新・科捜研の女3 2014.10.21

(開演のブザー)
(今井恭介)ご覧下さい!王位簒奪者の呪うべき首を!
(感嘆の声)世界は解放されました。
陛下を取り巻く貴族達は心の中で私の万歳に唱和しております!スコットランド王万歳!
(一同)スコットランド王万歳!
(歓喜の声)
(拍手)
(拍手)お疲れ様!お疲れ様でした!
(高池龍平)座長お疲れ様でした。
(三条ともえ)今日の5幕最高だったわよ。
ありがとうございます。
(スタッフ)お疲れ様でした。
お疲れ様でした。
ありがとう。
(栗矢晴彦)お客がハケたらすぐにバラシに取り掛かるから先に上手の小道具回収しといて。
下手はおれがやるから。
(桂俊和)はい!お疲れ様です。
あ…あぁ…!
(恭子)どうしたんですか?
(悲鳴)こちらです。

(榊マリコ)頭蓋骨骨折。
(乾健児)やっぱりそれが死因ですか?見たところ頭部以外に外傷はないわね。
(土門薫)ん…。
傷口の形状から棒状の鈍器。
直径は4〜5センチぐらいかしら。
やっぱりこいつが凶器か…。
まだ断定は出来ないわ。
それより身元は?
(木佐貫直巳)はい。
太刀川肇45歳。
フリーの演出家兼プロデューサーです。
この芝居の演出を担当していたそうです。
演出家って舞台の袖にいるものなのかな?製作スタッフの話だと公演中はロビーのモニターで芝居のチェックをしてるんだけど今日は楽日…つまり千秋楽でダメ出しの必要はないからロビーには姿を見せなかったそうです。
ねぇこれってどういう仕組みなの?あそこにロープが並んでるだろ?綱元といって照明機材や幕を吊ったバトンをあそこで1本1本上げ下げするらしい。
上げ下げって誰が?栗矢晴彦。
この芝居の舞台監督だ。
私のせいでこんな事になってしまって…。
舞台監督って具体的にどういう仕事なんですか?あ…はい。
幕が開いたら演出家は表から見るのが仕事ですから裏の事は全部こっちで。
全部というのは具体的に…?はい…。
装置の転換やスモークとかの特殊効果あとは…照明と音響以外の事はほとんど…あ…!ここに場面ごとにやる事がすべて書き出してあります。
この…ダイコクというのが一番後ろの黒い幕ですね?あの…お…オオグロです。
その大黒というのはいつ動かすんです?大黒は背景を黒くしたい時に下ろしておいて明るくしたい時に飛ばすのが基本でして…。
(栗矢の声)1幕と2幕はずっと下ろしたままで3幕に入って国王になったマクベスが登場するきっかけで飛ばして…。
(劇のセリフ)4幕はそのままずっとホリゾントで…。
終盤5幕のクライマックスマクベスがマクダフに殺される場面で最速で大黒を下ろします。
最速…?はい。
映像でいうカットアウトのイメージで出来るだけ速く下ろせって演出の太刀川さんが一番こだわったところでした。
どれぐらいのスピードかわかりますか?あ…さぁ…?タッパが二十二尺…約6.5メートルでそれを大体4秒ぐらいで下ろしてますから…。
(木佐貫)じゃあその時たまたま大黒のバトンの下にいたら…。
即死は免れませんね。
安全確認などはされなかったんですか?
