まさか…!
新たな爆発が糸村たちに襲いかかる!
(佐和田)糸村!僕が刑事なのは諦めたくないから…かもしれません。
(永田大地)ああわかった。
大丈夫だ。
(永田)明日までに試作品は用意するから。
じゃあな。
遅えよ。
(佐東)すいません。
(永田)用意出来てんだろうな?
(佐東)はい。
(西村)どうぞ。
(爆発音)
(パトカーのサイレン)爆発物が見つからない?
(鑑識員)ええ。
火薬や燃料が使用された形跡がありませんしガスも元々通っておりませんしね。
それにたばこの吸い殻が至るところから見つかっておりまして出火は単なる火の不始末ではないかと。
でも近所じゃものすごい爆発だったって。
このドアがあそこまで吹き飛んでるんだぞ。
(糸村)よっ…。
ご苦労さまです。
糸村君遅い!どうぞお構いなく。
(仙堂卓巳)課長!はい。
どうだった?被害者は。
(仙堂)2名は軽傷でしたがドアを開けた者がもろに炎を浴びたそうで…。
(仙堂)全身やけどの重体です。
仲間の話だとまるでロケット噴射みたいだったと。
ロケット?ええ。
それぐらい火の勢いが強かったようですね。
だったらなんで爆発物が見つからないの?バックドラフトの可能性があるな。
バックドラフト?
(森田)ああ。
火災で起きる爆発現象だ。
横山君。
(仙堂)ああそういえばそんな映画がありましたっけね。
(森田)ここは以前スタジオだったようだし気密性も高かったはずだ。
たばこの不始末で出た火が長時間くすぶり続けて室内に一酸化炭素ガスが充満していた。
そこにドアが開いた瞬間に大量の空気が入り込み…。
(仙堂)ドーン!ああっ!びっくりした…。
すいません。
なんだよ急に。
すいませんつい…。
課長ちょっといいですか?はい。
このロッカーにこんなものが大量に…。
(仙堂)「PINKSPIDER」?
(横山)これ危険ドラッグじゃないっすか?爆発のおかげで思わぬものが見つかっちゃいましたね。
すぐに鑑識に回して。
はい!ん?どうしたの?糸村君。
どうしてこんなものがこんなとこに?それ…お香を焚く香炉ですかね?そうみたいだね。
あっ…これ三日月だ。
(永田路子)「本当のあなたを私は知っている」「オーセンティック」
(音楽)「きれいでしょう?」
(音楽)よかったよ。
なんとか間に合ったよ。
でもパーティーなんか出席してていいんですか?みんなまだ捜査してるのに。
大丈夫だよ。
あれは偶発的な事故だったんだろ?
(東)オーセンティックがうちの管内にも新店舗を出すらしくてさ社長が直々に招待状をよこしてきたんだよ。
あいさつぐらいさしておかないとまずいだろ。
あのそれより署長。
私あの…ちょっと派手すぎませんかね?ん?もちろん似合ってる似合ってる。
あっどうも。
えっ…どっちよ!「オーセンティックグループは皆様の美と健康のサポーターです」
(路子)なんでこんなお祝いの日に面倒を起こすのよ。
だからさっきから謝ってんじゃん。
謝って済む問題じゃないでしょ!ゆくゆくはこの会社を継ぐ人間が変なビジネスに手を出して…。
会社のブランドに傷が付いたらどうやって責任取るつもりなの?だから母さんに相談してんだろ。
(榎戸亘)失礼します。
もうすぐ一条先生がお着きになります。
わかりました。
VIPルームにお通ししてください。
(ため息)またあなたの尻拭いよ。
署長!あの人有名なモデルさんじゃないですか。
え?ああ…。
いやいや名刺をもっとたくさん持ってくりゃよかったな。
えっ?今のね新宿東署の署長。
まるでヤクザだよなあれじゃあ。
フフフフ…。
でもなんでこんなに警察関係の人多いんですかね?ああ今やオーセンティックは単なるエステ会社じゃないからね。
もうそりゃ飲食にホテルにそれから介護施設までやってるからね。
まあ手広くやってる分交友関係もね。
おっ!これはこれは副総監お久しぶりでございます!えっと…あなたは?えっ?副総監も…?
(路子)一条先生お待ちしてました。
(一条)ハッハッハッハ…。
すいません国会中なのにご足労頂きまして。
何言ってるの古い仲じゃないの。
何か話したい事があるんだって?ええ。
またちょっとご相談したい事がありまして。
あっどうぞこちらへ。
(爆発音)
(爆発音)
(非常ベル)ちょっとすいません。
失礼します。
腰やっちゃった…。
腰!?
(一条)ああ〜!ああっ!
(一条)うわあぁ…!あ…ああっ…!
(リポーター)昨夜起きたオーセンティック本社ビルでの爆破事件。
警視庁は一条智徳議員の命を狙ったテロの可能性も視野に入れ捜査を進めている模様です。
とにかく突然の事で…。
一条先生のご冥福をお祈りする以外にわたくしには…。
合同捜査?うちで起きた爆発と状況が似てるらしくてさ。
じゃあゆうべの爆発もバックドラフト?
(東)そう。
じゃあ連続爆破事件って事ですか?でもうちは事故として処理しましたよ。
それもやり直しだ。
(東)亡くなった一条議員は警察のOBだし本庁としても黙ってるわけにはいかないらしくてさ。
なるほどね…。
芝浦署に合同捜査本部が立つけどうちからは2名参加してもらう。
水沢君は現場にもいたしいいよね?はい。
了解しました。
では早速私も芝浦に。
いやいやいやちょちょちょ…。
ちょっと待て!ちょっと待て!
(森田)はい。
森田君まで行かれちゃ困るんだよ。
だってほら例の件もあるしさ。
でも本庁とのパイプを考えるとやはり私が…!いやいやうちはうちで結果を出さなきゃいけないんだから。
誰か暇そうな人いない?
(村木繁)この香炉火災とは全然無関係です。
いいんですか?そんな「全然」とか言い切っちゃって。
いいんです!使用した形跡はゼロでしたから。
単なる置物でしょ。
あっ一応指摘しておきますけども正確には茶香炉ですから。
茶香炉?はい。
この上にお茶っ葉をのせて炙るんです。
消臭効果もあるらしいんで糸村さんも使ってみたらどうですか?ポリエステ…。
ちょっ…!勝手に読まないで。
なんですか?ポリエステ…。
ポリエステル不織布です。
オムツとかマスクとかによく使用される繊維の一種ですね。
なんかの拍子に入ったんでしょ。
じゃあこれの持ち主には赤ちゃんがいたとか。
ああこの上でオムツを炙っていいにおい。
…ってあるか!
(携帯電話)ちょっと待ってください。
恥ずかしい!はいもしもし糸村です。
えっ…?芝浦署にですか?いい?今までと同じじゃダメなんだからね。
…と言いますと?あのね本庁の刑事とコンビを組むんだからいつもみたいにこう…マイペースじゃダメって事よ。
ああなるほど。
とにかくちゃんと人の話は聞く。
変な事は言わない。
それで邪魔をしない。
わかった?んっ?じゃあ…いつもどおりじゃないですか。
あっ!やっぱり宮下さんじゃないですか!糸村…。
そうか…お前今月島か。
はい。
嬉しいなまた宮下さんと仕事出来るなんて。
よろしくお願いします。
よろしく。
他にいなかったのかよ月島。
(刑事たち)おはようございます!
(米山司)本件はバックドラフト現象を装っていますが何者かの手による爆破事件の可能性が高いと見られます。
オーセンティック本社ビル地下のVIPルームは主に社長の接待用に使われていました。
遮音機能が高い密閉型の部屋であった事は月島の事件と一致します。
(米山)VIPルームを最後に使用したのは事件当日午前9時頃に入った清掃業者でした。
爆発の大きさから逆算して犯人は清掃直後の午前中には室内に着火していたのではないかと…。
はい!糸村君…!
(米山)なんでしょう?はい。
出火元はなんでしょうか?
