(テーマ音楽)確かな健康情報を分かりやすくお伝えします。
「きょうの健康」です。
今週お伝えしているのは…まずは今日はこちらの写真からご覧下さい。
これは手術で片側の乳房を全て取った方が乳房を再建された写真です。
こうやって見ても左右違和感なく大変きれいに自然な感じで仕上がっていますよね。
乳がんの手術で胸を失ってしまったり形が変わってしまったりするというのは治療のためとはいえとても悲しい事です。
でも現在ではこういった乳房の再建の技術がとても進んでいてまた保険の適用も広がってきているんです。
そこで今日のテーマはこちら。
今日も専門家をお迎えしております。
分かりやすく教えて頂きます。
それではご紹介致しましょう。
乳腺外科で乳がんの診断と治療がご専門です。
どうぞ今日もよろしくお願い致します。
今見ましたが乳房再建の技術というのは大変進んでいるんですね。
そうなんです。
再建の技術が進んだ事とそれから保険の適用が広がったという事で乳がんの手術に対する考え方が昨年と比べて大きく変わってきています。
以前はできるだけ乳房を温存したいという方が多かったんですけれども今は全てを切除してもこれだけ自然に再建ができるという事で無理に温存してがんを取り残したために局所の再発のリスクを高めたりあるいは左右の胸がアンバランスになったりするぐらいなら全てを切除して再建した方が美容的にもよいという考え方に変わってきています。
そこで今日はこちらの3つの項目について詳しく伺っていきます。
こちらです。
1つずついきますよ。
まず乳房再建術ですがこれはどのような方法なんでしょうか?乳房再建術には大きく分けて自家組織かインプラントの2通りの方法があります。
まず自家組織の方ですが自分のおなかや背中の筋肉や脂肪皮膚などの組織を使う方法です。
軟らかくて温かい自然な乳房を作れるのがメリットです。
痩せたり太ったり加齢によって下垂したりすれば同じように大きさや形が変化するというメリットがあります。
自然な変化がある訳ですね。
一度手術をすればその後は原則何もしなくていいというメンテナンスの手軽さがメリットであります。
ただ一方デメリットとしては組織を取ってくる時の新たに別の傷が必要になってしまうという事とそれから手術時間あるいは入院期間が比較的長くなるという事が挙げられます。
特に新たな傷ができてしまうというのは体の負担も心配ですよね。
そうですね。
例えば腹筋の一部やその神経を切り取るために手術後しばらくおなかに力が入らなかったり痛みが出たりというような体の負担がある訳ですがしかし最近はDIEP法といいまして筋肉を傷つけず残したまま皮膚と脂肪そしてそれを養っている血管だけを切り取ってそして移植する方法が注目されています。
切り取ったものをここへ移植する。
この方法だと体の負担を最小限にとどめる事ができるのですがただ筋肉から血管を外すという非常に高度なテクニックを要求されますので従来の方法よりも手術時間は長くなる訳です。
さて自家組織による再建教えて頂きましたがもう一つ方法がございましたね。
もう一つの方法はインプラントと呼ばれるシリコン製の人工物を入れて胸の膨らみを作る方法でそちらにあるのが実物です。
こちらですね。
触ってみますと本当に自然な軟らかさがあるものです。
こうやって見てみましょう。
どっちも同じような円い…。
円いですね。
正面から見るとそうなんですが横にしてみますとおわん型しずく型。
しずく型の方は下の方に膨らみがあるんです。
しずくの形をしています。
そちらのしずく型のインプラントも今年の1月から保険で使えるようになったばかりのものでより自然な膨らみを作る事が期待できる訳です。
胸の形や大きさによってはもう一つのおわん型の方が向いている場合ももちろんあるんですが胸の大きさや形というのは一人一人異なっていますのでその方に合った自然な膨らみを作るためにインプラントの種類というのは200種類以上あるんです。
そんなに…。
200種類。
そうなんですね。
このインプラントを使って再建をしていくという場合手順はどういうふうになっていくんでしょうか?手術直後というのは皮膚を一部取りますので皮膚のゆとりがないためにまず皮膚を伸ばすための道具としてエキスパンダーという器具を大胸筋という筋肉の下に挿入します。
手術と同時にエキスパンダーを入れる。
そして傷がある程度癒えたところで生理食塩水というのを注入する。
これです。
そして半年ぐらいかけてゆっくり足りなくなった皮膚を伸ばしていくんです。
最終的に皮膚が十分伸びたところで軟らかいインプラントに入れ替える事になります。
入れ替えて最終的に皮膚も十分伸びたところでこのインプラントが入るという事ですね。
そうするとエキスパンダーを入れる時とインプラントを最終的に入れる時と2度手術が必要という事になりますか?まれに1回でインプラントを入れてしまう場合もあるんですが多くの場合は皮膚が伸びていなくて負担が大きいという事で2回に分ける事の方が主流です。
インプラントを使った再建による特徴はどういう事でしょう?メリットデメリットあります。
まずメリットとしては1回の手術時間入院期間が短くて済むという事とそれからそれに伴って体の負担も少ない訳です。
1つの傷で操作が行えるという事で。
ほかの組織を取ってくるという事がありますからね。
一方で2回に分けるという複数回の手術が必要になるという事と完成までに半年から1年かかると…。
それから長期的に見るとインプラントというのは永久的なものではなくて健康な方の乳房が下垂してきたらそれに合わせて例えば小さくするとか新しいものに交換するというような事が必要になる可能性もあります。
自然に変化してくれるものではないという事で人工物ですね。
この再建はどんなタイミングで考えていくという事でしょうか?乳がんの手術と同時にエキスパンダーを入れるという事もできますしあるいは手術後しばらくしてからやっぱり胸の膨らみが欲しくなるという事で後から再建する事もできる訳です。