(ともえ)その必要はないって私がお願いしたんです。
劇団の主宰の三条ともえさんですね。
はい。
お恥ずかしい話今回の公演は赤字ギリギリでスタッフの数もなるべく減らすようにって栗矢さんにムリなお願いをしたのは私なんです。
責任はすべて座長の私にあります。
警察でもどこへでも行きますから。
ちょっと待って下さい!板の上で起きた事は自分の責任です!逮捕でも何でもして下さい!栗矢…!とにかく実際にバトンを動かされた栗矢さんには業務上過失致死の疑いで同行していただきます。
(栗矢)はい。
三条さんの方もいずれ聴取に伺う事になると思います。
…わかりました。
(米倉助教授)死因は頭蓋骨骨折と。
死亡推定時刻はどうですか?あ〜そらほら…大黒とかいう幕が下りてきた時やろ?この転換表を見る限り開演が7時5分で最初に大黒を上げるのが7時40分。
再び下ろしたのが終演間際の8時55分だそうです。
いやその8時55分とちゃうか?結論を出すのはまだ早すぎます。
うん…。
あ〜発見時の午後9時から最大さかのぼって3時間以内。
せやから午後6時から9時の間っちゅうとこかな。
6時だと…まだ開演前?あとは胃の内容物の消化具合を見るしかないんやけど…。
コーヒーぐらいしか入ってなかったしなぁ…。
(榊伊知郎)事故なんでしょ?なんで被害者の血液なんか調べさせるんだ?100パーセント事故だと決定したわけじゃない以上他の可能性を潰すのもあたしたちの仕事でしょ?はいはいわかりました。
あ解析終わった。
…出たよ。
ねぇ…これって…!
(伊知郎)うん…。
(小向光子)睡眠薬〜?そう被害者の血中から睡眠薬の成分が検出されたの。
被害者は事故に遭う前睡眠薬飲んでたんですか?
(日野和正)なるほど睡眠薬飲んでボーっとしてたからうっかりバトンに当たっちゃったんだよ。
ねぇ睡眠薬の成分もっと詳しく調べられるでしょ?胃の内容物とも比較して。
やれば出来るけど…まさか!?ただの事故じゃないかもしれないの!もう少し調べてみたいからみんなも協力して!ね!
(土門美貴)やっぱり。
言うと思った。
また残業か…。
コーヒー豆足りるかしら?ごめんね!あ…!あの…!ここにあった舞台装置はどこに行ったんです!?
(佐野)舞台は一瞬の夢まぼろし。
昨日まで魔女が住んでいた荒野も欲望に取りつかれた王と王妃の城もバーナムの森でさえ一夜明ければただの廃材の山さ。
廃材…。
現場保存するように言っておけば良かった…。
え?これ何ですか?あぁ短く切ったバトンだよ。
袖幕を吊る時なんかに使う。
口径は大黒のバトンと同じね。
ルミノール反応は出なかったんだ。
え…?え…?これ動かしてみていいですか?あぁダメダメ。
素人が手出すと怪我するぞ。
さあの幕見てごらん。
スーッと動いてピタッと止まる。
最近はどこの小屋も電動バトンだがこういう微妙なタッチは手引きじゃないと出せないね。
ちょっといいですか?うん。
軽い…!あんな大きな幕を吊ってるのに。
当たり前だよ。
あの幕と同じ大きさのこういうシズをこっち側にも積んであるんだ。
原理は単純なんですね。
最速で下ろす時はこう…!あぁっ…!?オイ。
で被害者の足取りは?午後3時過ぎまでは別の芝居の打ち合わせをしていたがそこを出た後3時半以降の消息は不明だ。
これなら誰にも見られずに入ってくる事は可能ね。
役者の入り時間は5時だったそうだ。
それより前に被害者は何者かにここに呼び出されて…。
睡眠薬を飲まされ眠らされた。
芝居の終演する間際に大黒のバトンが下りてくるあの場所まで連れてこられて…そして舞台監督の栗矢さんは決められたタイミングでバトンを最速で下ろした…。
これならただの事故じゃなくなるわね…。
殺しだとして誰が出来る?公演の関係者以外が舞台に出入りしたらかなり目立つぞ。
内部の人間に限っていいと思うわ。
制作スタッフは全員ロビーにいた。
照明や音響のスタッフは舞台から離れたオペ室にいた。
という事は可能なのは舞台周辺にいた人間ね。
役者の出ハケはこれを見ればわかると思いますけど。
(木佐貫)お借りします。
(栗矢)でもどうしてこれを?いえ…科捜研のヤツが事故じゃない可能性があるから調べろって口うるさく言ってきましてね。
…え!?そう言われた以上調べないわけにはいきませんでね。
いえ!あれは事故です!ほ…本番中に私がこ…この手で大黒を下ろしてそれで太刀川さんがあんな事に…。
