(サブロー)うーん。
うまっ!カツ丼うまっ!グラタンうまっ!ハンバーグうまっ!うまっ!うまっ!うまっ!パンケーキの五重の塔。
(サブロー)あれ?味がしない。
味がしない。
味が。
味が。
味が。
(サブロー)味が。
味が。
うわっ!ぺっ。
何だ?これ。
(帰蝶)寝言がうるさいから口に手拭いを突っ込ませてもらったぞ。
(サブロー)ふざけんなよ。
死んだらどうすんだよ?完全にDVじゃねえかよ。
(帰蝶)また訳の分からぬことを。
そのようなことばかり言うておるからうつけと呼ばれるのだ。
このうつけ。
(サブロー)いいかげんそのうつけっていうのやめてくれないかな?俺こう見えて結構傷ついてるんですけど。
(帰蝶)そうであったか。
それは悪かったな。
(帰蝶)うつけ。
(サブロー)だから2人のときにも信長さまって言ってくれないもんですかね?
(帰蝶)それより恒興が台帳の確認を急ぐよう言うておったぞ。
うつけ。
(サブロー)かわいくねえ女。
聞こえておるぞ。
うつけ。
何なんだよ?この無限ループは。
つうかさ城で働いてる人全員名前書いてあんでしょ?いくら何でも数多過ぎ。
(帰蝶)ぐずぐず言わずにさっさと殿としての務めを果たせ。
はいはーい。
・
(恒興)殿。
大変にございます。
ああ。
恒ちゃん。
ごめん。
台帳まだちょっと。
(森)それどころではございません。
美濃の斎藤道三さまから会見の申し出が。
(恒興)殿。
お待ちください。
殿。
あっ。
あぶ…危ない。
擦った擦った擦った。
(恒興)殿。
嫌だよ!そんな怖い人に会うの!仕えてた大名殺して美濃分捕った極悪人に何で俺が会わなきゃいけないんだよ?絶対やだ!
(恒興)道三殿が直々に会いたいと言っているのです。
何か狙いがあるに違いありませぬ。
絶対俺のこと殺す気だよ。
(恒興)しかし明日の会見を断れば道三殿の逆鱗に触れ殿は切り殺されます。
どっか遠くに逃げちゃえば…。
(恒興)無駄です!道三殿は地の果てまで殿を追い掛けてきます。
そして殿は切り殺されます。
切り殺されます切り殺されますって連呼しないでよ。
(恒興)ご覚悟をお決めください。
(一同)殿。
殿。
殿。
殿。
殿。
殿。
殿。
分かった!分かりましたよ。
あっ!空飛ぶおにぎりだ!あっ。
ああー。
そこは普通振り向くとこだろ?
(恒興)空飛ぶおにぎりなどあるわけないでしょう!
(森)そうですぞ。
(丹羽)振り向く者などアホしかおりませぬ。
嫌だ!・
(帰蝶)まっこと情けない男じゃのう。
男ならさっさと会いに行って潔く切られてこい。
何で切られる前提なんだよ?あっ。
そうだ。
一緒に行こうよ。
はっ?どんなに怖い人だって娘が一緒なら少しは機嫌よくなるでしょ。
アホを申すな!えっ?誰が会うか。
あんな男。
ねえ?着ていく着物ってそんなに重要?
(勝家)過去に着物の色が気に入らないと難癖をつけられ戦を仕掛けられた国があったとかなかったとか。
何だよ?その暴力的なファッションチェックは。
(勝家)ふぁっしょ?
(丹羽)相手は斎藤道三。
一分の隙も与えてはなりませぬ。
最悪だ。
どう?
(恒興)うーん。
派手過ぎます。
(勝家)まぶしいと言われ戦になるでしょう。
これは?
(恒興)地味過ぎます。
(勝家)しんきくさいと言われ戦になるでしょう。
これは?
(恒興)平凡過ぎます。
(勝家)特徴がなさ過ぎて。
うん。
確実に戦になります。
ふざけんなよ。
結局どれ着ても戦じゃん。
どうすりゃいいんだよ?
(森)まずいですぞ。
間もなく夜が明けてしまいます。
もういいよ。
どうせ何着ても戦だろ。
だったら服は俺が決めるよ!
