北の大地がきりりと冷え込みを増すと男は決まって一人山野を巡る
もう半世紀近く生きる糧を山に求めてきた
背筋をしゃんと伸ばし引き金に掛けた指をそっと絞るように落とした
(銃声)
(久保俊治)よ〜しよし
周囲があきれるような生き方を貫いてきた
67歳今なお喜々として山中に籠もっている
追っかけたほうがいいですよあれ
歳月に磨かれた経験がある
何も考えないでやっぱり…できるだけふわ〜っと溶け込めれば一番いいんじゃないですかね自然の中に
森に分け入り気配を探る
狩人の直感がささやく
ヒグマはもうすぐそこにいる
久保は世界でもたった一人のヒグマハンター
これまで70頭余りをしとめてきた
言葉に尽くせぬ興奮がある
ヒグマは日本最大にして最強の野獣なのだ
生きて帰れるだろうか
そう一人問いかけても山はいつまでも沈黙を決め込んでいた
久保の家からは国後島を望むことができる
隣の家は10km先だ
妻に先立たれ2人の娘は独立
ここでの1人暮らしはもう7年になった
猟の準備のため白米を炊き昔ながらののり弁を作る
おかずは山で調達する
さぶいお〜い皆元気だか?
今は猟の収入だけで暮らしていけるわけではない
久保の生活を助けてくれるのは馬8頭と牛10頭
この牧場は久保の知人が引退するのを機に譲ってくれた
よし
長年連れ添った338マグナムの点検を済ませるといよいよ出発の時間
玄関先に並べられた愛用の道具はどれも年代物ばかり
プロなら装備を大切にするのは当たり前のことだ
何?お前
丁寧な仕事は命を守るため
よしはいどうも
毎年10月ヒグマ猟が始まる
(スタッフ)この辺に住まわれてる…美唄の…ないんです
近年町へ下りて人を襲うクマが増えている
久保はその駆除を頼まれることも多い
山に入れば感覚記憶判断力全てを総動員しなくてはならない
体長が3mにもなるヒグマの好物はドングリやコクワの実
ヒグマとの駆け引きの始まり
ふだんから物静かな男が一層無口になる
神経を研ぎ澄ませわずかな手がかりを探す
ヒグマの気持ちになって山を歩けばいい
久保はそう言う
また何かを見つけた
ヒグマは近くにいるのだろうか
はっきりと連続する足跡を捉えた
こんな時こそはやる気持ちを抑えなければならない
久保がヒグマの気配を感じ取った
経験と勘だけがせり上がる恐怖を抑え込む
だがヒグマは気配を消した
そのあとしばらく…
どうやら見失ってしまった
ず〜っと行ってますねこれねこの調子だとかなり行ってるかな
(スタッフ)餌があんまりなくなってきたからではなく?かえって…かえって
ヒグマの立ち寄りそうな沢辺へ下りた
遡上してくるサケは冬眠を控えたヒグマの貴重なタンパク源
この場所に来ないはずがないのだが…
獣道を進んだのか
それとも川の上流を上ったか
久保は川を選んだ
手招きされたそこにはサケの残骸
食べ残した跡を見ればヒグマの仕業だと分かる
ヒグマはおいしい腹の部分しか食べないからだ
数多くの痕跡を残しながら肝心の本命はまだ影さえも見せてはくれない
木の枝をくわえるのは久保が悩んでいる時の癖だ
大体ここ来て…
冷え冷えとした風が体力を奪っていた
寒い寒い寒い
猟からの帰り道
秘湯が疲れを癒やしてくれる
あ〜
至福の時
出ますよ私の場合一人でやってるからホント近いですよそれがなかなかうまくいかないんです
さて明日はどうしてくれようか
久保のように一人きりの猟だとヒグマが取れるのはひと冬でせいぜい3頭
全く取れない年だってある
1頭でもしとめることができればしばらくは暮らしていける
いただきま〜す
野趣あふれる貴重なごちそうはすこぶるおいしい
けれど久保は食べ物にあれこれ言うことはない
クマはクマ…
久方ぶりに長女の深雪さんが遊びに来た
幼い頃から父の手ほどきを受けシカを撃たせればプロ級の腕前だという
この日深雪さんは初めてヒグマ猟に出る
近くにいるから気を付けろと父が指さしたのはヒグマが縄張りを示す爪の跡
(スタッフ)おっかないんですか?勢子ばっかりやらせてな勢子ばっかり勢子ですか?