事故なんです間違いありません。
(日野)舞台の左側がヘタで右側がジョウズ…?シモテとカミテでしょ〜!大黒が下りるのは5幕の8場だからここですね。
やっぱり…。
何がやっぱりなんです?見て。
この…5幕の4場の時は上手の袖にスタンバイしている役者が大勢いるでしょ?え〜っと…。
バーナムの森から進軍する兵隊役の人たちです!その役者たちが全員舞台に上がった後上手の袖には舞台監督助手の桂って人だけになるの。
でもその後にすぐに下手に移動してしまう。
ホントだ!下手でマクベスの首スタンバイって書いてあります!って事は5幕の4場から…8場までは上手の袖には誰もいなくなるわけだ!だったらその隙に眠ってる被害者を運び込んでも誰も気付かないって事…?うん。
さらにもう1つ大事な事があるの。
このシーンにはほとんどの役者が舞台の上に登場しているか下手で次の出番のためにスタンバイしているでしょ?
(舞台のセリフ)
(日野)そうか…役者にはアリバイあるわけだ。
そう。
でもたった一人出番を終えた役者がいるわ。
(乾)誰です?マクベス夫人。
5幕の1場で退場してからカーテンコールまで出番がありません!つまり5幕8場で大黒が下りる直前に上手の袖にいる事が可能なのは彼女だけなの!そう…。
でもマクベス夫人って…。
…座長の三条ともえ。
栗矢は何かを隠しています。
(佐久間誠)しかし罪状は業務上過失致死だ。
地検に書類送検して在宅起訴が通常の流れだ。
これ事情聴取にも素直に応じてる以上拘留を延ばすわけにはいかんだろ。
彼の供述には大事な事がすっぽり抜けてます。
え…大事な事?綱元のロープを動かしている最中にバトンが被害者の頭部を直撃したならかなりの衝撃があるはずです。
なのにそれに関する供述が一切ありません。
太刀川がそこにいる事を知っていた上でバトンを下ろしたのかもしれませんね。
なんだってそんなマネを…!まだ確かな事はわかりませんが三条ともえが共犯の可能性も考えられます。
三条ともえが!?これから会いに行ってきますがよかったらサインでももらってきましょうか?サイン…?なぜだ?いやファンかなと思ったものですから。
何バカな事言ってるんだ!そうですか。
とにかく拘留延長の件ご検討下さい。
失礼します。
失礼します!何がファンだ!なんでわかったんだ…?オイ!…はい!1つどうにも腑に落ちない事がありまして。
何かしら?関係者の話を聞く限り演出家が本番中に舞台袖に来る事はそうそうある事じゃないそうです。
だとしたら太刀川さんはなぜあの場所にいたんでしょうか?う〜んひょっとしたらカーテンコールに出ようと思っていたのかもしれないわ。
カーテンコール?楽日だったしカーテンコールに予告もなしに現れて私たちまで驚かそうと思っていたのかも。
(木佐貫)確かに…事故は芝居が終わる直前でしたけど…。
結構出たがりな人だったし。
ちょっとしたサプライズを思いついたんでしょうね彼。
子どもっぽいとこあったから。
さすがにかつての劇団のお仲間だけあってよくご存知なんですね。
彼は旗揚げのメンバーでしたし。
それに…付き合っていたんです。
調べていただければわかるけど。
ほぅ…そうでしたか。
別れたのも10年以上も前よ?彼は劇団を辞めて演出家として一人立ちして最近はプロデューサーとしても活躍していたわ。
って事は今回の公演は太刀川さんにとっては劇団への凱旋のような意味合いもあったわけですか。
っていうかムリヤリ出資してもらってようやく実現にこぎつけたって言った方が正しいわ。
それだって調べてあるんでしょ?名探偵役だけあってさすがですね。
じゃあこちらも単刀直入に訊きますよ。
太刀川さんから出資したお金の返済を求められていたんじゃありませんか?その単刀直入さに免じて正直に答えますけど確かに太刀川が亡くなった事で彼への借金を返さなくても済むようになればそれは幸いな事よ。
ほぅ…。
だからといって殺したりはしない。
あれは事故だったの。
それ以上でも…それ以下でもないわ。
(佐野)ビデオ?劇団の制作の人から聞きました。
芝居の本番を録画したテープがあるって。
ぜひ見たいんです。
貸して下さい。
お嬢さん…お目が高いねぇ。
なにしろこれは楽日の舞台だからねぇ…。
三条ともえの10年に一度あるかないかの熱演だよ!特に1幕のラストは鬼気迫るものがあったねぇ。
内容にはまったく興味ありません。
あくまで証拠として確認するだけです。
え…?
