人生デザイン U−29「古本屋」 2014.10.20

焼き物。
陶芸家。
さあ買った!生きのいい古本だよ〜!500。
え〜500円。
1,000。
1,000円。
200。
200円。
毎週開かれている古本屋の競り市だ。
貴重そうな古書から最近の漫画本まで。
あっという間に売り買いされてゆく。
メンバーの最年少は前原航平さん。
ちょっと落ち着いて見えるけど28歳!町の古本屋に勤めて5年。
その前はフリーター。
就活は一切やらなかった。
(前原)みんなで就職活動やってるのが本当に怖くて。
実は今2〜30代で自分の店を開く若い古本屋が増えている。
みんな古本ってそんなにいいの?競争嫌いの前原さんが出会った仕事古本屋。
生涯の仕事に決めて始める勝負とは!?朝9時半。
前原さんが勤める店は東京郊外の町の古本屋。
前原さんの他店長と奥さんバイト2人で切り盛りしている。
店は朝10時から夜9時まで。
長い1日の始まりだ。
まずはネット注文の確認。
夜のうちに何件か注文が入る。
売れたのは版画の美術本2冊セット。
茨城のお客さんからの注文だ。
朝からツイてる!出勤してきた店長の石田さんに早速報告。
(取材者)おはようございます。
(石田)おはようございます。
決済されて合わせて9万円です。
わ〜。
値段言わないそういう時は。
あっそうですか…。
・5年前勤め始めた頃は店番だけだった前原さん。
ネット販売や仕入れなど任せてもらえる事を徐々に増やしてきた。
フフフ…。
店には子供からお年寄りまでが通ってくる。
中央にある大きな絵本の棚が親しみやすさをアピール。
もちろん出回ったばかりのベストセラーも珍しい初版本だってたくさんある。
何を選びどう並べるかは全く自由。
自分セレクトの本棚でお客と通じ合う喜びがある。
ここからもうず〜っとこの棚までは僕の担当ですね。
前原さんの担当は日本文学の文庫棚。
ここの話は長いかもしれないです。
そうですね。
あの〜…その本のどこがお薦めなの?暗い!暗いところですね。
はい。
この日出張買い取りの依頼が入った。
素人さんから本を買う買い取りは古本屋の商いの基本だ。
すみませんお待たせしました〜。
失礼しま〜す。
依頼主は1人暮らしの女性。
40年住んだ家を引っ越すため大半の本を手放す事にした。
きれいに読まれた歴史や文学の全集物がたくさん。
こちらは日本の古典全集。
これはかなりの高額買取か!?前原さん見事なまでにクール。
近頃の依頼主は高齢者が多い。
年を取って住まいを替えたり遺品整理で親しんだ本を処分する。
(女性)「これは売れるかなぁ」とか。
これはもう絶対に売れます。
(女性)じゃあそれも出します。
あそうですか。
「あ〜もったいない」と思ったけどうん。
出てきたのは落語のDVD。
(女性)それいくらぐらい?
(女性)そうそうそう。
1万円…。
(女性)もっと高くして。
フフフ!1万円!?う〜ん…僕はそうですねぇ…
(女性)お〜お〜。
実は前原さん落語が大好き。
えっ僕が買うとしたら1万5千円はすごく安いですね。
う〜んハハハ!いや〜…。
さあ見積もりの結果は?
(せきばらい)え〜とあの〜やはり大きい箱に入っている物とあとこの焼き物の本もそうですけどこちらはもうほとんど値段が付かないですね。
(女性)そしたら1万円ぐらいになるの?いいですか。
ではえっと〜…フフフ。
じゃあそういう事で。
はい。
頂きます。
(女性)どうぞ。
商談成立。
頂いたアイスコーヒーで一息つくと手積み手降ろしの肉体労働だ。
店に戻ると早速成果を報告。
これは3万8,000円で…これであと青山二郎。
そうそうそうそう。
これが入ってるんですけど。
今日の主な掘り出し物は2本。
青山二郎さん。
古本屋界で人気があるんだそうです。
前原さんがこの店で働き始めたのは23歳の時。
大学時代思うところあって就職活動はしなかった。
フリーター暮らしをするうち憧れていた古本屋を思い立つ。
今の店はハローワークで出会った。
就職当時の給料は13万円。
念願の古本屋になったものの正直厳しい暮らしが続いた。
豆腐は毎日食べてます。
豆腐が好きです。
ドレッシングはもう冷奴用です。
毎日食べるからいろんなドレッシングで。
おいしいですよね〜。
安いし。
去年ぐらいまでは全く新しい仕事を任されたりしなかったし店番をしているだけみたいな生活だったんでそれは結構「これはこの先何があるんだろうな」っていうしんどさはあったですよね。
お金が貯まる訳でもなく何か何となく時間が過ぎていって。
う〜ん。
この1年くらいで本当に一気に…考え方が変わってきたかなっていう感じですよね。
できる限り長くこの仕事でいきたいなというふうに決めたっていう事ですね。
あの決めたというかそういう気持ちが固まったというか…。
いや一生そんなの来ないと思ってましたから。
一生というか「一生」とか大げさな事言い出してますけど一生とかじゃなくてもまあ僕に向いてる仕事っていうのが見つかるっていうのは思わなかったですね。
食べても食べてもいいですか!?
(取材者)もちろんです!冷めちゃいます!変わるきっかけは自分で作った。
1年前思い切って店長に働き方を相談したのだ。
こちらが今の一週間。
店番以外の仕事をたくさん任されている。
店長は気持ちに応えてくれた。
給料も19万円にアップ。
将来に向けて月4万円の貯蓄も始めた。
今日の仕事も前原さんに任された現場の1つ。
週に1度は訪れる。
カフェの一角に古本を置かせてもらう小さな出店だ。
立ち上げの時から前原さんが運営の全てを担当している。
