(テーマ音楽)正しい健康情報を分かりやすくお伝えする「きょうの健康」です。
今日のテーマはこちら。
てんかんは患者数が大人と子ども合わせておよそ100万人。
そして年間におよそ6万人が新たにこの病気にかかっているんです。
随分いらっしゃるんですね。
そうですね。
では早速専門の方にお話を伺っていきましょう。
てんかんの診療がご専門です。
どうぞよろしくお願いします。
井上さん今日のテーマ「てんかん」ですが発作が起こる病気だという事は分かるんですがこれは治る病気と言っていいんでしょうか?てんかんは不治の病ではありません。
適切な治療により70%から80%の人で症状がなくせる病気です。
てんかんの治療において鍵となるのはどんな事なんでしょうか?病気の理解がポイントです。
医療関係者はてんかんのタイプ症状その影響をよく理解して最善の治療を提供します。
患者さん自身そして家族を含めた身近な人はてんかんがどのような病気で治すためには何をすべきかをよく理解する事が大切です。
そして周囲の人や社会の理解も必要です。
周囲の理解があれば患者さんの苦しみも和らぎます。
是非多くの人に病気についてよく理解してほしいと思います。
では実際に治療されている方にお話を伺いましたのでご覧下さい。
現在てんかんで治療を続けているスズキさん25歳。
13歳のある日家でゲーム中にけいれん発作を起こし意識を失って救急病院に運ばれました
自分の事だけど…
その後てんかん専門の医療機関を受診。
薬を毎日服用するようになり発作は一度も起こりませんでした。
しかし18歳の時に2度目のけいれん発作で意識を失ってしまいます。
それは長時間のアルバイトで過労と睡眠不足が続いている時でした
その後発作は一度もなくスズキさんは就職活動を機に運転免許も取りました
病気の事をきちんと理解してそして前向きに捉えてらっしゃるのが印象的でしたよね。
そうですね。
そしてスズキさんの主治医が井上さんという事ですね。
はい。
スズキさんは病気を理解して受け入れ薬で発作を抑えて自動車の運転免許を取得する条件も満たす事ができました。
友人たちの理解にも支えられていたといいます。
一方でてんかんのある人の自動車事故のニュースなどをたまに聞くんですがきちんとした条件を満たしていれば運転免許というのは取れる事なんですね?そうですね。
運転に支障するおそれのある発作が2年間ない事医師の診断書が必要な事など一定の条件の下で自動車運転免許を取得する事ができます。
法律にのっとって免許を取得する事が必要です。
スズキさんの場合は2度けいれん発作を起こした訳ですがそれぞれで意識を失ったとおっしゃってましたが必ず意識というのは失うものなんでしょうか?タイプによって変わります。
スズキさんのようにいきなり意識を失うのは全般てんかんというタイプで発作が脳全体で同時に広く起こる事で一瞬ぼ〜っとしたりけいれんを起こして倒れるといった発作になります。
もう一つこちらが部分てんかんですね。
部分てんかんは脳の一部分に発作が始まるタイプです。
脳のどこで発作が起きたかによって発作の症状が変わってきます。
では部分てんかんの発作の症状をこちらで見ていきましょう。
いろいろあるんですがまず脳の運動と関係する部分で発作が起これば手や足など体の一部がピクンと動いたりします。
そして感覚の部分であれば手足がしびれたり音が聞こえたり光や模様が見えたりします。
そして意識に関係する部分で起こりますとぼんやりする。
また記憶に関係する部分で起こりますと昔の記憶が現れたりします。
記憶がなくなったりする事もあるという事ですね。
そして感情に関係する部分で起こりますと恐怖感や寂しいといった事を感じる事があります。
一口にてんかんの発作といっても本当にいろんな種類があるという事が分かりましたがそもそもどうしててんかん発作というのは起こるものなんでしょうか?脳の外傷や髄膜炎や脳炎脳卒中や脳腫瘍で起こる事もありますが原因不明も少なくありません。
スズキさんも原因不明です。
原因の種類を問わず脳に本来はない異常な電気活動が発生してそれが広がる事でてんかん発作が起こります。
そしてスズキさんはてんかんの専門の医療機関に行ったという事なんですがやはりこれは大切な事なんでしょうか?そうですね。
特に薬の使い方がタイプによっても変わりますのでまずてんかんの専門医療機関で診断治療方針を決める事が大切だと思います。
一度専門病院で診てもらったあとはふだんの掛かりつけのお医者さんのもとで治療を続けるとよいと思います。
いろんな発作もある訳ですし適切な診断も大事になってくるかと思うんですがその上で大切な事というのはどんな事なんでしょうか?脳の異常な電気信号を捉える脳波検査やてんかんの原因を判断するためのMRIなどの画像検査そして何よりも時間をかけた問診が大切です。
診察中に発作が起こるのはまれですし患者さん自身発作を覚えていない事が多いので発作を目撃した人家族同僚などから発作の様子について聞き医師に伝える事が大切です。
最近では携帯で動画撮影をする事もでき重要な情報源になっています。
発作が起きた時に周りの方もちゃんと理解をしてそれを記録していくという事が大事になる訳ですよね。
このてんかんですが治療法にはどんな事があるんでしょうか?大きく分けて2つあり薬と手術です。
薬で70%以上の人で発作のない状態になります。
発作をコントロールできない場合には脳の手術を検討します。
ではまず薬について具体的に教えて頂けますか?はい。
抗てんかん薬にはいろいろな種類があります。
薬はまず1種類から使うのが基本で効果のない場合には別の薬に切り替えていきます。
