地方発 ドキュメンタリー「田舎でこそできる子育てがある」 2014.10.21

今年4月私たちは町の教育委員会が年度いっぱいで廃校にするとしている山里の小学校の取材を始めました。
集団での教育が行えないというのが廃校の一番の理由です。
迫る廃校の危機。
立ち上がった人たちがいます。
集落のお母さんたちです。
田舎でこそできる子育てがある。
ぎんなん。
田舎ならではの子育ての強みとは何か。
それをどう都会の人たちにアピールし移り住んでもらうか。
廃校の危機に立ち向かう集落。
その半年を追いました。
島根県津和野町。
今日の舞台は「小京都」と呼ばれるこの町なかから。
車で30分の過疎の山里。
昭和40年には1,000人いた人口が300人に減りました。
集落唯一の小学校左鐙小学校です。
かつて170人いた児童の数は年々減り続けています。
全面天然芝の校庭。
24年前1億円かけて建て直された木造の校舎。
しかし町の教育委員会は7人いた児童のうち4人が卒業する事になった去年次年度いっぱいでの廃校の方針を地元に伝えました。
集落の人が減り廃校になる流れを食い止めなければ左鐙が無くなってしまう。
立ち上がった母親たちの先頭に立つ京村まゆみさんです。
牧場を営みながら4人の子供を育てました。
4人とも左鐙小学校の卒業生です。
7年前児童の数が1桁になるという危機感の中で京村さんたちが作りました。
自然あふれる左鐙の良さを都会の人たちに知ってもらい移住してもらおうとイベントなどを開いてきました。
活動の内容はブログで全国に発信しました。
一方教育委員会は2009年統廃合の明確な基準を示します。
児童数が16人以下の学校は原則廃校するとしたのです。
その翌年には児童数6人の小学校が更にその翌年には3人の小学校が相次いで廃校となりました。
田舎ならではの子育ての強みをもっと打ち出せないか。
京村さんは自らの子育てを振り返りながら考えました。
もともとは都会で保育士をしていた京村さん。
この牧場に嫁ぎ試行錯誤を重ねながら子育てしてきたのです。
去年それを形にしました。
小学校に上がる前の子供を京村さんの牧場に集め「森のようちえん」を始めたのです。
園舎も遊具もない認可外の保育所。
面倒を見るのは集落の女性たち。
遊びも一日の過ごし方も子供たち自身に考えさせます。
もう一回飲む。
もう一回飲みたい。
はいどうぞ。
京村さんたちが活動を始めて7年。
今年ようやくその成果が現れました。
3人で4月を迎えるはずだった左鐙小学校に転校生がやって来たのです。
この春青森の町なかから家族で移住してきました。
この日の授業は地元の名人に教わる山菜採り。
イタドリ。
あそっか。
丈太朗くんかんで。
どんな味がする?甘酸っぱい。
酸いろ?酸いじゃろ。
それで「酸葉」。
タンポポを触るのも苦手だったという丈太朗くん。
いろんな植物が食べられる事を教わり採るのに夢中になっていました。
学校の調理室に戻ると…。
入れてすぐジュワーっときたらもう入れてもいいよ。
何でも。
自分で採った山菜。
自分たちで天ぷらを揚げます。
コゴミにコシアブラ。
10種類以上の天ぷらが並びました。
(女性)大体分かるよねどれがどれか。
ユキノシタ。
ね。
丈太朗くん箸が止まりません。
初めて山菜採りをして楽しかったです。
また採ったり食べたりしたいです。
(拍手)兵庫県西宮市の町なかから左鐙に移住したいという人も現れました。
こんにちはどうぞ。
子供は…2人きょうだい。
東日本大震災を機に野菜が育つ様も作る人も見る事のない都会で子育てをするのがいいのか疑問を抱くようになりました。
自然あふれる田舎の方が子供の生きる力を伸ばせるのではないか。
そんな時京村さんたちのブログを見つけました。
今年2月には子供を連れて左鐙を訪問。
2泊3日で田舎暮らしを体験し京村さんたちと語り合って移住を決意しました。
その環境を残したい事はすごく行った時には…一方京村さんの牧場で始めた森のようちえん。
ここでもこの春仲間が増えました。
せ〜の…。
(2人)おはようございま〜す!隣町から20分かけて飯田梨瑚ちゃんと弟の琉太郎くんが通い始めたのです。
朝はまず子牛にミルクをやります。
入園当初は牛を怖がっていた琉太郎くん。
今ではこのとおり。
子供たちは外に飛び出していきます。
前の日梨瑚ちゃんがブルーベリーがなっているのを見つけていたのです。
あそこが畑!
(男性)どこ?
(女性)すごい!すごいなってるじゃん。
更に上ると…。
サワガニを見つけました。
(女性)あっ前に歩くね。
知らんかった。
教科書にも図鑑にも書かれていない事を自然から学んでいきます。
森のようちえんに通って1年になる齋藤紗菜ちゃん。
木に枝を渡してまたがる遊びを思いつきました。
(女性)おっ…!でも泣きません。
(女性)大丈夫だった?ねえ。
ちょっと折れちゃった。
もう一度別の場所で挑戦します。
できた!ねえねえ!おっ乗れた。
乗れたじゃん!紗菜ちゃんやり遂げました。
これぞ左鐙っ子です。
できたよ〜!しかし年度いっぱいで廃校にするという教育委員会の方針は変わりませんでした。
左鐙の公民館で教育委員会と住民との意見交換会が行われました。
住民たちは廃校を見直してほしいと意見をぶつけます。
しかし「9月の町議会に小学校の統廃合案を提出する」という教育委員会の方針は覆りませんでした。
左鐙小学校にまた仲間が加わりました。
西宮から転校してきた…そして妹の…左鐙小学校の児童は6人になりました。
西宮では1,000人近くの学校に通っていた2人。
ほとんどの時間を同級生と過ごしていましたがここでは多くの事が上級生下級生と一緒です。
こうしたらこうやって開ける!開けて下さい。
世話を焼くのは…健くんも6年前に移住してきました。
父親は左鐙小学校の卒業生。
地区の外で暮らしていましたがふるさとで子育てしたいと家族で戻ってきたのです。
合掌。
いただきます。
(一同)いただきます。
給食の時間。
全員が食堂に集まります。
校長先生も一緒に食べます。
健くんが校長先生に話しかけます。
校長先生分かりますか?タコのオスメスの見分け方。
タコのオスメス?吸盤?
(健)分からないんですか?
(笑い声)
(健)いいから!分かりますか?分かりませんか?分からない。
オスは…。
タコの足が8本っていうじゃないですか。
あれが9本あって。
9本の1本が一番下が吸盤がないんですよ。
それをオスっていうんですよ。
メスは8本ちょうどあるのがメスっていうらしいですよ。
それ初めて聞いた。
(笑い声)これが左鐙小学校の流儀です。
今日の目標は「静かにテキパキと掃除をする」です。
始めましょう!健くんは自分たち子供も学校がなくならないようできる事をしたいと語りました。
何ていうんかな…。
人を増やすのも例えば…・まだ飛び込めんのか?敦士くん。
飛び込めるは飛び込める。
エネルギーがないの。
・冷たくないよ冷たくないよ。
ズボンと着替え持ってきた?・ズボン持ってきた。
着替えは?・着替えも持ってきた。
パンツも?・パンツがない。
(笑い声)
(敦士)ノーパンじゃん。
絞って絞って絞ってまた着ればいいよ。

