生字幕放送でお伝えします
なんだか懐かしくなる情緒あふれる街並み。
その理由は、この壁。
黒と白の幾何学模様がなんともいえない雰囲気を醸し出しています。
静岡県は伊豆半島の松崎町にはこの壁を持つ建物が200軒ほど、今でも残っている日本有数の町なんです。
さて、その一軒を早速ご紹介したいと思います。
こちら、明治時代に建てられた元呉服屋さんなんです。
この呉服屋さんの壁を見ていただきます。
白い部分をご注目ください。
何かの生き物に見えてきますでしょうか。
実は、こちら。
海の生き物、なまこに似てるかも?ということで、このことからなまこ壁といわれているんです。
この松崎町は、なまこ壁を江戸の末期から盛んに取り入れて建物を造ってきました。
なまこ壁はお金持ちの象徴だったんですよ。
亮さん!こちら、なまこ壁。
お金持ちの象徴ということでこちら、見てください。
この黒い部分、実は瓦でできているんですね。
瓦といえば、屋根に使うっていうイメージがあるんですがこちらには瓦をぜいたくにも壁じゅうに張り巡らせているんですよ。
そして、この白い線の正体はしっくいなんです。
しっくいって建築の資材、材料でよく聞きますけど黒い瓦をしっかりと留めるために塗っては乾かし塗っては乾かし…大変、手間がかかるんですね。
手間がかかるということは…。
亮さん、手間ひまかかったなまこ壁今、新築するとどのぐらいのお値段になると思いますか?こちら、1平米辺りで考えてほしいんです。
壁の値段!?
これで、どのぐらいか。
ヒントありますよ。
ヒントは、しっくいだけを平らに塗った壁は5000円ぐらいなんです。
1万円ぐらいじゃないですか?
実はですね、このなまこ壁なんと1平米で5万円以上もするんですよ。
それがまた表面だけのお値段なのでこの裏の部分の基礎工事まで含めますとまあ、ちょっとね…。
うん百万円とかになっちゃいますかね。
雰囲気いいですね、本当に。
自分が忍者だったらすごい入りたいような感じがしますよね。
お金をかけて、なまこ壁を造るっていうのは忍者に入られないようにっていう理由もありますけれどもほかにも訳があるんです。
実は瓦は焼き物ですよね。
ということで火に強いということでなまこ壁は火事から建物を守るための工法だったんですよ。
この辺り季節風で西風が吹きまして冬の火事っていうのを大変に恐れたんですね。
ですから、非常に防火性のある壁を造ろうということでそういう機能と黒と白の幾何学模様のデザインと、両方を合わせた壁ということでなかなか、優れたものであると。
実はこの建物もそうなんですがその奥の庭にもなまこ壁の建物があるんです。
こちらは大事な家財をしまっていた蔵なんですね。
蔵もなまこ壁でできているんです。
やっぱり大事なものをしまっておく場所ですから。
なまこ壁の魅力っていうのは手入れをすると100年以上もつんですよ。
だからそこがやっぱりいいところなんじゃないかなと。
ただ、亮さんちょっと私、気になるところを一つ、見つけたんです。
ここ、分かりますかね。
ちょっと、しっくいが浮いてるの、分かりますか?
浮いてるね。
これ、何?