1947年小樽の生まれ
少年の頃から久保は猟が趣味だった父に狩りのイロハを学んだ
二十歳を迎えたその日成人のお祝いにと父がプレゼントしてくれたのは猟銃だった
以来ハンターとして最高の獲物・ヒグマを求めて知床の山を駆けずり回る
33歳の時妃路美さんと結婚
猟を生業とする久保に黙ってついてきてくれた
ヒグマを追って間もなく50年になる
久保は10年ほど前から自分とヒグマとの半生を書き留めている
自然の中で生きようと決意した己の業を記録として残したい
きっぱりと知床の四季は巡ってくる
大自然と真摯にそして謙虚に向き合わなければ山の神は来る者を拒むだろう
天候を読み風を感じ静かに心を引き締める
俺はあと何年山に入ることができるのだろう
体力の衰えを感じながら久保はいまだにたぎる血を抑えることができない
ヒグマのねぐらを見つけた
太めの木の根元西日の当たる斜面
冬眠するには絶好の場だ
慎重に自ら手を穴に入れ確かめる
けれど…
はぁくそ〜
恐らくここはかつてヒグマが冬眠した穴
中の広さは畳8畳分ほど
ほら…これはらしいけど相当…
ここから先は独りにしてほしい
そう言って久保は山に向かった
久保に頼んでライフルに小型カメラを付けてもらった
山奥深くたった一人きり
知床特有のどんよりした曇り空
ヒグマがいた!
(銃声)
一発で勝負をつけた
ようやく訪れた安堵
(スタッフ)山の中にいるほうが生きている実感があるんですか?そうですねだって山の中に全てありますでしょ何て言うんだろう自分の夢から食うものからやっぱり今これからこんだけ便利になってきてどうのこうのっていうけどもある面では不便さのほうが…人間も動物だってことを考えてったら違う面で豊かなような気はしますけどね
街を彩るものの豊かさはここにはない
けれど目の前には全き自由が広がっている
この男つかめない
2014/11/02(日) 23:00〜23:30
MBS毎日放送
情熱大陸[字]【久保俊治/最強ヒグマ知床で一人命懸け勝負最果ての地壮絶人生】
ヒグマ猟師/久保俊治▽地球上の動物である以上、対等の関係でいたい…北海道の山奥、たった一人でヒグマを追う孤高の猟師に密着!世界唯一の男が追う先・・!
詳細情報
番組内容
北海道・知床半島の標津町に、たった一人でヒグマ猟をする男がいる。67歳のベテラン猟師、久保俊治だ。時には人を襲うほど凶暴なヒグマ猟は、通常7〜8人で行うが「対等の関係でいたいから」と40年以上熊と1対1で向き合い、これまで70頭以上のヒグマを仕留めてきた。番組では狩猟現場に同行取材。危険と隣り合わせの中、孤高の猟師が獲物に遭遇する瞬間をカメラがとらえる…!ヒグマを追い続ける男の壮絶な人生を見つめた
出演者
【プロフィール】
久保俊治
ヒグマ猟師。1947年北海道・小樽市生まれ。
父親の趣味だった狩猟についていくうちに、自分自身も猟に興味を持つようになる。20代のときに猟師として生きる決意をし、ヒグマを求めて知床半島へ移住。1975年、アメリカの狩猟ガイド養成学校「アウトフィッターズ・アンド・ガイズ・スクール」に東洋人として初めて入学。帰国後、北海道・標津町で牧場を経営しながら猟を続けている。
制作
【製作著作】MBS(毎日放送)
【制作協力】テレビマンユニオン
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