあるそうなんですよ。
また西之園家の人脈を使うのかい?はい。
私の叔母さまのご友人のご友人が真賀田研究所の所長さんなんです。
うん。
お願いすれば所内の見学ぐらいはさせてもらえると思いますよ。
へ〜。
県知事の奥さまというのはずいぶん顔が利くんだね。
まっ期待せずに待ってるよ。
・
(ノック)あっ国枝先生こんにちは。
どうだった?浜中君の「既存建築ストックの」
(国枝)小学生の作文以下です。
なるほど。
後で僕も見ておくよ。
(ため息)また秒針まで合わせてるんですか?1秒のずれを許したら全てが曖昧になる。
国枝君今日はもう戻らないから。
どちらへ?極地研に木熊先生の実験を見学してくる。
えっ極地研って低温実験室がある所ですよね?ああ。
先生私も連れてってください。
えっ?車は私が出しますから。
まさか君が土木工学の実験に興味があるとはね。
先生と一緒にいられるんだったら何だっていいんです。
そういうことは軽率に言わないでほしい。
妙な噂が立ったら困るよ。
私は構いません。
フフフ。
「フフン」じゃない。
エヘヘヘ。
あっそういえば知ってます?極地研の神隠し。
極地研の神隠し?そう。
うちの学校の工学部の中では最大のミステリーといわれてるんです。
2年前極地研で起きた事件なんですけど当時木熊教授のゼミの幹事だった人が突然狂ったようにわめき散らして同級生の前でナイフを振り回したんですって。
幸いケガ人は出なかったんですけど彼は研究所を飛び出してそれ以来こつぜんと姿を消してしまったんです。
しかもそれだけじゃないんです。
木熊ゼミでは最初のゼミ幹も失踪してしまったらしいんです。
そいつは留学生の恋人を追い掛けてインドに行ったんじゃないかな。
フフ。
またそんな冗談言って。
西之園君まさかとは思うが君は土木工学の第一人者木熊先生の実験よりも神隠しの謎に興味があってついてきたんじゃないだろうね?う〜んどちらかといえば。
ハハハ…。
ハハハハハ!理解に苦しむよ。
あっ確か極地研って喜多先生がいるんですよね?犀川先生と中学からずっとおんなじ学校だって聞きましたけど。
ああそうだよ。
「すんごくカッコイイ」って友達が言ってました。
それは見る人の主観による。
ヘヘヘヘ。
会うの楽しみだな〜ハハハハ…。
(喜多)へ〜こんなカワイイ子犀川研にいたんだ。
初めまして。
西之園萌絵です。
えっ?西之園って…もしかしてうちの大学の前の総長の?ああ西之園恭輔は私の父です。
あっ娘さん?それはそれは。
で実験は?
(喜多)えっ?実験。
ああ。
今日のデータ測定で3カ月続いた実験もついに終わりだよ。
今そこの会議室で確認中。
うちのゼミはほら木熊教授以下助教も院生もみんな実験屋だからね。
計算屋の俺だけ関係ないってわけ。
うん。
あっそうだ西之園さん始まるまでまだ時間あるから低温実験室見せてあげるよ。
あっそれ見たかったんです。
でしょ?こっちこっち…。
こっちこっち。
えっ?