これ、しっくいが傷んで剥がれ落ちるという感じになっているんですよ。
何十年もかかっているとやっぱ数十年たつと少しずつ傷みが出てくるのでそんなときに頼りにしていたのがなじみの左官屋さんということなんです。
ご登場いただきます。
この道一筋58年松崎町で生まれ育ちました中村一夫さんです。
よろしくお願いします。
中村さんの熟練の技でこの壁を直していただきます。
まず…バリバリバリと思いっきり剥がしちゃうんですね。
そして、平らにならします。
そして、取り出しましたしっくいと、盛んの大事な道具のこて。
しっくいも粘りがありますよね。
そして、しっくいの部分に再び、載せていくんですね。
これ、ケーキのデコレーションみたいに見えるでしょう。
生クリームを塗ってるみたいに。
だけども、扱ってるものがしっくいですのでとにかく、一度、乾燥させてその上にのせていくと。
非常に時間もかかるんですよ。
左官屋さんっていったら平らにするのが難しいイメージやけどこの、こてで丸くするんだ。
亮さん!その中村さんが今、塗っていたしっくいは江戸時代から変わらない製法で作られているんですよ。
特別な作り方なんです。
こちらは、しっくいをなまこ状に盛るのに欠かせない原料を混ぜているところなんですね。
繊維が入ってるな…。
磯の生っぽい、においがするんですが亮さん、ここでクイズです。
なまこ壁に欠かせないしっくいの原料とは、なんでしょうか。
3択あります。
1番、なまこ壁ですからもちろん、なまこ。
2番、この辺りは港があってお魚も取れます。
白い色を出すためには白身のお魚。
そして3番、港ですから海藻も豊かです。
3番は海藻。
さあ、この3つのうち答えはどれでしょうか。
繊維みたいなの入ってるから…。
思い切って言ってみましょう!なまこです。
思いっきりましたよ。
実は亮さん、答えは3番の海藻なんです。
こちら、見てください。
これ、ツノマタという名前の海藻なんですが煮込んだツノマタの粘りけがちょうどいい硬さになるんですね。
さっき壁、塗っているときにご覧いただいたみたいに独特の粘りけがありましたでしょ。
それは、このツノマタとそして、お隣にあります袋の中これ消石灰って運動会のときにグラウンドにまくあの石灰ですね。
そういうものを混ぜまして独特の松崎ならではのしっくいを作っていくということなんです。
粘りけもすごいですよね。
中村さんにもう一度ご登場いただきまして。
ずいぶん手間ひまかけたしっくいですがこのしっくいじゃないとだめなんですか?
この松崎町のなまこ壁は貴重な財産です。
これを守るために先人たちがやったしっくいを作ってやっています。
この方法を守ると。
今これを扱える職人さんはそんな多くないんじゃないですか?
限られていますね。
大体職人の数がいなくなりました。
中村さんに頑張っていただかないと。
なまこ壁のためにね。
はい。
できるだけ街のために頑張るつもりです。
ありがとうございます。
中村一夫さんでした。
私たちは、このあと今、壁ばっかりご紹介してきましたけど中を通っていきますね。
中も入れるんですよ。
実は、ここは今、観光客のための無料の休憩所になっていまして。
誰でも入れるんですよ。
趣のある内装ですよね。
時代劇とかに出てきそうな。
町娘の役で足立さんが座っていそうな。
やってみたい。
着物とかが、すごい似合いそうな。
でも、昔ながらのものと近くに触れ合えるっていうのはいいですよね。
呉服屋さんですからね。
もともとはね。
こちら、きっとここに反物広げたりしたんでしょうね。
ここから、通りに出られます。
通り、出るとまた、なまこ壁が見えます。
こちらの通り、出てきました。
なまこ壁の街並みを歩くときの楽しみ方っていうのがあるんですよ。
今まで壁ばかり見てきましたけどちょっと上のほうを見ていただきましょうか。