(携帯電話)ちょっと…。
もしもし?本番のテープが借りられたわ。
キミ!まだ貸すと言ってないよ。
「こっちは犯人がわかった」ひょっとして…やっぱり三条ともえ?「いや舞台監督の栗矢が自白したんだ」え…?開演前のセッティングの時でした。
オーイ桂!介錯!どこ行ったんだ…ったく。
上手ー!大黒下りるぞー!
(大黒の下りる音)
(何かにぶつかる音)…太刀川さん!?
(ともえ)どうかしたの?
(栗矢)いや…あの…大黒のバトンが当たっちゃったみたいで…!
(ともえ)え…!?太刀川さん!?大丈夫!?しっかりして!太刀川さん!太刀川さん!救急車を呼びましょうか?手遅れよ…もう死んでるわ。
え…?そんな…。
死んだのは本番中じゃなくて開演前だったんだ…。
どうしてすぐに通報しなかったんだ?それは…。
もうお終いね…。
だって…警察が来たら当然公演は中止よ。
楽日だし…振り替えなんかきかないわ。
払い戻しをするにしたって劇団にお金はもうないの!それに何よりつらいのは…こうしてる今も外で開場を待ってるお客さんに今日の芝居を見てもらえない事よ…!幕を…幕を開けましょう!ともえさんは私にいつもどおり幕を開けるように言いました。
そして…。
あとは私に任せて!
(栗矢の声)5幕の4場で上手の袖に誰もいなくなるのを待って…。

(栗矢の声)私はいつものきっかけで幕を下ろしました。
なぜ今になって急に本当の事を?事故とはいえ太刀川さんを殺してしまったのは私です。
ともえさんはそれをかばおうとしただけで何の罪もありません。
だからともえさんを疑うのはもうやめて下さい。
お願いします!隠していて申し訳ありませんでした。
あの…栗矢さんはどうなるんでしょうか?業務上過失致死に変わりはありませんが証拠隠滅や偽装をしていますからね。
裁判での心証はかなり悪くなるでしょう。
それより三条さんあなたもですよ。
犯人隠避あるいは証拠隠滅罪に問われる可能性があります。
その際は改めて取り調べを受けていただく事になるかと。
(ともえ)…わかりました。
今さらですが小細工などしなかった方が良かったと思いませんか?ハァ…。
でもそうしたら幕は開かなかったわ…。
(リポーター)「劇団立ち上げよりのメンバーだった太刀川さんとこのような別れになりましたが現在の心境はどうですか!?」「お騒がせして申し訳ありません」
(日野)けどさ…確かに死体を動かしたりやる事はやっちゃったけどさせっかく来たお客さんに芝居を見せたかったわけだからねぇ。
ひょっとして同情が集まって逆に株が上がったりするかも。
(一同)あ〜!なるほどね。
そこまで計算してるの!?全部計算!女優は怖いわね〜!
