(車のブレーキ音)ああーっ!
(中川美奈)
福島県会津若松市は歴史と伝統が今に残る城下町です
白虎隊で有名な鶴ヶ城
独自の文様が特徴の会津塗り
また会津のシンボル磐梯山
その裾野に広がる猪苗代湖や街道の宿場町大内宿
浸食された岩の景勝地塔のへつりなど多くの名所に囲まれています
その会津若松から南に下った豊富なお湯と自然に恵まれた芦ノ牧温泉に私が若おかみを務める大川荘があります
いらっしゃいませ。
どうぞ。
ゆかりさんお手伝いしてもらってごめんなさいね。
(澤田ゆかり)いいえお花ももう全部生け終わりましたから。
お疲れ様でした。
私休憩コーナーでお茶配ってきます。
助かる…ありがとう。
お願いしますね〜。
いらっしゃいませ。
(宇野久雄)この会津絵の重箱は?あっあちらの奥に展示してございます。
ふ〜ん。
いらっしゃいませ。
(竹本綾子)どうぞこちらへ。
こちらが復元した会津絵の漆器でございます。
いらっしゃいませ。
どうぞごゆっくり。
(中川有作)美奈〜。
あ有ちゃん。
あっ殿山警部。
(殿山警部)有作がね会津漆器展をやってるちゅうんでちょっと覗きに。
あっありがとうございます。
たまには文化的なものに触れてこの目と頭を刺激しないと…特に有作はな。
はい!大いに刺激を受けて捜査に役立てます!
(中川政子)刺激は捜査ではなく大川荘に役立ててもらいたいわね。
あ〜これは大おかみいつまでもお若くて…。
はあ殿山さん有作がお世話になっています。
いえいえとんでもございません。
ところで有作…。
はい。
あなた自分の立場わかってんでしょうね?はい会津藩主松平家に仕えた武家の子孫でこの大川荘の跡取り息子です。
そうです。
それなのに…家も継がずに警察勤務…。
お義母様…あの殿山警部会津絵の重箱に大変ご興味があるそうです。
へえ〜。
あああ…あれ〜?なんでも江戸時代の文様を復元したとか。
あっこれがそうですか!大おかみは博識ですからぜひ一度ご講義願いたいですな。
博識だなんて…そりゃね今の若い人に比べればそりゃね。
本当に興味あるの?ありますよ。
そうじゃあどうぞこちらへ。
もう口を開けば家を継げ家を継げって…。
「年長者の言ふことに背いてはなりませぬ」もう美奈までそんなこと言わないでよ。
会津藩「什の教え」その一ですね。
綾子さん…。
大おかみの得意文句なんです什の教え。
はあ…。
その二「年長者にはお辞儀をしなければなりませぬ」。
(竹本夏希)その三「虚言を言ふ事はなりませぬ」…ですよね?お久しぶりです夏希です。
夏希ちゃん?いや〜…。
キレイになっちゃっ…。
本当キレイになって…。
ねえいくつになったの?28です。
28?え〜!えーっと東京の大学出て商社にお勤めなんでしょ?ええ。
でも会社辞めて戻ってきたんです。
あっそう!そろそろ家の仕事を手伝おうかと思って。
へえ〜。
手伝うなんて簡単に言うけどね漆器問屋の仕事はあなたが思うほど甘い仕事じゃないのよ?わかってます。
だから最初は裏方仕事でもなんでもします。
これで竹本漆器店も安泰だね。
ねえ。
そうだといいんですけどね。
(西岡史恵)お話し中失礼いたします。
竹本社長ちょっとよろしいですか?失礼します。
偉いわね。
継ぐんですってよ。
あちらのお客様が会津絵の重箱のことで社長にちょっとお聞きしたいことがあるそうです。
(綾子)どういったことでしょうか?あの重箱これを元に復元したんでしょ?どうしてあんたが持ってる?まさか家に代々伝わる重箱だとか言うんじゃないよな?これは俺がある人に売ったもんだ。
10年以上前にね。
そいつがあんたに譲るとはとても思えない。
いくら金を出すと言ってもな。
お客様の思い違いじゃないでしょうか?私は見たこともございません。
失礼いたします。
はっとぼけやがって!ゆかりさんまた生け花教えていただけますか?もちろんよいつでも家に来て。
ありがとうございます。
(綾子)夏希。
邦彦さんが来てくださったわよ。
(ゆかり)いらっしゃいませ。
(辻邦彦)久しぶりだね夏希ちゃん。
ご無沙汰してます。
父の選挙の時以来かな?確かうぐいす嬢のアルバイトを夏希ちゃんが。
ええ…。
今度は僕の手伝いをして欲しいな。
じゃあ邦彦さん次の選挙に?ええ。
引退する父に代わって僕が出馬を…。
頑張ってくださいね。
応援させていただきます。
よろしくお願いします。
夏希ちゃん案内してくれる?はい…。
そういうことだったのか…。
(三味線)
(小百合)若おかみ!はい。
え!?行って参ります。
その格好どう…あっああ勤続25年の?いえ26年です。
ああでした。
勤続26年のねあの休暇…。
長期休暇ありがたくいただきます。
はい。
思いっ切り楽しんできてくださいね。
はい!うふふ…。
うふふ…。
いってらっしゃい…。
(梅子)小百合さん気合入ってましたね〜。
あ〜もう東京で美味しいもの食べて買い物三昧するって言ってたからね。
それウソです。
ウソ!?婚活しに行ったんです!婚活って…え?結婚活動?東京には星の数ほど男がいるって。
でもどうですかね〜。
会津で26年見つからなかったくらいですから…。
そうだね…。
今晩部屋あるかな?ああ…。
(2人)いらっしゃいませ。
ええご用意できます。
あそう。
じゃあ1泊頼む。
ありがとうございます。
こちらにどうぞ。
こちらにご記入お願いいたします。
(宇野)はいよ…はい。
できましたらご趣味もお書きいただけますでしょうか?趣味?ええ。
サービスの参考にさせていただこうと…あっご記入いただかなくても結構です。
ん〜あそう。
(刃物が刺さる音)
(パトカーのサイレン)
(相沢健一)ご苦労様ですこちらです。
刃物による刺し傷のようですね。
う〜ん…。
死後2〜3時間ってところだな。
物盗りによる犯行じゃないみたいですよ。
ん?ああ!うっうちのだ…。
宇野さんがお泊まりになったのはこちらの部屋です。
ご予約なしで1泊されたんですけど新潟から会津漆器展を見にいらしたようでした。
チェックアウトはまだ済ませてなかったんですね?はい…朝5時半頃お出かけになって…。
どうしてあの方が…。
(相沢)警部!この写真…。
重箱…随分古そうだな。
会津絵みたいですね。
あれ?ねえこれ展示してあったこの重箱とそっくりですよね…。
あっ本当だ…。
古い図集?ええうちのは図集を元に復元いたしました。
まさか現物があったなんて…。
あのこの写真はどちらで?ああこの写真は宇野久雄という古美術商が持ってました。
古美術商?ええ実は今朝大内宿で何者かに殺害されまして…。
その古美術商の荷物の中からこの重箱の写真が出てきたんですよ。
なんか事件に関係があるんじゃないかと思いまして。
昨日漆器展に来ていたようなんですが見覚えありませんか?さあ…。
たくさんの方がいらっしゃいましたから…。
ねえ夏希ちゃんは?いいえ…。
ああそうですか…。
あああのどんなことでもいいですから思い当たることがあったら署のほうまで連絡ください。
はいご苦労様でした。
では…。
お母さん…どうしてウソつくの?あの写真の重箱うちにあるじゃない。
お母さん?今聞いたでしょ?古美術商の人が殺されたって。
そんな事件に関係してると思われたら店の名前に傷がつくわ。
だからって…。
お父さんの夢だった会津絵の復元やっと完成させたのよ?それを…棒に振るわけにはいかないわ。
もしもし石井さん?