壁と屋根のつなぐ部分なんか白い板みたいなもの見えませんか。
分かります。
あそこに、実はちょっとした細工がありましてそれをじっくり見るために…。
よく見えないので今回はこちらをご用意いたしました。
名付けて、左官カメラ!近づいて、見てもらうと…。
鶴なんです。
これ、こて絵っていいましてしっくいを使った左官職人の技を見せる場所なんです。
さっきのただ塗ってるだけじゃなくて絵まで描いてしまう。
中村さんもできるんでしょうかね。
伺わなかったですね。
でも、たぶん、こちら左官職人のセンスとか力量が表れる熟練の技術なのでこれも大変なんです。
お願いしたらやってくれたかもしれません。
このこて絵というのは職人さんたちがお金のかかる壁を依頼してくれてありがとうということで依頼主への感謝の思いを込めて作ったといわれているんですね。
おしゃれなんです。
なまこ壁があちこちにあると不思議と街全体が情緒にあふれているというかそういう、においがしますよね。
歩いてても左右になまこ壁がありますしいろんな発見があるんですよ。
ほかの家も見たくなりますよね。
例えば、左側に見えてるのは旅館なんですが旅館もね、路地側はずーっと下半分、なまこ壁です。
きれい。
それから、旅館のお向かいはたばこ屋さん。
たばこ屋さんも住宅は今風の住宅ですけど…。
実は下は、なまこ壁があるという。
生け垣の下ね。
そのお向かいのおうちも普通のおうちなんですがなまこ壁の立派な門構えになっているということで今のおうちでもすごく合うよっていう。
すごいですよね。
今の暮らし方の中に上手になまこ壁を取り入れて松崎の人たちは暮らしているというわけなんですね。
どうして松崎町にはこんなに、たくさんのなまこ壁が造られたかといいますと。
実は地理的な理由があったんです。
駿河湾を望む松崎町は江戸から明治にかけて絹や木炭の交易で栄えてきました。
交易で築いた財を使って次々と、なまこ壁を建てる家が増えていったんですね。
その豊かな歴史を今に残す建物がまだまだ、あります。
松崎町を代表するなまこ壁建築。
こちら、小学校なんです。
子どもたちをなまこ壁の学校に通わせたいと明治時代に町の人々が寄付金を集めて建てたんですね。
昭和50年代まで松崎の子たちは、なまこ壁の中で学んでいたんですよ。
羨ましいですよね。
本当にね。
なまこ壁にもいろんな美しさがあるんです。
こちらも呉服屋さんだったお宅。
大事な反物を保管した蔵に使われているのは黒いなまこ壁。
しっくいに炭を混ぜて造ったもので最高級のなまこ壁だといわれています。
こちらは江戸末期に建てられた造り酒屋です。
今は旅館として観光客を迎え入れているんですよ。
客室の窓辺を縁取るのはこて絵。
江戸時代の名工が作った迫力満点の装飾が出迎えてくれます。
まさに松崎ならではの最高のおもてなしです。
亮さん、ここはですね映画やドラマのロケ地にもなった通称・なまこ壁通りという場所なんです。
ここ松崎で一番長いなまこ壁なんですよ。
ここね、どのぐらいの長さかちょっと走ってみたいと思います。
長いでしょう!ずーっとなまこ壁なんですよ。
おかえりなさい!
結構ありました。
どうですか。
ここ、実は50mのなまこ壁なんですよ。
すごいでしょう!
これはドラマとかで使いたくなるね。
これだけ長いなまこ壁というのは実はここ薬問屋さんだったんで大事な薬草を入れておく蔵なんかも中にたくさんありましてねそれを火事から守るためにとにかく、ぐるっとなまこ壁で覆ってしまおうということでこれだけのものが造られたということなんですね。
このお宅、実はまだ中、暮らしてらっしゃるんですよ。
ご主人、ご紹介しましょう。
近藤さん、どうぞ。
こんにちは。
10代目の当主近藤二郎さんです。
これだけのおうちを維持するの本当、大変なんじゃないですか。
本当ですね。
しょっちゅう修繕もなさって?