(喜多)はい。
八川さんすいませんちょっと見学…。
(八川)3人か…。
まあいいけど余計な物触んなよ?はい。
どうも。
どうもです。
前を失礼します。
(喜多のせきばらい)ではマイナス20℃の世界へようこそ。
うわ〜!寒い。
あっ。
うわ〜。
あっ…。
その格好だと10分で意識障害を起こしてしまいますよ。
あっありがとうございます。
どういたしまして。
喜多先生予想以上にすてきです。
ああ…。
これ氷の海に浮かべる石油プラントの設計のためにデータを取ってるんですか?さすが建築学科の学生だね。
そのとおり。
ふ〜ん。
あっこの氷シャーベット状なんですね。
うん。
エチレングリコールを入れてわざと軟らかくしてるんだ。
どうしてそんなことを?スケール効果…。
スケール効果といって本物の氷だとこの大きさの模型には硬過ぎるんだよ。
そのとおり。
ふ〜ん。
何か面白そうですね。
さあ次はこっちこっち。
ここが実験準備室。
本実験の試しをしたりさっきのプールに波や風を起こすための装置がある。
んっ?ここは?んっ?あ〜そこは非常口。
外につながってる。
へ〜。
次はこっち。
ここが機材とかを入れるための搬入室ね。
あっ西之園さんそろそろ限界でしょ?出よっか。
はい。
創平も出るか?当然だ。
んっ。
閉めてきて。
おう。
お〜。
あ〜寒かった〜。
ね〜。
君たちのせいでね温度が0.7℃上がった。
非常口のドア開けなかったろうね?
(喜多)もちろんです。
喜多先生ありがとうございました。
(喜多)あ〜どういたしまして。
・
(珠子)萌絵ちゃん?あっ珠子先輩!あらら?珠ちゃん西之園さんとお知り合い?
(珠子)あっはい。
弓道部の先輩なんです。
部活以外でも色々相談に乗ってもらったりして。
ねえもしかして例の先生?あっそうです。
(珠子)へ〜。
ヘヘヘ…。
(喜多)え〜?どんな相談したのかな?
(珠子)ハハハ。
あっ萌絵ちゃんちょうどいいときに来てくれた。
えっ?終わったら楽しい打ち上げあるからもうぜひ出てね。
分かりました。
(珠子)じゃあ後でね。
はい。
あっ木熊先生お邪魔してます。
(木熊)ああ犀川先生いらっしゃい。
お忙しいところ恐縮です。
今日は勉強させていただきます。
ああ。
こちらは助教の市ノ瀬君。
あっ。
犀川先生初めてだっけ?
(市ノ瀬)ええ。
初めまして市ノ瀬です。
犀川です。
建築学科の西之園です。
・
(ドアの開く音)丹羽君レシーバーは?
(丹羽)OKです先生。
ではみんな最後の計測だ。
しっかりミスのないように。
(一同)はい。
(喜多)よしこっちで見よう。
あっ。
じゃあ始めようか。
丹羽君頼むよ。
はい。
(ブザー)丹羽君バルブ4からお願い。
教授と市ノ瀬先生の指示ってどっから出てるんですか?
(喜多)ああ教授室。
2人で実験をモニターしてるんだよ。
ああ。
(市ノ瀬)バルブ4そこでストップ。
丹羽君次5番お願い。
あっごめん。
俺ちょっと失礼するわ。
えっ?イギリスの友人からメールが届く時間なんだ。
自由に見学してて。
おう。
はい。
(市ノ瀬)もう少しゆっくりがいいわ丹羽君。
何回やってんだよ。
へったくそだな〜。
(ため息)
(木熊)OK丹羽君。
バルブ付近チェックしてくれるかな?
(木熊)よし。
丹羽君上がってくれ。
あんな服着てても30分が限界なんですね。
(珠子)寒さよりも体力を消耗するのよ。
えっ珠子先輩もそれ着るんですか?うん。
弓道着よりも簡単だよ。
フフフ。
(市ノ瀬)服部さん5番が不調だから8番に切り替えるわよ。
(珠子)はい。
(八川)こりゃ難しいぞ。
珠ちゃんにできるかな?
(木熊)市ノ瀬君XY方向の定位をスキャンして監視しといて。
服部君ちょっと待って。
そのまま維持して。
八川君テンションは?
