(テーマ音楽)草刈さん?そのすてきなバッグどうしたんですか?いいでしょう?これ買ったんですよ。
山ブドウの木の皮で作ったバッグなんです。
この間役者仲間に会った時にある巨匠の映画監督がこの山ブドウのバッグを持っていたっていう話になりましてね。
その監督の重厚感と自然さがこのバッグに相まってとっても格好よかった。
だから僕も欲しくなっちゃって買っちゃった。
ふふん。
…どう?いつもと違って大人の雰囲気。
すごくすてきですよ!え?僕ってかなり大人だけど?三枚目路線やめちゃおうかなそろそろ。
街で草木や竹を編んだバッグを持つ女性を見かけませんか?ファッションの世界でこれをかごバッグといいます。
古くから愛され続けてきたアイテムなんです。
オードリー・ヘプバーンもかごバッグを愛用した一人。
よく毛皮に合わせました。
世界中のセレブたちから支持されてきたのがこちら。
ニューヨーク近郊のナンタケット島で作られているかごバッグです。
小さいのは高さ8.5センチ。
これでおよそ1万ドルするんです。
一人の職人が3か月かけて丹精込めて編む美術品とも言えるバッグです。
かごバッグの人気の秘密は季節を問わずどんなスタイルにも合わせやすいこと。
例えばカジュアルスタイルに。
革のジャケットで大人っぽく決めたいとき。
また着物姿にもしっくりなじみます。
かごバッグにほれ込み他のバッグはほとんど使わないという人もいます。
女性誌などで活躍するスタイリストの椎名直子さん。
15個ほどのかごバッグを持ちその日の気分に合わせ使い分けます。
すごく宝物ですけどどっちかと言うと…棚の上に置いておくというより「ぞんざいな扱いしてても信じ合ってる」みたいな感じ。
今注目されているのが日本製のかごバッグ。
そこには身近にある材料を暮らしに生かしてきた人々の知恵や工夫が隠されているのです。
今日はかごバッグの美の世界にご案内します。
まずは編み目の美しさから。
日本製のかごバッグ専門のお店です。
これらは皆山ブドウの樹皮で編まれたもの。
同じ素材を用いていますがよくご覧ください。
さまざまな編み目があります。
お客さんは編み目を見比べながら自分に合うものを選んでいきます。
花びらが重なり合うような編み目。
花結び編みと呼ばれています。
立体的に編まれた…遠目で見たとき美しいひし形が現れます。
編み方を変えると全く異なる表情が生み出されます。
中でも定番として知られるのがこちら。
編み目が非常にしっかり詰まっていてしっかり編まれているところがやはりベーシックな網代編みの美しさにはとてもひかれますね。
ぎゅっと詰まった力強い美しさ。
人の手によって丹念に編み上げられたものです。
かごバッグ鑑賞最初のツボは…古くからかごバッグが作られてきた…かご職人葛西矗さんです。
使うのは…それを丁寧に加工し隙間なくぎっしりと詰まった網代編みに仕上げることで知られています。
幾何学的な編み目が流れるような美しさを生み出しています。
まあひと目ひと目まっすぐそこに気を集中してやるということ以外ないですよね。
素材選びから編み上げるまでおよそ2〜3か月かけて仕上げていきます。
使うのは山で採れた山ブドウの樹皮。
太さも厚さも均一ではありません。
これを丹念に加工し編みやすく美しいものにするのです。
まず樹皮を一定の幅にカット。
樹皮にはねじれていたり反っていたりさまざまな癖があります。
水でぬらし専用の道具でこすると繊維が均等になり癖が減るといいます。
(樹皮をこする音)さらに皮の厚い部分を手で探り均等な厚みに削っていきます。
手間をかけ皮の幅厚さをできる限りそろえた樹皮。
編みの作業のコツは少し食い込ませて編んでいくこと。
水を含ませ編みやすくした山ブドウの皮。
重ねて編まないと乾いた時隙間ができ美しい編み目にならないのです。
もうひとつのコツはなめしても消えない癖を引っ張って矯正しながら編んでいくこと。
手で触れて確かめながら微妙な力加減で進める作業です。
山のもの木の皮なのでそれを編んで引っ張ってまっすぐにするんですけど…きっちり押さえたのに膨らんだり起き上がったりするわけです。