(石井哲司)ええわかりました。
そういうことにしておきます。
失礼します。
綾子さんなんだって?ん?うん…。
仕事のことでちょっと頼まれた。
仕事って?いくら綾子さんから仕事もらってるからってそう言いなりにならなくても…。
まあいいわ。
結婚したら哲司さんの仕事私が管理しますから。
ごめんくださ〜い。
は〜い!あっ史恵さん…。
おおっほっおほほほ…。
(相沢)竹本綾子は無関係のようですね。
重箱の絵を描いた石井にも確認しましたが古い図集を元に復元したと言っています。
そうか…重箱は事件と絡んでなかったか…。
だが新潟から漆器展を見にきて殺されたというのがどうもこの引っかかるな〜。
警部!もう1つ気になってることがあるんですけども…。
なんだ?先ほど宇野の奥さんに話を聞いたんですけど…。
(宇野桂子)主人は昨日日帰りの予定だったんです。
でも夜になって電話がかかってきて…。
(宇野)ふふふ…え?おう。
会津に1泊することにしたよ。
え?急にどうしたの?「会津若松は宝の山さ」ってわけでさあ。
歌を?はい。
宇野はご機嫌でそう歌ったそうですよ。
しかし妙だな…。
ちょっと有作歌ってみろ。
はい!「えんや〜会津磐梯山は宝の山よ」「笹に〜」いやいやもうもう…もういい…。
だよな?はい。
だから会津磐梯山と若松を入れ替えて歌ったんじゃないでしょうか。
宇野は古美術商ですから会津若松は骨董品が山のようにある宝の山だということじゃないですか?つまり金になる仕事ができたと…。
はいはいはい…。
(電話)はいもしもし会津若松中央署捜査本部です。
(史恵)「あの古美術商の人が殺された事件のことなんですが…」ははあ…。
あたし見たんです。
大川荘のロビーで…その殺された人が竹本漆器店の社長と話してるの。
社長って竹本綾子さんですか?ええちょっともめてるような感じでした。
あっすいません詳しく話していただけませんか?詳しくっていわれても…ただ社長が会津絵の重箱を古い図集で復元したというのはウソです。
ウソ!?ああ…あのすいませんお宅様は?
(梅子)「よいしょ!よいしょ!よいしょ!よいしょ!」「お父さんもっと腰入れて!」「あよいしょ!あよいしょ!うまくなりましたよ」「あよいしょ!あらお兄さん若いのに疲れてきちゃった?」え?綾子さんがウソを?うん…。
いやちょっと待って…それって信用できる情報なの?たぶん…。
いやちょっと…たぶんって何よ。
いやいやいや…匿名電話だったんだけどあの声は会津漆器協会の史恵さんの声だと思うな…。
え〜。
だってさ史恵さん昨日は漆器展の手伝いでずっと会場にいたろ?うん。
それに会津絵の復元作業実際に見ていたと思うんだよ。
あ?ねえ見てたってさあ復元したのは蒔絵師の石井さんよ?なんでそれ史恵さんが見てんのよ。
あの2人はねいい仲だったんだよ。
え!?え?本当?うん。
だからこの情報はね信頼できるんだよ。
え…そんな…綾子さんがウソをつくなんて…。
いやいや…。
まあそうはいってもね〜。
あっちょちょちょ…。
ちょっと!ねえ!有ちゃんは綾子さんが犯人だって言いたいの?いやいやいや…それはまだ決まったわけじゃない…。
(梅子)「ではつき手を交代します!」「どなたかついてくださる方…」ちゃんと推理しなさい!綾子さんがどんな人かあなたわかってるでしょ!
(梅子)「あと2人!」あっちょっ!ちょっと待ちなさい有ちゃん!「あっ若だんな?え?ちょっと若おかみも…」ごめんなさいね…。
「ちょっとなんですか?」綾子さんは無関係!先入観は禁物!ヘボ刑事!美奈の頑固頭!うるさい!うるさいうるさいもう!有ちゃんの目は節穴!何言ってんだこの…!なんという恥さらしな!有作!大川荘恒例の餅つきショーが…夫婦ゲンカのショーになるなんて!申し訳ありませんでした!あっああ…。
美奈さん…。
はい!あなたも会津の女らしく凛とした品格を持ちなさい!出たー!おふくろの好きな什の教え!うるさい!美奈さん…。
はい!これをよく読んで明日のお稽古に備えなさい。
明日の稽古…あっなぎなたの。
明日は私も参ります。
会津なぎなた会の会長としてね。
あの…明日は都合が…。
什の教えその三!はい…「虚言を言ふ事はなりませぬ」。
よろしい。
有ちゃん!ごめんなさい!ああ〜ビックリした…。
よかった…。
僕のほうこそごめんね。
あ〜ごめんね…。
ごめんね。
でもさ美奈どうしてそこまで綾子さんのことを?うん…綾子さんはね私の目標なの。
目標?うん…。
10年前ご主人が亡くなって綾子さんが社長になった時誰もが無理だろうと思った。
でも綾子さん立派にお店を守ったわ。
私綾子さんを見て思ったの。
一生懸命やればなんでもできる私も見習って頑張ろうって…。
そうか…。
そんな綾子さんが事件に関係するなんてどうしても思えない…。
ああ…まあな。
私は綾子さんを信じる!誰がなんと言おうと。
すみません。
明日の夜はちょっと用事があって…。
ええ。
おやすみなさい。
邦彦さん?せっかくお誘いくださったのに…。
いいの。
あたし今は仕事に集中したいの。
夏希…東京で何かあったの?別に…。
そう…くれぐれも失礼のないようにね。
ここは邦彦さんのお父様の地盤なんだから。
お母さんなんか変わったね。
(綾子)え?昔はそんなこと言わなかった。
お店を守るっていうのはねこういうことでもあるのよ。
宇野っていう人お母さん本当に知らないの?急に何?会ったこともないわよ。
(美奈・ゆかり)お願いします。
面!すね!
