黒人層のうっぷん爆発 米暴動でなぜ韓国系は襲われる
米中西部ミズーリ州ファーガソンで、黒人青年を射殺した白人警察官ダレン・ウィルソン氏(28)が不起訴になったことに端を発した暴動は、米国が抱える人種対立の変わらぬ現実を見せつけた。2009年にオバマ氏が初の黒人大統領に就任し、人種の壁を突き崩そうと懸命に格闘してきた米社会だが、その困難さも浮かび上がらせた。そして、暴動は意外な方向に波及した。
人種同士の対立は黒人と白人だけではない。黒人暴動で、暴徒が韓国人経営の店を集中的に襲い放火略奪も働いている。韓国事情に詳しい文筆人の但馬オサム氏はこう語る。
「1992年のロス暴動の悪夢、再びです。2つの暴動に共通点があります。きっかけ自体は白人警官による黒人青年への横暴とそれに対する大甘な陪審員評決(ファーガソンは不起訴)ですが、暴動が拡大するにつれ、黒人街やその近辺の韓国人商店が襲われるということです。黒人層の韓国系ニューカマーに対する日頃の鬱憤が爆発した形です」
米国で韓国系移民の流入は80年代を境に増加の一途。それに伴い、韓国人と黒人、ヒスパニック系とのエスニック・トラブルも絶えることがないという。韓国系は入植すると家賃の安い黒人街に出店する。通常なら先住の黒人たちと融和するべきなのだが、韓国系はコリアンコミュニティーを築き、絶対に融和しない。黒人たちの怒りを買うのは必至だろう。
「たとえば、黒人経営の靴屋の隣にわざわざ韓国系が安売りの靴屋を出す。韓国系の店は毎日、同胞でにぎわうのに、黒人の店では一切買おうとしない。頭にきた黒人が少々手荒な手段で抗議でもしようものなら、韓国系の弁護士が登場。貧しい黒人層は弁護士を雇うこともできず、結局、法律を楯にされて泣き寝入り。なかには店をたたんで、街を出て行く黒人もいるようです。その空いた店舗に新たな韓国系の店ができる。韓国人はこれを組織的、計画的にやっています。彼らの民族間の結束は怖ろしいほどです」(但馬氏)
今回の暴動で、韓国企業のヘアファッション関連の店が8軒も襲われ、焼き打ち略奪に遭っている。これは黒人と韓国系の対立において、象徴的な事件なのだという。
但馬氏は「ウイッグ(かつら)やヘアアイロン、ヘアダイ(染料)といったヘア用品の製作販売はもともと黒人層の独壇場でした。ところが、安価な韓国製かつらが流入し、あっという間に市場を奪ってしまったのです。当然、黒人経営のヘア企業は倒産、失業。今では全米のかつら産業のほとんどを韓国系が牛耳っています」と指摘する。
ヘア業界は黒人層にとって特別な思いがあるのだ。60年代、キング牧師による公民権運動は、差別にあえいでいた黒人たちに勇気と誇りを与えた。「ブラック・イズ・ビューティフル」という標語もうたわれ、70年代に入るとさらに進んで、黒人らしさは美しさなのだという新しい価値観の下、ようやく彼らは胸を張った。
「この時期、それまで黒人の身体的特徴として、彼らが負い目にしていた縮れ毛をむしろ強調するアフロ・ヘアというスタイルが考案され、白人層の間でも流行しました。ドレッド・ヘアもソバージュもそうです。アメリカの黒人たちには、世界のヘア・ファッションをリードしているのは俺たちだというプライドがあります。それは彼らが、ようやく勝ち取った自由と権利の象徴でもあるのです」(但馬氏)
そのプライドごと、職業を根こそぎ奪っていったのが韓国系移民だということだろうか。