(米山)それはまだはっきりわかってません。
ではなぜ故意に爆破したとわかるんでしょう?VIPルームの床から微量のゼロクラームが検出されています。
(米山)ゼロクラームは長時間燻るように燃焼し続ける特性がありガスの発生を促す効果があります。
放火の可能性は極めて高いかと。
ゼロクラームですか。
なるほど…。
(佐和田徹夫)なるほどじゃねえよ!話の腰を折るな!どうぞお構いなく。
(刑事たちの笑い声)
(佐和田)お前らも笑ってる場合じゃねえだろ!身内が殺されたんだぞ。
ああ?そのとおりだ。
サワさんのように亡くなった一条さんの部下だった者もこの中にはいる。
警察の威信にかけて必ず犯人を逮捕する!
(刑事たち)はい!
(金子)次鑑取り5班。
(金子)本庁捜査一課宮下警部補。
(宮下)はい。
(金子)芝浦署山村巡査部長。
(山村)はい!
(宮下)お願いします。
(金子)次地取り1班。
本庁捜査一課佐和田警部補。
(佐和田)はい!月島中央署糸村警部補。
はい!えっ…?よろしくお願いします。
よろしく!糸村君だっけ?はい。
糸村君はなんでデカになったの?えっとどうしてでしたっけ…。
まあいいや。
今回は俺にとって上司の弔い合戦だ。
基本的にこっちのやり方でやらせてもらう。
鬼の佐和田?ノンキャリアの叩き上げで仕事には厳しい方です。
まあその分面倒見もいいんですけどね。
糸村君大丈夫かな…。
ダメだ…胃が痛くなってきた…。
これがパーティー出席者の画像です。
監視カメラから抜いたんであまり鮮明じゃありませんけど。
何か手がかりが見つかるといいけど。
えっ?何?もうなんか見つかりました?意外と…大胆なんですね。
いやこっこれ…これは…そんな…いや…。
(遠山)現場から4人分の足跡が見つかってるんだ。
あのビルにはお前ら以外にもう一人いたんじゃないのか?
(佐東)いや3人っすよ。
俺らと入院した西村と…。
なあ?あのなお前らあれ覚せい剤じゃねえか。
その上嘘の上塗りしたらさらに罪は重くなるんだぞ。
いやでも…本当の事だし。
なあ?「なあ?」じゃないだろ。
バカ野郎。
あっ…わざわざご足労頂いて申し訳ありません。
(金子)いえ。
席を外してもらっても?ええもちろんです。
(金子)最初に断っておきますがあなたと一条議員との関係それに現場で燃えた現金がどういう種類のお金だったのか…。
(金子)我々は興味はありません。
(路子)そりゃそうでしょうね。
困るのはそちらも一緒でしょうし。
我々が知りたいのは一条議員がVIPルームへ行く事を誰が知っていたのかそれだけです。
あの打ち合わせを決めたのは前日の夜でした。
知っていたのは上層部のごく限られた立場の者だけだったと思います。
上層部?ええ。
副社長の榎戸あっそれから…。
(田代)これが通行証です。
清掃業者を含め通用口を使う者には配られています。
じゃあこれさえ持ってりゃ出入りは自由だったって事か。
はい。
業者関係の方はそういう事になりますね。
(佐和田)おい午前中このビルに入った業者リストアップしといてくれ。
あっはい。
で監視カメラは?
(田代)地下フロアには一切ありません。
VIPのお客様に不快感を与えたくないという配慮のようです。
(佐和田)ほう…。
悪い事をし放題ってわけか…。
あの…僕からも一つよろしいですか?はい。
その業者さんの中で赤ちゃんのいる人っていませんでしたか?いやそこまでは私は…。
お前何言ってんだよ。
この人がそんな事知ってるわけねえだろ。
ああ…。
はい。
どうもありがとう。
もういいよ。
失礼します。
VIPだかなんだか知らねえが適当な警備しやがって…。
こんなとこで狙われたなんて一条さんもついてねえな。
ですが本当に一条議員は狙われたんでしょうか?ああ?現に亡くなってるだろ。
でも犯人は午前中に放火してるんですよね?それから随分時間が経ったあとで誰が最初にドアを開けるのかそのドアの先に誰が立っているのか。
犯人があらかじめ予測するのは難しいと思うんですけど。
ほう…。
まあいいや。
とにかく現場へ行こう。
(鑑識員)とにかく床から何から燃えちゃってるんで犯人の痕跡や遺留品を探すのはかなり難しいですね。
出火はやっぱりゼロクラームか?ええ。
床にまいて火をつけたんでしょうね。
(佐和田)おっ…火災報知機は付いているんだな。
(鑑識員)はい。
でも事件の日の朝に故障していたそうです。
そりゃまた偶然なこった。
(佐和田)糸村。
(佐和田)お前返事しろよ!聞こえねえのか!?ありました…犯人の遺留品。
そんなものただの置物じゃねえのか?ええ。
ただの置物の香炉です。
香炉は月島の現場で発見されたものと同型の茶香炉でした。
ビルの管理スタッフはこの香炉に見覚えがなく誰によって持ち込まれたものなのか今のところわかっておりません。
月島の香炉は三日月そして今回は満月の柄でした。
恐らく対で販売されたものと思われます。
以上です。
同型の香炉っていうのもなんか不自然だな。
(金子)サワさんどう思う?どうもこうも犯人の遺留品としてはリアリティーがないでしょ。
それにどっちの香炉も未使用で出火には無関係ですしね。
(金子)なるほどね。
(金子)よしじゃあ次鑑取り班!
(宮下)はい!オーセンティックの元社員から話を聞いてきました。
実は会社の上層部ではかなり激しい内紛が生じていたようです。
内紛?はい。
社長の永田路子は後継者として息子であり専務でもある永田大地を考えていたようですがこれを阻止しようとするグループがあったようです。
この息子の評判は最悪です。
裏社会との交友関係も噂されていて不動産売買で強引な土地買収をしたりこれまでもたびたび問題を起こしてます。
一方反対派のトップは副社長の榎戸亘です。
榎戸は5年前オーセンティックに買収された会社の役員をしていた男で永田社長とはそりが合わないようです。
いいですか?
(金子)どうぞ。
今の情報が気になります。
自分も内部の人間が絡んでると思っていました。
(金子)内部の?
(佐和田)ええ。
犯人は会社の通行証を入手していた可能性があるし現場にあった火災報知機が事件の日の朝都合よく故障していました。
はい!
(佐和田)なんだよ?佐和田さんに質問です。
俺にか?はい。
なんだ?内部犯だったとしてなぜバックドラフトのような仕掛けをする必要があったんでしょう?偶発事故に見せかけるためだ!現にどこかの間抜けな所轄が事故と判断してるだろう!?
(宮下)そうそう!