(八川)2.5です。
(木熊)ん〜…どうもサーボが変だ。
注意して。
(八川)分かりました。
何度やっても実験はトラブルが付き物だね。
ええ。
どう?何だかちょっとトラブルみたいです。
先輩大丈夫かな?まっよくあることだよ。
(市ノ瀬)服部さん8番お願い。
(八川)おっうまい珠ちゃん。
(市ノ瀬)OKです。
切り替え完了。
では計測始めてください。
(市ノ瀬)服部さん十分なデータが取れたわ。
もう大丈夫よ。
お疲れさま。
(八川)珠ちゃんグッドジョ〜ブ!珠子先輩お疲れさまでした。
よしいいだろう。
実験終了だ。
みんなご苦労さま。
八川君クーリング切っていいよ。
(八川)はい。
木熊先生お疲れさまでした。
いいデータが取れたよ。
あっそうだ。
これから実験室の中で打ち上げがあるんだがよかったら一緒にどうだ?ああいや…。
えっ実験室の中でやるんですか?それが極地研の伝統なんだ。
へ〜。
また実験室で打ち上げですか?エネルギーの無駄です。
まあいいじゃないか。
飲み物も冷やせるしむしろエコだろ。
(船見)あ〜おいしい。
(萌絵・船見)ハハハ…。
(喜多)うまい。
ホントお疲れさまでした。
(木熊)ああ。
ホントにありがとう。
ん〜珠子先輩遅いですね。
(船見)そういえば何してるんだろう?先生今回の実験データを見せていただけませんか?解析モデルに興味がありまして。
今回の実験は建築分野にも応用が利きますからね。
分かりました。
市ノ瀬君後で先生に。
はい。
ありがとうございます。
(荒井)おかしいな〜。
丹羽先輩も珠ちゃんもどこにもおらへんわ。
(船見)電話しましょうか?
(荒井)いや荷物も携帯も全部院生室に置いたままなんや。
忘れて帰ってもうたんかな?
(船見)えっ?え〜珠子先輩打ち上げを楽しみにしてそうでしたけど。
うん。
丹羽さんもゼミ幹だからこういうのは必ず出るんだけどな〜。
(八川)ねえちょっと丹羽君は?
(荒井)何や帰ってもうたみたいです。
(八川)え〜!でも車置きっぱなしだよ?彼の車どかしてもらわないと俺の車出せないよ。
歩いて帰るわけないですよね?もしかしてまた神隠しやったりして。
(木熊)荒井君。
(荒井)すんません。
(船見)私守衛の向井さんに聞いてきます。
(喜多)あれ?誰か準備室の鍵締めたか?開かないんだけど。
実験の後誰も準備室に行ってないよな?
(船見)はい。
(喜多)鍵は教授室と守衛室にしかないしな。
じゃあ誰かが内側から鍵を掛けたってことですか?えっ?
(木熊)それはおかしいな。
確認した方がよろしいのでは?そうだな。
(喜多)えっ?ちょっ…ちょっと。
(船見)キャ〜!あっ…珠子先輩?すぐに警察を。
ああ…はい。
(八川)あっ…行こう。
(木熊)いったい何が…。
自殺じゃない。
そんな…。
(喜多)ちょっちょっ…丹羽君!?ちょっ…丹羽君。
丹羽君!ちょっ…。
(警察官)ご苦労さまです。
(鵜飼)死んでいた丹羽さんと服部さんは木熊研究室のゼミ生だった。
(木熊)はい。
丹羽君は博士課程の2年生でゼミ幹。
服部さんは修士課程の2年生でした。
(鵜飼)あのゼミ幹とは?