(囃子)今年の夏。
長年活動を続けてきた京村さんにとっても初めての事が次々と起きました。
この日訪ねてきたのは東京でまちづくりの会社を経営する…地方自治体に休学中の大学生を送り込む仕事を通じて3年前京村さんに出会いその活動に共鳴。
今年4月に津和野町に移住しました。
そういうふうにやられてるコミュニティーって日本全国いろいろあると思うんですけど…今回林さんが企画したのは地元と都会の中学生に交流してもらう事。
中学1年生のスズキトモヤと申します。
お願いします。
・自己紹介じゃあちょっとボーイズも…。
知り合いを通じて京都の私立中学に通う3人がやって来ました。
早速左鐙の中学生に連れられて川遊びに繰り出しました。
それを尻目に左鐙の中学生。
・すげえな。
(笑い声)ようやく京都の中学生。
冷たい!ヤバい!
(笑い声)マジかこれ!左鐙の中学生のおかげで京都の中学生は初めての体験をする事ができました。
(鳴き声)続いて向かったのは京村さんの牧場。
3人は田舎の暮らしが都会にはない刺激に満ちていると感じているようでした。
来てみて…都会の中学生たちの反応に手応えを感じた林さん。
これからもさまざまなイベントを企画したいと語りました。
そして京村さんたちが毎年開いてきた宿泊体験会が今年も行われました。
集まったのは全国から25家族40人。
初めての顔と懐かしい顔とたくさんの顔がそろいましたが…。
3年生の松丸優真くん。
去年に続き2回目の参加です。
去年は母親が知り合いに体験会の事を聞き応募しました。
その時の体験が忘れられず今年は自分から参加したいと言いだしました。

