きょうの健康 メディカルジャーナル「再生医療で肝硬変を治す」 2014.10.20

(テーマ音楽)知っておきたい健康情報を分かりやすくお伝えする「きょうの健康」です。
今日は月に1回最新の医療トピックをお伝えする「メディカルジャーナル」です。
そして今日のテーマはこちら。
2014年8月6日の事ですが山口大学医学部附属病院と科学技術振興機構は新たな肝臓治療の臨床研究を始めると発表しました。
進行した肝硬変に対して患者本人の骨髄に含まれる幹細胞を採取培養したあとに患者に投与し肝硬変の改善を目指します。
研究チームでは今回の臨床研究で治療の安全性と効果を調べていきます。
さあ一体どんな治療法なんでしょうか。
私たちの関心の高い再生医療が肝臓病の治療でどう実現していくのか。
詳しく伺ってまいりましょう。
ではご紹介を致します。
研究チームのお一人…どうぞよろしくお願い致します。
さて今日は病気としては肝硬変でございますがこれは大変治療が難しいと考えていいんですね?そうです。
現状では非常に難しいです。
肝硬変というのは肝臓の線維化が進んでるため非常に再生力が下がっておりますので現状の治療は非常に難しい状態になっております。
この再生医療でそれをなんとか元に戻そうというねらいなんですね。
そうですね。
そこを詳しく伺ってまいりますが肝硬変。
どのように肝臓の病変が進んでいくのかというところちょっとご説明頂きましょう。
はい。
こちらの方は正常肝炎肝硬変の状態を示したものであります。
正常から肝炎肝硬変です。
肝硬変というのは肝臓が硬くなった状態。
これを肝硬変といいます。
B型肝炎C型肝炎ウイルスが原因あるいは生活習慣病肥満症が原因で肝炎が起こります。
肝炎の炎症がずっと続く事によって起こってくる変化がこの肝硬変であります。
この肝炎の状態は最近非常に優れた抗ウイルス薬が登場しておりますね。
成績がよいというふうに理解しておりますが。
そうです。
特に最近はC型の肝炎ウイルスに対する経口の薬まで出てきております。
100%完治を望みうる状況がすぐ目の前に来てる状況であります。
ところが肝硬変ではどうなんでしょう?肝硬変というのはこの線維の部分このガチガチのこの黒い部分が線維です。
ここまで進んでしまうとなかなかこの線維を元に戻す事ができない。
私たちが今回行っている再生医療というのはこの硬くなった線維を溶かして肝臓を軟らかくしようという治療であります。
現状ではそうしますとこの状態では治すのは治療法としては…?現在のところ可能なのは根治手術としては肝臓移植。
肝移植といいますがそれが唯一の根治療法になります。
ではそれを今おっしゃったように線維をなんとか溶かしてやろうというねらいの治療だという事でございますがこれはどういうふうに硬い線維に立ち向かうのでしょうか?こちら肝線維化の図ですね。
慢性肝炎の状態と肝硬変の状態ですね。
もう一回こちらの方が細かく顕微鏡で見た像の肝臓の線維化について調べ示したものです。
慢性肝炎から肝硬変になります。
この線維の部分この写真で見るこういうふうな部分が線維化を起こした部分です。
こういう部分はどういう事が起こってるかというと肝臓の細胞が壊死を起こしたため無くなります。
その部分を補うために組織線維の部分が置き換わった部分。
線維の部分に置き換わった部分を線維化といいます。
慢性肝炎。
これを覚えとって頂いて肝硬変見ます。
この黒っぽい部分の状態の肝硬変の部分引きますとこういうふうな非常に広い範囲で起こってるのが肝硬変であります。
ここまで来るとなかなか再生する事もできなく肝臓の機能が著しく低下してしまうのが肝硬変の病態であります。
繰り返しですがこの状態になると根本的な治療は移植しかなかったという事ですよね。
はい。
ではこの状態非常に頑固な線維化の状態にどう今回の治療は取り組んでいくのかという事をご説明頂きましょうか。
はい。
私たちが注目したのは骨髄間葉系幹細胞。
今日は肝細胞と幹細胞を区別するために幹細胞というふうに呼びますが骨髄間葉系幹細胞に注目して治療を行いました。
この細胞というのはもともと私たちの体の中特に骨髄の中に存在している細胞であります。
これに注目して治療を行いました。
これが先ほどの頑固な線維を溶かす働きをしてくれるというそういう考え方なんですね。
そうです。
具体的に教えて頂きましょう。
どんな方法なんでしょうか?これが具体的な方法であります。
こちらの方は400ccの骨髄液を腰の部分の骨から採取します。
骨髄液をまず400m採取します。
その後特別な施設で洗浄し骨髄間葉系の幹細胞を分離致します。
その分離された幹細胞をどう使うのですか?次であります。
こちらの方は末梢の点滴と同じように分離した幹細胞を末梢血管から投与します。
いわゆる点滴で入ると考えていいですか?はい。
この幹細胞は体の中をグルッと回ると同時に炎症が起こっている肝硬変に到達する訳です。
そこで働き始めるという事ですね。
そうです。
その結果どんな結果が得られているのかという事を非常に気になるんですが。
現在まで私たちが行ったのは国内外5施設で57例に対して行っております。
現時点において特に大きな副作用合併症は起こっておりません。
こちらは最初の9例の結果であります。
右側の軸は時間経過。
時間4週間24週間とありますね。
こちらの方は実際にアルブミンの値です。
臨床研究で行ったので24週まで見るという形でしています。
アルブミンの値というのは何でしょうか?これは肝臓が作るたんぱく質の値でこちらの方の値が上がる方が当然肝臓の機能が回復したという評価になります。
高いほど肝機能は上がっていると考えていいですね?はい。
これが実際9例のやつですが次を見て頂くとこれが平均値です。
平均値見ると治療前に比べて24週間後においては明らかにアルブミンの値が改善してるという事が分かります。
つまり肝機能の改善が見られたという理解でいい訳ですね。
はい。
さあそれではこの幹細胞が肝臓でどのように働いたのかという事を更に詳しく教えて頂きましょう。
はい。
こちらの方は実際のCTの画面であります。
こちらが治療前これが治療後であります。
治療前の肝臓のこのイメージを覚えて下さい。
肝臓の表面がボコボコになっています。
ゴツゴツしてますね。
こちらはCTの画面です。
CTで見るとこういうふうな範囲でボコボコになってるという事が分かると思います。
ここがボコボコ。
肝硬変特有の像が出てるのとあとこの部分黒い部分が腹水がたまってます。
腹水。
つまりおなかの中に水があるというふうにイメージしていいですか?はい。
これが治療後です。
治療後だとここのボコボコしていた部分がスムーズになってます。
しかも腹水が無くなってるという事なのでこの結果から見ると肝臓の線維化が改善し肝臓が軟らかくなり肝臓の再生が誘導できたと我々は考えています。
これはまたすばらしい結果ですね。
それでは先ほどから話題になっている本日の主役幹細胞の働きこれをもう一度整理して頂きましょう。
どういう働きがあるのか。
骨髄間葉系幹細胞という難しい名前ですがどういう事でしょう?大きく2つの働きがあります。
一つは線維を溶かす働き。
新たに分かった働き。
あともう一つは肝細胞の増殖を更に促すというふうな働きです。
そこちょっと伺いたいんですが線維が溶けましたですね。
そうしますとスペースが出来ます。
はい。
…と肝臓のもともとの再生能力でそこに新しい細胞が埋まってくるという事ではないんですか?それだけではないという事ですか?はい。
一つは線維が溶ける事によって肝細胞が普通に増えるのとあともう一ついろいろ臨床研究を行う事で分かってきたのは肝臓のもとになる細胞も増えているという事が新たに分かりました。
なるほど。
頑固なあの線維が溶けてくれるという事とそしてスペースが空く事に加えて肝細胞がもともと増えるもとの細胞の増殖も促してくれているという2つの重要な働きがあるという事なんですね。
これはすばらしい成果だと思いますがさあこれは実際の治療です。
最初臨床研究始まるという事もお伝えしましたがどういう現状なのでしょうか?こちらの方が今12と書いてあります。
肝硬変の骨髄間葉系幹細胞を用いた再生医療の現状について示したものです。
1番の方法。
今まで私たちが行ってきた方法です。
これは既に行ってきた。
これは2003年の11月から行ってきた方法で既に57例の人に国内外5施設でやってきた方法であります。
400mの骨髄液を採り分離して投与する方法です。
先ほど教えて頂いた方法ですよね。
この方法については2013年に先進医療に通りました。
これについては現在C型の肝炎が原因の肝硬変症に対して行っています。
はい。
その結果有効であるという事が分かれば保険の医療として認められるようになります。
そうしますと私どものイメージですと通常の保険医療の治療として実現するのはもう一歩手前まで来ていると…。
その段階まで来ました。
理解していい訳ですね。
もう一つの方法2つ目が書いてありますね。
この事の意味を教えて下さい。
はい。
この方法の意義っていう事の一番大事な方法は1番の方法400mの骨髄液を採るにあたって全身麻酔ができる肝硬変の人が対象でした。
この全身麻酔がかけれる人というのは肝硬変で悪い人の中でもまだ全身麻酔がかけれる人という…。
まだ状態がよい人?まだよい人です。
しかしながら重症で黄疸が進んだような人にはできなかった状態なんですね。
私たちの方の臨床研究にやりたいんだって言われた方も何人も断るというふうな状態がありました。
そこで私たちが今回開発したのは骨髄液30mを局所麻酔で採取して3週間培養して約100倍ぐらい細胞を増やす事によって体の中に入れる方法であります。
これは見ますとはるかに採る量が少ないですね。
400mに対して30m。
これを採るためには全身麻酔は必要でないと…。
はい局所麻酔で十分であります。
…という事ですね。
そのかわり培養が必要なんですね。
特別な施設で3週間培養する事になります。
こちらの方はまずメリットとしては体の負担が少ないっていう形になります。
こちらの方は最初の冒頭にありましたように10例の患者さんに対して臨床研究として2014年度開始するという状況になっております。
これがこの度始まる臨床研究という事ですね。
既に実績があるものに対して更にいわば改良版のようなこれを試してみようという事なんですね。
はい。
すばらしい成果が期待される訳ですがそもそも肝硬変までの状態になりますと大変治しにくいという事でございますがこの治療法によって肝硬変の状態をよくする事ができれば更にいい結果が期待できるのではないかというふうに思いますがその辺りはどうでしょうか?はい次の状態であります。
こちらの方が私たちが理想として考えている方法であります。
肝硬変の再生医療間葉系幹細胞の治療を行う事により肝硬変の硬い状態を少しでも軟らかい状態に持ってこようというのが私たちの治療法であります。
特にC型肝炎ウイルスあるいはB型新しい抗ウイルス剤が出ておりますのでそれをやる事によって肝炎の状態から更に正常に持っていくと。
更に再生医療でしかも培養する方法であれば何度も入れる事ができますのでより高い治療効果を得る事ができるのではないかと期待しております。
この臨床研究の治療をお受けになりたいと思う方は…また主治医の方とよくご相談頂きたいと思います。
さあこの治療の未来展望どのようにお考えでしょうか?はい。
一番は一人でも多くの肝硬変の患者さんに対してほんの少しでもいい治療法を受けさせてあげたいというのが一番であります。
…で実用化再生医療の実用化ってなかなかハードルが高いんですがなんとか実用化していきたい。
再生医療っていうのが患者さんの手に入る医療にしていきたいっていうのが私たちの一番の願いであります。
再生医療という…我々は夢のような治療かと思っておりましたがもう本当に手に届くところに肝硬変の治療来てるという事でございますね。
どうもお話ありがとうございました。
どうもありがとうございました。
2014/10/20(月) 20:30〜20:45
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 メディカルジャーナル「再生医療で肝硬変を治す」[解][字]

まるで時計の針を戻すかのように肝硬変になった肝臓を肝炎の状態まで戻すことが可能になりつつある。それは山口大学を中心に研究が進む患者自身の骨髄幹細胞を使う方法だ。

詳細情報
番組内容
いま、まるで時計の針を戻すかのように肝硬変になった肝臓を肝炎の状態まで戻すことが可能になりつつある。それは山口大学を中心に研究が進む「患者自身の骨髄幹細胞を使う治療法」だ。ウイルス性肝炎から肝硬変になった患者の骨髄液を採取して、静脈に点滴すると、肝臓に骨髄幹細胞が集まり、肝硬変が治るという。期待される肝臓の再生医療を伝える。
出演者
【講師】山口大学准教授…寺井崇二,【キャスター】濱中博久

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情報/ワイドショー – 健康・医療
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