(喜多)ゼミの幹事のことです。
ゼミ生のリーダーみたいなもんです。
(鵜飼)ふ〜ん。
なるほど。
丹羽さんがトラブルに巻き込まれていたとかそんな話は聞いたことありますか?特に何も。
(鵜飼)失礼します。
捜査一課の鵜飼と申します。
西之園萌絵さんと犀川先生ですね?ええそうですが。
ああ。
大変失礼いたしました。
今上から連絡を受けたところです。
お二人はもう帰っていただいても結構ですので。
(片桐)でも鵜飼さん…。
(鵜飼)こちらのお嬢さんは西之園本部長のめいごさんだ。
(片桐)えっ!犯人は搬入室のシャッターから逃げたんですよね?はい?実験中珠子先輩が準備室から出てきた後…。
《珠ちゃんグッドジョ〜ブ!》実験室側からは誰もあの扉には触れていません。
ええ。
それは実験室内のカメラの映像でも確認できてます。
ということはあの扉は準備室の中から鍵を掛けられたということですよね。
(鵜飼)そうです。
遺体が発見されたとき非常口も内側から鍵が掛かっていました。
よく見てますね。
(片桐)しかも非常口の扉は外側からは鍵が掛けられない構造になってます。
残る出口は搬入室のシャッターしかないですよね。
いやそれがおかしいんですよ。
そのシャッターは電動式なんですが壊れてましてまったく開かない状態だったんです。
えっ?だったらどうやって犯人は外へ…。
そうなんですよね。
まあいわゆる密室ってやつです。
シャッターはいつから故障していたのですか?
(鵜飼)えっとそれは…。
(片桐)けさですね。
(鵜飼)うん。
ですね。
(片桐)守衛が気付いて昼間に修理業者を呼んだのですがその場で直せないのでモーターを外して持っていってしまったと。
その事実を知っているのは?守衛から技官の八川善太郎に伝えられてます。
八川は今日の実験には影響がないので特に誰にも報告しなかったようです。
なるほど。
先生。
んっ?もしかして何か気付いたんですか?いいや。
僕にはまったく理解できないね。
こんな事件は。
じゃあ帰ろう西之園君。
鵜飼さんよろしいですか?
(鵜飼)あっはいもちろんです。
失礼します。
ちょっと待ってください先生。
あのとき以来ですね先生が運転する車に乗るの。
4年前のあの日も先生が運転する車で帰りました。
(一同の悲鳴)《嫌〜!》《嫌〜!!》私が落ち込んだときはいっつも犀川先生が運転してくれてる。
君は飲んでるから運転できない。
それだけだよ。
両親の事故のときは何にもできませんでした。
でも今回は私にもできることがあります。
何ができるの?誰がどうやって珠子先輩を殺したのか答えを見つけます。
それは君が解くべき問題ではないよ。
先生はどう思われます?あの密室について。
それは警察に任せればいいんじゃないかな?珠子先輩が亡くなってるんですよ?そんな無責任な。
あの事件を解決する責任は僕にはない。
それよりも僕はあしたの学部会と講義のために寝なければならない。
君も事件のことは忘れてしっかり休みなさい。
えっ?珠子先輩丹羽さんと付き合ってたんですか?
(学生)うん。
お互いのご両親にも挨拶に行ったって。
まさかあんなことになるなんて。
それって他にも誰か知ってたんでしょうか?いや「誰にも話してない」って言ってたけど。
丹羽さんが誰かと付き合っていると噂を聞いたんです。
(船見)あ〜丹羽さんね。
あの人はイケメンだしモテるから彼女の1人や2人いてもおかしくないわ。
1人や2人…。
失踪したゼミ幹の方のお名前は?
(荒井)あ〜増田潤さん。
何でナイフを振り回したんでしょう?分からん。
急に大声出して振り回し始めてん。
どんな様子でしたか?昨日のシンポジウムの資料です。
どうだった?幼稚園の学芸会レベルです。
(浜中)これさ殺された院生ゼミ幹だったんでしょ?ヤバいな〜俺も犀川研のゼミ幹だし…いった!
(国枝)そんなこといいから早く修士論文上げて。
(浜中)すいません。
ハハハ…。
あの〜犀川先生報告があるんですけど。
んっ?事件のこと色々調べたんです。
あれほど言ったのに君は…。
殺された丹羽さんと珠子先輩は半年前から交際してました。
研究室内の恋愛なんてよくある話だよ。
いやそれに2年前のゼミ幹失踪事件にも関係してそうなんです。
失踪したゼミ幹の名前は増田潤さん。
彼はいなくなる直前に同級生にナイフを振り回したのですがその同級生は丹羽さんだったんです。
先生どう思われます?だから言ったはずだよ。
「僕に事件を解決する責任はない。
警察に任せるべきだ」って。
も〜どうしてそんなにこの事件のことになるとそんなに避けようとするんですか?・
(喜多)もしかして俺が犯人だとでも思ってるんじゃない?喜多先生!
