ダーウィンが来た!「ヤマメVSサクラマス どっちが得?」 2014.10.19

山頂付近が平らになっています。
おっ釣れました。
一体何でしょう?お〜ヤマメですね。
「渓流の女王」とも呼ばれるヤマメ。
美しい模様が特徴です。
全長は20〜30センチほど。
日本各地の水のきれいな川の上流に暮らしています。
一方こちらは…全長は60センチほどで全体に赤みがかっています。
曲がった鼻に鋭い歯。
赤鬼みたいで迫力満点ですね。
実はこの2匹全く…大きさも姿もこ〜んなに違うのに同じ種類だなんて不思議ですね。
ちょっと待った!おっヒゲじい。
今日はいきなりですね。
いやこの2匹が同じ種類だなんて何かの間違いでしょ?名前だって違うじゃないですか。
ヒゲじいの気持ちもよ〜く分かります。
すごく簡単に説明しますとずっと川にいるものをヤマメと呼び海に出て大きくなって川に戻ってくるものをサクラマスと呼ぶんです。
はぁ?まだよく分かりませんが。
まあまあ今日はその秘密をじっくりとご紹介します。
2つの生き方には厳しい自然で命をつなぐためのそれぞれの戦略があるんです。
う〜ん早く知りた〜い!
(テーマ音楽)ヤマメとサクラマスの秘密を探るためやって来たのは北海道の東部。
豊かな自然が残ります。
真冬の12月。
ヤマメとサクラマスの生涯が始まります。
凍りそうなほど冷たい川の中。
ヤマメとサクラマスの卵です。
直径は5ミリほど。
どの卵がヤマメになりどの卵がサクラマスになるのかまだこの段階では分かりません。
あっ!赤ちゃんが出てきました。
おなかの赤い袋には栄養がたっぷり詰まっています。
この栄養を吸収しながら赤ちゃんは石の隙間でじっと春を待ちます。
5月初め。
北海道に春が来ました。
赤ちゃんたちは…?いました!流れの緩やかな場所に集まっています。
体長は3センチ余り。
随分大きくなりました。
おなかの袋はもうすっかりなくなっています。
あ!何か食べました。
このころになると小さな虫などを食べ始めるんです。
そして食べ物を食べ始めることでヤマメとして川に残るのか海に出てサクラマスになるのかその運命が決まるのだといいます。
一体どういうことなのか実験でそのヒントを教えてもらいます。
こちらがですね…実験では人工ふ化で生まれた稚魚100匹を同じ水槽で飼育します。
注目するのは餌の食べ方。
水面に集まってきました。
食べてる食べてる!水面近くには積極的に餌を食べる稚魚が集まりました。
中には他の稚魚を追い払ってまで食べようとするものもいます。
食欲旺盛ですね。
一方水槽の底のほうにいる稚魚たちはあまり食べていません。
どうやら食べ物争いが苦手なようです。
こうして飼育すること2か月。
食べ物をめぐる競争の結果は体の大きさに現れていました。
餌をよく食べていた稚魚は10センチ近くにまで成長しています。
一方こちらは4センチほど。
あまり大きくなっていません。
体重で比べると10倍もの差がついています。
この差がヤマメになるかサクラマスになるか今後の運命を決定づけるというんです。
水温が上がり生きものたちが活発に動くようになると稚魚たちの大きさの差はぐんぐん広がっていきます。
川底に水生昆虫がいます。
稚魚たちの大好物です。
流れてきた水生昆虫をパクリ。
またパクリ。
こちらでもパクリ。
またまたパクリ。
見ていると同じ稚魚ばかりが食べています。
この食いしん坊が上流で片っ端から食べてしまうので下流にいるものはなかなか食べ物にありつけません。
1匹が上流に出ようとしますが…追い払われてしまいました。
この食いしん坊特等席を譲る気は全くないようです。
川で成長するためにはこのポジション争いはとっても重要です。
上流にいれば十分な食べ物を得ることができ大きく成長することができます。
しかし反対に後ろのほうだと満足に食べることができず大きくなれないんです。
体格の差は次第に暮らす場所にまで影響を及ぼしていきます。
流れが強く食べ物が豊富な場所に集まっているのは体の大きなものたち。
大きな体は食べ物をめぐる競争に勝ち続けてきた証しです。
一方流れが弱く食べ物が集まりにくいよどみにいるのは体の小さなものたち。
こうして体格差はますます広がっていきます。
あ〜はいはいはい!分かりましたぞ。
こうやって食べ物争いに勝ち抜いたものがどんどん成長してサクラマスになるというわけですな。
さすがヒゲじい鋭い!と言いたいところなんですが違います。
そんなに単純ではないんです。
え違うの?これから説明しますからもう少し辛抱して下さいね。
あら〜そうなんですか。
今後の「成長」私も「静聴」致しましょう。
ふ化から2年目の春。
生まれ故郷をはるかに下った河口近くで海に出る準備をしている大集団がいました。
体の小さいものたちです。
もうお分かりですよね。
サクラマスになるのは川で食べ物をめぐる競争に負けたほうだったんです。