いつも山ブドウにバカにされないようにしてますけども…。
ぎゅっと詰まった美しい編み目。
それは野性の力との地道な闘いを経て生み出されるものなのです。
青森のかごバッグ。
職人たちだけでなく農家の人たちもその担い手でした。
りんごの収穫が終わる12月から4月までの間かご作りをします。
かつて津軽の人たちは冬の農閑期暮らしに使うかごを作り時にそれを売って生計の足しにもしていました。
こちらは80年前に編まれたきのこを採るための背負いかご。
軽さと通気性を考え隙間をあけた編み方。
物を出し入れしやすいよう口が開きやすく編んでいます。
暮らしの必要から生み出されたさまざまな編み目のかご。
戦後は女性たちがかご作りの担い手となりました。
仕事であると同時に楽しみでもあったかご作り。
美しい編み目には家を守りながらかごを作り続けた女性たちの手仕事のぬくもりが込められています。
このバッグ使い始める前にいろいろと手入れが必要なんですって。
ええまずは…タワシでブラッシング。
余分な汚れを取るそうです。
え〜と「毛羽が出たらライターの火であ…あ…「あぶります」これ燃えないの?おぉこれは大変だな…。
でも手をかけると大事にしたくなるでしょう?なが〜く愛するための心の準備みたいなものですよ。
次は材料に注目します。
かご作家の真木雅子さん。
さまざまな材料を使い表情の異なるバッグを制作してきました。
アケビのつるを使ったバッグです。
絡み合う赤茶色のつるが野趣あふれる風情を醸し出します。
こちらは…枯れたような色合いが渋みのある味わいです。
アケビは御殿場とか信州とか東北とか寒い所のアケビがきれい。
日本中にあるんだけど寒い所のアケビが赤くてとてもきれいです。
そしてツヅラフジは少し青みがかったつるなんです。
これは西の方四国とか九州の方にあるんですけどこの差ぐらいになってきます。
こんな感じにね。
華やかな赤。
渋い青。
素材それぞれの魅力があります。
こちらはクルミの木の皮を巧みに使ったバッグ。
クルミは表と裏を使い分けられる。
横糸は裏なんですね。
で縦糸が表なんです。
非常にきれいな市松が浮かび上がってきますよね。
クルミはとても色が違うので市松を楽しむことができますね。
そしてこちらは山ブドウの木の皮。
あえて節にできる穴を利用しアクセントとしています。
かごバッグにはそれぞれの素材の個性が存分に生かされているのです。
今日二つ目のツボ。
奥羽山脈に抱かれた…かごバッグの材料として人気の高いアケビの産地です。
秋はアケビの収穫時期です。
アケビのつるがあるのはやぶの中。
枝で目などを傷つけないよう重装備で挑みます。
良質なつるがあるのは適度に光のさす低木の雑木林です。
アケビのつるが木に巻きついています。
しかしこのつるは堅くバッグに使えません。
使うのは根元から出ている若いつるです。
春に芽を出し秋まで伸びたもの。
適度な弾力を持ち自由な造形が可能です。
つるの質はその年の気候に左右されます。
冷夏の年は十分に育たずしかも堅く使いにくいものになります。
夏暑かった今年は良いものが採れました。
とにかくまるっきり天気に左右されるっていうのかな。
自然任せですから。
つるは2か月以上乾燥させその後編んでいきます。
しなやかなアケビのつる。
それでも無理に曲げるとひびが入り台なしになります。
つるを傷めない絶妙な力加減と手さばき。
それは半世紀かけて体で覚えたものです。
とにかく材料とキザっぽく言えば材料とお話し会話しながら作るっていうかな。
丁寧にただ丁寧に一生懸命作るだけっていうことしか心がけてないっていうかな。
完成したバッグ。
横から見るとやわらかい丸みを帯びたかわいらしい形をしているのが分かります。
しなやかさを生かしつつもつるに負担をかけない形です。
だから自分が作るのはできれば窮屈じゃない丸みをつけたいなぁと思って形にはそれはこだわってます。
つるを傷めない絶妙な丸みだから長年にわたって使い続けることができます。
命のつるですよね。
自然から恵んでいただいた。
本当に感謝しながら本当に感謝しながらかごを作ってます。
