(テーマ音楽)すっかり秋めいてきましたねぇ。
散歩にはぴったりの季節です。
これはまた古そうな家だなぁ。
わぁすごいじょうろだ。
こんにちは。
こんにちは。
ずいぶん年季の入ったじょうろ使ってるんですね。
これですか?80年ぐらい前にイギリスの農家で使われてた物です。
80年?へえずいぶん古い物使うんですね。
うちは古い物だらけなんです。
ご覧になりますか?いいですか?はい。
それじゃあおことばに甘えて。
ちょっと草刈さん!いいんですか知らない人の家に上がり込んで。
おもしろそうじゃない。
古い物がたくさんなんてさ。
お邪魔します。
(怪しい音楽)どうぞ。
へえ〜本当だ。
置いてある物がみんないかにも古そうだな。
日本じゃないみたいだここ。
草刈さんこれカントリースタイルですね。
ここにあるのはみんな西洋の田舎のアンティークですよ。
西洋?田舎?アンティーク?かつて欧米の田舎で使われていた家具や道具を通称…毎日の暮らしの中で使われていたこまごまとした雑貨も含まれます。
どれを見ても頑丈で素朴な造り。
ほとんどは人の手で1点ずつ作られました。
手作りならではの温かみに加え長年使い込まれた物特有の味わいが魅力です。
そんなカントリー・アンティークを都会の暮らしに取り入れるスタイル。
ノスタルジックな趣が多くの人をとりこにしています。
西洋の人々には古くから田舎への憧れがありました。
特に産業革命以降ロンドンやパリの人々は週末ごとに都会を抜け出して田舎暮らしを楽しみました。
同時に名も無い人の手で生み出された品々を愛でる美意識が生まれます。
素朴な家具や道具がのびのびとした健康的な田舎暮らしをイメージさせました。
そんなカントリー・アンティークが戦後の欧米で再びブームとなりました。
熱中したのはやはり都会で暮らす人々でした。
大量生産大量消費の時代に失われてしまったものをそこに求めたのです。
日本にカントリー・アンティークが紹介されたのは1980年代。
アメリカやヨーロッパ各国で買い付けられたアンティークを自由に取り交ぜて楽しみました。
住む人がそれぞれに持つ欧米の田舎のイメージを実現しています。
インテリア上級者たちのカントリー・アンティークづかい。
その奥義をご覧ください。
あ…。
この本見覚えがあるぞ。
あら?草刈さん「ハイジ」なんて読んだんですか?昔妹が夢中になって読んでたんですよ。
アルプスの自然の中で暮らす女の子とおじいちゃんの話でしょ?僕も借りて読みました。
それ子どもの頃からの愛読書なんですよ。
へえ。
昔のヨーロッパの田舎の生活に憧れていて大人になったらこういう生活をするんだって決めていたんです。
この部屋には彼女の夢が詰まっているんですね。
なるほど。
ここはヨーロッパの田舎というわけだ。
カントリー・アンティークの魅力。
まずは家具から。
元雑貨店オーナーの天沼寿子さん。
日本に初めてカントリースタイルを紹介した立役者です。
東京のマンションでも山梨の別荘でもお気に入りのカントリー・アンティークが生かされています。
そんな天沼さんがとりわけ魅力を感じているのが家具です。
材料は松の一種です。
松の家具は節が目立つために値段が安く多くの家庭に普及していました。
質実剛健な英国製と言いたいところですがよく見ると引き出しが完全に閉まりません。
全体のプロポーションもなんだか頭でっかちです。
これは間違いなく…引き出しはバランスが悪いので出すときは必ず両手でやらないと出ないんですね。
この食器棚はおそらく農家の主人が畑仕事の合間に作ったもの。
素人作りの荒っぽさが目立つこの家具のどこがお気に入りなんでしょう。
ここをご覧いただくと分かるんですが少しでもおしゃれにしたくてパネルが付いてるんですね。
なんかこの辺も…その気持ちが私にはいとおしいと思うんですね。
扉の表面に付けられたパネルは純粋な装飾。
素人が背伸びをしたこんなディテールにほほえましさを感じます。
今日一つ目の「壺」。
カントリー・アンティークの家具の多くは素人や名も無い職人が作ったものです。
18世紀末イギリスのテーブル。
当時ジョージアン様式と呼ばれる優美な家具が流行していました。
そうした家具の脚は豪華な彫刻を施した円柱形。