(喜多)よっ。
それで俺のことをかばおうとしてるとか。
何の用だ?「何の用だ」はないだろ。
これ持ってきてやったのに。
市ノ瀬さんから預かってきたこの前の実験のデータ。
お〜それは興味深い。
西之園さんがメールで送ってくれた事件の調査報告見たよ。
あっ勝手に送っちゃってすいません。
ううんとんでもない。
しかし丹羽君と服部さんが交際してたっていうのには驚いた。
そうなんですよ。
犀川先生全然真面目に聞いてくれないんです。
「女性の言葉には最優先で耳を傾けろ」学生時代からずっと教えてるんだけどもね。
愚かな男だ。
喜多先生私の話聞いてくれますか?もちろん喜んで。
問題解けちゃいました。
はっ?犯人は2年前に失踪した増田潤さんです。
えっいや…どういうこと?もともとは丹羽さんが珠子先輩を殺害するつもりだった。
その計画を実行するために増田さんを脅して協力を取り付けたんだと思います。
ずいぶんとっぴな発想だね。
どんな計画なの?まず事件が起きたのはあの実験の最中だったんです。
準備室に入った丹羽さんは非常口を開け外で待っていた増田さんを入れた。
そして増田さんは搬入室に隠れる。
丹羽さんが出ていった後今度は珠子先輩が準備室に入ってくる。
丹羽さんは防寒服を脱いだ後建物の外を回って鍵の開いている非常口から準備室へ入り…。
《脱げ。
早く脱げ》《防寒服早く脱げ。
早く》珠子先輩をナイフで脅し防寒服を脱がせてから殺害。
その後丹羽さんは非常口から外へ脱出。
搬入室に隠れていた増田さんが内側から非常口の鍵を掛ける。
増田さんは珠子先輩の防寒服を着て珠子先輩に成り済まします。
このために小柄な増田さんの協力が必要だったんです。
そして事前に用意されていた合鍵を使って最後にドアを外側から閉める。
これが当初の計画でした。
なるほど。
丹羽君がアリバイ工作をするはずだったと。
はい。
でも増田さんが裏切り搬入室で丹羽さんを殺害した。
その後増田さんは計画どおり非常口の鍵を掛け防寒服を着て実験室へ出て外から鍵を掛けた。
こうして2つの遺体と密室が誕生したんです。
以上です。
いかがです?いやすごい!現象をきちんと説明してる!ねっ?そうでしょ?ハハ。
ただ増田君を知る者としては彼がそこまで冷酷に殺人を犯せる人間だとは思えないけどね。
あっすいません。
いやいいんだ。
客観で問題を捉えることはとても大切だよ。
で創平担当教官としての採点はどうなんだ?どうして増田君は非常口から逃げなかったのか。
えっ?それは犯人が研究所内にいると思わせるためです。
なら何で実験室に通じるドアの鍵を掛けたか。
それは…ああそうですね。
矛盾してます。
それに服部さんが防寒服を脅されて脱がされたというのも不自然だ。
ナイフを出した時点で声を上げることもできるしある程度抵抗だってするはずだよ。
背後からあっさり刺されるという状況には帰結しない。
いい線いってると思ったのに。
相変わらず思考が極端に飛躍してるよ。
おいおい。
駄目出しばかりしないでちゃんと正しい道筋を示すのも教官の務めなんじゃないのか?今回の密室が意図的につくられたものであるならそこには犯人の明確なる目的があるはずだ。
だがこの密室には犯人にとって何もメリットがない。
メリットがない?だって外部の犯行なら実験室側の鍵は開けておくべきだし内部の犯行なら外に抜ける非常口の鍵を開けておくべきだろう。
うん…そうですね。
つまりこれは不必要な密室なんだよ。
不必要な密室…。
西之園君密室はまったく重要じゃない。
えっ?じゃあ何が重要なんですか?純粋に学問を追究する研究所に2人の学生が殺されるという狂気が潜んでいた。
それがこの事件の最大の命題だよ。
(喜多)まあまあでも西之園さん。
いや萌絵ちゃんよくここまで考えたね。
感心したよ。
優しいですね〜喜多先生は。
あっそうだ。
今日は極地研に行かれます?ああうん。
この後行くけど。
あっ一緒に行きます。
気になることがあるんです。
西之園君…。
行きましょう先生。
はい。
あっ…。
いってきま〜す。
いってきま〜す。
(喜多)どうしたの?いややっぱりここにはもう1つ空間がありますよね?