思わず和んでしまう優しい形。
そこには山の恵みを大切に使う職人さんの思いが宿っていました。
はぁ…。
草刈さん?え?さっきの作業終わりましたか?は〜い。
ではガンガン使いましょう!かごバッグはとても丈夫で100年もつともいわれています。
え?そんなにもつの?さらに使い込むとこんないいことがありますよ。
使うほど出てきます。
モデルの桐島かれんさん。
山ブドウのかごバッグを愛用して10年になります。
その魅力を教えてもらいました。
とにかく使い込めば使い込むほどまずつるが軟らかくなってきて革のようにどんどん軟らかくなってくるんですね。
で手脂で今度は艶が出てくる。
あめ色になってくるっていうところがいいので。
で育てる楽しみがあるんですがまだまだ10年ぐらいだと。
これからかな?20〜30年でもう少し輝きが増してくるんじゃないかと思いますけど。
こちらは新品のバッグ。
樹皮の堅い感じが残っています。
桐島さんが10年間使い続けたバッグです。
よく手が触れる取っ手部分は黒くなり深みのある艶を生み出しています。
またバッグの表面もところどころ色があめ色になっているのが分かります。
一方こちらは30年使い続けられたもの。
桐島さんのバッグよりあめ色が濃く黒に近くなっています。
かごバッグは使うほど育ってゆくもの。
その過程を楽しむのです。
今日最後のツボは…さまざまな材料の中でも使うほど艶を増す山ブドウのバッグ。
しかしいい艶を生み出すのは…山ブドウの皮を1日水につけます。
ポイントの1つは水につけることで際立つ色だそうです。
美しい艶を生み出す樹皮はきめが細かく薄い茶色だといいます。
こうした樹皮は適度な日当たりの中で育ちポリフェノールなどの成分をたっぷり含んでいるため歳月とともに酸化し黒くなっていくと考えられます。
そこに手の脂が加わることでワックスをかけたような光沢を生み出します。
1つのかごバッグを23年間愛用している中田正子さんです。
夫からプレゼントされました。
本当に欲しかったものですからやはり巡り合いっていう感じで私の手になって本当にうれしかったです。
プレゼントされた45歳の時からほとんど毎日使いどこに行く時も一緒でした。
夫と旅行した時。
娘さんの結婚式でもこのバッグと一緒でした。
3年前夫を亡くした後も常に持ち歩いています。
うれしい時悲しい時…。
このバッグを傍らに歩んだ23年間の月日が生み出したかけがえのない艶です。
休むときも傍らに置いていることがほとんどですね。
寝るまでそこにあって朝起きた時もそこにあるという感じです。
主人が故人となった今ではそばに置いとくだけで頼りなる思いがございます。
かごバッグは時に人生を共に歩く味わい深いパートナーにもなってくれるのです。
ちょっと出かけてくるね!今日からよろしく。
…で?どこ行きましょうか。
公園?ショッピング?野球観戦?ああ紅葉もいいから公園?いやいやかごを生かすために今晩のおかずを買いに行きましょう。
いつまでも仲よくいようね〜。
今日からよろしく!君は「かご」だからかごを生かさなきゃ。
ね!2014/11/02(日) 23:00〜23:30
NHKEテレ1大阪
美の壺・選「かごバッグ」[字]
身近なテーマを中心に、美術鑑賞を3つのツボでわかりやすく指南する新感覚美術番組。今回は「かごバッグ」。案内役:草刈正雄
詳細情報
番組内容
自然の草木で編まれた「かごバッグ」。かわいいだけではなく、どんなファッションスタイルにも合うとされ、オードリー・ヘプバーンをはじめ、多くの女性から愛されてきた。日本では暮らしの道具から始まり、独自の発展を遂げた。アケビのつる、山ブドウ、クルミ…。天然素材の性質をたくみに利用し「かご」ならではの豊かな表情を生み出す職人技、使うほど増すという色艶など、かごバッグ独自の魅力を解き明かしてゆく。
出演者
【司会】草刈正雄,【語り】礒野佑子
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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