しかしこれは四角い木材を使ってそうしたシルエットだけをまねています。
少しでも高級感を出そうという心意気でしょうか。
作り手の顔が目に浮かぶような素人らしい工夫がかえって温かな魅力を与えています。
扉の無い食器棚は入り口の脇に置かれていました。
畑から戻ってすぐにお茶を準備するためです。
そんな実用的な家具にも飾りを入れるのを忘れていません。
ごくシンプルな曲線模様です。
イギリス人に欠かせないお茶の時間に少しでも彩りを添えようという思いが感じられます。
天沼さんが特別大事にしているという家具を見せてくれました。
19世紀に作られたスツール。
屋外でお茶を飲むときなどに使われました。
この穴は手を差し込んで持ち運ぶためのものです。
柳の葉を思わせる絶妙なデザイン。
これはもう立派なアートです。
これはちょっとおしゃれになってます。
これは手で切り込みを入れてますね。
ちょっとだけおしゃれ心を入れてるんですよね柳の葉っぱみたいな模様にして。
やっぱりヨーロッパの方たちって遊び心あるなぁと思いますね。
そういうのが伝わってくるんです。
名も無い作り手のささやかな美意識。
それを見つけて愛でるのがカントリー・アンティークの醍醐味です。
(怪しい音楽)そうそうお昼はもう済まされましたか?いやまだですが…。
でしたらこんな物ですけど…。
何だ?ミルクもどうぞ。
搾りたてです。
搾りたてって…?いや何だか分かんないけどどうだっていいや。
いただきま〜す!・
(牛の鳴き声)モ〜!続いてキッチンで楽しむカントリー・アンティークです。
埼玉県に住む人形作家毛塚千代さん。
大好きなカントリー・アンティークに囲まれた暮らしです。
台所には30年近くかけて集めたアンティークが数百点。
とりわけ目立つのがホーローの台所用品。
安くて丈夫なホーロー製品は19世紀頃から欧米の家庭に普及していました。
毛塚さんのコレクション第1号もホーローのバケツ。
ホーローは鉄などの金属にガラスを焼き付けて作ります。
そのため表面が欠けやすくそこからさびてしまいます。
ちょっとぶつけると欠けちゃってさびたりするんだけどこのぽってりした優しさかなぁ色っぽいって思っちゃうのね。
アンティークのホーロー製品のほとんどは使ううちにできた傷やサビが目立ちます。
この傷気にならないんでしょうか。
つるつるより少し使った形跡があった方がよりいっそういとおしい。
そう思うとなんかねずうっと楽しくなる。
今日二つ目の「壺」。
カントリー・アンティークの台所用品には昔誰かが使った痕が残っています。
油などを量り売りする時に使った真鍮の計量カップ。
表面は細かい傷で曇り長年使い込まれた様子がうかがえます。
縁にシミが残ったバター入れ。
19世紀のものです。
農家がバターを手作りしていた遠い日々の田舎の暮らしをしのばせます。
毛塚さん今日は娘さんとその友人をランチに招きました。
腕によりをかけて準備です。
毛塚さんのアンティークとのつきあいには哲学があります。
台所用品は実際に…おやつは手作りが当たり前だった時代台所に欠かせなかった道具。
あ…。
時に使いづらいこともあるアンティーク。
しかしその不便さを通してかつての持ち主と同じ体験ができます。
料理が完成しました。
盛りつけた器ももちろんアンティーク。
毛塚さん流のおもてなしです。
アンティークの型で作ったスコーンを古いパン切り皿に載せて。
その昔誰かもこうして焼きたてのお菓子を食卓に並べたのでしょうか。
すっごい弱火でやったでしょ?うん。
はい。
ここに取るの?うん。
3種類ぐらい…。
毛塚さんが生まれ育ったのは地方の農家。
西洋の文化にはあまりなじみがありませんでした。
しかし大人になって出会ったカントリー・アンティークは意外なほど親しみやすいものでした。
こういう使い込まれた物って…同じ匂いというか空気感というかそういうのって昔の子どもの頃に育った家に流れてたのと同じような気がするのね。
西洋と日本の違いなんだけど…だから好きなんだと思うの。
素朴な道具を使うことで遠い国や時代の人々とつながる喜び。
カントリー・アンティークのもうひとつの楽しみ方です。
ごちそうさまでした。
ふう何だかよく分かんなかったけどおいしかったなこれ。
あれ?彼女どこ行った?