(伝次郎)美濃のまむしが動きだしたようにござります。
(義元)そっか。
美濃の斎藤道三がその気になれば尾張の織田など瞬く間に攻め滅ぼすであろう。
この今川義元の駿河の鼻先まで道三の勢力が広がるとなれば。
(伝次郎)厄介にござります。
(段蔵)いかがいたしましょう?
(義元)お前らは美濃を探れ。
(伝次郎・段蔵)はっ。
(道三)遅い!
(道三)この斎藤道三をなめておるのか?えっ?・
(家臣)申し上げます。
信長さまご一行が到着されました。
(道三)ああ?
(道三)あっ!?
(義龍)何じゃ?あれは。
(義龍)お主その姿は何だ?一応俺の正装というか。
(義龍)この無礼者が!
(道三)待て!刀を収めぃ。
(義龍)しかし…。
収めぃ!
(道三)皆の者。
二人きりにしてはもらえまいか?ちょっ。
えっ?えー?あのう。
やっぱ何か怒ってます?すいませーん。
帰りまーす。
・
(ふすまの開く音)こんにちは。
こんちは。
ええー!?いやー。
俺以外にタイムスリップしてる人がいるとは思いませんでしたよ。
(道三)俺もだよ。
しかもポテトチップスまで食べられるなんて。
フフフ。
2014年から来たんですか?そうですよ。
へえー。
もう人類は月に住んでますか?普通に地球暮らしです。
普通に。
2014年の普通ってのがよく分かんないからあれだけど。
へえー。
あの。
車は。
もう空飛ぶような車もう出てますか?逆にエコまっしぐらです。
エコ?エコ。
エコ?えっ?っていうかおっさんはいつから来たんですか?1972年からですね。
もうかれこれこっちへ来てもう40年以上ですね。
40年ずっと帰れないままですか!?そうっすよ。
40年。
まあこの乱世を生きぬくためにはもうずいぶん汚えこともしてきたし。
中にも外にも俺を恨んでるやつは。
ハハハ。
いっぱいいるんじゃねえかな。
俺はこの戦国の世で生涯を閉じるのかなって。
いやいや。
そんなわけないっすよ。
タイムスリップした人間が帰れないまま死ぬなんてそんなの絶対あり得ません。
最後は必ず帰れますって。
そうかなぁ?そうっすよ。
冗談じゃないっすよ。
このまま信長と入れ替わったまま死ぬなんて。
今何つった?何か顔がそっくりな人に会って。
その人に「わしの代わりに信長になれ」って言われて。
ああ。
そうか。
うん。
ハハッ。
ああ。
そうか。
今日わしはのう織田信長という男がどういう男か見極めてやろうと思うてのう。
ああ。
あっ。
ごめんなさい。
今ちょっと完全に道三だわ。
アハハ。
ごめんなさい。
エヘヘ。
まあ見極めてやろうと思って。
うん。
この寺に呼び出したんですけど。
うん。
つうか信長って何した人ですか?確か天下取ったんですよね?俺も歴史音痴だけど。
でも本能寺の変ぐらい知ってんだろ?あっ。
聞いたことあります。
うん。
何ですか?聞くなよ。
ああー。
やっぱり教科書あったら便利だったかなぁ。
教科書?日本史の教科書です。
はあ?あのバッグん中入れてたはずなんですけど。
どっかでなくしちゃったんですよね。
バカか!お前は。
バカじゃねえの?お前は。
何やってんだよ?なくした?バカ!お前その教科書読めばよもう俺たち2人がこれから先どうなんのかお前もう分かんじゃねえかよ。
ああ。
そうなんですけど。
いくら捜しても見つからないんですよね。
何だ?お前は。
バカ!バカバカバカバカって。
もうそんな大して変わんないでしょ?バカ。
いいじゃん。
つうか帰蝶ちゃんの口の悪さって親父さん譲りなんですね?はあ?あっ。
そうだ。
今度会ったとき。
うん。
親父さんからびしっと注意してやってくださいよ。
それは無理だな。
えっ?だって俺あいつとはもう会わねえもん。
何で?「何で?」って。
あいつは織田家の人間になっちまったからよ。
今日はどうもありがとうございました。
(道三)うん。
仲良くやっていきましょうね。
似た者同士仲良うせねばのう。
フフフ。
(勝家)いったいどうなっておる?