(ゆかり)面!すね!面!ああっ!すいません…ああもういや…あの…すいません…。
あ〜痛い痛い痛い…。
交代!すいません…。
どなたか演技を。
はい!史恵さんのお相手を。
綾子さんお願いします。
ぜひ。
(史恵)面!すね!
(史恵)面!すね!面!すね!
(政子)やめい!そこまでにしましょう。
お二人とも素晴らしい演技でした。
お見事です。
あー疲れた!今日はなんでこんな疲れちゃうんでしょう?大おかみがいらしてたからじゃありませんか?そうなんですよ。
大おかみに見られてると思うとねコッチンカッチンにもう体が緊張していつものように…。
綾子さんお話があります。
私に?
(史恵)ええ。
じゃあ私はお先に。
一緒にいていただいて構いません。
いずれすぐお耳に入ることですから。
私近いうちに石井さんと結婚するんです。
これから石井にはお宅以外の漆器店さんとも仕事させますから。
そうですか。
おめでとうございます。
石井さんは職人というよりは芸術家に近い蒔絵師だわ。
繊細な分仕事を選んであげないとよくも悪くも転んでしまう。
だから十分に気をつけてあげてくださいね。
私より自分のほうが彼をよく知ってる。
そう言いたいんですか?そんなつもりじゃ…。
綾子さんって口で言ってることと心の中で思ってることと違うから。
おめでとうって言いながら今心の中は煮えくり返ってる。
そうでしょ?会津絵の復元だって夫の遺志を継いだとか大層なこと言ってるけど裏じゃ何やってきたんだか。
史恵さん!言っていいことと悪いことがあるわよ。
言われてもしょうがないと思いますけど。
綾子さん石井を事件に巻き込むのはやめてくださいね。
綾子さん差し出がましいようですけど何か困ったことや心配ごとがあるなら…。
私は綾子さんを信じてますから。
ありがとう美奈さん。
これ…!同じものだと思うわ。
(綾子)あの殺された人が持っていた写真の重箱と。
綾子さんこれどこで?ある人から出所は絶対に明かさないという条件で買ったの。
もう10年も前のことだわ。
たぶんその人が宇野さんという古美術商から手に入れたんだと思う。
じゃあ綾子さんは宇野さんとは知り合いじゃないんですね?ええ。
あの漆器展の時に初めて会った人よ。
ただ…。
ただ?宇野さんという人うさんくさい商売してたみたいで。
どういうことですか?実はこれ…盗品じゃないかと思うの。
え?会津絵を復元するのにどうしても欲しかったからそれを承知で…。
復元のためですか。
ええ。
昔と今じゃ顔料が違うのよ。
文様は同じようにできても色が違ってしまったらそれは復元とは言えないわ。
だから少しでも会津絵本来の色を出すために参考になる現物が欲しかったのよ。
そういうわけだったんですか。
綾子さんさっきある人から買ったっておっしゃいましたけどそのある人って?それは…。
(邦彦)参ったな…。
今頃になって昔の悪事がばれるとは…。
では宇野が持っていたというこの重箱を竹本綾子さんに売ったのは辻さんなんですね?え?金欲しさに父のコレクションを黙って持ち出しました。
(相沢)それが盗品だとご存じで?いいえ。
盗品かもしれないというレベルです。
父が以前そんなようなことを言っていて。
ではお父様はこれが盗品であることを知ったうえで宇野から購入したというわけじゃないんですね?もちろんです。
それどころか父はいわくつきの品と気づいてその宇野という男を出入り禁止に。
(相沢)辻さんご自身は宇野さんとは?いいえ。
会ったこともありません。
ああそうなんですか。
であなたはこの重箱を竹本綾子さんに500万円で売ったんですよね?え…。
いやまあどうしてもということだったんで。
あれ?なんだ美奈まだいたの?有ちゃん…。
ん?どうだった?うん。
綾子さんの言ってるとおりだった。
あっそう!うんうんうんうん。
あーよかった。
じゃあこれで綾子さんの疑いは晴れたわけだね。
うん。
あの重箱は事件とは無関係だったみたいだよ。
あー…そうとわかったら早く戻んなきゃ。
(携帯電話)まさかね…。
(携帯電話)
(携帯電話)おおー!ああー!アウト!クッ…。
もしもし?
(政子)「美奈さんどこで油売ってんの?」「早く帰ってらっしゃい!」申し訳ありません。
すぐ戻ります!うん。
じゃあね!頑張ってね頑張って。
急に会いたいだなんて何かな?母が邦彦さんから買った重箱のことなんですが…。
あの重箱と事件は関係してるんでしょうか?夏希ちゃんお母さんや僕を疑ってるの?そういうわけでは…。
でもあの重箱盗品なんですよね?それを知っていて母は…。
ああ。
500万出して僕から買った。
500万!?本当のことを教えてあげるよ。
これは警察にも言っていない。
10年前僕は冗談半分でその金額を提示したんだ。
せいぜい50万がいいところだからね。
でも君のお母さんは500万円で了承した。
お納めください。
こう言っちゃなんだけど君のお母さん大した人だ。
どういう意味ですか?今のうちに貸しを作っておけば将来僕が父の跡を継いで議員になった時何かと融通をつけてくれるだろうそう読んだんだ。
つまり…500万は献金みたいなもんだ。
君のお母さん店守るためならなんでもする。
まあ好きな男より店を選んだ人だからそれくらい当たり前か。
え?君のお母さん昔店継ぐために恋人と別れて見合い結婚したんだろ?恋人って…。
蒔絵師の石井さん。
あっ知らなかった?それ本当の話なんですか?
(車のブレーキ音)ああーっ!