(刑事たちの笑い声)なるほど!以上です。
(金子)もし副社長の榎戸が事件に絡んでるとしたら狙われたのは一条議員じゃなくて永田社長の可能性もあるって事か。
引き続き榎戸の周辺を当たってくれ。
はい。
次不審人物について。
はい。
監視カメラの映像を調べましたがパーティー会場に不審人物は見当たりませんでした。
ですが事件の数日前に本社周辺をうろついている不審な人物を警備員が何度か目撃しています。
なので現在は周辺の路上カメラを中心にその行方を追っています。
あ〜うめえ!やっぱりこれがねえと一日終わんねえな。
そうだろ?糸村。
僕は別に晩酌がなくても全然構わないんですけど。
お待たせしました。
間から失礼致します。
まあそう言わずに食え。
なっ?いただきます。
お前さなんでデカになったのか?って聞かれたら答えぐらい用意しとけ。
適当に立派な事言っときゃいいんだから。
はあ…。
どうせ大した理由はねえんだろ?俺も同じクチだ。
高卒で柔道ぐらいしか取りえはねえしな。
大体な変な正義感を持ってデカになった奴は危ねえんだよ。
どうしてですか?そんなもの持ってても裏切られるだけだからな。
この商売やってりゃ世の中が正義だけじゃ成り立たねえって嫌ってほど思い知らされる。
立派な志なんかねえほうがデカには向いてるんだよ。
あの…一つ聞いてもいいですか?おう。
爆発の時永田社長は大金を所持してました。
なのにそれが全然報道されてない気がするんですけど…。
つまりはそういう事だよ。
一条さんは元警察官僚だ。
オーセンティックから裏金を受け取ってたなんて報道されてみろ。
あ〜!あれ裏金だったん…。
声がでかい。
今管理官は火消しで大変だ。
そうだったんですか…。
まあでも俺は一条さんに感謝してる。
所轄でくすぶってた俺を本庁に引っ張り上げてくれたのはあの人だ。
50過ぎてのまさかの大出世だ。
ツキなんてないつ回ってくるかわかんねえぞ。
お前も諦めんな。
はあ…。
あっそういえばお前今日赤ん坊がどうのこうのとか言ってたな。
はい。
現場にあった香炉からポリエステル不織布っていう繊維が検出されたんです。
紙オムツなどに使われている繊維だそうなんですけど…。
オムツの世話になるのは赤ん坊とは限らんだろう。
俺もあと20年もすりゃ世話になるよ。
なるほど高齢者ですか。
うるせえ!あっそういえばオーセンティックって老人ホームも経営してましたね。
(佐和田)おう。
また私に会見をさせる気?
(榎戸)マスコミ対策にやりすぎはありません。
社長が被害をアピールする事で社のイメージも…。
はぁ…どうかしら?逆に榎戸さんは記者に突っ込ませて私のイメージを悪くしたいんじゃないの?そんな…。
私は会社の事を思って…。
(永田)悪いけど席外してもらえますか?ですが今社長と重要な話を…。
榎戸さん用件はわかりましたからこれで。
どうしたのよ…?「どうしたの」じゃねえよ。
警察止められるんじゃなかったのかよ。
(永田)あいつらやたら嗅ぎ回ってるぞ?しょうがないでしょあんな事故が起きたんだから。
(金子)同型の香炉っていうのもなんか不自然だな。
(佐和田)どっちの香炉も未使用で犯人の遺留品としてはリアリティーがないでしょ。
(鐘の音)
(鐘の音)
(鐘の音)この香炉なんですけど見覚えありませんか?
(植木)あれ?これ膳場さんのじゃない?
(金杉)本当だ。
どこにあったんですか?火災現場です。
その膳場さんというのは?
(植木)先月までうちにいたおばあちゃんです。
これともう一つ似たような香炉をいつもベッドの脇に置いてたんで。
あの…それってこの満月の模様じゃありませんでした?ええこれです。
その方にお会いしたいんですけど今どちらに?どちらって…もう亡くなってますけど。
えっ?
(金杉)ちょうど10日前でした。
うちのホームでみとったので。
これが膳場さんの私物です。
では拝見します。
膳場さんは家族がなかったんですよね。
母一人子一人で娘さんを育てたらしいんですけど娘さんに先立たれちゃったらしくて。
オムツ…。
あれ?香炉もここにしまったんですけどね。
ちょっとすいません。
誰かがここから持ち出した…。
これ茶香炉用の茶っ葉ですね。
封が開いてないって事は膳場さんはホームでは茶香炉を焚かなかったんですか?うちに来た時には脳梗塞で倒れたあとで寝たきりの状態でしたからね。
意思の疎通も難しい状態で…。
しかしそんな寝たきりの身寄りのない方がこんな高級施設によく入れましたね。
それは社長の方針で。
(植木)引き取り手のない高齢者を何年かに一度無償で受け入れてるんです。
膳場さんもそのうちの一人でした。
そうなんですか。
あっあの…この写真ちょっとお借りしてもいいですか?こんにちは。
こんにちは。
(金杉)矢作さん膳場さんはもういないんだよ。
(矢作徹二)でも奥さんが待ってるから。
ごめんね矢作さん奥さんはもういないの。
奥さん?ああ。
膳場さんの事自分の奥さんだと勘違いしちゃってて亡くなってからも会いに来ちゃうんです。
ちょっとお話ししても構いませんか?どうぞ。
こんにちは。
(矢作)こんにちは。
あの…膳場さんの事を教えて頂けませんか?膳場?はい。
あんた膳場さんっていうの?あの…ちょっとよろしいですか?はい。
難しいと思いますよ認知症を患っていらっしゃるので。
膳場?あっいえ…。
僕は糸村といいます。
じゃあ香炉は2つともこの膳場って人のものか?はい。
不思議だと思いませんか?それがそれぞれ2つの火災現場にあったなんて。
ただの類似品なんじゃねえのか?それはこれから調べます。
なんですか?ああ…なんでもねえ。
なんでもねえ。
永田大地?
(森田)そうだ。
とうとう供述したよ。
空きビルに残されていた4人目の足跡はオーセンティック社長の息子永田大地だ。
(金子)オーセンティックの御曹司が月島の現場に?はい。
そもそも覚せい剤の製造販売も永田大地が仕切っていたそうです。
仲間に金を渡して名前を出さないように命じていたようです。
これで繋がったな。
被疑者は1度目は息子を2度目は母親を狙った。
(佐和田)じゃあ一条さんはその犠牲になったという事ですか?そうなると副社長の榎戸がますます怪しいですね。
息子とは犬猿の仲って話ですから。
(米山)管理官!例の不審人物ですがオーセンティック近くの路上カメラに映ってました。
身元は葛巻章一37歳。
スナックの経営者で一緒に住んでる女の話だと先週から連絡がないそうです。
(金子)行方不明か…。
実行犯の可能性あるな。
よし大至急榎戸と葛巻の関係を洗い出せ!
(刑事たち)はい!こっちは女を追います。
(宮下)行くぞ!もたもたするな!
(刑事たち)はい!葛巻…。
あの佐和田さん。
佐和田さん。
なんだ?あの…聞き込みに行っても…。
行け。
行ってこい。
では遠慮なく。
(宮下)葛巻さんから最後に連絡があったのは?
(里田梢恵)10日くらい前かな?ずっと店はほったらかしですよ。
大変ですね。
今どこにいるか心当たりは?さあ…。
電話じゃ「ようやく店の借金返せるめどがついた」って言ってましたけどそれも本当かどうか…。
借金?ええ。
ここんとこ不景気でね。
売り上げが伸びなくて。
(山村)ところでオーセンティックって会社の事でご主人は何か話してませんでした?オーセンティックってエステとかの?
(山村)はい。
さあ?ほう消火器が3台ですか。
これはまた随分厳重ですね。
あああの人昔火事に巻き込まれたらしくて。
火事?
(米山の声)例の不審人物ですがオーセンティック近くの路上カメラに映ってました。
身元は葛巻章一37歳。
膳場…。
(咳)もう確か7〜8年ぐらい前じゃないかな?その茶香炉を作ったのは。
うちのひいきの陶芸家を紹介して特注で作ったんだよ。
はあ。
確か膳場籐子さんという方が発注していると思うんですが。
ああ膳場さんね…。
あああったあった!あれ?でもこれ名前が違うな。
すいません。
膳場美加さん…。
ん?すいませんこれなんて読むんですか?ああ日月星ね。
三光の事だよ。
三光?うん。
「日」は太陽。
それに「月」と「星」で3つの光。
あっじゃあこの丸は満月じゃなくて太陽の事なんですか?そうなるねえ。
アハハハ…!ああなるほどね。
えっ!じゃあこれは2つじゃなくて3個で1セットって事なんですか?うん。
もう一つ…あっ!星の模様があるはずだよ。
星…。
佐和田さん。
面白い事がわかったんです。
あの香炉3個でひと揃いだったんですよ。
三光っていいましてですね…。
もうわかったから。
その事も含めてこれから説明する。
(佐和田)今回の事件ですが現在行方不明中である葛巻章一によるオーセンティックへの復讐だと考えられます。
復讐?