画面の下。
海に出ようとするものたちは体の模様が薄くなり銀色に変化しています。
海で暮らすイワシに似ていませんか?光を反射する銀色のうろこは海で身を守る保護色になるといいます。
海に出る準備の一つです。
姿だけでなくエラや内臓なども海水で生きるために徐々に変化させていきます。
いや〜体が小さいほうが海に出ていくとは思いもしませんでした。
あでもちょっと待った!川での食べ物争いに負けたものが大海原で生きていけるとは思えませんがね。
いえいえ海だからこそ大丈夫なんです。
はぁ?そうなんですか?はい。
実はね海には川とは比べものにならないほどたくさんの食べ物があります。
例えばこのイカナゴ。
こうした小魚やその稚魚が海にはたくさんいます。
大集団に当たれば一発逆転の可能性が開けるんですよ。
へえそうなんだ。
だけどそんなに食べ物が豊富なら川で競争なんてしないでみんなで海に行けばいいんじゃないですかね?おっ今度は鋭いですねヒゲじい。
へへへへッ。
確かに海は食べ物が豊富なんですが危険もいっぱいなんです。
オットセイやシャチなどどう猛な天敵がたくさんいますからね。
うわ〜それは怖い!海に旅立つもののうち川に戻ってこられるのはわずか1割ほどと言われています。
だから海に出なくて済むのならそれに越したことはないんですよ。
はあ〜なるほどね。
その証拠となる興味深いデータをご紹介しますね。
ほうどれどれ?こちらです。
円グラフで示しているのは川に残るものと海に出るものの割合です。
九州ではほぼ100%が川に残るといいます。
あ〜はいはいはいはい。
暖かく食べ物が多い九州の川では海に出る必要がないからなんです。
一方北海道の川では寒くて食べ物が少ないため1/4もが海に出なくてはならないんです。
へえ〜そういうことなんですか。
はい。
でねヒゲじいこの北海道の川のグラフの内訳ですが食べ物争いに勝って川に残る3/3はほとんどがオス。
そして海に出るのは争いに負けた半数のオスとメスです。
どうやらオスの方に食いしん坊が多いからのようなんです。
へえあそうなんですか。
それにしても食べ物争いに負けたものたちにとって海に出ることが一発逆転の大チャンスだったとはねぇ。
海に旅立つものたちよ立派なサクラマスになろうと希望に胸を「ふくらます」がよい!なんてね。
第2章では海に旅立ったものたちがサクラマスになって帰ってきます。
でも川に戻っても試練の連続。
うわぶつかった!果たして無事に故郷に錦を飾ることができるんでしょうか?突然ですがここで「ダーウィンNEWS」です。
首都圏を流れる多摩川の中流域。
夏の夕暮れ河原に大勢の人が集まっています。
一体何事?
(歓声)お目当てはこの鳥の大群。
一体何でしょう?ツバメです。
この河原関東有数のツバメのねぐらなんです。
でもツバメのねぐらって軒下の巣だと思いますよね。
実はこれは子育て用。
ヒナが巣立ってから南に旅立つまではこうしたヨシ原などに集まり夜を過ごします。
ヨシの先端で眠ればネコなどの天敵は登ることができないため安全なんです。
ツバメにとってかけがえのないこのヨシ原一時は消滅の危機にありました。
原因は…。
アレチウリですね。
このアレチウリは北米原産の外来種。
ヨシにつるを巻きつけて倒したりヨシを覆って枯らせたり。
そのせいでヨシ原は壊滅状態になりツバメは姿を消してしまいました。
そこで8年前から野鳥愛好家たちが中心となりアレチウリを取り除く取り組みを始めたんです。
ただただ…その結果ヨシ原は復活しツバメが帰ってきたんです。
今では3万羽ものツバメが集まるねぐらになりました。
人々の思いによって復活を遂げたヨシ原。
ずっと守っていきたいですね。
5月。
川で食べ物をめぐる競争に敗れたものたちが海に旅立っていくころ。
入れ代わるように海からやって来る魚たちがいます。
ちょうど1年前に海に出てサクラマスとなったものたちです。
子孫を残すためふるさとの川に戻ってきたんです。
全長はおよそ60センチ。
ホント立派になりましたね。
こちらのサクラマスよく見ると体に傷があります。
オットセイなどの天敵に襲われたのかもしれません。
危険がいっぱいの海で必死に生き抜いてきたんですね。
サクラマスたちが目指すのは川の上流部。
かつて自分たちが生まれた場所です。
海から川へ再び体をつくりかえながら上流を目指します。
産卵場所にたどりつくまでには数か月もかかるといいます。
その旅は苦難の連続。
行く手に現れたのは巨大な滝です。
落差は3メートルほどもあります。
滝つぼにはたくさんのサクラマスたちが集まっていました。
次々にジャンプしますが激しい流れに押し戻されてしまいます。
でもここを越えなければ子孫を残すことはできません。
何度も何度も挑戦しますがうまく流れに乗れず滝を突き抜けてしまうものもいます。
あちゃ〜!岩にぶつかってしまいました。