(恒興)さあ。
・ハハハ。
・
(道三)ハハハ。
ハハハ。
ではさらばじゃ。
・じゃっ。
(義龍)父上。
あの男の何を気に入ったのです?あんな奇妙ないでたちの…。
(道三)黙れ!口を出すな!ああ。
偽者か。
じゃあもう用はねえな。
忍びを呼べ。
(義元)バカな。
(段蔵)道三が信長のことを気に入ったようにございます。
(義元)美濃が尾張の後ろ盾となるというのか!?しかしあの道三じゃ。
何か裏があるやもしれん。
伝次郎にまむしの腹ん中探らせろ。
ハハハ。
・いやー。
さすがです。
みんなも色々言い過ぎなんだよ。
ああ。
帰蝶ちゃん。
ただいま。
つうか言うほど怖くなかったよ。
親父さん。
どういうことじゃ?
(勝家)殿はあの美濃のまむしを手なずけたのです。
(丹羽)誠に立派でしたぞ。
殿。
大げさだって。
丹羽っち。
(丹羽)いやー。
(森の泣き声)って。
てかさっきから森りん泣き過ぎだから。
(森)よかった。
帰蝶ちゃん。
ビビらせ過ぎ。
まむしのおっさんいい人じゃん。
いい人なわけがあるか!だいたいあの斎藤道三が本気で尾張と仲良くやっていくつもりなどあるはずがない。
気を抜くと大事を招くことになるぞ。
お父さんと何かあったの?もうよい。
(ゆき)帰蝶さま。
(恒興)殿。
台帳の確認は終わりましたか?ああ。
あれね。
恒ちゃんがうるさいからやりましたよ。
ちょっと待ってね。
あれ?ない。
ない。
(恒興)またそのようなざれ言を。
終わっていないのなら正直に。
ホントだって。
どっかいっちゃったんだって。
(恒興)どこかとはいったいどこでございますか?・
(勝家)殿!殿!そこにあった台帳知らない?
(勝家)台帳などどうでもよい!美濃が数万の軍勢を引き連れわが領地に。
はあ?
(勝家)総大将の斎藤義龍が殿と帰蝶さまにお話があると。
えっ?
(義龍)本日お主らに父道三の意を伝えに来たのだ。
帰蝶。
すぐに城を出る準備をいたせ。
何?甲斐の武田の元へ向かうのじゃ。
うん?
(義龍)父上はお主と会って気付いたそうだ。
同盟を結んだところで信長には何の利用価値もないとな。
はあ?
(義龍)武田家の兵力には他のどの国も及ばぬ。
その武田と同盟を結ぶために。
帰蝶。
お前を武田のめかけに差し出すのじゃ。
父上は笑っておったぞ。
甲斐の武田は大層な女好き。
すぐ帰蝶のことも気に入るに違いないと。
あいつは男も女もたしなむらしいぞ。
かわいがってもらえ。
(義龍)お前の性分はじゅうぶん分かっておる。
(義龍)そのためにこうしてわざわざ尾張くんだりまで来たのだ。
従わぬと言うのなら織田を攻めることになるのだぞ。
(義龍)帰蝶。
わしとて誠はつらいのじゃ。
(帰蝶)ふざけたことを抜かすな!わらわは戦のための道具ではない!ではしかたがないのう。
織田の衆は攻め滅ぼされる覚悟はおありか?わしはそれでもよいが。
いかがする?
(義龍)明朝までに答えがなければ美濃は攻撃を開始する。
よいな?ふざけんなよ!言うこと聞かなきゃ攻め込むとかめちゃくちゃだろ!つうかあいつ妹によくあんなひどいこと言えるよな。
(丹羽)義龍は道三の側室の連れ子。
帰蝶さまの実の兄ではございませぬ。
でもおっさんは実の父親でしょ?自分の娘にめかけになれとか普通言わねえだろ?
(勝家)こうなったら挙兵するしかありませぬ。
ここまでされて黙っているわけにはまいりませぬ。
(勝家)今こそ織田家の力を見せつけてやりましょうぞ。
(丹羽)われわれと美濃では戦力に差があり過ぎる。
(丹羽)戦になれば確実に負けますぞ。
(勝家)黙らっしゃい!