(佐和田)これは7年前に新宿区で起きたビジネスホテルの火災事故の資料です。
自分もこの事件に関わりました。
出火の原因は火の不始末による偶発事故でしたが死者が出ています。
膳場美加さん当時大学生のアルバイトです。
膳場美加…。
この女性は今回の一連の爆発現場から見つかった2つの香炉の持ち主膳場籐子さんの一人娘です。
(どよめき)
(佐和田)葛巻はこのホテルの従業員であり膳場美加さんと当時交際していました。
また火災の第一発見者でもあったので自分も何度か事情を聞いています。
7年前のこの火災も原因はバックドラフトでした。
火災事故が起こった夜葛巻と膳場美加はともに夜間シフトに入っていました。
(葛巻章一)美加俺朝食の準備してくる。
(膳場美加)うん。
(電話)はいフロントでございます。
えっ異臭?
(佐和田)午前5時半頃宿泊客が異臭がするとフロントに伝えています。
(佐和田)出火元はリネン室を兼ねた従業員控え室でした。
(爆発音)
(悲鳴)
(非常ベル)美加!?美加?おい美加!おい返事してくれよ美加!おい返事しろよ!美加!美加!
(金子)状況はわかりましたがどうしてそれが復讐だと?当時このホテルは複数の企業から買収を持ちかけられていました。
オーナーはかたくなに拒否していたんですが火災が起きた事で管理責任を問われホテルを手放さざるを得なくなりました。
結果的にこのホテルを買収したのはオーセンティックです。
(どよめき)
(宮下)そういえば永田大地は過去に強引な土地買収を行っていたと。
(金子)つまりその土地を買収するためにオーセンティックはわざと火災事故を仕掛けたという事ですか?少なくとも葛巻はそう考えていると思います。
(佐和田)だから同じような手口で復讐をしたんです。
(爆発音)
(一条)ああ〜!ああ〜!
(金子)けど7年前は単なる事故として処理されたんでしょう?ええ鑑識が出火原因を特定していますから。
それがこの香炉です。
あっ星!びっくりした〜!日月星…三光揃いました。
(佐和田)この香炉は膳場美加本人のものでした。
彼女は元々アロマが好きだったようでよく控え室でアロマポットを使ってる姿が目撃されています。
出火原因は本来茶葉を炙る茶香炉で誤ってアロマオイルを使用してしまった事でした。
(金子)けどそこまで原因がはっきりしてるなら復讐とは言い切れんでしょう。
オーセンティックが裏で動いていたなんて葛巻は知らないはずですし。
ですが当時この事件を追ってオーセンティックの土地買収を告発した雑誌があります。
中途半端な連載で終わったので話題にもなりませんでしたがもし葛巻がこの記事を信じ込んでいたとしたらどうでしょうか?なるほどな。
(佐和田)ん?どうした?なんか引っかかるんですよね…。
何がだよ?香炉です。
7年前の火災原因は本当に香炉だったんでしょうか?だからさっきそう言っただろう。
7年前の事件は12月20日の未明に起きています。
膳場美加さんが香炉を買ったのはその前日の夕方なんですよ。
えっ?今日店で聞いてきました。
美加さんは3個でひと揃いの香炉を買ったあとその足で夜間のバイトに入っています。
となると現場に残された香炉はなぜ1つだけだったのか?残りの2つの香炉はどこへ消えてしまったのか?知るかよそんなもん。
サワさんちょっといいですか?はい。
(佐和田)どうしました?
(金子)7年前の事故の時の刑事部長今回亡くなった一条議員でしたよね?
(佐和田)はい。
(金子)もしも…もしも仮にさっきサワさんが言ってた事が正しいとしたら一条さんは当時からオーセンティックと裏で繋がって放火の事実を隠蔽していた可能性はありませんか?ひょっとしてサワさんも気づいてたんですか?いえ自分はそんな…。
はぁ…これは深追いしないほうがいいな。
えっ?オーセンティックを追えば追うほど身内からホコリが出ます。
大体あのパーティーのメンツ見たでしょう。
副総監から所轄の署長どもまで雁首揃えて出席してた。
そうやってでかくなってきた会社なんですあの会社は。
葛巻を落としてさっさとこの事件からケツをまくりましょう。
それが一番です。
先日はパーティーにお越し頂いてありがとうございます。
あ…実はまた折り入ってお話が…。
わかりました。
ダメよ!フフッ…。
(電話)ちょっと待ってね。
はいロードです。
お…俺。
何してんの!?今どこにいるのよ?悪い…それは言えねえんだ。
警察が何度も来たんだよ。
何したの?一体。
心配すんなって俺は何もしてないから。
もうちょっとしたら金が手が入る。
だからもうちょっと待って。
じゃ…。
ちょっと!
(不通音)
(米山)今の電話葛巻さんからですよね?
(宮下)この辺りの宿泊施設は限られてる!ネットカフェとホテル手分けして聞き込みだ!なんとしても葛巻のしっぽをつかむぞ!
(刑事たち)はい!
(植木)ええ知ってます。
この方何度も面会に来てます。
(佐和田)詳しい日時は?
(植木)面会者名簿がありますのでお待ちください。
これで香炉を盗んだのは葛巻で間違いねえな。
おっ…?あの野郎どこ行きやがった?こんにちは。
(金杉)あっこんにちは。
こんにちは矢作さん。
すごい集中力でしょ?仕事中はいつもこうなんです。
仕事?物書きの仕事をしていたみたいなんですよ。
その時の習慣なんですかねえ?習慣っていうのは体が覚えているんですねえ。
矢作さんの場合事故で脳に血腫が出来て手術で取り除いたんですが何度か再発を繰り返していくうちに認知症になったんですよね。
そういう方って記憶がしっかりしてる部分とそうでない部分とに差が出る事ってよくあるみたいなんです。
でも穏やかでいいおじいちゃんじゃないですか。
そうでもないですよ。
もう徘徊大好きで。
フフ…。
半日くらい戻ってこなかった事もあるもんね?矢作さん。
はい!フフ…。
お元気なんですね。
あの…すいません。
はい。
このメモって毎日貼り替えるんですか?はい。
(植木)数か月に一度は膳場さんの面会に来てますね。
で最後に来たのは?最後は…ちょうど半年前ですね。
半年?いやいや最近来てるはずだ。
膳場さんが亡くなる前後は?いらしてませんけど。
佐和田さんちょっといいですか?お前どこ行ってたんだ?勝手に動くなって言っただろ!矢作さんというおじいちゃんなんですけれども備忘録にこんな事が…。
「くずまきさん」…?
(植木)えっ?ちょっと待ってください。
(植木)矢作さんの面会には最近もいらしてますね。
どういう事だ?管理官!葛巻章一の目撃証言が出ました!
(金子)何?
(宮下)月島のビジネスホテルです。
これが5日前の写真です。
(宮下)榎戸亘です。
オーセンティックの副社長か。
って事は…あの2人は共謀してたって事ですか?よし2人を呼んで話を聞こう。
(刑事たち)はい!
(金子)水沢警部。
葛巻の捜索月島から応援を頼めるか?はい。
なんでこんな事しなきゃなんねえんだよ遠山。
仕方ないでしょ。
大事なワンちゃんが落ちちゃったんですから。
(女の子)ティアラが急に飛び込んでね泳いで逃げちゃったの。
(仙堂)うんわかったよ〜。
それに引き換え糸村さんは本庁の刑事に交じって大事件を追ってるんだもんなあ。
(森田)うるさいんだよいちいち!本庁の仕事だけが刑事の仕事じゃない。
黙って手を動かせ。
(3人)は〜い。
(横山)そんな怒んなくても…。
ティアラーッ!!ちょっと〜!逃げちゃいますよ…。
(携帯電話)ティアラ〜!ティアラ〜!
(遠山)仙さん向こうは?
(森田)あっもしもし?応援ですか?すぐに伺います。
えっ!応援要請ですか?ああ例の事件だ。
やっぱり糸村じゃ役に立たんのだようん。
じゃあティアラちゃんどうしましょうね?うん君と横山に任せる。
行くぞ遠山君。
はい森田さん!じゃよろしくお願いしまーす。
ちゃんと捜せよ。
森田さーん!お疲れさまです。
遠山は?
(森田)裏口を張らせてるよ。
葛巻の部屋の合い鍵だ。
葛巻部屋にいる可能性ありますか?その可能性もある。
行きましょう。
うん。
(吠える声)ティアラ…。
仙さ〜ん。
ティアラ〜ステイだぞステイ…。
(横山)はいティアラ大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫。
よいしょ−!確保!ハハハハ!だーっ!!ああっ!
(仙堂)ああーっ!
(金杉)こちらです。
矢作さんこんにちは。
こんにちは。
あの…この人の事覚えていますか?ああ覚えとります。
木村君です。
いつもお世話になっております。
リハビリの木村さんと勘違いしてます。
矢作さんこの人は葛巻さんって人なんですよ。
マッサージがうまくてね。
私腰悪くしたもんだからいつももんでもらって助かっとります。
もういいだろう。
多分葛巻は香炉を盗むためにわざとこの人の面会に来たふりをしたんだよ。
(携帯電話の振動音)はい佐和田。
えっ?葛巻が死んだ?え…?
(刑事たち)お疲れさまです!
(仙堂)死因は絞殺です。
殺害されたのは昨夜の0時前後目撃者は今のところ見つかってません。
あの辺は街灯もないしな。
あえて暗闇に連れ込んだんですかね?葛巻は直前にね同居人の女性にもうすぐ金が入るって電話してたらしいの。
もしかしたら共犯者と何か金銭トラブルがあって殺されたのかもしれない。
現金はほとんど入ってませんでした。
ふ〜ん。
でもレシートはたくさん残ってたみたいだねえ。
ああ…。
佐和田さん。
ああ。
これ…ホテルで見つかった葛巻の手帳なんですけどここ…事件現場への行き方や侵入経路が全て書かれています。
それからこっちのページなんですけど…。
決まりじゃねえか!あと一歩だったのに!!火災事件に私が関与してる?
(榎戸)「バカな事言わないでくださいよ」「自分の会社の不利益になるような事するわけないじゃないですか」
(金子)じゃあこの月島のホテルにはどんなご用事で?あなたと話をしているのは葛巻章一という人物ですよね?彼とどんな話をされていたんですか?さあ…。
トイレの場所でも聞かれたんでしょう。
全く記憶はありませんしホテルにはお茶をしに寄っただけですから。
この葛巻章一という男は遺体で発見されました。
失礼ですが榎戸さんゆうべはどちらに?
(佐和田)おい糸村。
とりあえずホテル当たるからな。
これから…。
いねえし。
どこ行った?さっきサラッと出ていっちゃいましたけど。
なんなんだよあいつはよ!どうなってるんだ?月島中央署の教育は!あの…すいません!あの本当にすいません!
(釜田)へえ〜美加ちゃんがこの香炉を…。
これは三光でしょう?ご存じなんですか?
(釜田)ええ。
だってほらあの絵も日月星だから。
あっ!本当だ…!これは籐子さんのお気に入りでね。
多分美加ちゃんもその影響でこのデザインにしたんじゃないかなあ。
そうだったんですねえ…。
あのこちらは元々膳場籐子さんのお店だったんですよね?ええ私も常連でした。
美加ちゃんが事故で亡くなられたショックで籐子さんが倒れられてしまって。
それでこの店を閉める事になってね。
閉店になるのが惜しくて私がそのまま引き継いだんですよ。
ふーん…。
ん!これは当時の…?ああ随分古い写真でね。
そのままにしてあるんだけど私がこの店に通う前だから30年近く前の写真じゃないかな。
ん?これって…。
どうしました?こちらなんですけど。
誰だろう?私はちょっと知らない人だな。
ちょっと失礼。
(金子)副社長の榎戸は完全に容疑を否認した。
だがアリバイは弱いし葛巻殺害の重要な被疑者である事に変わりはない。
皆さん引き続き捜査を継続してください。
(宮下)了解です。
山村行くぞ。
(山村)はい。
(米山)管理官!爆破事件の記者発表ですが明日の午前9時に決まったそうです。
もう発表するんですか?手帳は見つかったし葛巻が爆破事件の被疑者である事には間違いないでしょう。
上が早く結果を出せってうるさくてね。
いったん本庁へ戻ろう。
はい。
車を回します。
ただいま戻りました〜。
おい糸村。
お前どこ行ってた?あっ興味深い事がわかったんですよ。
あの矢作さんなんですけれども香炉の持ち主…。
香炉香炉うるせえんだよ!お前は香炉の事しか考えられないのか?佐和田さんちょっと落ち着い…。
重要な被疑者が殺されたってのによくふらふら歩き回ってられるなお前は!おお見てみろ!はあ…。
だから気をつけてって言ったのに…!
(ため息)聞いてないし。
(ノック)もうお前勝手にやれ!口出しするのも疲れた。
佐和田さんに聞きたい事があるんですけど。
だからもういいって言ってるだろ。
実はさっき帰りがけに例の香炉屋さんに寄ってきたんです。
膳場美加さんがどうして香炉を1つしか持っていなかったのか気になったものですから。
答えは簡単でした。
美加さんは香炉を購入するとすぐに星以外の2つとお茶っ葉を店から宅配便でお母さんに送っていたんです。
不思議なのは美加さんが購入したお茶っ葉が1箱だけだったって事なんです。
だからそれがなんだっていうんだよ。
つまり美加さんは自分の分のお茶っ葉を持っていなかった。
7年前ホテルの従業員控え室で美加さんは香炉を焚きたくても焚けなかったんです。
だから間違えてアロマオイルを使ったんだろ?それはありえないんです。
えっ?お店の人の話によると茶香炉はアロマポットよりも高温になるのでたとえオイルを焚いても香りが出にくいんだとか。
さらには高温になって危険だから決してオイルは焚かないようにと必ず声をかけるんだそうです。
佐和田さん7年前のホテルの火事…出火元は香炉じゃなかったんじゃないんですか?俺が嘘をついたって言いたいのか?そうでなければ捜査がどこかでねじ曲げられた…とか。
(爆発音)
(悲鳴)
(佐和田)バックドラフト?なんですか?それ!なんか偶発的にそういう爆発が起こるらしいんだよ。
だったらあれは単なる事故だったって言いたいんですか?冗談じゃないですよ!こっちは放火容疑で男のガラ押さえてるんですよ!けど鑑識がそう断定したんだよ。
出火原因は香炉だそうだ。
香炉?現場に落ちてたらしいんだよ。
それに…上層部も事故で処理しろって言い出してるらしくてさ。
上層部って…。
(一条)ちょっといいかな。
刑事部長!君が担当の佐和田君?
(佐和田)はい。
ちょっと…折り入って相談があるんだ。
はい。
これ以上何を言っても無駄みてえだな。
お前の言ったとおりだ。
実際俺たちは被疑者を特定しそいつは金をもらって放火したと証言までしている。
だが一条さんの鶴の一声で事故って事になっちまった。
俺以外にも不審に思った奴はいただろうが結局は飲み込んだよ。
みんな自分がかわいいからな。
その直後に俺の本庁への栄転が決まった。
50のロートルに突然の大出世なんかあるわけがねえ。
俺は実力で本庁に来たんじゃねえ。
一条さんの隠蔽に乗っかった見返りに引っ張ってもらっただけだ。
(佐和田)だけどな糸村。
7年前は7年前だ!今回の事件は犯人は葛巻で間違いねえ!そうでしょうか…。
お前も手帳を見ただろ。
バックドラフトのやり方とか現場の事細かな事が…!そこが変なんですよ。
あ?葛巻はスマートフォンを所持していました。
地図機能を使えば住所さえわかれば現場だってどこだって行けます。
それなのにあんな丁寧な地図を描いて…。
佐和田さんあの地図は自分自身のためではなく誰かに説明するために描かれたんではないでしょうか。
誰かに?はい。
矢作さんはかつて膳場さんが営んでいた小料理屋の常連だった。
2人は知り合いだったんです。
この矢作ってじいさん何者だ?佐和田さんにならわかるんじゃないかと思ったんですが…。
ハハハハ!お前本当に遺留品以外興味ねえんだな。
よし!じゃあ明日一緒に調べよう。
一緒にですか?当たり前だろう!俺たちコンビだぞ!あ…。
あ…っててめえ嫌なのか?あ…すいません。
嫌じゃないんですが…。
え?ですがなんだよ?
(玉置)オーセンティックの副社長が怪しいんだって?
(金子)ええ。
死亡した被疑者と一緒にいたところを目撃されています。
このまま放っておくわけにはいかないかと…。
なるほど。
じゃ…その副社長までにしておきなさい。
(金子)は?いや…あんまりあそこの社長叩いても得はないでしょう。
それに君だってつまらん事で将来を台無しにしたくはないだろ?
(リポーター)「昨日中央区月島で遺体となって見つかった男性が連続爆破事件の容疑者であると警視庁は発表しました」「男の名前は葛巻章一37歳でスナックを経営していたとの情報も入っています」「発表によりますと遺体からは首を絞められたような痕が見つかっており他殺とみて…」
(路子)榎戸さんの件ならゆうべ連絡をもらいました。
まああの人が私に不満を持っていたのは知っていましたし会社のうみが取れて逆にすっきりしましたよ。
(金子)では捜査協力をお願いします。
ええなんでも仰ってください。
その代わりうちの会社への損害は最小限でお願いしますね。
わかっています。
これから警察の方が来るんで榎戸さんの部屋にご案内して。
かしこまりました。
(サイレン)
(米山)榎戸はたった今部屋を出ました!
(店員)いらっしゃいませ。
(米山)すいません!防犯映像見せてもらえますか?本部に連絡!はい!わかった!これから向かう!すいません。
月島中央署の者なんですけれども。
防犯カメラならあそこにありますよ。
(横山・仙堂)おおっ!村木さん。
ん?月島中央署の方が来てますけど。
は〜…いないって言って。
居留守使わないと帰らないから。
あっそれとそれでも食い下がったら村木はもう食事は済んでますからって付け加えて。
いまどきねいい大人をおむすびで釣ろうとするんですからハハ…。
もう済んじゃったんですか?えっ?あ…ご一緒にブランチでもって思ってたんですけど。
済んでません。
餓死寸前です。
ああ食うか?おむすびブランチって最高ですね。
でしょ?サラダもありますからね。
これちゃんと食べてくださいね。
栄養が偏るとよくないですからね。
あのでもねこの映像さっきから真っ暗なんですけど…。
殺害現場が運河だったんで街灯とかなんにもないんですよ。
でも糸村君が村木さんだったら必ず何か見つけ出してくれるからって。
ハハハハ…やっぱりあいつか。
あれ?今ここでなんかチカッて光りませんでした?え?
(クリック音)あっこれですね?うんうん。
これは多分犯人が携帯を一瞬開いたんですね。
それでこの光が漏れたんですね。
ああ〜。
この映像から犯人の特徴特定出来ません?あっ…こ…ここから?うん!ここから?うん!いや…ここから?いや…。
牛乳飲みましょうね。
カルシウム補給のために。
はい。
いやいや…ここから?なんだったら…。
作業中眠くなったらこれもありますから。
頑張ります。
(ベルの音)こんにちは。
(高須)保険なら間に合ってるよ。
警視庁の者です。
以前こちらで矢作徹二という男が勤務していたと聞いて来たんですが。
(高須)矢作さん?矢作さんは元々大阪の新聞社にいたんですよ。
退職を機に上京してきてうちで記事を書いてもらってたんですよ。
ああこれだこれだ。
これがうちで矢作さんが連載した記事です。
おお…この記事をあのじいさんが?
(高須)ええまさに渾身の記事ってやつですよ。
寝る間も惜しんでのめり込んで取材してましたからね。
最後の記事では永田大地さんを名指しで批判していますね。
ああ。
(高須)でも神様っていうのは不公平なもんだ。
ちょうどこの記事書いてる時に事故に遭ったんですよ。
事故?ええ転落事故です。
(矢作)うわあ…!
(高須)打ちどころが悪くて脳に障害を持っちゃってそれで仕方なく連載を打ち切ったんですよ。
口封じの可能性もあるか…。
なんですか?あなた方は。
急に休暇を取ったらしいですね。
海外にでも?あなた方に話す義務はないでしょ。
これ…一緒にいるの葛巻章一さんですよね?またトイレの場所でも聞かれたんですか?
(米山)ご同行願えますか?では葛巻との関係は認めるんですね?
(榎戸)私はあの男に脅されて仕方なく情報を提供したんです。
「永田親子の立ち回り先を教えろ」「協力しなければ7年前の火災事故の真相をマスコミに話すぞ」って脅されて。
(榎戸)金まで要求されて。
犯人はあの葛巻って男です。
まさかあんな爆発を起こすなんて…。
私は…。
あなたも望んだ事なんじゃないんですか?え?最初の月島の空きビルでは永田大地さんが覚せい剤の保管場所にいて…。
永田社長は一条議員に裏金を渡そうとしていた。
両方とも永田親子の悪事を暴こうという意図があったように思えてなりません。
つまりそれは…。
あなたの意図でしょ?いや…それは…。
ところが思いのほか爆発が激しくて死者まで出てしまった。
(爆発音)ああ〜!ああ〜!それであなたは怖くなって自分の関与を知る葛巻を殺害したんじゃないんですか?あっ…。
あっ…。
これ…。
葛巻さんが遺体で発見された防犯カメラの映像です。
死亡推定時刻と映像の時間がほぼ一致しています。
これ…あなたですよね?
(金子)ご苦労さん。
(刑事たち)はい。
葛巻の死は残念だったが榎戸は犯行を認めた。
あとは送検するだけだ。
捜査本部はこれで解散する。
以上だ。
(刑事たち)はい!オーセンティックはこれで無罪放免ですか?どういう意味です?さっきプレス発表を読みました。
あれじゃ永田親子はただの被害者です。
被害者には間違いないでしょう?待ってください!葛巻は7年前に起きた事件をもう一度自分たちに検証させるために香炉を現場に残したんです。
当時何があったのか真実を公表すべきでしょう!あなたもその関係者の一人でしょう!自分のミスを犯人に教えてもらいましたって発表するんですか?そうですよ!洗いざらい全てをぶちまけます!
(佐和田)確かにあの時俺は一条さんの決めた捜査方針を飲み込んだ!けどよその飲んだものがいまだに小骨みたいに刺さったままなんだよ。
またここでオーセンティックを見逃したらあんたの体にも刺さり続けるぞ!頼むよ。
俺にやらせてくれ。
いやしかし…。
(米山)管理官!署のホームページに爆破予告の書き込みが…。
爆破予告!?「警察はまた無実の人間に罪を被せる気か」「諸悪の根源であるオーセンティックが断罪されない限り今夜また同じ悲劇が繰り返されるだろう」
(米山)プリペイド携帯からの書き込みだそうです。
30分ぐらい前なので榎戸の取り調べ中です。
何!?オーセンティックの過去を知ってるっていう事は愉快犯って事はありません!管理官…事件はまだ終わっていません!
(金子)よし!すぐに発信元を調べろ。
それとオーセンティックの関連施設警備だ。
絶対に爆破は阻止するぞ!
(刑事たち)はい!爆破予告?え?でも犯人は捕まったんじゃ…。
あなた方2人は我々が警護します。
(無線)「こちら芝浦から本部。
こちら芝浦から本部」「オーセンティック品川サロンにおいて今のところ不審物は発見されず。
本部どうぞ」
(本部)「本部了解。
引き続き警戒して頂きたい。
どうぞ」
(無線)「現在オーセンティック立川サロン警戒中」「今のところ爆発物は見当たりません。
どうぞ…」ああわかった。
八王子ダメです。
おいまだ見つかってないのか!時間ないぞ!管理官…。
(佐和田)関連施設は全て当たった。
こっちも全部ダメですね。
同じ悲劇が繰り返されるって事は犯人はまたバックドラフトを起こそうとしてるって事ですよね?ん?バックドラフトは閉鎖された空間で長い時間をかけて燃焼が起こらなければ発生しない…。
まさか…!
(佐和田)なんだ?佐和田さん!おい…おいなんだよ!な…何よ?なんか思い当たるところがある…。
「倉庫」…。
「地下倉庫」…。
「倉庫」…。
(矢作)「地下倉庫」…。
「倉庫」…。
ダメだ!
(佐和田)糸村!
(爆発音)
(矢作)うわあ…。
(佐和田)大丈夫か!?ああ…。
ああ…。
(佐和田)糸村!大丈夫ですか?
(佐和田)大丈夫か?
(矢作)嫌…。
ああ…。
ああ…。
ああ…。
ああ…。
このメモ…。
ああ…!ああ…!
(佐和田)どうした?犬が突然いなくなったんです。
犬?はい。
子供の頃に飼ってた犬です。
理由はいまだにわかりません。
すごく懐いてたのに…。
突然…。
思いつく限り色んなところを捜しました。
でも手がかりすら見つける事が出来なくて…。
所詮子供のする事ですからね。
結局帰ってはきませんでした。
あんなに毎日一緒に遊んでたのに。
悔しかったです。
いなくなってしまった訳もわからずにただその訳を想像したり後悔する事しか出来ない自分が無力で…。
悔しかったです。
でもそれは僕が諦めてしまったからなんですよね?捜す事をやめてしまったから…諦めてしまったからもう二度と会えなくなった。
だから…佐和田さん。
(佐和田)なんだ?僕が刑事なのは諦めたくないから…かもしれません。
(佐和田)今回の事件ですがオーセンティックへの復讐だと考えられます。
7年前のこの火災もバックドラフトでした。
(店主)「日」は太陽。
それに「月」と「星」で3つの光。
(植木)母一人子一人で娘さんを育てたらしいんですけど娘さんに先立たれちゃったらしくて。
(佐和田)口封じの可能性もあるか…。
永田親子から事情聴取?上が許可するわけないでしょうが。
全部自分のせいにしてもらって構いません。
退官まであと2年。
警察官として思ったとおりにやらせてもらいます。
上の方針なんかクソ食らえです。
どうしたいんですか?犯人逮捕が発表されて安心していたところにこのような事が起こってしまいとにかく入居者の皆様が無事であった事だけが救いで…。
(路子)しばらくはマスコミがうるさいだろうからあなたは別荘にでも行ってなさい。
ママが対処するから。
はい。
はい。
じゃあ。
なんですか?あなたたち。
事情聴取に応じてもらえますか?こんな時によくも…。
上司を呼んできなさいよ。
(路子)あなたたちじゃ話にならないわ。
外にはまだマスコミがいますよ。
そいつらにあんたらの一切合切をリークしてもいいんですが…。
何が知りたいの?すみません。
社長の他にもう一人お話を伺いたい方がいるんですが。
もう一人?はい。
矢作徹二さんというこちらの入所者です。
矢作さんって…アハハハハ…。
なんか勘違いしてません?あの方は認知症を患って…。
お願いします。
3分で構いませんので。
(鳥のさえずり)
(金杉)ゆうべ足をくじいちゃったみたいで出来たら短めでお願いします。
こういうのを虐待って言うんじゃないですか?出来るだけ早く終わらせます。
矢作さんに来てもらったのは彼が書いたこの記事について話したかったからです。
社長も覚えてますよね?そういう低俗なものは読まないので。
7年前矢作さんはホテル火災の検証記事を書いた。
編集長いわくものすごい執念で取り組んだそうです。
それには理由があります。
その事故の被害者膳場美加さんは矢作さんの実の娘でした。
娘…?ええ。
先月この施設で亡くなった膳場籐子さんとの…。
(高須)東京に単身赴任していた時に小料理屋の女将さんとの間に出来た子らしくてね。
でもその当時矢作さんは大阪に奥さんがいてね…。
じゃあ不倫だったって事?
(高須)まあそれで大阪で定年を迎えて。
でもやはり矢作さんは東京に残した娘さんの事が忘れられなかったみたいでね奥さんと離婚して上京してきたんですよ。
(佐和田)しかしいざ東京に出ても膳場さんは矢作さんを娘さんには会わせなかったそうです。
もう娘さんは中学生になっていたし父親は死んだと話していたらしいんで。
(佐和田)結局一度も顔を見ないまま火災事故が起きてしまった。
(爆発音)
(悲鳴)
(佐和田)だから矢作さんは必死になってその真相を知ろうとした。
だがその連載も突然打ち切りになってしまう。
今度は矢作さん自身が転落事故に遭ってしまったからだ。
うわあ…!
(佐和田)最後に出された記事はあんたの息子を名指しで非難した記事だった。
その転落事故もあんたが…?バカバカしい。
いつまでこんな話を聞かなきゃならないの?あなた方の妄想に付き合ってる暇なんかありません。
ではもう一つだけ教えて頂けませんか?矢作さんも膳場籐子さんも7年前の事件の当事者です。
そのお二人ともこの施設に入所しているのは偶然なんでしょうか?うちは身寄りのない方を無償で引き取っているんです。
これは人道的な…。
お二人の行方がわからなくなると困るからじゃないんですか?お二人はともにご自分の意見を言えない状態になっていました。
でもいつか体調が回復したらまたあの事件の事を蒸し返されるかもしれない…。
そう考えたあなたはお二人を自分の手元に置いておこうと思ったんじゃないんですか?監視をするために…。
それもあなたの妄想でしかないんじゃないですか?そうですね。
でも真実を知っている人がもう一人います。
もう一人?矢作さんあなたは全てご存じなんじゃないんですか?バカな事はやめなさい。
今回の一連の事件全てを計画し実行した犯人は…矢作さんあなたですね?佐和田さんの言ったとおり犯人の目的は7年前の事件の復讐です。
でも単に復讐したのでは美加さんの死の真相は埋もれたままになってしまう。
だから出来るだけ当時を再現して警察にもう一度7年前の事件を再検証させる意図があったんです。
(路子)でもこの方は何度も手術をして主治医も認知症だと認めているんですよ。
はい。
矢作さんは慢性硬膜下血腫という病気を繰り返し再発して記憶障害になりました。
血腫を取り除く手術も受けたんですが記憶障害は回復しませんでした。
ですがある状況では記憶が正常だったとしたらどうでしょう?矢作さんあなたは物書きの習慣から毎朝お仕事をしていましたよね。
これはそのお仕事に使っていたノートです。
昨日の火災現場から見つかりました。
矢作さんあなたはお仕事をしている午前中は記憶がはっきりしていたんじゃないんですか?その間にこのノートに何度も計画を書き今回の犯行に備えていた。
放火はいずれも午前中に行われています。
その両日とも矢作さんは徘徊をして数時間行方がわからなくなっています。
ありえない!だってうちの専属医の診察も午前中にしてるのよ。
診察中は認知症を装っていたんでしょう。
なんだってそんな事…。
この施設に居続けるためです。
ここにいる限り離ればなれになっていた最愛の人と一つ屋根の下で暮らしていけるんですから。
(金杉)矢作さんよかったね今日も奥さんと一緒で。
おかげさまで。
(ドアの開閉音)しかしその膳場籐子さんも亡くなってしまった。
だから矢作さんあなたはご自分の記憶が全てなくなってしまう前に最後の行動に出る事にしたんですよね。
しかしこの施設にいる限り自由に行動する事は出来ません。
協力者が必要だった。
そこで白羽の矢が立ったのが…葛巻さんだったんですよね。
お義母さんこんにちは。
ご無沙汰してます。
(葛巻)元気ですか?桜もう満開ですよ。
葛巻さんは定期的に膳場さんの面会に来ていました。
美加さんを失ったあともずっとお義母さんを気にかけていたんでしょうね。
矢作さんは葛巻さんなら真相を話せば美加さんの無念を晴らすために自分の計画に協力してくれるんじゃないかと考えたんです。
どうやって葛巻さんを説得したのか…恐らくはこう頼んだんじゃないでしょうか?全ての犯行は自分が行う。
だからバックドラフトの方法とそれを起こせる場所を調べてほしいと。
だから葛巻の手帳にはあんなに詳しく?地図や経路が事細かに書いてあったのは普段は外出する事が出来ない矢作さんのために現場の状況を伝えるためだったんです。
そしてその情報は永田親子を失脚させようとしていた副社長の榎戸から得ていたんでしょう。
ところがここで計算外の事が起きてしまいました。
自分の店の借金を返済しようとしていた葛巻さんが榎戸から金を脅し取ろうとしてしまったんです。
そしてさらに葛巻さんが連続爆破事件の犯人として発表されてしまったんです。
じゃあゆうべの火災は…。
このままではまたオーセンティックの不正が隠蔽されてしまう…。
そう考えた矢作さんが起こしたんです。
もう協力者はいませんからバックドラフトはこの建物で起こすしかありませんでした。
「地下倉庫」…。
そして被害者になるのも自分自身しかいなかったんです。
ダメだ!
(佐和田)糸村!
(爆発音)矢作さんが持っていたこのメモ記憶をなくしてしまう自分のためにご自身で書かれたんでしょうね。
(路子)でもいくら刑事さんがそう仰っても当の矢作さんが証言しない限り立証出来ないんじゃないですか?このノートが残っていればよかったんですがほとんど燃えてしまって…。
でも残されたページには…。
「このままでは私が完全に記憶を失う日はそう遠くないだろう」「悲しみや憎しみさえも…」
(矢作の声)「悲しみや憎しみさえも忘れて行ってしまうだろう」「全身に火傷を負い死んでしまった美加のあの痛ましい遺体を見た記憶も」
(膳場籐子)美加…!ああー…。
(矢作の声)「霊安室で泣きじゃくっていた籐子の姿も私は忘れてしまうだろう」「しかしもしそうだとしたら一体誰が…」「一体誰が2人の無念を晴らすのか」「誰が永田親子の不正を質すのか」「私の記憶は日に日に薄れていっている」「今さら私が声を上げたところでもはや誰も私の事など信じてくれないだろう」「悔しい…」
(矢作の声)「悔しい…」「悔しい…!!」矢作さんお願いです。
ほんの少しでも構いません。
本当の事を話してもらえませんか?
(佐和田)矢作さん…。
7年前の事は本当に申し訳ありませんでした!
(佐和田)あんたが苦しんだ事はよくわかる。
だが死者が出てるんだ。
たとえその人が不正を働いていたとしてもあんたは説明する義務があるんだよ。
ねえ!うっ…。
み…うっ…。
うぅ…。
うあ…うぅ…。
(鐘の音)
(佐和田)矢作さんどうしました?佐和田さんここまでにしましょう。
ご本人もどこまでが自身の記憶なのかわからなくなってるんだと思います。
(金杉)あの…そろそろよろしいですか?はぁ…はい。
ありがとうございました。
あっちょっと待ってください!あの…これを矢作さんの部屋に飾ってあげてもらえませんか?矢作さんこれ美加さんが作った3つの香炉です。
7年前の事件現場に残されていたものも警察の倉庫に残っていました。
香炉の模様はそれぞれ太陽と月と星と3つの光を表しています。
三光って言うんですってね。
籐子さんの小料理屋の壁にも三光の絵が飾られていました。
膳場さん親子はどうしてこの三光にこだわったんでしょう?それは籐子さんも美加さんも矢作さんと家族になる事を望んでいたからなんじゃないでしょうか?矢作さんと籐子さんと美加さんで3つの光です。
恐らく美加さんは矢作さんの存在に気づいていたんでしょうね。
だからこの香炉は3つでひと揃えなんです。
美加さんは事故に遭う直前にこの2つの香炉をお母さんに送っています。
それはもう父親の事を隠さなくてもいいという美加さんなりのメッセージだったんじゃないでしょうか。
この3つの香炉は離ればなれだった家族がようやく一つになれるという美加さんの思いがこもっていた。
僕はそう思います。
(佐和田)いいのか?これで。
(籐子)美加。
ん?
(籐子)いつものお願い。
(美加)はーい。
任せて〜。
はーい。
うぅ…。
(泣き声)
(宮下)永田大地!覚せい剤取締法違反及び7年前のホテル放火容疑で逮捕する!年貢の納め時だなお坊ちゃま。
ちょっと待ってくれよ。
こんな事していいと思ってんのか?あっ電話させてくれよ。
母親に。
一条さんはもう亡くなってんだよ。
お前もおふくろさんも警察をバカにしすぎたんだよ!連行!
(刑事)来い。
(東)まったく余計な事してくれたもんだよ糸村は。
もう上の連中朝から大騒ぎだよ…。
はぁ…こんな大事な日にな…。
まあいいんじゃないんですか?とりあえず事件は無事に解決したわけだし。
今日ってなんかありましたっけ?えっ?あっ…いやいやあの…。
ああ〜ああああ…。
これですか?いや…昔の仲間にイベントに誘われちゃってさ。
あっよかったら水沢君も一緒に行く?行くわけないじゃないですか。
ほらこの間の衣装もあるしさ。
行くわけないじゃないですか!
(金子)お疲れさまです!
(刑事たち)お疲れさまです!管理官。
はぁ…。
おお…。
なあ糸村。
はい。
正義ってあるんだな。
「正義とは常に目標でなければならず必ずしも出発点である必要はない」…って誰かが言ってました。
なんだ?それ…。
さあ?あーっうまいっ!うまいなあ…。
ティアラがねまた勝手にね泳いでいっちゃったの。
(仙堂)わざと逃がしてんじゃねえか?これ遠山。
そんなわけないでしょう。
あの犬今度は何を探しに行ったんだろう?もう…。
よし準備は出来たか?あれ?森田さん胴長は?胴長。
4つしかないんだよ。
おい糸村。
はい。
お前この間やらずに得したんだから気合を入れて捜索するように。
了解しました。
捜索開始!は〜い。
(森田)入れ入れ!あれ?仙堂さんあの子違いますか?
(仙堂)あっ!
(遠山)あーっ!いたいたいた!お嬢ちゃんお嬢ちゃんあの犬でいいのか?お嬢ちゃん。
ティアラ!
(横山)ティアラちゃーん!ティアラ…。
ティアラちゃん。
(ティアラの鳴き声)ティアラ!ティアラ待て!ティアラ…。
2014/10/19(日) 21:00〜23:10
ABCテレビ1
ドラマスペシャル「遺留捜査」[字]
遺留品が語る、三分の真実—風変わりな刑事・糸村聡(上川隆也)がふたたび!泣ける刑事ドラマ「遺留捜査」、秋の特別編!!
詳細情報
◇番組内容
『バックドラフト現象』による連続爆破事件が発生!警視庁捜査一課の佐和田(内藤剛志)とコンビを組むこととなった糸村。しかし、糸村は相変わらず、遺留品である“香炉”の捜査に没頭!佐和田を振り回しながらも遺留品の謎を追う!“香炉”に秘められた真実とは—。
◇出演者
上川隆也、正名僕蔵、眞島秀和、波岡一喜、甲本雅裕、西村雅彦、三宅裕司
【ゲスト】内藤剛志
◇脚本
池上純哉
◇音楽
吉川清之
◇監督
長谷川康
◇スタッフ
【ゼネラルプロデューサー】佐藤凉一(テレビ朝日)、三輪祐見子(テレビ朝日)
【プロデューサー】丸山真哉(東映)、和佐野健一(東映)
◇おしらせ
☆番組HP
http://www.tv-asahi.co.jp/iryu/
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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