こちらをご覧下さい。
抗てんかん薬の有効性をタイプ別に示したものです。
薬の名前が出ています。
例えばカルバマゼピンは部分てんかんの第1選択薬として使われます。
この黄色の部分ですね。
有効です。
実は全般てんかんに使用すると効果がないかあるいは場合によって悪化する事もあります。
ラモトリギンという薬では同じ全般てんかんの中でもぼ〜っとする欠神発作には効果がありますがピクンとするミオクロニー発作は悪化する事があります。
同じ全般てんかんの中でも同じ薬でも効き方が違うという事なんですね。
このようにてんかんのタイプや薬の選択を十分に検討しないと発作がよくならなかったり時には悪化する事もあるのです。
やはりその辺りは専門医を受診してきちんと見定めていくという事が大切ですね。
薬に関して副作用も気になりますがどんな事がありますか?薬によって異なりますが眠気ふらつき気分の変化あるいは集中がうまくできないとか食欲の問題などもあります。
そういった副作用が非常に気になるという場合はどうしたらいいでしょうか?発作が続く時も含めて副作用などがある時には必ず医師と相談するようにして下さい。
自己判断で薬を調節するのはよくありません。
また不規則に薬をのんだりのみ忘れる事が時に発作の再発の原因になりますので規則的に薬をのみ続ける事が必要です。
のみ続けるというところですが大体どれぐらいの期間のめばいいというのはあるんでしょうか?脳波検査の所見や生活状況によっても変わってきます。
発作のない期間が長くなればなるほど次の発作は起こりにくくなります。
少なくとも数年間以上は長い間発作がなければ時間をかけて薬を減量しやがて中止する事も可能です。
数年間というのは決して短い期間ではないのでその間に副作用が出てしまったりもう大丈夫じゃないかと自分でいろいろ思ってしまう事あると思うんですがとにかく何か感じたらお医者様に相談をして話し合いながら長期間薬をのみ続けていくという事が大切になる訳ですね。
そうだと思います。
てんかんの治療今まで薬の話をまずお聞きしましたが手術という事もあると。
具体的にはどんな事なんでしょうか?発作の源の脳の一部分を除去したり発作の広がりを遮断する事によって発作をなくしたり発作を軽減する治療法です。
発作の源を取り除くと薬で発作が止まらなかった人の50%から80%で発作がなくなる事が分かっています。
ただ日本では手術適応のある人のくらいしか治療を受けておらず認識がまだ十分ではないのが現状です。
認識もそうですがやはり脳の一部を取ってしまうという事に対する恐怖というか心配もあると思うんですがこれは大丈夫なものなんでしょうか?経験の蓄積と技術の進歩でリスクは非常に低くなりました。
切除する事で脳の働きに影響が生じないか事前に検査して後遺症を回避できるようになっています。
発作が薬でなかなか止まらない場合には手術を考慮してみる事も大切です。
では再びスズキさんの例を見てみたいんですが2度目の発作を起こした時過労があってそして睡眠不足もあったという事なんですがこういった事がきっかけになる事は多いんでしょうか?少なくないですね。
過労とか睡眠不足アルコールなどは発作のきっかけになりますので避ける事が大切です。
特に全般てんかんの方では睡眠不足が影響する事が知られていますのでうまく睡眠をとる工夫をしてほしいと思います。
そのように生活を気を付けてかつ薬もしっかり定められた量をのんでいても発作が治まらないという場合にはどうすればいいでしょうか?1年以上状態が改善されない場合には医師と相談して薬を変更したり専門職や専門病院にセカンドオピニオンを求めてもよいと思います。
その専門医専門病院という事ですがこちら日本てんかん学会てんかん診療ネットワークのホームページから専門医を見つける事ができます。
とにかく根気を持って治療をしていくという事が大切なんですね。
そうですね。
そして今日お聞きして思ったんですがてんかんというのは治る病気だという事をご自身も周りの方も理解するという事が大切ですよね。
そうですね。
患者さんは自分の病気がどんなものでありどうコントロールすれば生活を普通に送れるのか主治医と相談しながら病気に向き合ってほしいと思います。
家族を含めた周囲の人は患者さんの病気に対する取り組みをしっかりサポートしてあげてほしいと思います。
今日は大人のてんかんについてお話を伺いました。
井上さんどうもありがとうございました。
(2人)ありがとうございました。
2014/10/21(火) 20:30〜20:45
NHKEテレ1大阪
きょうの健康「大人のてんかん治療」[解][字]
「てんかん」は、不治の病ではなくなり、タイプにあった適切な治療・生活習慣で発作のない状態にコントロールできることが多くなった。大人のてんかん治療について紹介。
詳細情報
番組内容
日本国内で約100万人いるといわている「てんかん」。脳に異常な“電気活動”が発生し、「意識の消失」「けいれん」「体の一部分が動く」などの発作を繰り返し起こす病気だ。今では、不治の病ではなくなり、タイプにあった適切な治療を受け、過労・睡眠不足・アルコールなど発作の誘因となる生活習慣を避けることで、発作のない状態にコントロールできることが多いといわれている。大人のてんかん治療について詳しく伝える。
出演者
【講師】静岡てんかん・神経医療センター院長…井上有史,【キャスター】久田直子,寺澤敏行
ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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