ジャングルの奥深く
分け入れば分け入るほどに興奮は高まっていく
(スタッフ)すごいとこ入りますね
(前川貴行)ねぇもう…ブッシュ切り開いて道造らないと行けないんですよね
アフリカの熱帯雨林で動物写真家・前川貴行は茂みに目を凝らした
野生のゴリラ
ツアー客に与えられる撮影のチャンスは1時間と決められている
(シャッター音)
近づき過ぎるのは危険だが…
KeepthereKeepthereふぅ〜
(舌打ち)不完全燃焼
すくい上げるのは動物が発するえもいわれぬ色気
見る者は時にいとおしさを感じ…
時に射すくめられて思わず背筋を伸ばす
去年日経ナショナルジオグラフィック写真賞でグランプリを受賞した
象!象!象!かわいい!
原寸大に引き伸ばされた動物は発見に満ちている
豚の鼻だ豚の
間近に体長180cmはあろうかというボスゴリラ
だが振り向いてはくれない
せっかくこれだけそばに寄れてるからワンチャンスでもあればなと思ってるんだけど
じっと待ち続ける
根負けしたかそれとも警戒心を解いたのかまるでポーズでも取るように真正面にやって来た
(シャッター音)
狙うのは生き物の生態
…ではなかった
…っていう気持ちで撮ってるんですよね
前川が写し取ろうとしているのは個性に満ちた命の息遣いだ
でもどうやって…
「アフリカの真珠」と呼ばれるウガンダ共和国の森
国家や民族人間同士のいさかいも生き物たちの楽園にまでは及ばない
ここ数年前川はゴリラやチンパンジーなど類人猿をテーマにしてきた
早朝6時
(スタッフ)おはようございますおはようございます
国立公園の中にあるロッジでは出発の準備が整っていた
(スタッフ)荷物これだけですか?荷物はこれだけですねちょっと集約しましたカメラ2台とレンズ3本
この日からはガイドと2人だけ
プロの写真家とは思えない身軽さが意外だった
コツというのは特にないですねホントにチンパンジーの動きについてってチャンスと見ればシャッターを切るだけですねそれの連続ですねず〜っと
(スタッフ)何か素人でもできそうな感じですけれどもいやできると思いますよあの〜十分
(スタッフ)そんなこと言っちゃっていいんですか?いいですいいです全然特別なこと僕はしてるつもりないんでグッドモーニングナイストゥミートユーハローハイナイストゥミートユー
動物学者などを相手にするガイドと共に森に生きるチンパンジーを追う
それも朝から晩まで
ジャングルが目覚め始めた
・
(チンパンジーの鳴き声)
鳴き声は次第に高く大きくなる
(チンパンジーの鳴き声)
足跡や食べ残しを手がかりに1時間ほど歩いた頃前川は突然頭上にレンズを向けた
(シャッター音)見えますよほらこれちょっとちっちゃいんだけどあそこですこの間から抜けて見えます
姿を見せたチンパンジー
けれど距離が遠すぎた
あぁ…速い…もう速すぎる
彼らは一日の大半を木の上で過ごす
動きを予測するのは不可能だ
ダメですね食らいついてってでチャンスを待つっていう感じですかね
(スタッフ)今日はこの…
話しかけることもためらわれる
くそ〜
餌場を変えるために1頭が地上に下りてきた
どこへ向かうかは神のみぞ知る
ひたすら後を追い続けた
ロッジを出てからもう6時間近く経っている
ハァハァハァ…
なかなかじっとしていてはくれない
彼らの森で人間は好ましからざる侵入者だ
存在を認めてもらわなければ理想のシャッターチャンスは訪れない
(シャッター音)
12時間歩き続けてこの日満足のいくカットは一つも撮れなかった
確実なものがないから…う〜ん確実じゃないけどもう〜ん…そこに懸けようということですからね
前を行くガイドが息を殺して前川を制した
「気を付けろ」という合図
そこにいたのは1頭のオス
以前ガイドを襲ったこともある暴れん坊らしい
(チンパンジーの威嚇の声)
(チンパンジーの激しい鳴き声)
どうやらいらだっているようだ
前川は食い下がる
(シャッター音)
押し倒された木にも動じない
静かに静かに間合いを詰めていった
(シャッター音)
(シャッター音)
更に近づく
手を伸ばせば触れそうな距離
(シャッター音)
(シャッター音)
飛びかかられたら大けがをする
やがて願ってもない瞬間
そのオスは前川を受け入れたのだ
(シャッター音)
(チンパンジーの鳴き声)
(チンパンジーの鳴き声)波長が合ったっていうよりかほっといてくれたんだなって思いますよ少なくともそんな悪いやつじゃないとは思われてるんじゃないかなとは思いますけど
手応えを感じていた
何かうれしいねそういうのは汗臭いのが覚えてもらってんだね
野生のチンパンジーが前川だけに見せた素顔
過酷な撮影旅行では衣類なども最低限に抑えている
冷たいシャワーで汗を流しながらついでに洗濯
一年の半分以上を辺境で過ごす男はこんな旅に慣れていた
自宅は…
13年前に結婚し3人の子供に恵まれている
フフフ
(スタッフ)こんにちは
(琉奈ちゃん)こんにちは
12歳の長女
(スタッフ)こんにちはこんにちは琉奈です
(スタッフ)琉奈ちゃん
(スタッフ)あそこの部屋の琉奈ちゃん?