(電話)ちょっと失礼。
(電話)大川荘でございます。
小百合さん?大おかみ!テレビで観ました。
大川荘のお客様殺されたんですって?そうなのよ。
まさかうちのお客さんが殺されるなんて。
で休暇はどうなの?うまくいってる?心配してるわよ。
ありがとうございます!もう毎日お見合いお見合いお見合いでお見…あっお土産の品定めに忙しくて。
あははははっ!殺されたお客様古美術商なんですって?なんだか怪しげですね。
写真も見ましたけど人相もよくないですし。
小百合さんまたその話はゆっくり。
変だと思ったんですよ。
脅し口調でしたし。
脅し口調!?ええ。
10年前の事件をばらされたくなかったらとかなんとか話していて。
えー!ちょちょっと小百合さん詳しく教えてください。
10年前の事件ばらされたくないだろう?だったら俺の言うとおりにしろ。
なんだ?あんた。
いってきまーす。
ごゆっくり〜。
宇野が誰かを脅かしてた?そうらしいのよ。
宇野さんその電話の相手をゆすったせいで殺されたんじゃないかしら。
ええー!ねえ有ちゃん。
うん。
宇野さんが誰に電話をしていたか携帯の通信記録を調べればわかるはずじゃない!うん。
それもう調べたけど別に怪しいものは…。
あっ!何?何思い出した?あのね宇野の携帯からうちのホテルにかけてそれ聞いてみたらフロントが展示会場に回したって言ってた。
展示会場…。
あっちょっと…!有ちゃん来て有ちゃん!どうした?来て!ほら!見て見て見て!あそこ!宇野さんはこの辺で電話をしていたらしいの。
ここからだとあの電話に誰が出るのかよく見えるの。
ああっ!じゃあ相手があの電話のそばにいた時に宇野は電話をしたってわけ?そうよ。
有ちゃん。
ん?犯人はあの日漆器展会場に来ていた誰かよ…。
ゆすり?はい。
これは宇野の銀行口座の記録なんですが過去10年間に不定期に同じところから金が振り込まれてます。
総額約5000万円で。
それがゆすった金だと?はい。
振込人は有限会社ナナカマドとなっていますが実在しません。
大川荘の仲居頭が聞いたという宇野の脅し。
10年前の事件ばらされたくないだろう?だったら俺の言うとおりにしろ。
どうやらそれが事件の核心のようだな。
有作なかなかやるじゃないか。
ええどうせ若おかみの入れ知恵なんだろうけどね。
あー…そのとおりです。
そんな素直になるな。
少しは悪びれろよ。
あははっ申し訳ありません。
まったく…。
でそのナナカマドを名乗る人物から最初に金が振り込まれたのはいつだ?ああはい。
10年前の12月1日。
500万円振り込まれています。
よし。
いいかみんな10年前に起きた事件の中で宇野及び漆器関係者にかかわりのありそうな事件がないかどうか徹底的に洗い出してくれ。
(一同)はい。
ナナカマド?木の名前らしいんだけど。
ああじゃあ調べてあとで電話するね。
頼む。
じゃあね。
ゆかりさんゆかりさんちょっと教えて。
はい。
ナナカマドってどんな木だっけ?突然なんですか?有ちゃんに聞かれてんの。
ナナカマドは夏に白い花を咲かせ秋には赤い実がなって山を真っ赤に染める木です。
確か猪苗代町の町木にも指定されていたんじゃなかったかしら。
さすが大おかみよくご存じですね。
あの…生け花でも?もちろん。
ねえゆかりさん。
はい。
ナナカマド…。
美奈さん。
はい。
ちょっと。
あなたまさかまた事件に首突っ込んでるんじゃないでしょうね?いえいえそのような…。
美奈さん。
はい。
什の教え。
「ならぬことはならぬものです」そうです!それをしっかり肝に命じなさい。
はい!あの…大おかみ美奈さんちょっとお時間いただけますか?ええ!辞めたい?はい。
大川荘のお花を生けさせていただいてありがたいと思っています。
でも私思いきって東京へ出ようと思って。
東京!?前からお花の家元にアシスタントをやらないかと誘われていたんです。
でも母を残して家を出るわけにはいかなくて…。
お母様とても厳しい方でしたものね。
ええ。
その母も半年前に亡くなり私1人が家に残されそしたらなんだか気が抜けてしまって。
自分でもこのままじゃいけないと思って。
偉いわゆかりさん。
うちのことは全然気にしなくていいんですよ。
ねえお義母様。
もちろんよ。
東京でできるだけのことをやってごらんなさい。
応援するわ。
ありがとうございます。
だけどゆかりさんこれだけは忘れないで。
会津と会津女の誇りを。
はい。
今のままでいい。
捜査を続行してくれ。
け…け…警部!何?どうした?10年前の事件がわかりました。
何!?県警本部で県内全域の10年前の事件を調べましたところ猪苗代中央署で扱った事件にこんなのがありました。
蒔絵師石井の妻紀子が猪苗代湖で遺体で発見された未解決事件です。
おっ…!あの…失礼ですが梅平警部補でいらっしゃいますか?
(梅平浩伸)はい。
猪苗代中央署の梅平です。
お待ちしておりました。
私は会津若松中央署刑事課巡査部長の中川でございます。
お鞄を…。
いや自分で持ちますから。
いやいやいやいや!殿がそのようなこと…。
殿!?ああこれは…失礼をばいたしました。
梅平警部補にあらせられましては会津藩藩主松平家の一族と承っております。
私中川有作は松平家にお仕い申し上げておりました家臣中川家の一族の子孫でございます。
世が世なれば梅平警部補は私のお主にあたるわけでございまして此度は大変…あれ?殿?殿?殿お待ちくだされ!殿…殿お待ちください!殿!お鞄!殿殿…。
(梅平)10年前の未解決事件の概要について説明させていただきます。
事件発覚は10年前の11月20日。
パート勤務石井紀子33歳の遺体が猪苗代湖で発見されました。
司法解剖の結果死後5日ほど経過しており死因は脳内出血。
全身に打撲の痕があることから車にはねられそのあと猪苗代湖に遺棄されたと思われます。
紀子の夫石井哲司の話によると紀子は深夜から早朝まで会津若松市内にある食品工場のパートに出ていて事件があったとされる11月15日も自転車で出勤しています。
おそらく仕事を終え工場から自宅へ戻る途中に事故に遭ったものと見られます。
それで事故現場は確定できたのか?はい。
ただ事故から5日経過していたこともあり車体の割り出しには至りませんでした。
(相沢)被害者が乗っていた自転車はどうなりましたか?湖の中から発見されました。
ひき逃げした犯人は証拠隠滅のために湖に遺体と自転車を捨てた。
そういうことだな。
はい。
警部!何?その事件をネタに10年に渡ってひき逃げ犯をゆすってきたのが宇野。
そして揚げ句の果てにひき逃げ犯に大内宿で殺害されたと考えて間違いないでしょう。
うん。
そうだな。
そしてその犯人は漆器展に来ていた誰か。
その誰かこそがナナカマドを名乗る人物…。
実は10年前我々が最初に疑った人物がいます。
それは…。
ごめんくださーい。
あんた…。
宇野なんて男知りませんよ。
では有限会社ナナカマドご存じありませんか?いい加減にしてくれ!あんた10年前も俺が紀子を殺したと疑って…!今度もまた俺を疑うっていうのか!石井さん落ち着いて!今回の事件は10年前の事件と関連があります。
なんだって…?あなたは奥さんの事件のあと奥さんにかけていた生命保険金3000万円を受け取りそれをギャンブルでこしらえた借金の返済に充てていますよね。