(ラジオ体操)今年優真くんが一番楽しみにしている川遊びが行われる日です。
ところが突然の雨。
川が増水したため中止になりました。
代わりに始まったのは校庭でのサッカー大会。
全員水着。
雨に濡れた芝生が独特のスリルを生み出します。
とにかく滑るんです!優真くんも試合に熱中。
初めての体験を満喫しました。
(取材者)走るの得意?う〜ん…うんまあまあ。
(笑い声)
(取材者)びしょ濡れじゃん。
入れてみて。
左鐙の役に立ちたいと語っていた健くん。
今年はみんなの世話をする班長です。
(健)俺ルー入れるけぇさぁ。
きーちゃん!きーちゃん手伝ってあげて!きーちゃん。
ひなちゃん手伝ってあげて!俺ルー入れるけぇ。
お〜班長頑張るぅ!無事みんなが満足するカレーを作る事ができました。
夕食のあとはドラム缶の露天風呂。
(女性)どんだけりゅうくん健好きなの?りゅうくんカメラ目線こっち!
(女性)こっちよこっちよ!
(取材者)はい皆さんこちら向いて下さいね。
(女性)カップルか!?
(笑い声)
(女性)寄り添うカップルか!
(歓声と拍手)最後の日の夜登場したのは左鐙小学校の卒業生です。
(2人)・「もしかしてもしかしてもしかしてもしかして」思いがけない替え歌が披露されました。
(拍手)
(歓声と拍手)その歌詞を京村さんはかみしめていました。
イエイイエイイエイ!
(歓声と拍手)こうした動きを町の教育委員会はどう見ているのか。
今年度限りの廃校が決まってしまうのか。
議会の開催まで2週間となった8月末。
議案提出の最終決定者である下森町長が取材に応じました。
実は下森町長も左鐙小学校の卒業生です。
9月。
秋晴れの下左鐙小学校の校庭に大勢の人が集まりました。
30年以上続いてきた小学校と地区合同の運動会です。
東京の大学に通う卒業生も駆けつけ150人以上が参加しました。
児童と住民が一緒になって競技を行います。
さいころの目に指示された人を探す競技。
健くん「時計をはめた2人」ですよ!敦士くんがさいころに指示されたのは…。
「青い服の人4人と走る事」。
あと一人来て下さい!助けを求めると自分から出てきてくれました。
子供から大人まで皆でゴールを目指します。
(拍手)
(場内アナウンス)ご協力ありがとうございます。
たくさんの人が手をつないで笑顔のゴールイン。
・頑張れ〜!
(場内アナウンス)さあスタートしました!・頑張れ〜!
(拍手)おらぁ〜!恒例の集落総出の運動会は終わりました。
一方町議会を直前に控えた下森町長。
教育委員会との話し合いを重ねていました。
そして迎えた町議会の日。
町長が廃校に関する決定を公にしました。
教育委員会においてはさまざまなご議論があった事と拝察をしておりますが…今年度での廃校は見送られました。
しかし併せて町長は大人数でなければ望ましい教育はできないという従来の考えを改めて強調しました。
私としては…胃が痛い。
胃が痛い…。
辛うじて回避された廃校の危機。
しかし京村さんの胸に自分たちの考えが全く受け入れられない無力感が込み上げていました。
うん…いろんな思いがあって…。

(囃子)秋祭りの日。
左鐙小学校の体育館で神楽が舞われました。

(囃子)健くんたちも練習の成果を披露します。
京村さんはまた元気に動きだしていました。
町が左鐙に建てる事になった町営住宅に小学生のいる家族を呼び込もうというのです。
おやすみなさい。
またあしたの朝!ありがとうございました。
また来させて頂きます。
また来年待ってます。
(子供たち)ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!田舎でしかできない子育てがある。
左鐙の人たちはこれからも廃校の危機に立ち向かいます。
(子供たち)ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!アハハハ!
(子供たち)ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!2014/10/21(火) 00:40〜01:25
NHK総合1・神戸
地方発 ドキュメンタリー「田舎でこそできる子育てがある」[字]

島根県津和野町の山奥の集落、左鐙。少人数を理由に集落の小学校に廃校の危機がおとずれた。「田舎でしかできない子育て」の魅力を発信し、小学校存続を目指す人々を追う。

詳細情報
番組内容
田舎ならではの人のつながり、自然に抱かれ、生きる力を伸ばす子どもたち。集落みんなで子どもを見守り、育てる大人たち。島根県西部津和野町の左鐙地区では、住民が主体となり「田舎でしかできない子育て」の魅力を発信してきた。都会に共感の輪が広がり、移住してくる家族も出てきた。しかし、教育委員会は小学校廃校の方針を変えようとしない。「小学校がなくなると、集落自体の存続も危うくなる」。夏から秋、闘いを追う。

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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