「アートシーン」です。
まずは足利将軍家が収集した中国美術のコレクションからです。
羽を繕う鴨のしぐさ。
息をのむ細密な描写は中国北宋の皇帝徽宗が描いたとされるものです。
室町時代足利将軍家によって集められた「東山御物」。
日本美術に大きな影響を与えた名品を紹介します。
当時の日本人にとって憧れの的だったのが中国美術。
足利義満以降代々の将軍が明との貿易で最高級の美術品を買いそろえます。
それらが後に「東山御物」と呼ばれ日本の美意識の規範となってきました。
日本人の琴線に触れ人気を博したのが南宋時代の水墨画です。
画僧玉澗の作品。
月明かりに照らされもやの中に楼閣が浮かび上がります。
墨をまき散らしたような表現が日本の水墨画家を魅了しました。
水墨画の父として知られる画僧牧谿。
老子の姿をユーモラスに描いています。
太く濃い線と淡い線を巧みに使い分ける筆。
後に長谷川等伯にも影響を与えました。
日本の美術史といっても日本の中だけで出来たものではなくて中国の唐物を崇拝した中でそれに影響を受けそして展開していく。
東山御物の作品群というのはまさにそういったお手本となるべき中国の唐物だったんですよね。
別々の絵を一組の作品と見立てる鑑賞法も伝わりました。
こちらの絵には深い雪に覆われた山々。
その麓に馬に乗った2人の人物が描かれています。
おそろいの帽子と外套をまとい何やら言葉を交わしています。
対になるのがこちら。
苦行を終え下山したばかりの釈の姿。
とげとげしい木の下にたたずみその目は遠くを見つめています。
対になる雪山の冷たい空気が修行の厳しさを際立たせます。
精密な筆遣いの花鳥画もこのころ日本に伝わりました。
2羽の小鳥がまるで梅の花をめでているようです。
繊細な線で写実的に描く宮廷画家の画風は日本の山水画に影響を与えました。
工芸品も最高のものが集められました。
国宝「油滴天目」。
油の滴を散らしたような模様からその名が付けられました。
後に関白・豊臣秀次によって珍重され桃山時代の茶人たちもその美しさを絶賛しました。
室町時代の唐物は日本美術史にとって大きな役割を果たしてますからね。
中でも雪舟や長谷川等伯らに大きな影響を与えた牧谿の貴重な作品群はほんとにじっくり味わってみたいですね。
そうですよねぇ。
ではその他の展覧会です。
(新幹線の走行音)日本の大動脈新幹線の開通。
(号砲)戦後の復興を世界にアピールした東京オリンピック。
共に1964年の出来事です。
それから50年。
日本を沸かせた2つの夢を記念した展覧会です。
「夢の超特急」。
シンボルカラーは青と白。
そのデザインにも歴史があります。
試作で作られた車両です。
平行に伸びる青い線があしらわれていました。
その後完成した0系新幹線。
青い線が大胆に窓枠を覆うデザインに変更されモダンな印象となりました。
最高時速210キロ。
そのスピードがこんなところに。
開通を記念して作られたマッチ。
目の前を瞬く間に過ぎる新幹線の残像をデザインにしました。
新幹線開通から間もなく東京オリンピックが開幕しました。
日本にとって復興をアピールする絶好の機会。
デザイナーの栗谷川健一は招致ポスターで日本の自然を強調しました。
一本の柱で建物全体をつり上げるユニークな構造。
丹下健三が設計した代々木体育館は世界で注目されました。
その模型が収納された豪華な装飾の箱。
内側には英文の解説。
世界中どこでもプレゼンテーションをするという当時の情熱が伝わってきます。
50年前の日本の熱気を振り返ります。
江戸時代に起源を持つ小倉織の展覧会です。
丈夫な木綿の布と縦の縞模様が特徴の小倉織は昭和の初めに一度生産が途絶えました。
30年前染織家の築城則子が生地の断片を頼りに小倉織をよみがえらせました。
独自の完成で色を組み合わせる築城の小倉織は国内外で高く評価されています。
明治から昭和にかけて作られたポスターの魅力を伝える展覧会。
大正時代に愛されたサクラビール。
よく見ると着物にも「桜ビール」の文字。
背景にも花びらを配したデザイン性豊かなポスターです。
世間を驚かせたワインのポスター。
日本で初めて女性のヌードが広告に使われました。
白黒にワンポイントの赤が映えます。
「震災とアート」というテーマに45人の作家が向き合いました。
福島県出身の宇田義久の作品。
崩れる限界まで積み上げたおもちゃの積み木です。
日常の中で忘れている高層建築や人工物への恐怖感を表しています。
岩手県出身の広野じんの作品は五等分に分けられたあんぱん。
避難所で体験した「分け合う」という行為に未来への希望を感じたといいます。
日本の近代洋画史に独自の足跡を残した海老原喜之助。
鹿児島出身の海老原は18歳の時から10年間ヨーロッパに滞在します。
16世紀の画家ブリューゲルに影響を受け日本に持ち帰ったのは代名詞となる「エビハラ・ブルー」。
その鮮烈な色彩は若い画家たちに大きな刺激を与えました。
海老原の描く人物には特徴があります。
一点を見据える少女。
喜怒哀楽を抑えた表情が見る者を引き付けます。
「アートシーン」でした。
ではまた次回。
2014/10/19(日) 20:45〜21:00
NHKEテレ1大阪
日曜美術館 アートシーン ▽“東山御物の美−足利将軍家の至宝−”展 ほか[字]
「東山御物の美—足利将軍家の至宝—」(三井記念美術館 10月4日〜11月24日)ほか、展覧会情報
詳細情報
番組内容
「東山御物の美—足利将軍家の至宝—」(三井記念美術館 10月4日〜11月24日)ほか、展覧会情報
出演者
【司会】井浦新,伊東敏恵
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
情報/ワイドショー – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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