(スタッフ)アニメ好きなんですか?うん大好きですいない時はもうほとんどいないですからねでもいなくても大差ないからえっ?いなくても別に変わらないよいてもいなくてもフフフ…もうね…仕事してるじゃないか一生懸命でもさあれじゃん父親としての仕事は全然してないじゃん
痛いところを突かれてしまった
この辺にしときましょうかただいま〜
同い年の妻・啓子さんとは高校時代に知り合った
いろいろと頭が上がらないことばかり
(スタッフ)よろしくお願いしますかなり散財させた部分もありますね
(スタッフ)散財?へぇ〜ためてたお金を使わせたりとかもありましたからね海外行くのにお金ないじゃないですかバイトしたってそんなにお金たまるわけじゃないしそういう時ちょっと工面してもらったりとかはありましたけど
1969年東京の生まれ
高校を出て3年ふらふらし勤めてはみたもののやりたいことは見つからなかった
26歳で手にしたカメラ
将来への不安を忘れようと日本中をさすらって風景を撮った
そこで出会った鹿に進むべき世界を教えられた
でっかいオス鹿だったんですけどそんなのと割と近距離でばったり出会って目と目が見つめ合って…その時に動物が上とか下とかじゃなくてホント命として対等だっていうのがその瞬間に分かったんですよ動物っていうか命…命だなと思って
全身の細胞が泡立った
会社を辞めて独学で動物を撮り始めた
写真家の事務所でも働いた
この道で生きていきたい
全くの無名だった前川を陰で支援した人がいる
カメラメーカーの…
高価なレンズを無償で貸し出した
もう純粋で朴とつとした…まぁ朴とつっていうのがいい意味での朴とつっていう…何を言ってるか分かんなかった初め
(スタッフ)話がですか?うん何かこうぼそぼそっと言っててで次どこの取材に行くのかもあんまりよく分かんないしでそういう取材だったらこの機材がいるんですよねってこっちから言わないと言わないような人だったんですよ動物が好きだから動物写真家になるんだっていう…子供が例えば科学者になりたいとか宇宙旅行に行きたいとかっていうような気持ちで写真家に飛び込んだ前川さんでもそれはすごく純粋で一番大切なことなんですよね
33歳妻の貯金で向かったアラスカ
この一枚に写真界は目をみはった
本当に人の心を打つような写真を撮らなかったらうそだと思うんですよね「きれいだねすてきだね」で終わるんじゃなくてその一枚の写真を見て何かその人の人生と少しでも関わり合うぐらいのそれぐらいの勢いのある写真を撮りたいなっていう思いですよね
(チンパンジーの鳴き声)
人の心を打つ勢いのある写真
ウガンダの森で前川は既に数千回シャッターを切っていた
(チンパンジーの鳴き声)
(シャッター音)
(チンパンジーの鳴き声)
チンパンジーは地上での動きも素早い
(チンパンジーの鳴き声)
1頭に狙いを定め先回りして待ち受けようと考えた
そこは絶好のポジションだった
(シャッター音)
だが…
あぁ…はぁ…ちょっと…歩いてるとこを撮ってたんだけど…
(スタッフ)すいません
前川は私たちを責めなかった
でも明らかにリズムが狂っている
(舌打ち)あぁ…はぁ…
いっそどなり倒してくれたほうが気が楽だった
うかつにも私たちは前川の苦心を無駄にしてしまった
あの時ファインダーの中にどんな一瞬があったのか聞かずにはいられなかった
(スタッフ)前川さん一つお願いがあるんですけどはい何でしょう
(スタッフ)チンパンジーの時に…はい
(スタッフ)私たちが写り込んじゃった写真を見せてもらえませんか?いやいいですよそれは世に見せられるやつだけを見せるのが写真家でしょ?クオリティーの高い写真を目指すことだけに目を向けることが必要だと思うし
(スタッフ)当たり前なのかもしれないですけど完璧…完璧主義っていうか…いやう〜んまぁ完璧…完璧主義…まぁ完璧目指してるねだからこういう話になっちゃうんだもんね別にそんなに意識してないけど自分で完璧主義だなんてそう言われりゃそうだなって思うね100点のものばっかり毎回毎回出してるわけじゃないし世の中に100点のものばっかり出せないからね100点のものばっかり撮れないからしかたなく98点だったり95点だったりしてる写真を出してるけどでも完璧目指してる
自身が選んだ今回のベストショット
森の命は前川に似て誇り高く毅然としていた
この男の新たな挑戦とは?
人類未踏の頂を目指した男の全記録
2014/11/16(日) 23:00〜23:30
MBS毎日放送
情熱大陸[字]【前川貴行/ゴリラ接近!限界に挑む動物写真家アフリカで猿が…】
動物写真家/前川貴行▽独特の美意識で野生動物の表情を完璧に切り取る、今最も熱い視線を浴びる写真家が、素早いチンパンジーの「至極の1枚」をカメラに収める瞬間に迫る
詳細情報
番組内容
昨年NYの老舗ギャラリーで個展を開き、海外メディアから「動物たちの静穏と気高さをとらえた芸術作品」と絶賛された前川は先月、チンパンジーやゴリラなどの大型類人猿をテーマに写真集を作りたいと考え、アフリカ・ウガンダ共和国に向かった。チンパンジーは、森の中でなかなか見つからず、また高い木の上にいて且つ動きが素早いので撮影は難しい。前川はいかにしてチンパンジーの「至極の1枚」をカメラにおさめるのか!?
出演者
【プロフィール】
前川貴行
動物写真家。1969年東京生まれ。
サラリーマン勤務の26歳の時に自然の中で鹿と出会い、動物たちの圧倒的な命のありように感銘を受けて会社を辞め、独学で写真を始める。その後動物写真家・田中光常氏の助手を務め、2000年よりフリーの動物写真家として活動開始。日本・北米・アフリカ、そして近年はアジアにもフィールドを広げ、“野生動物の生きる姿”をテーマに撮影に取り組んでいる。
制作
【製作著作】MBS(毎日放送)
【制作協力】ドキュメンタリージャパン
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