(勝家)これは織田家の誇りを懸けた戦。
斎藤道三の思いどおりになどさせてたまるか!
(丹羽)それでは相手の思うつぼじゃ!戦になれば織田家は瞬く間に滅びる。
何としても戦だけは避けねばならぬ。
(恒興)ここは帰蝶さまに武田に行ってもらうしか手だてはないかと。
無理だよ。
無理?だってあいつさっきすげえ嫌がってたじゃん。
嫌がってるやつ無理やり行かせるなんてそんなことできないって。
(恒興)悔しいのはわれわれとて同じです!しかし帰蝶さまが武田に行く以外この場を収める手だてはありませぬ!戦になれば織田家の何千の兵が血を流すことになります。
いえ。
それだけではありませぬ。
(恒興)ここにいる家臣一人一人の愛する妻と子供。
その者たち全てが殺されてしまいます。
(恒興)殿。
ご理解ください。
あのさ。
あっ。
やっぱ俺。
殿。
だって。
・
(帰蝶)分かっておる。
(帰蝶)武田のめかけになると言うておるのだ。
父に見限られた織田家にいても先などない。
こんな弱小大名そのうち道三につぶされるのが関の山じゃ。
わらわはお主たちと死ぬなどまっぴらごめんだ。
(義龍)そうか。
では7日後に甲斐へたたせろ。
(恒興)少しばかりおいとまを頂けないでしょうか?伊勢の方までお参りに。
伊勢って敵国でしょ?何でそんな危ないとこ?お守りを帰蝶さまにと思いまして。
帰蝶さまの出立までには必ず戻ります故。
そのくらいしか帰蝶さまのために私ができることはありませぬ。
(成政)おはようございます。
(犬千代)おはようございます。
何者じゃ?
(犬千代・成政)わしは…。
(犬千代)前田犬千代にございます。
(犬千代・成政)信長さまのために働かせてください。
・
(門兵)お主尾張の者だな?・
(門兵)逃すな。
・
(男性)うわー。
(門兵)始末せい。
(一同)ははっ。
・
(門兵)どけ。
そこどけ。
(男性)うわっ。
(男性)ああ。
あっ。
・
(武士)待て。
・
(武士)逃すな。
ひっ捕らえろ。
・
(武士)逃すな。
・
(武士)待て。
(武士)逃すな。
(武士)大事はないか?
(恒興)何事でございますか?
(武士)盗人だ。
城で盗みを働きおった。
(恒興)城で?
(武士)家臣団を記した台帳に手を付けたんじゃ。
・
(足音)それ帰蝶ちゃんの?
(ゆき)さようでございます。
そっか。
帰蝶ちゃんどんな感じ?ホントは強がってんじゃないのかなって思って。
(ゆき)諦めておられるのだと思います。
(ゆき)お父上に抵抗しても最後は従うことになると初めから諦めているのです。
あのおっさんって昔からそんな感じなの?いいえ。
幼きころはとても仲むつまじい親子であったと聞いております。
帰蝶さまが何をなされても「ようやった」と頭をなでて褒めそやしてくれたと。
《よいか?帰蝶》《そなたは今日より長屋家へ行くのじゃ》
(帰蝶)《なぜですか?》
(道三)《行くのじゃ》
(帰蝶)《嫌です。
帰蝶はととさまと一緒にいたいです》《心配せんでもいい。
父は必ず迎えに行く》《それまでよい子で待つのじゃぞ》《その代わりこれを帰蝶にやる》《これはな父の宝じゃ》
(ゆき)そう言って道三さまは幼い帰蝶さまを敵対する長屋家に人質に出したそうにございます。
(長屋)《ようできた。
ようできた》
(ゆき)幼子にとって知らぬ者に囲まれ独りぼっちで過ごすことがどれほどお寂しかったことか。
それでもいつかお父上が迎えに来てくれる。
きっと美濃に戻れる。
そう信じておったそうにございます。
(ゆき)しかし…。
・
(家臣)《大変じゃ。
戦じゃ》・
(家臣)《戦の準備じゃ》
(ゆき)道三さまは帰蝶さまを人質に差し出しておきながら長屋家を攻め込んだのです。
・
(長屋)《帰蝶!どこじゃ?》
(長屋)《恨むなら道三を恨め》《嘘じゃ!父上がそのようなことするわけない!》
(長屋)《死ね!》
(切る音)
(長屋)《うわっ。
ああー》
(家臣)《大将の首取ったぞ》
(帰蝶)《父上。
わらわがいると分かっていながら何故戦を?》《父上!》
(道三)《尾張へ行け》《織田家嫡男織田信長の元にこし入れじゃ》《どうして?》《父上はわらわが憎くなってしまわれたのですか?》《昔はあんなに》
(道三)《四の五の申すな》《さっさと行け》《美濃斎藤道三の娘として役目を大いに果たしてこい》
(ゆき)そのとき帰蝶さまは感じたそうです。
美濃が大きくなるにつれて父の心は戦に染まってしまった。
自分への愛情などもうなくなってしまったのだと。
(ゆき)しかし帰蝶さまはきっと聞きたいのです。
今も耳に残るお父上の「ようやった」というあのお言葉を。
だからこそ今もこうして道三さまに従っておられるのだと思います。
ゆきちゃん。
ありがとう。
俺ちょっと出てくるわ。
・
(森)お館さま!お待ちください!