時々、修繕をしまして。
実はこの間の台風でもちょっとだめにしましてまた左官屋さんにお願いしてありますけど。
だから、手入れをしながら大事に暮らすと。
その近藤さんの実はお宅。
外もすごいですけどね。
中に…。
すてきなものがあるって聞いたんですよ、私。
そうでもないですけど。
じゃあ、どうぞ、お入りください。
お宝が中にあるということで失礼します。
中もすごいですよね。
ここは、とにかく薬問屋さんとしての道具もそのまま残してらっしゃるから薬を作る昔の道具も残ってるんですよね。
お宝を出していただきます。
床の間に置いてあった大事なものです。
これが、そうです。
登場いたしました。
神農像って言います。
「しんのう」「神の農」と書きますね。
これ、しっくいで全部、できているんです。
あと、全部これしっくいでできていて、口のところに草…これは薬草ですよね。
薬草をかんでいるということで。
本当、これもきれいに残っていてすごいですよね。
これも、こてで作ったの?そんなことないよね?
そうなんです。
これを作った天才職人きょう、お呼びしています。
呼んでみましょう。
入江長八さん、どうぞ。
江戸時代の末期から明治にかけて活躍をしたという左官の神様と呼ばれた職人さんです。
この入江長八のことを松崎町の方たちは、みんな誇りに思ってらっしゃるんですよね。
どこに家にもこういう作品がありまして本当に大事にしてると思います。
しっくいの壁とかもたくさん造ってたんですかね。
こて絵とかもいっぱい残ってる?
こて絵も残っていますし近藤さんのお宅のこの像も代々大事にされてきて…。
私の曽祖父が大変、懇意にさせてもらっていて薬屋をやっていたものですから頼んで、作っていただいてわが家の家宝です。
これが。
これがあるから大丈夫というね。
こうやって長八さんの精神が今も受け継がれているというのはすごいですよね。
それぞれの家庭にいろんな形で残ってるわけですけどもそれを子どもたちに伝えようという。
最近、松崎町であるものを作る遊びがはやっているんです。
こちら、すごくないですか。
つやつや。
きれいでしょう。
これはね、しっくいでコーティングした玉なんですけれども中身はしっくいの壁と一緒泥のだんごに、白いしっくいでコーティングして絵の具で混ぜたものを塗りましてそして、磨き上げたものなんです。
磨いたら、こんなになるの?こんなぴかぴかになるの?
こんなになるんです。
しっくいというのは磨くとつやつやになる性質がありましてそれで、これを子どもたちは誰のが一番、よく磨けたかというコンクールをやったり、観光のお客さんが体験できるような場もあったりしてとにかく、磨いて遊ぶと。
きょう、私たちはせっかく松崎にお邪魔しているので用意していただきました。
これです。
これが磨く前の玉です。
ちょっとまだくすんでる感じなんですけどこれを磨いていくんです。
こうやって…。
瓶みたいなやつで。
プリンとかヨーグルトが入ってるような瓶ありますよね。
これで、磨くんですけどどうやって磨くのか。
いきます。
こうやって、磨くんです。
それ磨いてることになるの?
ちょっとずつなんですけど磨けば磨くほどぴかぴかになっていくんですけどなんとなくだけど分かりますかね。
なんで牛乳瓶で光るの?
たぶん、ガラスの面とこのしっくいの面をちょうど磨くのに適してるんでしょうね。
一番身近な道具だっていうことで子どもたちが体験するには特別な道具は必要ありませんからこれさえあれば誰でもできますよね。
新しい健康器具に見えるよ。
こんなふうにして松崎の子たちは玉を磨きながら長八さんのことを思い町に伝わる技術を大切にしてるということ2014/10/20(月) 12:22〜12:45
NHK総合1・神戸
ひるブラ「情緒あふれる“なまこ壁”〜静岡・松崎町〜」[字]
白と黒の幾何学模様が美しい「なまこ壁」。静岡県松崎町では、なまこ壁の技術を生かした泥だんご作りという遊びが人気。人々が大切に守ってきたなまこ壁の魅力を伝える。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】足立梨花,【コメンテーター】田村亮,【司会】柴田祐規子 〜静岡・松崎町(まつざきちょう)から中継〜
出演者
【ゲスト】足立梨花,【コメンテーター】田村亮,【司会】柴田祐規子
ジャンル :
バラエティ – 旅バラエティ
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
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