やはりひき逃げに見せかけた計画的な保険金殺人だったんじゃないんですか?俺は…紀子を殺してなんかいない。
では宇野が殺された日の朝5時半から7時の間あなたはどこにいましたか?漆器展があった翌日です。
この家に…。
それを証明してくれる人は?いないよ。
そもそもどうして俺が疑われなきゃならないんだ!宇野は奥さんを車でひいた犯人を10年間もゆすってたんですよ。
漆器展の日も…。
10年前の事件ばらされたくないだろう?だったら俺の言うとおりにしろ。
展示会場の電話に出たのはあなたでは?もううんざりだ!あんたたち帰ってくれ!帰れ!電話…。
へえ信じられない。
あの真面目な石井さんが保険金殺人だなんて。
でも人は見かけによらないっていうからね。
うんまあ仮にそうだとしてもよ10年間ゆすりに応じてたのよ。
それを今になってなんで宇野さんを殺したりするのよ。
おかしいわよ。
殿の推測ではね…。
いやだ有ちゃん殿山警部のこと殿なんてなれなれしい!いやいやいや違う違う。
そっちの殿じゃなくて本物の殿様のほう。
は?梅平警部補はね会津藩主松平家のあー…まあいいや。
よくないわよちょっとピッとしてよ。
とにかくね石井さんは史恵さんと再婚するんでしょ?うん。
だから過去を精算したくて宇野を殺した。
ああそういうことか。
うん。
ああでも気になるな。
何が?ナナカマド!犯人はなぜ振込人を有限会社ナナカマドにしたのか?あー…。
なんか意味があるはずよね。
ごめんなさいね。
修理なんて細かい仕事お願いして。
いいえ。
明日中に型どりしときます。
お願いします。
石井さんお酒はほどほどにね。
はい。
それと史恵さんと再婚なさるんですって?それならそうと言ってくだすったらよかったのに。
すいません。
社長には感謝しています。
口下手で自己本位の私を長いこと使ってくださって…。
おまけに会津絵の復元という大役までさせていただいて…。
ここまでこられたのは社長のお陰です。
ありがとうございます。
(綾子)なあに?急に改まって…。
ともかくおめでとうございます。
お母さん。
お母さん昔石井さんと付き合ってたってほんと?誰からそんなこと聞いたの…?誰でもいいじゃない。
私ね東京で男の人と色々あったの。
だから何聞いても驚かないしお母さんを責めるつもりもない。
お母さんと石井さん今もずっと続いてるんじゃないの?何言ってるの?そんなわけないじゃない。
ひょっとしてお母さんと石井さんが宇野っていう人を…?夏希…あなたどうかしてるわ。
お母さんや石井さんがそんなことするように見えるの?頭冷やしてらっしゃい!
(扉が閉まる音)哲司さーん。
哲司さんお弁…。
あ…あ…!ああっ…!
(パトカーのサイレン)ああ…。
毒物による中毒死のようですね。
焼酎に入れて自分で飲んだか…。
自殺じゃないわ!哲司さんが自殺なんかするはずがない!ゆうべ7時頃電話で話したのが最後でした。
その時に何か変わった様子はありませんでしたか?特には…。
まだ仕事してるようでしたので2〜3分話して切りました。
誰かが来ているとかこれから来るとかそんな話は?いいえ。
あの史恵さん合い鍵で家に入られたっておっしゃいましたけど他に合い鍵を持ってる人は知りませんか?いないと思います。
鍵も半年前に付け替えたばかりですから。
ああ…そうですか。
有作さん。
はい。
哲司さん自殺なんかしません!だって私たち…もうすぐ結婚するって…!ああ…史恵さんしっかりしてください。
(梅平)中川さん。
ははい!台所からこれが…。
司法解剖の結果石井の死亡推定時刻は昨夜の8時から10時。
死因は青酸カリによる中毒死と判明した。
有作捜査状況の説明を。
はい!青酸カリは石井が飲んでいたと思われるグラスからのみ検出されました。
室内には侵入された形跡はなく来客があった様子もありませんでした。
また家の中はすべて戸締まりがされておりました。
ということは石井に誰かが青酸カリを飲ませるということは不可能でありよって自殺をしたと考えて間違いないと思われます。
次に石井宅から発見されたナイフの血痕についてですがDNA鑑定の結果宇野久雄のものと一致しました。
うっ!ううっ…!石井が宇野を殺害したナイフであると思われます。
すでにご承知のとおり宇野は10年間に渡りゆすりを行っていた形跡があります。
それが10年前の石井の妻紀子ひき逃げ死体遺棄事件に関するゆすりでその相手は石井と思われます。
(車のブレーキ音)ああーっ!
(梅平)石井は2つの殺人事件の件で自分に捜査の手が伸びてきたことを苦に自ら命を絶った。
それが凶器の発見で裏付けられた次第です。
とはいえ凶器のナイフからは石井の指紋は検出されていない。
宇野殺しに関しては今しばらく捜査を継続させ石井と宇野の関係を示す証拠を見つけることに全力を挙げてくれ。
いいな。
(一同)はい!石井さんが自殺?そんな…バカな!ええ。
そんなはずないのよ。
綾子さんあなたが殺したんでしょう?そうよね?何を言うの?史恵さん。
人殺し!
(不通話音)おかしいわよ石井さんが急に自殺するなんて…。
でもね状況から考えて石井が自分で青酸カリを飲んだとしか考えらんないよ。
部屋は密室だったしさ青酸カリはグラスの中からしか検出されてないんだから。
いやあなんか腑に落ちないなあ…。
それにさ凶器のナイフだって発見されたしね。
それよできすぎてるじゃない!え?その凶器から指紋は拭き取られてたのよねえ?うん。
それなのに血痕はそのままで台所にあったんでしょ?おかしい…。
じゃあ美奈は自殺じゃなくて他殺だって言いたいの?まあ断定はできないけどその可能性はあると思う。
かゆいもう〜!え?あっ!湿疹?うん…。
ああ…。
なんか変なもの食べたり触ったりしたんじゃないの?ううん…あっ!わっ!漆だよ!え?あっ!ほら今日石井工房行ったでしょ。
あのせいだ。
じゃあ漆かぶれ?漆かぶれだ。
ああかゆい…でもねえかかないほうがいいんじゃない?かゆいもう…ああ!漆だと思うとかゆいもう…!うん。
ブランクがあったなんて思えないわね。
ほんとですか?ええ。
基本がきちんとできているからね。
ありがとうございます。
あの…ゆかりさんは母と石井さんとのことご存じでしたか?え?若い頃お付き合いしてたらしいんですけど…。
そんな噂を耳にしたことはあるけど私は詳しいことは何も知らないわ。
そうですか…。
いらっしゃいませ…。
人殺して店開けてるなんてどういう神経してるの?史恵さん…。
あなたが哲司さん殺したのよ。
私が哲司さんと結婚するのが許せなかった…だから。
あなた大きな思い違いしてるわ。
思い違い?よく言うわねえ。
あの古美術商殺してその罪を哲司さんになすり付けといて。
それだけじゃない。
あなたは10年前哲司さんの奥さんも車でひき殺した。
作り話するのはやめて!ほんとのことじゃない。
いつまでも昔の男に未練たらたらであーみっともない!みっともないのはあなたのほうよ。
ありもしない話勝手に想像して嫉妬するなんて…。
揚げ句の果てに人の店にまで来て…。
何よ人殺しが!返してよ!返してよあの人を!あっあー!誰か誰か!あー!放してよ!よしなさい!やめてやめてー!