(伊知郎)やれやれ…今夜は徹夜しないで家の布団で眠れるな。
危うくこっちまで眠りを殺してしまうところだった。
眠りは生き物じゃないと思うけど。
セリフだよ!「もう眠りはない。
マクベスは眠りを殺した」そもそも彼女の証言では被害者が睡眠薬を飲んでいた事は一切語られてないのよ。
知らなかっただけだろう。
劇場に来る前に飲んだんじゃないのか?だったら演出家が本番前に睡眠薬を飲む?納得出来る理由を説明してもらえる?ニュースニュース。
もう…!何だこれ?あビデオ入れたままだった。
事件のあった夜の芝居。
借りてきたヤツ。
「自分のやってきた事を考えるだけで身の毛もよだつ!」
(高池)「二度と見たくない!!」意気地のない!短剣をおよこしなさい。
眠っている者や死んでいる者は絵姿にすぎません。
絵に描かれた悪魔を怖がるのは子どもの目だけです。
(伊知郎)しかし皮肉なもんだな。
何が?マクベス夫人は王様を殺した罪悪感に悩むマクベスをキツい言葉で励ますんだ。
一方事故とはいえ太刀川って演出家を殺してしまった栗矢を励まして彼女は芝居の幕を開けさせた。
三条ともえとマクベス夫人…現実と舞台での虚構がダブったからこそあの夜の芝居がそれこそ10年に一度の熱演になったのかもしれない。
そういう話なんだマクベスって。
子どもの頃に文学全集とかを読ましとくんだった。
小学校の入学祝いに周期律表くれたの誰だっけ?ハハ…。
(佐野)特に1幕のラストは鬼気迫るものがあったねぇ。
ねぇ!1幕の終わりってどんなシーン?1幕のラスト…?1幕のラスト…。
(ビデオを巻き戻す音)あ!この辺かな?「私は赤ん坊を育てた事があります」自分の乳房を吸う赤ん坊がどんなにかわいいか知っています。
でも私は微笑みかける赤ん坊のやわらかい歯茎から自分の乳首をもぎ離しその脳味噌をたたき出してみせましょう!これってどういうシーン?だからダンカン王を殺すのに怖気づいたマクベスをマクベス夫人が「やるしかない」って煽るシーンだよ。
それって殺す前?あぁ。
やりそこなう…!?勇気を振り絞るのです!そうすればやりそこなうものですか!「
(舞台のセリフ)」確かに鬼気迫る熱演だな…。
何の科学的根拠も物証もないの。
でも…。
…でも?私には彼女が殺したとしか思えない。
このベロベロのお付きの者に私たちの大逆の罪をなすりつければ…!それでカタがつくではありませんか!だったら…それを証明しなくちゃ!マーちゃんには文学はないけど科学があるだろ。
(光子)胃の中の睡眠薬を今さら調べてどうするつもり?吸収されずに残っていた睡眠薬の量と血中に含まれた濃度から見て被害者が仮に3時半に服用したとすれば死亡推定時刻は8時半以降…。
被害者は3時過ぎまで打ち合わせをしていてその場で睡眠薬とか薬を飲んだ証言はありませんよね?ちょっと待ってよ…栗矢の証言によると開場時間の6時30分より前に被害者は死んでたんじゃないの?ひょっとして…。
(木佐貫)この間の芝居5幕の最後の方で上手から下手に移動したのは間違いないんですね?
(桂)えぇ…ほら俺血糊担当でマクベスの首に血糊塗ってからマクダフさんに渡す段取りだったし。
栗矢の証言どおりですね。
1ついいですか?はぁ。
開場直前の舞台のセッティングの時にあなたがいなかったと栗矢晴彦が言ってるんですが。
あぁ…!役者に急に買い物頼まれちゃって薬局までのどスプレー買いにいってたんですよ。
役者…?三条ともえさんに頼まれたから俺ダッシュで。
三条さんにですか…?これ…3つとも被害者の血液?そう。
まずこれが大黒のバトンに付着していたもの。
こっちが被害者の傷口の周辺から採取した分。
で3つ目が舞台の床に流れていた血液。
これ全部比較分析してみて。
(乾)ん〜おかしいなぁ…。
(日野)同じ血液なのになぁ…。
どうだった?あぁ出ましたけど…。
3つのうちの1つだけね他とは違う成分がわずかだけど含まれててさぁ…。
それって床に流れていた血液じゃない?なんだわかってたの?で見つかった成分は?あぁ…はい。
すべて繋がったわ。
この死体が誰よりも雄弁に語ってくれるはずだわ。
カーット!はいOK。
(AD)OKでーす!