(丹羽)信長さま!
(森)お館さま。
(丹羽)お待ちください。
(森)お館さま。
お待ちください。
(丹羽)信長さま。
(義元)何!?武田と斎藤が?やつらが手を組めば4万の兵となる。
攻められたらわれら今川はひとたまりもないぞ。
(段蔵)ご安心ください。
伝次郎に策があるようです。
(義龍)明日帰蝶のこし入れが済んだら織田なんぞさっさとつぶしてしまいましょう。
わしに全て任せてください。
必ずや父上の期待に応えてみせます。
(道三)義龍。
近う。
(義龍)はっ。
心強いのう。
(たたく音)
(道三)だっ!誰がお前の指図など受けるか。
下がれ!
(掛け声)・
(家臣)何やつじゃ!?
(家臣)うわー!
(一同)うっ。
うわっ。
(道三)義龍はどこじゃ?
(家臣)方々捜し回ったのですがいずこにもお姿が見えないのです。
あやつ何をしておる?・
(家臣)お館さま。
織田信長がお目通りしたいと。
(道三)何用じゃ?あんた昔帰蝶のこと殺しかけてんだろ?帰蝶のいる国攻めたって。
(道三)この美濃を守るためにはそれしかなかったわ。
お前には関わりがなかろうが。
あいつは俺たちと一緒なんだよ。
いきなり知らない土地に嫁にいかされてたった一人で自分の生きる場所見つけなきゃなんないってタイムスリップした俺たちと一緒だと思わない?気持ちぐらい分かんでしょ?帰蝶ちゃんここに置いてやってくれよ。
尾張のときだって行きたくて行ったわけじゃないんだし。
彼女が本当に嫁ぎたいって思うまではここに置いてあげてよ。
黙れ!娘として生まれたからには女は親の道具として生きる。
これがこの時代の親子の揺るがぬ形じゃ。
関係ねえだろんなもん!戦国だって平成だって何も変わんねえよ。
親子は親子だろう!青臭えこと言ってんじゃねえや!やっぱな。
しょせんお前は信長の器じゃねえよ。
だからって尾張を捨てて他と手を組むのか?何で武田なんだよ?強い国だったらどこでもいいのかよ?あんたホント最低だよ!しょうがねえだろ。
見つからなかったんだからよ。
何が?偽者のお前には用はねえよ。
うせろ!
(ゆき)おはようございます。
帰蝶さま。
(帰蝶)おはよう。
(帰蝶)今日もいい天気じゃな。
(ゆき)はい。
(森)もうすぐ帰蝶さまが出立されるころですな。
(丹羽)急がなくてよろしいのですか?俺何にもできなかったから。
(森)しかし信じられませんな。
あのまむしが帰蝶さまのこし入れに当たり武田に頭を下げたとは。
どういうこと?
(丹羽)戸張番が言っておったのです。
道三殿は武田家の配下に加わった上自分が死んだら美濃を譲っても構わぬと宣言されたと。
おっさんが?・
(恒興)ああ。
信長さま!あっ。
恒ちゃん。
(恒興)大変なことが。
うん?
(恒興)伊勢で城の台帳を盗もうとした者がおり捕らえられたのです。
えっ?何の話?