滝を越える秘けつはいったん深くまで潜って勢いをつけること。
さあ頑張って!お見事!ようやく滝を越えることができました。
でも目指す川の上流はず〜っと先です。
旅は始まったばかり。
試練はまだまだ続きます。
サクラマスが川を遡り始めて3か月が過ぎました。
このころサクラマスの体に変化が現れ始めます。
赤いまだら模様。
繁殖の準備が整った証拠です。
特に大変身するのがオス。
鋭い歯が生えてまるで鬼のような形相になるんです。
恋の季節はもう間もなく。
先を急がないといけません。
こんな浅瀬でも水面に背中を出しながら進んでいきます。
ここを越えれば目指す産卵場所はもう目の前です。
ところがヒグマが現れました。
しぶきの音を聞きつけてやって来たんです。
浅瀬を進むサクラマス。
でもヒグマに狙われてはひとたまりもありません。
あ〜捕まってしまいました。
ヒグマにとってはまたとないごちそうです。
大海原を生き抜いて川に戻ることができても無事に産卵場所にたどりつけるのはほんの一握りのサクラマスだけなんです。
夏の終わりを迎えた川の上流部です。
長旅の末サクラマスたちはついに目的地にたどりつきました。
かつて食べ物をめぐる競争に勝ち抜き川に残り続けたオスのヤマメもいます。
横に並ぶとその差は一目瞭然。
サクラマスの体重はおよそ3キロ。
100グラムほどのヤマメと比べると体重は30倍にもなります。
まさに大逆転。
もはやヤマメに勝ち目はなさそうですね。
オスのヤマメがメスのサクラマスに求愛しますが「もう!あっち行ってよ」。
体の小さなヤマメはサクラマスの恋愛対象ではないんです。
ヤマメを尻目にサクラマスのオスたちの恋のバトルが始まりました。
メスに求愛できるのは戦いに勝ったものだけ。
負けるわけにはいきません。
あっかみついた!オスの鋭い歯はこの戦いへの備えだったんです。
相手が逃げ出すまで戦いは終わりません。
オスたちの真剣勝負は数時間にわたって続くこともあります。
ついに勝負がついたようです。
カップル成立です。
オスが体を震わせメスに産卵を促します。
するとメスが尾びれで川底をたたき始めました。
卵を産み付けるための穴を掘っているんです。
穴の深さが足りないと大事な卵が流されてしまう恐れがあります。
メスは尻びれを穴に入れて深さを確かめます。
穴を掘るメスの横でオスは近づいてくるライバルたちを追い払い続けます。
最後まで気は抜けません。
激しく体を震わせるオス。
ついに産卵。
感動の瞬間です。
でもとんでもない邪魔者がいたのに気が付きました?ちょっと巻き戻してもう一度見てみましょう。
ほらここ。
オスのヤマメです。
一体何をしているんでしょう?よ〜く見ると産卵の瞬間ヤマメがサクラマスのカップルの間に割り込んでいます。
どさくさに紛れてこっそり産卵に参加していたんです。
ヤマメが受精させられる卵はごくわずかですが産卵の度に割り込めば確実に子孫を残せます。
恋のライバルにすらならないヤマメ。
体の小ささを逆手に取った土壇場での逆転技です。
秋。
サクラマスの恋の季節は終わりを迎えます。
その体にはもう力は残っていません。
このふるさとの川で波乱に満ちた生涯の幕を閉じます。
一方のヤマメは生まれ育った川で冬を過ごします。
厳しい冬を生き抜いたものは再び子孫を残すことができるのです。
川での競争に負け危険がいっぱいの海に旅立ち立派な体を手に入れてふるさとに戻るサクラマス。
幼いころの食べ物をめぐる競争に勝ち抜き生涯を川で過ごすヤマメ。
激しい生存競争の中で培われてきた全く別の2つの生き方がまた次の世代へと受け継がれていきます。

(秀吉)鶴松…。
豊臣家の世継ぎ鶴松は2014/10/19(日) 19:30〜20:00
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「ヤマメVSサクラマス どっちが得?」[字]

渓流の女王と呼ばれるヤマメと、全長60センチにもなるサクラマス。大きさも名前も違うのに、じつは同じ種類の魚!なぜこんな違いが生まれるのか?不思議な生き方に迫る。

詳細情報
番組内容
“渓流の女王”と呼ばれる「ヤマメ」と、全長60センチにもなる巨大な「サクラマス」。姿形も名前も違うのに、じつは同じ種類の魚!生まれた川で一生を過ごすものが「ヤマメ」となり、海に出て大きくなって、再び川に戻ってくるものが「サクラマス」となる。同じ種類の魚なのに、なぜ二つの生き方があるのか?生き方の違いはいつ生まれるのか?豊かな自然が残る北海道東部の清流を舞台に、不思議な暮らしぶりに迫る。歌:平原綾香
出演者
【語り】近田雄一,龍田直樹,豊嶋真千子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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