品ぞろえはカフェのお客さん向けにセレクト。
コーヒーを飲みながら本を楽しんでもらい気に入れば買う事もできる仕組みにした。
新しい本を入れたらすかさずツイート。
(シャッター音)試行錯誤しながら店を育てて3か月。
売り上げは月数万円に達するようになった。
ありがとうございます。
ありがとうございます。
自分を古本屋と認めてくれるつきあいが増えたのもうれしい。
生涯の仕事に決めた前原さん。
古本屋の何にひかれているのだろう。
何でもアリだからじゃないですかね。
分かんないですけど自由だし…。
「新刊しかないです」とか「何年前に出たやつしかないです」とか「売れないやつはこっから消えてくしかないんです」とかそういうような厳しさがない。
みんなで一気に同じ事をやるのが本当に怖くて嫌いなんです。
みんなで就職活動やってるのが本当に怖くて。
受験の時もすごい嫌だったんですけど。
僕はそういう感じなんで。
でも古本はゴールがないですから。
僕はそれがすごく安心する。
一番嫌な事がない。
僕にとって一番嫌いなものがないから好きです。
実はここ数年2〜30代が古本屋を次々と開店している。
新刊の本屋にない魅力が古本屋にはあるという。
古本屋は古物商の免許さえ取れば仕入れの資金も少なくて済み商売を始めやすい。
マニアックな趣味でお客さんと通じ合う楽しみもある。
時代もジャンルも無限大。
古本で作る自分の店。
古本には彼らの挑戦を受け入れる開放感と奥深さがあるのだ。
こんちは〜。
前原さんも独立に向けて動き始めた。
きっかけとなったのがこちらのブックカフェ。
雑誌などの撮影に使われる事も多い場所だ。
このカフェの客に合わせて選んだ古本は売り物でもあり不思議な空間を演出する小道具でもある。
これをヒントにオーナーと2人で古本をインテリア雑貨としてネットで売る商売を始める。
儲けも損も自分持ちの勝負。
狙い目はアンティークな洋書だ。
向かう先は神田の古本市場。
古本屋の組合が組合員限定で開いている。
関東はもちろん大阪や名古屋など全国の古本屋が通って来る古本の巨大市場だ。
前原さんがこの市場で勝負するのは初めて。
インテリアに使えるほど見栄えのいい洋書はここでないと手に入りにくいと踏んだのだ。
この市場は「置き入札」と呼ばれる入札方法。
買いたい本の束の封筒に自分の買値を書き込んだ紙を入れていく。
声を出して競り合う競り市と違いライバルが見えない。
欲しい本を少しでも安く落札するには古本の相場を自力でシビアに見極める目が必要だ。
良さそうな壁一面の洋書の出物を見つけた。
入れた!…なと思ったんですけど。
自分の商売に「邪道」という言葉を使った前原さん。
ちょっと気になる。
会場をほぼ回り終えた時今度は古びたロシア語の本の束を見つけた。
入札。
あの〜…入札の締め切り時間直前。
ロシア語の本の入札具合を確かめに戻った。
封筒が厚い。
ライバルが増えている。
入札終了。
開札作業が始まった。
落札者が決まってゆく。
始めに札を入れた洋書の束は?ん〜うんん。
だからやっぱり…中身重視の売り方と見た目だけの売り方とでは付けられる値段が違うのだ。
抱えているお客さんもいないから…そういう事です。
そしてロシア語の本は?落札できたの?落ちた落ちた…「改メ」と書いて。
落札できたのはうれしいが値を高くつけ過ぎたからかもしれない。
後悔が押し寄せる。
ちょっと売れるかどうか分からないですけど。
ちょっときつい…落札した洋書は家に持ち帰るまで店に仮置きさせてもらう事にした。
雑貨として古本を売るビジネス。
石田さんはどう思っているのだろう。
すごく明るい…はい。
うん…。
いや……と思います。
数日後。
「店にロシア語の本がある」と聞き老人が訪ねて来た。
これはちょっと特殊なんですけど…
(藤井)あ〜。
藤井さん。
店の常連客だ。
(藤井)ああ!シチェドリンがあった!ロシア語が分かるらしい!
(藤井)これはばらして販売…?あもちろん!そうですねはい。
中身を読みたいという。
123…4。
シチェドリンは欲しいです。
はい。
う〜んなるほど。
はい。
若い頃学んだロシア語。
藤井さんは懐かしむように背表紙にそっと手を置いた。
どうもありがとう!はい。
ありがとうございます。
藤井さんは4冊の取り置きを頼んで帰っていった。
この日ロシア語の洋書をネット市場に出品する準備を始めた。
オークションで値段2014/10/20(月) 23:25〜23:50
NHKEテレ1大阪
人生デザイン U−29「古本屋」[字][再]

東京郊外の古本屋で働く前原航平さん・28歳。フリーターを経て、ハローワークで今の店に出会った。古本屋を生涯の仕事にすると決めた彼は、独立の道を拓く勝負に出る。

詳細情報
番組内容
東京郊外の古本屋で働く前原航平さん・28歳。競争の厳しい就職活動を嫌い、大学卒業後もフリーターをしていたが、古本屋に憧れ、ハローワークで今の店に出会った。古本屋の“何でもあり”の空気に居心地の良さを感じた前原さんは、ネット販売やカフェでの販売など店のアップデートに取り組んできた。20〜30代が古書業界に参入し、新感覚の古本屋の開店が相次ぐなか、前原さんも独立の道を拓くため新たな古書ビジネスに挑む。
出演者
【語り】Mummy−D

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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