(怪しい音楽)おや?これまたこんな所に山小屋風のドアがある。
この中かな。
・
(牛の鳴き声)モ〜!ええ〜!?・
(牛の鳴き声)モ〜!
(スイス音楽)最後は家へのこだわりです。
インテリア上級者が最近足しげく通う場所があります。
とあるアンティークショップ。
その一角に木材だけを集めたスペースがあります。
実はこれも立派なアンティーク。
これらはアメリカやヨーロッパで古い農家などを解体した時に出た…柱や梁窓枠やドアまであります。
これは大体120年ぐらい前のドアになります。
農場の納屋だとか小屋とかで使われたドアです。
とても古典的なドアの形状です。
特に人気があるのが納屋の梁や牧場の柵などに使われていた木材。
愛好者は「古材」と呼びます。
長年雨風や日の光にさらされてきた古材の質感。
新しい木材にはない風格があります。
そうした古材を使ったインテリア。
現代のマンションに落ち着いた趣を与えます。
古材に古釘を打ってフックボードに。
こちらは大きなアンティークのドアに合わせて壁を作り替えています。
日本の家が自分だけのカントリーの世界に生まれ変わりました。
今日最後の「壺」。
ご覧ください。
カントリー・アンティーク愛好家の究極の夢をかなえた住まいです。
ここは光あふれる南フランス。
と思いきや実は東京のマンション。
南仏プロヴァンス地方をイメージして作られた住まいです。
インテリアに関する著作で知られる…古材使いの達人です。
青柳さんは実際にプロヴァンスを訪れたことはありません。
本や映画を通して憧れを抱くようになりました。
降り注ぐ日ざし。
ラベンダーの香る乾いた風。
憧れは空想となって膨らみました。
そしてついにわが家に自分だけのプロヴァンスを作ろうと決意します。
そこで選んだのが古材でした。
あとは古材を集めたり石のシンクを探したりとか蛇口のパーツを探したりとか。
よろい戸の窓に付いてる小さな扉は食器棚の扉を外して切って自分で付けたんですよ。
だから自分の…室内には至るところに古材が使われています。
マンションには必要のない大きな梁も取り付けました。
表面の微妙な質感を損なわないようなでるように優しく手入れをします。
古材の一つ一つは青柳さんが各地の店に足を運んで探しました。
そうした古材に自分で手を加えることもあります。
すべては自分のイメージどおりの空間を作り上げるため。
ご自慢のこのスペースは…台は古材に自分で漆喰を塗りさらに古びた感じを出しました。
大理石のシンクはギリシャのもの。
名古屋の店で見つけ一目ぼれ。
東京の自宅まで運んできました。
そういう空間にするにはどうしたらいいか考えて一つ一つ…現代の日本に居るという現実を超える住まい。
鍵は住む人の想像力なのです。
あれ?ここ…。
あれ?さっきまでアルプスにいたのに。
草刈さん?今日は何だか不思議な場所に迷い込んだようですね。
う〜ん。
今年6月画期的な農薬が発売されました!2014/10/19(日) 23:00〜23:30
NHKEテレ1大阪
美の壺・選「カントリー・アンティーク」[字]
身近なテーマを中心に、美術鑑賞を3つのツボでわかりやすく指南する新感覚美術番組。今回は「カントリー・アンティーク」。案内役:草刈正雄
詳細情報
番組内容
カントリー・アンティークとは、その昔、ヨーロッパの農家などで使われていた家具や雑貨のこと。有名な児童文学「アルプスの少女ハイジ」で描かれていた、あの世界だ。長年、人の手を経た物のもつぬくもりと、使い勝手を重視した素朴なデザインが人気。番組では、カントリー・アンティークを愛する人々への取材を通して、台所雑貨から部屋作りまで「西洋の田舎」を現代日本の暮らしに取り入れる楽しさを紹介する。
出演者
【司会】草刈正雄,【語り】礒野佑子
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:20032(0x4E40)