(喜多)えっ?あの計測室の隣です。
計測室の隣?そんなとこに何かあったかな?
(喜多)えっ?いや…ダクトスペース?
(市ノ瀬)ええ。
あの棚の後ろに確かダクトスペースに入れる小さな扉があったと思います。
(喜多)そんなのあったかな?よいしょ。
よっ…よいしょよいしょ。
あっホントだ。
さすが市ノ瀬先生。
よく覚えてましたね。
ほ〜。
ここにはずっとこの棚が?出入り口は屋上にもあるから極地研ができたころからずっとこういう状態よ。
警察はここを?調べてないと思うけど。
確認しましょう。
おう。
分かった。
ちょっ…これをちょっとずらして。
よっ…よいしょ。
よいしょ。
(喜多)何か…何だかひでえ臭いだなこれ。
電気とかないですかね?
(喜多)あ〜あるある。
ちょっと待って。
ちょっと携帯のね…。
電気をこれで…はい。
あっ。
(喜多)えっ?
(喜多)あっ!
(市ノ瀬)あっ!うわ!
(喜多)ちょっ…えっ?何?えっ?
(喜多)えっ?何?ちょっ…ちょっと。
(喜多)完全にミイラ化してる。
喜多先生。
えっ…えっ?あれ。
あれは…。
(喜多)あっ。
増田君。
えっ?遺体の持ち物から学生証が見つかりました。
増田潤。
2年前にご家族から捜索願が出されています。
木熊研究室の所属でしたね。
はい。
とても優秀な院生でした。
まさかこの建物の中にいるとは。
(鵜飼)彼が失踪した当時ダクトスペースの扉は?棚で閉じられてました。
(片桐)屋上に通じるハッチは内側から閉まっていました。
最後に開けたのはいつですか?修理も頼んでませんし定期点検も2年ほど前だったと思います。
また密室ですか?誰ですか?
(学生)分かんない。
場違い…。
(学生)知らないよね。
どうしたんですか?尾行でもされてるみたい。
いやこういうとこはどうも…。
お願いした物持ってきてくれました?