(スタッフたちの声)
(AD)現場移動となりまーす!お疲れ様です三条さん。
次のシーンは対岸に移動します。
(AD)あの…どうかしましたか?あ…何でもないわ。
移動ね?はいお願いします。
「まだ血の匂いがする」「アラビアじゅうの香料をふりかけてもこの小さな手の嫌な匂いは消えはしまい」滑舌はいいけど感情がこもってないわね。
人を殺した事はありませんから。
…今日は何かしら?太刀川さんを殺した本当の犯人がわかったんです。
殺したって…。
事故でしょあれは。
いいえあなたが殺したんです。
この手が血で汚れてるって言うのなら調べてもらって結構よ。
まぁ役柄上科学捜査のイロハくらいなら知ってるの。
ルミノール試薬でも何でもどうぞ?その必要はありません。
ですがお見せしたいものがあります。
「今時とところが揃ってやってきたのにご自分から意気地をなくす…!」「私は赤ん坊を育てた事があります」「自分の乳房を吸う赤ん坊がどんなにかわいいか知っています」
(ともえ)何これ?ダメ出しでもしてくれるわけ?いいえ。
楽日のあなたの芝居は文句のつけようのない迫真の演技でした。
特に小屋主の方が絶賛したのは1幕の終わりのこのシーンです。
「やりそこなう…!?勇気を振り絞るのです!」「そうすればやりそこなうものですか!」このセリフ相手役のマクベスにではなく自分に言い聞かせていたんじゃありませんか?これから殺人を犯す自分を励ますために。
台本を読み直した方がいいわよ。
ダンカン王を殺したのはマクベス。
それに…太刀川さんを殺したのは栗矢さんでしょ?いいえ。
栗矢さんは太刀川さんを誤って死なせてしまったとあなたに思い込まされただけです。
「消えておしまい忌まわしい染み!」「消えろというのに!!」あなたはこれを利用したんですね?事件の日あなたは他の役者やスタッフが来る前の午後4時過ぎ大事な話があるからと太刀川さんを呼び出した…。
太刀川さん。
旗揚げ公演以来ね…あなたとこうやって舞台に立つなんて。
覚えてる?最初はカフェのシーンだったわ。
(太刀川肇)ノスタルジーに付き合うほど暇じゃないんだがな。
ねぇ考え直してもらえない?今回の公演が成功したら次は東京公演を予定してるの。
それが成功したら観客動員だって増えるしそしたらあたしね…!何度も話しただろう。
君にとって劇団は重荷なだけだ。
解散して稽古場も売って借金を返す…それしかない。
わかったわ…。
ただし打ち上げまではみんなには黙ってて。
あぁ。
太刀川さんに睡眠薬を飲ませて眠らせた。
眠った太刀川さんを高見の下に隠したあなたは…。
開場の直前スタッフの桂さんに買い物を頼み誰もいなくなった上手の袖で大黒の下に太刀川さんを寝かせて血糊で偽装を施した。
(栗矢)オーイ桂!介錯!
(栗矢)上手ー!大黒下りるぞー!
(砂袋を落とす音)太刀川さん…!?どうかしたの?あなたは言葉巧みに栗矢さんを操り太刀川さんが本番中に事故で死んだと偽装するように仕向けたんです。
最後に大黒を下ろす時までに私が元あった場所に戻しておくわ。
だから普段どおりオペして。
ね?それですべてうまくいくから…!はい…。
あとは私に任せて!
(ともえ)もう開場よ…急いで!