(泣き声)
(史恵の泣き声)どうしたんですか?
(史恵の泣き声)
(史恵の泣き声)ああ…。
(夏希)美奈さん。
綾子さんは?今中で有作さんと…。
ねえケガは?大丈夫なの?ええケガはありませんでした。
あっそうよかった…。
ねえ何があったの?あの女が哲司さんを殺したのよ!そうに決まってるわ。
それは不可能です。
竹本綾子さんは石井さんの死亡時のアリバイが成立しています。
そんなはずありません!よく調べてください!史恵さんのおっしゃってることは全部誤解です。
私は石井さんを殺してませんし石井さんの奥さんや宇野さんだって殺してなんかいません!我々も史恵さんの話を信じてるわけじゃないんですけどもこのような事態になった以上詳しい話を聞かせていただかないと…。
何もお話しすることなんかありません。
ただ…。
ただ?昔石井さんとお付き合いをしていたのは本当のことです。
(夏希)あっお母さん!ご心配をおかけしました。
ねえ史恵さんは?ああまだ取り調べ中。
で綾子さんはねもう帰っても大丈夫だって。
綾子さんの疑いが晴れてよかったわね。
ええ!夏希石井さんのことだけど…。
私たちね…結婚の約束してたの。
もう25年も前のことだわ。
終わっちゃった。
終わった…。
うわ〜すてき!つけようか?石井さんはまだ見習いだった。
だから両親が反対して私にお見合いを…。
その相手がお父さん?ええ。
私は両親の薦めに従って結婚。
石井さんは仕事に没頭して数年後奥さんをもらって腕のいい蒔絵師と評判に。
でも…。
(綾子)腕はいいのに仕事のこととなると頑固でどこの問屋さんともしょっちゅうもめた。
(綾子)そのせいで仕事はこなくなって酒とギャンブルに溺れて借金まみれ。
当然夫婦仲も険悪になって…。
そして10年前奥さんの事件が起きたの。
石井さんひどく荒れて…。
私は…このまま石井さんの才能が埋もれてしまうんじゃないかと思うと残念で…。
だから…。
私に会津絵の復元を…?ええ。
ぜひお願いしたいの。
私でいいんですか?石井さんにしかできない仕事よ。
ありがとうございます…!
(綾子)会津絵を完璧に復元したいと願っていた私の思いに石井さんは応えてくれた。
それ以来私たちは問屋と職人として接してきた。
それ以上の気持ちは微塵も持ったことがないわ。
私の胸の中にあるのは家への思いだけよ。
家?私はこの会津に生まれて竹本漆器店という家でずっと生きてきた。
だから店と家族を大事に守って生きていきたい。
その思いよ。
強いですね。
会津女ですもの。
同じ会津女でも私は家を捨てて会津から出て行く。
思い切って東京へなんて言っていた自分が恥ずかしいですもん。
ゆかりさん。
一人一人違う生き方があっていいんじゃない?そうね。
美奈さんの言うとおりだわ。
ありがとうございます。
また大川荘へはごあいさつに伺わせていただきます。
ゆかりさんご心配おかけして申し訳ありませんでした。
すみませんでした。
いいえ!じゃ。
じゃ。
金を払った形跡がない?はい。
石井の金の出入りを詳し〜く調べてみましたところこの10年間借金の返済を払った以外は妻の生命保険金3000万円にはほとんど手をつけていませんでした。
宇野が犯人をゆすって手に入れた金額は5000万。
石井はその金を保険金で払ったんだろうと見てたんですが。
となると有限会社ナナカマドを名乗ったのは石井ではなかった…?警部犯人は別にいます。
これは連続殺人事件です!ってかっこよく言ったまではいいんだけどそのあと殿山警部にだったら犯人は誰なんだ?って言われちゃって…。
うん言われちゃって?答えられなかったんだもう…。
いい?石井さんはやっぱり殺されたのよ!ね?ええっ!?ああ〜!ああ!もう声が大きい!もう。
いいからいいから。
シー!シーシーシーシー…。
いい?いい?10年前真犯人は石井さんの奥さんを車でひき猪苗代湖に遺棄した。
それをネタに真犯人は宇野さんからゆすられ続け口封じのために殺害。
それらの罪を石井さんになすり付けるために自殺を偽装した。
うん。
でもね美奈石井の死体が発見された時家の中はすべて鍵がかかってたんだよ。
誰かが石井に青酸カリを飲ませるのは不可能なんだよ。
だからよく考えて中川刑事。
ほら考えて。
もう!トリックよ。
トリック?トリックトリックトリック…あっ!そう!
(2人)密室トリック!密室!?うわあもう〜声がでかい!あっ…。
ええ〜!?邦彦さん。
ひどいなあ…。
ありがとうございます。
お母さんのこと耳にして…。
大丈夫?ええ私も母も大丈夫です。
ならいいけど…もし何か僕で役に立てるなら…。
こう見えてもあちこち顔きくから…。
お気遣いありがとうございます。
でも大丈夫です。
500万円の重箱の借りを返そうなんて思わないでください。
とげのある言い方だなあ…。
もう10年も前のことだ。
僕も若かったから君のお母さんに失礼なことしたと今は思ってるよ…。
10年前…。
三角関係だったんだって!綾子さんと史恵さんと石井さん。
それがあって史恵さんは…。
あなたが哲司さんを殺したんでしょう〜!そもそもね石井さんは密室トリックで殺されたのよ〜。
密室トリック!?はいはいはい。
口動かさないで手を動かす!はいすいません…。
密室トリックって密室…。
美奈さん。
はい。
ちょっと。
はい。
綾子さんと史恵さんのこと町中で評判になってるみたいね。
はい。
もうひどいことを言う人たちもいて…。
こうなったら真犯人を見つけるしかない…すいません!あの事件に首を突っ込んではならぬ。
什の教え「ならぬことはならぬものです」でした。
私も綾子さんの潔白を信じるわ。
それを証明したいっていう気持ちはあなたと同じぐらい強いの。
会津にはこういう言葉があるわ。
やらねばならぬ。
美奈さんおやりなさい。
真犯人見つけて!はい!趣味ねえ…鉄砲撃ちって書くか。
キジ撃ちとかなさるんですか?いらっしゃいませ。
毎年狩猟解禁日の11月15日が待ち遠しくて。
ああ…狩猟は期間が決まってますからねえ11月15日からと。
ではお部屋にご案内いたします。
どうぞこちらへ。
お疲れ様でございました。
狩猟…?ねえちょっとお客様名簿見せて。
はい。
ありがとう。
おふくろの許可が出た!?そうなのよ。
やらねばならぬって…。
だからやるわよ〜!有ちゃん狩猟解禁日よ。
狩猟解禁日?石井さんの奥さん紀子さんがひき逃げされたのが11月15日狩猟解禁日なの!うん。
でそれで?宇野さんの趣味は狩猟。
もしかしたらその日宇野さんは狩猟に行く途中でその事故に遭遇したんじゃないかしら。
(車のブレーキ音)ああーっ!しかもその時期ね猪苗代湖周辺の山はナナカマドで真っ赤に染まるんだって!じゃあ有限会社ナナカマドっていうのはその辺りに意味があるのかな?かもね〜。
宇野さんは犯人にそれをネタにお金を要求した。
500万円。
え?500万だったの?うん最初はね。
へえ〜。
確か綾子さんが辻さんから買った重箱あれも…500万だったわよね?うん。
辻はね当時学生で株で損した分その穴埋めに使ってたって言ってたよ。
まさか…。
えっ辻が?ただの偶然かもしれないけどさ5000万円要求されて支払える犯人ってそれなりに財力がないと。
いやでもそれ言うんだったら綾子さんだってさ…。
有ちゃん。
綾子さんまだ疑ってるの?綾子さんって人はさ…!ノーモア夫婦ゲンカ!ノーモアノーモア…そうだね。
ごめんごめんごめん。
とにかく一番の問題は密室で石井さんの飲み物にどうやって青酸カリを入れたか。
うんうんうんうんそうだよね。
うわっかゆ〜い。
えっ?ねえまだ?うん。
はい。
はあ〜。
あ〜どう?効きそう?おおいいみたいいいみたい。
ああよかった。
冷やすほうがいいんだね。
そうだね。
でもさこれ少なくてすぐ溶けちゃうよ。
ああそうか溶けるからね。
氷〜。
有ちゃん。
ん?氷よ!氷!氷?青酸カリを入れた氷で石井さん殺害したのよ!え〜っと犯人は青酸カリを入れた氷を作って石井さんちの冷凍庫に入れた。
きっと証拠が残らないように青酸カリが入ったのは1つだけで普通の氷にまぜて冷凍庫に入れておいた!でなんにも知らない石井はそれをグラスに入れて焼酎を飲んでしまった。
くっ…。
すごいよ美奈!密室トリック解いちゃった!いやまあね。
いやあ僕もすごいなあ。
名探偵を妻に持つ刑事だもんね。
あいた!自慢してる場合じゃないでしょう。
でもさそうするとアリバイは成立しなくなっちゃう。
う〜んその氷がいつ冷凍庫に入れられたのかわからないからね。
証拠もなくなるよ。
だって氷溶けちゃうもん。
でも誰かが石井さんちに忍び込んだのは確かなのよ。
有ちゃん。
明日徹底的に石井工房調べてみて。
了解しました。
あっ…。
このまま東京に?色々とごあいさつを済ませてから電車で。
美奈さん大おかみ本当に色々とありがとうございました。
体に気をつけて頑張ってくださいね。
(ゆかり)はい。
会津へ戻ったら必ずここへ寄ってちょうだいね。
はい。
じゃあ失礼します。
じゃあ。
ゆかりさん手どうしたのかしら。
手ですか?あなた気がつかなかった?かぶれてたみたいだけど。
かぶれ…?警部!どうだった?有作。
氷から指紋が出ました!氷から…?
(綾子)ゆかりさん。
綾子さん!あっ夏希ちゃん。
美奈さん。
お母さんは?ゆかりさんいらしたでしょ?ゆかりさんはだいぶ前にごあいさつにお見えになって母はそのあと出かけたきりですけど…。
どうかしたんですか?ああうん…。
ああ有ちゃん!どうしよう!綾子さんもゆかりさんもいないの!えっ!?もしかしたら綾子さんゆかりさんを…。
どういうこと?はっ…!あっ!ああちょっと美奈!ああ…。
美奈!美奈!美奈!ちょっとちょっとあっ…!あっ…。
石井さんが亡くなった日…私漆器の修理を頼みに石井さんの工房に行ったの。
(綾子の声)その帰り近くの道で…あなたを見かけたわ。
急いでいたようだったから声はかけなかったわ。
翌日石井さんの死体が発見されそしてあくる日…。
同じ会津女でも私は家を捨てて会津から出て行く。
思い切って東京へなんて言っていた自分が恥ずかしいです。
家を捨てる…。
それを聞いた時もしやと思ったわ。
だってゆかりさんらしくないもの。
家を捨てるなんて余程のことだわ。
ゆかりさん。
東京に行くなんてウソでしょう?あなた…死ぬつもりじゃないの?あなたをここに連れてきたのはあなたを責めるためなんかじゃない。
もうこれ以上逃げないで自分の罪と向かい合ってほしいからなの。
どうしてそんなことを?あなたの気持ちがわかるからよ。
わかるわけないわ!重たかったんでしょう?犯した罪以上にあなたの生まれ育った家が。
はっ!駄目!ゆかりさん。
(ゆかりの嗚咽)死んでも償いにはならないわよ。
美奈さんも私が犯人だってことに気づいたんですね。
今日ゆかりさんの手がかぶれてることに気づいてね。
僕と同じ石井工房にあった漆の木や作業道具でかぶれたんですよ。
直接触らなくてもかぶれることがあるそうよ。
あなたが犯人だという証拠もあります。
石井さんが殺された日の昼間あなたは石井工房の台所に忍び込んだ。
宇野さんを刺し殺したナイフを隠し…。
冷凍庫の中に氷を入れた。
その中の1つが青酸カリ入りの氷。
その夜何も知らない石井さんは青酸カリ入りの氷を焼酎に入れて飲んでしまった。
石井工房の台所を調べてみたんですよ。
そしたら冷凍庫の中のアイスボックスの中に氷が1個だけ残ってたんです。
その氷には指紋が残っていました。
実はですね氷というのは意外に鮮明に指紋が残ってしまうんですね。
ゆかりさん。
包み隠さずすべてを話して。
10年前のあの日生け花に使うナナカマドをとりに山へ行ったんです。
(ゆかりの声)帰り道突然目の前に自転車が現れて…。
ああーっ!
(ゆかりの声)そこへ通りかかったのが宇野だった。
死んでるよ…。
(ゆかりの声)どうしていいかわからなくてただ…ただそこから逃げたかった!そしたら…。
助けてやろうか?あんたを助けてやろうかって言ってるんだよ!