(恒興)それがその男は美濃の忍びだったのです。
美濃の?
(丹羽)道三殿の指示によるものということか?しかも伊勢だけでなく方々の台帳も盗み取るようにと。
じゃあうちの台帳も?
(恒興)おそらく。
(森)いったいよその国の台帳など何のために?
(恒興)ああ。
何でもその台帳で帰蝶さまのこし入れ先を探していたとか。
はあ?
(丹羽)ハッ。
そんなはずなかろう。
(恒興)確かに伊勢でも誰も信じなかったそうです。
(丹羽)どうせその場かぎりのざれ事を申したのであろう。
(恒興)しかしその忍びもその場でよう思い付きましたな。
「とよとみひでよし」と「とくがわいえやす」とかいう名前を。
今何てった?はっ?捜してた名前だよ。
「とよとみひでよし」と「とくがわいえやす」でございますが。
「ひでよし」?「いえやす」?
(道三)《しょうがねえだろ。
見つからなかったんだからよ》《偽者のお前には用はねえよ》《何で武田なんだよ?》
(義龍)《武田家の兵力には他のどの国も及ばぬ》そっか。
そういうことか。
分かったよ。
恒ちゃん。
だから武田に。
(恒興)はっ?ありがとう。
恒ちゃん。
・ちょっと待った!・違ったんだよ!帰蝶ちゃん勘違いしてたんだ!
(帰蝶)何の話じゃ?まむしのおっさんわざとだったんだよ。
わざと帰蝶ちゃんのこと道具みたいに扱ってたんだ。
だって俺のこと偽者って言ったんだよ。
本物の信長か偽者の信長か気にしてたんだよ。
何の話をしておるのじゃ?おっさん織田信長が天下取るって知ってたんだよ。
だから帰蝶ちゃんのこと信長のとこに送ったんだ。
《織田信長の元にこし入れじゃ》信長なら帰蝶ちゃんのこと守れると思って。
でも偽者じゃ守れるわけない。
《偽者のお前には用はねえよ》だから別の人のところに嫁に送ろうって。
そのために「豊臣秀吉」とか「徳川家康」捜してたんだよ。
(帰蝶)訳の分からぬことを言うな。
だいたいわらわを守りたいなら美濃に置いておけばよかろう。
自分はいろんな人に恨まれてるし。
(道三)《中にも俺を恨んでるやつは》《ハハハ。
いっぱいいるんじゃねえかな》そばに置いといたら帰蝶ちゃんの命危険にさらすことになる。
だからおっさん心を鬼にして帰蝶ちゃんを。
《さっさと行け》
(帰蝶)バカげたことを。
本当は一緒にいたかったんだって!おっさん昔と同じように帰蝶ちゃんのこと大切に思ってんだよ!
(帰蝶)そんなわけあるか!いまさらそのような話聞かされても信じられるはずがあるまい!美濃を譲るとまで言ったらしいよ。
武田さんに頭下げて美濃の国やってもいいから帰蝶を嫁にもらってくれって。
《何で武田なんだよ?》《強い国だったらどこでもいいのかよ?》
(道三)《しょうがねえだろ。
見つからなかったんだからよ》おっさんそこまでして守ろうとしたんだよ?大事な娘の命。
信じてやってよ。
そんなことあるか。
(男性)どこの国にも「とよとみひでよし」「とくがわいえやす」なる男はおりませんでした。
(道三)おらなんだか。
ほう。
ああ。
もうよい。
今日は武田家へのこし入れじゃ。
(男性)間に合わずに申し訳ありません。
いや。
武田家でもこの乱世じゅうぶん安堵できるて。
(男性)お館さま。
(道三)うん?
(男性)気になるものを見つけてまいったのですが。
(道三)こ…これは!?
(男性)尾張の道に落ちておりました。
(道三)ああ。
(男性)お館さまが時折記される文字に似ておりましたが故何かお役に立つかもしれぬと。
(道三)ああ。
(道三)はっ!?・
(家臣)お館さま。
(道三)何事だ?
(家臣)義龍さまが謀反を。
(道三)あっ!?おっさんと義龍が戦?
(勝家)長良川を挟み両軍が陣を敷いておりまする。
(恒興)兵の数は義龍軍およそ1万7,000。
道三殿は2,700ほどかと。
えっ?