(栗矢)はい!死亡推定時刻は長く見積もっても8時半より後…。
つまりこの時点では太刀川さんはまだ生きていたんです。
(ともえ)消えておしまい…!忌まわしい染み!そして本番が始まりマクベス夫人の最後の出番を終えたあなたは…。

(舞台のセリフ)おそらく効果音や音楽が大きくなる時を狙って…。
(魔女たちの笑い声)
(殴る音)床から採取した血液からわずかですが血糊の成分が検出されました。
本物の血が流れる前に床に血糊の跡があった何よりの証拠です。
あなたの計画は実に巧妙でした。
頭を直撃したバトンに血痕がなければ不自然です。
あなたはそこまで計算していた…。
太刀川さんの死は事故ではなく明らかな殺人です。
それを行えたのはあなたしかありえません。
ドラマではね犯人役ってあまりやった事がないの。
刑事とか探偵の方が多いし…だからこれは私がいつも相手に言わせてるセリフなんだけど…。
私がやったっていう証拠はどこにあるの?これはドラマでも芝居でもありません。
現実です。
そうよ。
だから私はマクベス夫人みたいに罪悪感からおかしくなったりしないわ。
この手が血で汚れてるって言うのなら調べてって言ったでしょ?科学捜査に詳しくて被害者の血液が何より重要な証拠になるのを知っていたあなたは当然自分は一切血液に触れないようにしたはずです。
だとしたら…?ただ…凶器を持ち去る事はさすがにムリだった。
バトンに血痕でも付いてた?いえ。
食品用のラップフィルムを巻いていれば血痕は残りません。
はがしてしまい手袋などと一緒にとっくに処分しているはずです。
でなければこんなに目立つところに凶器を残したりはしないでしょう。
そう残念ね。
これはルミノール試薬ではありません。
でんぷんに反応するヨウ素試薬です。
血糊は文字どおり糊を使って作ります。
糊に含まれたでんぷんが反応したのはこの1本だけでした。
血液には細心の注意を払ったあなたもニセモノの血液…つまり血糊には無頓着だったんですね。
ハン何よそれ。
舞台で使ってるんだから血糊が付いてたって全然おかしくないでしょ?いいえこれが太刀川さんの殺害に使われた凶器なのは間違いありません。
百歩譲ってそうだとしてそれが私とどう繋がるの?動かぬ証拠を見せてよね。
ドラマだって詰めを誤ると許してもらいないのよ。
血糊の反応が出たのはこの辺りです。
模様のようになっているのがわかりますか?模様…?人を殴り殺すほど強く握ればたとえ手袋をしていても掌紋…つまり掌の指紋が残ります。
この掌紋があなたのものと一致すればそれこそ動かぬ証拠です。
この芝居で血糊が手に付いたのはあなた以外にはマクダフ役の今井さんとスタッフの桂さんだけです。
2人の掌紋とはすでに照合して一致しない事がわかっています。
指紋並びに掌紋の採取に応じていただけますね?
(笑い声)それには及ばないわ。
はい?すべてお話します。
行きましょう。
よろしいんですか?犯人が誰だかわかった後で延々と動機とか喋るシーンよくあるじゃない?私あれ大っ嫌いなの。
待って。
…ちょっといいかしら。
「まだ血の匂いがする…」「アラビアじゅうの香料をふりかけてもこの小さな手の嫌な匂いは消えはしまい…!」舞台監督の栗矢は釈放された。
利用されていただけだったものね。
彼女はどう?素直に供述しているよ。
やっぱり劇団を潰すって言われた事が動機だったの?劇団や芝居…舞台に立つ事だけはどうしても手放したくなかったそうだ。
だからって人まで殺すか?それぐらい取りつかれてたのかもね。
舞台には魔物が住んでるっていうわけか?ううん…住んでるのは人の心の方。
…はぁ?あ…。
なんからしくないセリフだったわね。
2014/10/21(火) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
新・科捜研の女3[再][字]

「偽りの血痕!殺意と競演した女」

詳細情報
◇出演者
沢口靖子、内藤剛志 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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