(ゆかりの声)何も考えられないまま言われるとおりに遺体を宇野の車に…。
(電話)
(ゆかりの声)夜になって電話がかかってきて…。
はい澤田でございます。
500万円?遺体を猪苗代湖に沈めてやったんだよ。
それぐらい安いもんだろう?金は俺の口座に振り込め。
振込名は…そうだなあ有限会社ナナカマドだ。
その遺体が石井さんの奥さんの紀子さんだってことは知ってたんですか?いいえ。
事件が発覚して初めて知りました。
私が車ではねたのは石井さんの奥さんだったと。
ゆすりは1回だけでは終わらなかったのね?はい。
家の土地を切り売りしてお金を作りました。
それ以来ナナカマドを見るのがいやで…。
(ゆかり)赤い実が私を責めている気がして…。
見たぞ!見たぞ!って!ゆかりさん。
漆器展の手伝いなんかしなければよかった。
まさか宇野が来るなんて…。
(電話)はい。
会津漆器展会場です。
(宇野)「後ろを見てみな」「あんたのおふくろさん亡くなったんだってな」
(宇野)相続した金全部渡してもらおうじゃないか。
「俺から逃げられると思うなよ」「どこまでも追いかけるからな」私母も亡くなったので家を捨てて逃げるつもりでした。
でも宇野はどこへ逃げても追いかけてくる!そう思い知らされて…。
金は?金は持ってきたか?うっ!どうして石井さんまで?石井さんは私が宇野を殺したことに気づいたんです。
展示会場で宇野からの電話を取ったのはゆかりさん君だよね?君は10年前紀子を…。
目の前が真っ暗になって10年前の事件を隠さないと…石井さんをなんとかしないと…!それしか頭になくて…。
ごめんなさい!私のせいで綾子さんにつらい思いをさせてしまって…!ごめんなさい。
10年前の事故の時警察に行ってれば…。
そのあとだっていくらでも自首する機会はあったはずだよ。
うちは会津の旧家。
物心ついた時から家の名を汚してはいけない。
会津の女らしく凛として生きなさい。
母にそう言われ続けてきました。
(澤田栄子)什の教えその一。
「年長者の言ふことに背いてはなりませぬ」その二。
「年長者にはお辞儀をしなければなりませぬ」ゆかり。
什の教えよく守りなさい。
事故を起こした時に母の言葉がすぐに頭に浮かんでだから…だからどうしても自首できなかった。
私本当は綾子さんのようにしっかりと家を守っていきたかったんです。
家を誇りに思っていたしこの会津の町も大好きでした。
でも…でもあの事故を境にすべてが変わってしまった。
誇りは恥へと変わったんです。
事故ですべてが変わったんじゃないわ。
ゆかりさん事故のあとのあなたの行いがすべてを変えたのよ。
すぐに警察に行ってれば誇りを失うことはなかった。
たとえ家の名を汚したとしてもお母様が嘆いたとしてもそれでも…!最後の誇りは残っていた。
誇りが何を意味するのか…今のゆかりさんならわかるわよね?ええ。
罪を背負い一生をかけて償うこと。
(パトカーのサイレン)ゆかりさんその誇りを取り戻して。
宇野久雄石井哲司殺害容疑でご同行願えますか?はい。
ゆかりさん!私信じてるわ。
あなたが誇りを取り戻すことを。
(ゆかり)綾子さん…。
だってあなたは強い会津女ですもの。
(パトカーのサイレン)ねえ有ちゃん史恵さんどうだった?綾子さんとの示談が成立して不起訴になったよ。
ああそう。
うん。
本人もだいぶ反省してるようだし。
へえ〜。
史恵さんもかわいそうだったわねえ。
うん。
有ちゃんボーッとしてないで働いて!さっさとシュッシュッて!ああはいはいはい。
だけどさ女の人ってほんっと〜に強いよねえ。
何よ急に。
私のことかな?うん。
えーっ!?ああっいえいえいえ…!ほらっおふくろのこととか綾子さんのこと。
ああ…。
まあそりゃ責任ある立場になったら強くならざるを得ないってことじゃない?そうか…。
うん。
それってさある意味女を捨てるってことなのかなあ。
それは違うと思うな。
どんなに強く見えても女は女の部分をそっと胸の奥にしまってる…。
私はそう思いたいな。
うわ〜すてき!つけようか?お母さん。
お茶入ったわよ。
ええ今行くわ。
あのねお母さん。
ん?私この家に生まれてよかった。
めげないめげない!うん!有ちゃん。
急いで〜。
はいはい。
(小百合)若おかみ!ただいま戻りました。
おかえりなさい。
ねえ小百合さんいかがでした?婚活。
婚活じゃありません。
東京見物です!ああ〜ですね。
いかがでした?東京。
やっぱり会津が一番です。
若おかみ。
私仲居頭小百合は今まで以上に頑張って働かせていただきますので何とぞよろしくお願い申し上げます。
こちらこそよろしくお願い申し上げます。
お土産。
あっいやいやいや…。
どうぞ。
ありがとうございます。
どうも。
はいどうも〜。
お疲れ様〜。
有ちゃんあれはね婚活完全惨敗!寿退社の夢敗れたりだね…。
敗れたり敗れたり…。
お義母様。
小百合さんが東京から戻りました。
さっき会ったわ。
これからは仕事一筋頑張りますって。
まあうちは助かるけど。
ええ。
結局私が誰かいい人を見つけてあげるしかないわね。
ところで美奈さん。
はい。
あなたも会津へ嫁いで21年。
いい会津女になったわね。
へっ?そうだよねえ。
やったね美奈!…と言いたいところだけどまだまだね。
なぎなたの腕はさっぱりヘタクソだし梅子。
はっ!へっ?これはね私が使っている大切ななぎなたです。
あなたに差し上げますから朝晩おけいこなさい。
いいですね?はい!ありがとうございます!宴会のお時間です。
参りましょう。
はい!けいこに励みます!有ちゃんが。
え?いや僕は…。
励むったってもう…。
は〜っ。
あっ…はあはあ…。
(政子)本日は芦ノ牧温泉大川荘をご利用いただきまして誠にありがとうございます。
私大おかみの中川政子でございます。
若おかみの中川美奈でございます。
日頃のお疲れをいやしていただきたく私ども従業員一同心をこめてサービスをさせていただきます。
どうぞごゆっくりおくつろぎくださいませ。
(拍手)2014/10/20(月) 14:00〜15:51
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温泉若おかみの殺人推理[再][字]
会津若松〜復元された飾り重箱に連続殺人の秘密!!真犯人は『氷の足跡』を残した!?
詳細情報
◇出演者
東ちづる、中村梅雀、岡田茉莉子、若林豪、山村紅葉、黒田福美、北原佐和子、嶋田久作、西尾まり、河原さぶ
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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