(勝家)2,700?
(森)そこまで兵力に差があっては。
(丹羽)いかに道三殿といえど。
(義龍)お主のおかげで道三の首が取れそうじゃ。
礼を言うぞ。
(伝次郎)こちらも美濃と甲斐に手を組まれたら困ります故。
(義龍)これまでは我慢してきたがあの男にかける情けなどもはや何もないわ。
思う存分まむし退治をなさるがよい。
勝利の美酒は格別ですぞ。
(家臣)義龍軍は井川の陣を打ち破りわが軍は壊滅状態にあります。
本陣まではあとわずかかと。
(帰蝶)愚かな。
全ては身から出たさび。
自業自得じゃ。
よし。
助けに行こう。
(恒興)信長さま。
お言葉ですが勝ち目は薄いかと。
今用意できるこちらの兵は700足らず。
とても太刀打ちは。
そっか。
じゃあ俺一人で行くわ。
(恒興)信長さま。
おっさんに言いたいことたくさんあんだろ?「ふざけんな」とか「ムカつく」とか。
今言わないとずっと言えなくなっちゃうよ。
こないだ俺たち守るために武田に行くって言ってくれたんだろ?俺たちのために一肌脱いでくれたんだよね?だから今度は俺が一肌脱ぐ番だよ。
違う!わらわはこんな弱小大名。
おっさんも一緒だよ。
そんなふうにわざと嫌われるようなことばっか言ってずっとあんたのこと守ろうとしてたんだ。
お主に。
お主一人に何ができる?敵は何万もいるんだぞ?お主一人が行ったところで。
・
(恒興)一人ではありませぬ。
(森)一人で行くとは水くさいではありませんか。
信長さま。
(丹羽)われわれもお供しますぞ。
(勝家)奥方さまに助けられっ放しではもののふの名が廃りますわ。
今度はわれらが一肌脱ぐ番です。
みんな。
行こう。
(一同)ははっ!出陣じゃ!
(一同)おう!うわー!うあー!帰蝶。
おっさんの悪口ちゃんと考えといてよ。
(家臣)道三さま。
もはやこれまでかと。
・
(家臣)申し上げます!織田の援軍が木曽川を越えこちらへ向かっております。
何?ホホッ。
ハハハ。
勝ち目のない戦と分かっていながらわれらを助けにこちらに向かうとは。
ハハハ。
どこまで青臭い男じゃ。
ハハハ。
ハハハ。
バカよ。
大バカ者よ。
大バカじゃ。
ハハハ。
ハハハ。
信長。
(道三)「長良川の戦いで斉藤道三は圧倒的に兵力で勝る義龍に瞬く間に追い詰められた」「しかし信長は自分の危険も顧みず援軍を送って」あっ!?誰か。
(家臣)はっ。
筆とすずりを持て。
(家臣)はっ。
おい。
・
(家臣)義龍さま。
織田軍援軍が間もなくこちらに到着いたします。
何?
(伝次郎)ちょうどよいではありませぬか。
この機会に尾張を一気につぶしてしまわれたらよい。
そうじゃのう。
しゅうと婿ともどもその首を討ってまいれ!
(一同)ははっ!
(家臣)織田信長さまでございますね?あっ。
そうだけど。
(家臣)わが殿斎藤道三が信長さまにこれを。
おっさんは?
(家臣)殿は先刻討ち死にいたしました。
(家臣)いたぞ!矢を放て!
(一同)おう!放て!
(家臣)うわっ。
(勝家)引け引け!
(家臣)引け。
(恒興)引け!
(一同)引け。
引け。
(恒興)はっ!はっ!・
(恒興)殿!危険です!お引きください!・
(恒興)殿!