(鵜飼)こんなことホントはまずいんですよ。
大丈夫です。
叔父さまにはちゃんと話を通してありますから。
フフフフ。
ここで見てくださいね。
お茶でも飲んでいてください。
あっデザートもおいしいですよ。
はあ…。
《増田潤に外傷はなくリュックからは睡眠薬の空き瓶が発見された》《屋上からダクト室に入り内側から鍵を掛け薬を服用し自殺したと考えられる》《木熊京介教授には離婚歴がある》《岡山工科大学で助手をしているとき26歳で見合い結婚》《半年で別れている》《18年後東京で別の女性と再婚》《子供はいない》《喜多北斗准教授は神南大学の学生時代から木熊教授に師事》《かつてはゼミ幹を務めていた》《市ノ瀬里佳は生まれてすぐ両親が離婚》《岡山で母親に育てられる》《ドイツに留学後木熊教授の助教となる》《八川善太郎技官は未婚で一人暮らし》《工業高校時代にケンカで補導歴あり》《荒井正直は博士課程の1年》《丹羽に数万円の借金があった》《船見真智子は千葉県出身》《修士課程の2年で服部珠子の同級生》《友人には服部の悪口を語っていた》《事件の10日前丹羽と服部は横浜のデパートに行きスーツとドレスを丹羽のカードで購入》《品物は事件当日丹羽の車の中にあった》《増田潤は優秀な学生で彼の研究は学会でも注目されていた》《また失踪する直前増田は精神を病み「しか」とつぶやく姿が何度も目撃されている》《増田潤が使っていたパソコンは一度警察に預けられたが極地研に戻されている》鵜飼さんありがとうございました。
(鵜飼)えっもう読んだんですか?えっちょっと西之園さん!1人はつらいな。
(メールの着信音)「萌絵です」「警察の調書を見ました」「内容をまとめたものを添付しておきます」「それから増田さんが使っていたPCが残っていることが分かりました!」「確認したらまたご報告します」
(守衛)あ〜。
「shika」?・
(物音)・
(ドアの閉まる音)えっ…。
えっあの…。
(せき)
(不通音)
(不通音)先生…。
先生…。
2014/10/21(火) 21:00〜22:09
関西テレビ1
[新]すべてがFになる #01[字]【不必要な密室と氷点下20度の実験室に潜む殺意】
超理系頭脳を持つ最強コンビが登場!完全密室で発見された男女の変死体の謎!氷点下20度の実験室に潜む殺意と意図されなかった密室の驚愕トリックとは?
詳細情報
番組内容
神南大学工学部建築学科3年の西之園萌絵(武井咲)は、同学科の准教授の犀川創平(綾野剛)に、ある報告をした。“もっとも神に近い人間”と犀川も絶賛する天才プログラマーの真賀田四季(早見あかり)に、面会して来たというのだ。四季は、事情により幽閉されているが、萌絵は、県知事の叔母に頼んで面会にこぎつけた。
犀川がそれをうらやんでいると、助教の国枝桃子(水沢エレナ)がやって来る。犀川は国枝に、
番組内容2
これから同大学の極地環境研究センターに出かけると話す。犀川に好意を持つ萌絵は、一緒に付いて行く。
ふたりを迎えた工学部土木工学科准教授の喜多北斗(小澤征悦)の案内で、萌絵と犀川はマイナス20度の低温実験室を見学する。その後、萌絵の先輩の服部珠子(吉谷彩子)に誘われ、ふたりは実験終了の打ち上げに参加。そこには、土木工学科教授の木熊京介(平田満)や助教の市ノ瀬里佳(市川由衣)を始め、
番組内容3
複数の学生もいた。
打ち上げは始まったが、なんと実験室の隣室で珠子が、さらにその隣室で丹羽健二郎(菊田大輔)が殺害されていた。
駆けつけた警察により、喜多らは事情を聞かれる。萌絵と犀川もそこにいたが、刑事の鵜飼大介(戸次重幸)によって帰宅を許される。驚く現場の刑事に鵜飼は、萌絵が県警本部長の西之園捷輔(吉田鋼太郎)の姪だと明かす。すると、突然萌絵が、犯人の逃走経路について話し始め…。
出演者
武井咲
綾野剛
小澤征悦
早見あかり
戸次重幸
水沢エレナ
/
吉田鋼太郎
ほか
スタッフ
【原作】
森博嗣「すべてがFになる」他S&Mシリーズ作品(講談社文庫)
【脚本】
黒岩勉
小山正太
【音楽】
川井憲次
【主題歌】
ゲスの極み乙女。「デジタルモグラ」(ワーナーミュージック・ジャパン/unBORDE)
【編成企画】
成河広明
加藤達也
【プロデュース】
小椋久雄
貸川聡子
【演出】
城宝秀則
小椋久雄
小林義則
【制作】
フジテレビ
スタッフ2
【制作著作】
共同テレビ
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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