そうなんですね。
じゃ治療の時は治療の事を考えて終わったけれどもやっぱり再建したいという場合でも後からでもできるという事なんですね。
同時の場合はもちろん手術の回数が1回少なくなりそして麻酔から覚めた時にある程度膨らんでいるという事で胸が無くなったという喪失感が少ない訳ですが一方最初は乳がんの手術に専念したいという事で再建の事に関してはじっくり考えて後からどんな方法がいいかも含めて考える。
あるいは別の医療機関乳房の再建手術を専門にしてる医療機関もありますのでそういった所を訪れて再建手術をするという事も選択肢としてあります。
さて今日のお話の柱を進めましょう。
2つ目です。
リンパ節といいますとがんにおいては転移でいつも問題になるものでございますね。
どういう事でしょうか?以前は乳がんはわきの下のリンパ節を経由して全身に広がると考えていたのでわきの下のリンパ節を全て取り除くリンパ節郭清というのが通常行われていました。
こういう広範囲…?そうです。
そうしますと手術をした側の腕がむくんだり痛みが生ずるという事でそのあとの合併症が1割ぐらいの人に起こっていたんです。
しかしリンパ節に転移がなければ本来は取らなくてもいい。
そういった合併症を防ぐ事ができる訳でそういった考え方のもとに転移があるかないかを調べる検査としてのセンチネルリンパ節生検というのが登場してきました。
ではこのセンチネルリンパ節というのはリンパ節のどういう所なんでしょうか?乳がんの所からリンパの流れに乗っかって最初に乳がん細胞が到達するであろうリンパ節の事をセンチネルリンパ節といいます。
ここですね。
がんが転移するとするとまず到達する所というイメージでよろしいですか?はい。
これを見つけ出す検査手法がありましてそのリンパ節を集中に調べて転移がなければその先のリンパ節を取らないというのがセンチネルリンパ節生検の考え方です。
どういう見極めがあるんでしょうか?最近ではもちろんリンパ節転移がない場合あるいは転移があっても2ミリ以下であれば郭清を省略するという方向にありますし…。
あったとしても2ミリ以下。
あるいは温存手術で手術後に放射線治療を含めた再発予防の治療が行われるのであれば転移が2個以下であれば郭清を省略するという方向にあります。
郭清を省略するとそれに伴う影響も減らす事ができるという事ですよね。
さてそれでは次です。
3つ目ですね。
放射線治療を手術後に行うか行わないかこれはどのように考えるんですか?全ての方に行う訳ではなくてこちらにあるように乳房を温存した場合には残った乳房に僅かながら残っているかもしれない乳がん細胞をその照射でやっつけるという事でそれが一つの方法としてあります。
それからもう一つはもしわきの下のリンパ節に転移が4個以上あった時には残した皮膚の皮下にリンパの流れがある訳ですがそこにがん細胞が残っている可能性があるので胸壁に照射をする事があるんです。
この治療はどれぐらいの期間やるものでしょうか?一般的には5日間連続で病院に通って頂いて2日は休みそれを繰り返して5週間で合計50グレイの放射線を当てるという事が必要になります。
長い期間ですがもう少し短い期間でというような考え方はあるんでしょうか?最近は乳がんの患者さんは特に仕事や育児で忙しい年代の女性も多いのでそういう方には標準治療ではない事を説明した上ですが短期照射や組織内照射という新しい方法を提案する場合もあります。
短く照射…?もう少し説明して下さい。
短期照射というのは1回当たりの照射量を上げて全体の回数を減らして通常5週間必要なところを大体3週間程度に減らすという新しい方法です。
もう一方で組織内照射というのはどういう手法ですか?こちらはリンパ節転移がない事あるいはしこりがきちんと取り除かれているという事を確認した上で手術の時に取り除いた腔に特殊な器具を埋め込んでそして体の内側から直接組織に放射線を当てる方法なんです。
この方法だと5日間で放射線治療を終える事ができるという事で治療が終わって退院という事になって1入院期間中に治療を終える事ができます。
さて最後にこの乳がんを患い手術を受ける方へのメッセージをお願いします。
乳がんで胸にメスを入れるというのは大きなショックだとは思うんですがただ今は再建手術でしかも保険適用も始まったという事で手術で取り除いても左右差のない自然な胸を取り戻す事は可能になってきました。
従ってがんを確実に切除するという事はもちろんその後の再建をどう考えていくのか主治医の人と一緒に自分にとってふさわしい治療法を選択するという事が大切だと思います。
再建の手術技術がすごく進んでいるのは本当に印象的でしたね。
はい。
今日もお話ありがとうございました。
ありがとうございました。
2014/10/21(火) 13:35〜13:50
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 遺伝子で変わる 乳がん最新治療「手術と乳房再建」[解][字]
乳がんの手術は全摘か温存かの選択ではなく、いかに自然な乳房を取り戻すかという段階に進んだ。保険適用が拡大し、より身近になった乳房再建術を中心に乳がん手術を紹介。
詳細情報
番組内容
がんを確実に切除したいけれど、胸が失われるのは嫌。乳房をすべて切除するか温存するかは長らく乳がん手術での大きな選択だった。ただ温存しても、乳房の大きさによっては形が損なわれることもあった。しかし乳房再建技術の進歩・保険適用拡大で、再建に使うシリコンインプラントの形・大きさの選択肢が大幅に広がり、費用面でも身近になり、いかに自然で美容的にもよい乳房にするかという段階に。乳がん手術と乳房再建術を紹介。
出演者
【講師】昭和大学教授…中村清吾,【キャスター】濱中博久,久田直子
ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:21400(0x5398)