(恒興)殿!うあー!はっ!はっ!・
(家臣)殿のご帰還じゃ。
・
(足音)ごめん。
俺。
初めからこうなることは分かっておった。
気にするな。
乱世を生きてきた父。
死ぬ覚悟はできていたはず。
これおっさんから。
お父さんから最後の気持ちだと思う。
だから。
(道三)「帰蝶。
この乱世を生きぬいてくれ」「わしが伝えたいのはそれだけじゃ」「愛し方も分からぬ駄目な父親ですまなかった」「それでもこの時代でお前に出会えたことをわしは心から幸せに思っておる」
(道三)「道三」まっことずるい男よ。
一方的に思いを伝えて勝手に死におって。
わらわはまだ何も伝えておらぬのに。
帰蝶。
それでも父のために馬を駆けてくれたこと。
この文を届けてくれたこと。
感謝しております。
信長さま。
(道三)「わしは勘違いをしていたようだ」「史実どおりお前がわしの援軍に来たと知り確信した」「お前は偽者の信長ではない」「お前こそが歴史に名を残す信長だったのだな」「帰蝶を頼む」ハァー。
あっ!
(道三)「歴史はお前の手で切り開け」「お前なら運命をも超えていける」ハァー。
ああー。
おっ。
あれ?・
(帰蝶)おい。
うつけ。
恒興が新しい台帳の確認をしてほしいと言うておったぞ。
さっさと戻って殿としての務めを果たせ。
はーい。
(帰蝶)まっことうつけは高いところが好きじゃのう。
帰蝶ちゃん。
俺決めたよ。
(帰蝶)何をじゃ?この時代でちゃんと生きてみる。
決めたんだ。
おっさんの分まで生きてみせるって。
そうか。
この時代ってこんなに奇麗なんだなぁ。
星。
何を当たり前のことを。
(重矩)半兵衛さま。
道三さまが。
(半兵衛)討たれたか?
(半兵衛)美濃は惜しいお方をなくしたな。
(元康)そうか。
(元康)今川さまは本気で織田をつぶすやもしれんな。
(段蔵)思いどおりに進まんのう。
さてどうする?
(伝次郎)わしはこの城に潜り込んでみようかな。
(段蔵)なら新しい名が必要だな。
(伝次郎)そうだな。
(門番)お主は?
(伝次郎)今日から雇われた馬番でございます。
(門番)名は何という?
(藤吉郎)木下藤吉郎と申します。
あっ。
流れた。
見た?2014/10/20(月) 21:00〜22:09
関西テレビ1
信長協奏曲 #02[字]【サブロー初出陣!】
「学生服vs警官制服!!奇跡の出会いが、運命を変える!!」・・・話題騒然!「泣けた」「感動した」と反響多数!豪華キャストで贈る戦国エンターテインメント、第2話!
詳細情報
番組内容
戦国時代に迷い込んだサブロー(小栗旬)は、織田信長(小栗旬・二役)に容姿がそっくりなことを理由に身代わりを頼まれてしまう。折しも織田家は家督争いの真っ最中。本物の戦、醜い争いに辟易しながらも、サブローは織田家当主地位を勝ち取った。だが、信長の妻、帰蝶(柴咲コウ)は美人だがどうにも気が強く、なかなかサブローに打ち解けようとしない。
そんな時、帰蝶の父、斎藤道三(西田敏行)が会見を申し込んでくる。
番組内容2
美濃の蝮と恐れられる道三の申し込みに、サブローは逃げ回るが池田恒興(向井理)らに捕まる。最後の頼みと帰蝶に同行を頼むサブローだが、潔く斬られてこいと言われる始末。だが、帰蝶は道三に会いたくない理由も…。
その頃、今川義元(生瀬勝久)は、引き続き織田の内情を探るよう、伝次郎(山田孝之)ら密偵に命じていた。
織田家をつぶしてはならないという家臣らの願いで、サブローは道三と会見。しかし、衣装が
番組内容3
気に入らないと道三に戦を仕掛けられた国があると聞いたサブローは、自分なりの正装をしてみた。それは、タイムスリップした時に着ていた学生服。戦国時代としては何とも珍妙な服だ。恒興たちの不安は尋常ではない。ところがサブローの姿を見た道三は、家臣たちを遠ざけ二人きりになると宣言。待たされるサブローの前に、服装を整えた道三が現れる。道三は、現代の警察官の制服を着ていた。道三もタイムスリップして来た男だった。
出演者
サブロー/織田信長(一人二役): 小栗旬
帰蝶: 柴咲コウ
池田恒興: 向井理
前田犬千代: 藤ヶ谷太輔(Kis−My−Ft2)
ゆき: 夏帆
段蔵: 早乙女太一
竹中半兵衛: 藤木直人
徳川家康: 濱田岳
柴田勝家: