世界自然遺産として知られる鹿児島県屋久島。
屋久杉の森や南限のニホンザルヤクシマザルが有名です。
最近では海の自然も注目されているんですよ。
大勢のダイバーがやって来ます。
ところがダイバーたちを恐怖に陥れる魚がいるというんです。
スノーケルの先端をバリバリに割られて。
もうサメよりも全然怖い魚ですね。
えっ!サメより怖いの?下顎と上顎でがぶりと。
うわっ痛そう!一体どんな魚なんでしょう?正体はこちら!ゴマモンガラ。
ぎょろりとした目に大きな歯。
確かにこわもてです。
うわっ来た!すごい迫力!その上とってもしつこい性格みたい。
名付けて…でも近づけば攻撃してくるため凶暴な理由は謎に包まれています。
そこで今回取材班は無謀にもゴマモンガラに大接近。
体を張って探った凶暴魚の秘密必見です。
(テーマ音楽)私たちが屋久島を訪れたのはゴマモンガラによるダイバーの被害が多くなる7月中旬。
この海水浴場のすぐそばにゴマモンガラは暮らしています。
金属製の手袋と…。
ヘルメット。
完全防備で撮影に臨みます。
これが屋久島の海ですか〜。
薄い皿が重なったように見えるのはサンゴです。
あっ派手な模様の魚を発見。
モンガラカワハギです。
名前のとおりゴマモンガラに近い種類の魚です。
こちらも派手ですねぇ。
屋久島の海には暖かい水を好む色鮮やかな魚たちが多いんです。
ガイドさんが何かを見つけたようです。
いました!ゴマモンガラです。
海底をつっついています。
あこちらに気付いたようです。
襲ってくるんでしょうか?あれ?そんなそぶりはありませんね。
安心したようながっかりしたような。
でもまあ気を取り直して観察してみましょう。
まずは体。
平べったくて頭の部分が随分大きいですね。
このゴマモンガラは体長40センチほどですが大きくなると70センチを超えるそうです。
目は別々に動いています。
カメレオンみたいですね。
大きく開いた口には頑丈そうな歯がびっしり。
この歯で硬い物をバリバリとかみ砕きます。
あ何かを食べています。
ウニです。
鋭いトゲもおかまいなし。
こちらはカニを殻ごと食べています。
かむ力も強いんですね。
おや?体を真横にしました。
石の隙間をのぞき込んで獲物を探しているんです。
でもどうやって石の下の獲物を捕まえるんでしょう?あ!口で石をひっくり返しました。
力持ちですね〜!すぐに裏側に回り込んで石をかじり取っています。
こうして石の隙間に潜む生きものを食べているんです。
今度は海底の砂を舞い上がらせています。
口に含んだ水を一気に吐き出し隠れている生きものを探します。
こちらではヤドカリを見つけたようです。
今の見えました?貝殻に口を付けてヤドカリを吸い出したんです。
吸ったり吐いたりかじったりゴマモンガラの口って器用なんですね。
あれあれ?今度はサンゴの上に横たわっています。
お食事の後の休憩でしょうか?よく見ると体の周りに小さな魚がいます。
ホンソメワケベラというお掃除屋さんです。
ゴマモンガラはこうして体に付いたゴミや寄生虫を取ってもらっているんです。
とっても気持ちよさそう。
凶暴魚…なんて言われるわりにゴマモンガラの暮らしって随分のんびり優雅なんですね。
夕方1匹を追っているともう1匹別のゴマモンガラと合流しました。
更にもう1匹。
昼間は1匹だけで過ごしていたのにどうしたんでしょうか?今度はひときわ大きなゴマモンガラが来ました。
オスです。
ゴマモンガラは1匹のオスの縄張りの中に複数のメスが一緒に暮らしています。
昼間はみんなバラバラに行動していますが夕方になると決まった場所にメンバーが集まるようなんです。
研究者によるとこれは同じ縄張りにすむ仲間であることを確認するための挨拶のようなものだといいます。
こうした挨拶行動は魚ではかなり珍しいことなんだそうです。
ゴマモンガラは意外にも礼儀正しくて穏やかな性格の持ち主…なのかもしれませんね。
はあ?ちょっと待った!あ来ましたねヒゲじい。
当たり前じゃないですか。
とても凶暴な魚だって言ってたのに全然話が違うじゃないですか。
むしろおとなしいくらいですぞ。
いや〜おっしゃるとおりです。
私たちも拍子抜けしちゃいました。
あハハ…そう。
そう素直になられても困りますけどね。
でねヒゲじいこんな場面もあったんですよ。
うん?ななあに?1匹のゴマモンガラが小さな魚に追いかけられています。
うん?あ〜ホントだ!自分よりずっと小さな魚に追いかけられて逃げてますな。
はい。
追い払ったのはミツボシクロスズメダイという体長わずか15センチほどの魚です。
こちらでも…。
うん?お〜お〜お〜!あ逃げてる逃げてる!反撃すらしないんですよ。
へえおとなしい…というよりちょっと弱腰すぎじゃありません?うんそうですよね。
その上午後7時くらいになると更におとなし〜くなっちゃうんです。
見てて下さい。
サンゴの下に入っていくでしょ。
あ〜ホントだ。
こちらでも岩の隙間に入っていきます。
実はゴマモンガラはこうやって夜になると眠っちゃうんです。
ふ〜ん随分落ち着いた生活ですなぁ。
いやぁでもどれほど凶暴か見たかったですなぁ。
はいヒゲじいご安心下さい。
実はこの後ゴマモンガラがひょう変するんです。
期待にそぐわぬ凶暴ぶりをたっぷりご覧に入れますよ。
え!あそうなの?きょうボウっとしていてもある日突然凶暴に…なんて。
期待しておりますぞ!それは撮影を始めて2週間後のことでした。
この日岩のくぼみにいるゴマモンガラを見つけカメラを向けると…。
フラフラ〜っと出てきたゴマモンガラ。
突然カメラマンに体当たり!そして執ように攻撃を続けてきます。
慌てて岩場から離れてもしつこく追いかけてきます。
やれやれやっと攻撃をやめました。
と思ったら今度はこちらを襲撃!よく見るとカメラマンの足ひれを狙っています。
ゴマモンガラは動く物に反応しているようです。
動かないほうがいいことは分かるんですが襲われるとどうしても動いて更に攻撃を受けてしまいます。
そんなゴマモンガラが攻撃をやめました。
そしてもと居た場所に戻っていきます。
一体どうしたんでしょうか?様子を見にカメラマンが少し近づくと…。
再び猛突進!また激しい攻撃です。
そしてカメラマンが離れるとまた戻っていきます。
こうした行動を繰り返しています。
ゴマモンガラの行動を図にするとこんな感じ。
何かを中心に半径15メートルほどのエリアにはダイバーを入れないようにしています。
中心にある何かを守っているようですが近づくと攻撃されるので確認することができません。
おとなしかったゴマモンガラのこの突然のひょう変ぶり。
一体エリアの中心には何があるというのでしょう?第2章ではゴマモンガラが守っていたものが明らかに。
一方で凶暴さはますますヒートアップ。
その裏には厳しい自然を生き抜いていくための知恵が隠されていました。
ここはインドネシアバリ島の海。
ゴマモンガラはこうした熱帯の海に多く生息しています。
1年を通じてゴマモンガラが見られる場所は薄い水色で示した部分です。
その中で屋久島はここ。
ほぼ北限に位置しています。
暖かな黒潮が近くを流れるため高い水温が保たれる屋久島の海。
だからゴマモンガラは1年を通してここで暮らせると考えられています。
黒潮によって支えられる屋久島の海の生きものは他にもいます。
例えばこのヤクシマキツネウオやコウイカの仲間のコブシメ。
どちらも屋久島が越冬と繁殖の北限だと考えられているんです。
陸上にも黒潮が育むものがあります。
マングローブです。
種が黒潮に乗って運ばれてこの地で根づきました。
その近くに小さな白い物が動いています。
片方だけ大きなハサミ。
シオマネキの仲間です。
このカニたちももともとは黒潮に乗ってやって来ました。
更に黒潮は暖かく湿った空気も運んできます。
そして屋久島に大量の雨を降らせます。
その雨が有名な屋久杉を育んでいます。
世界自然遺産に選ばれた貴重な森をはじめ屋久島の自然は黒潮の恵みだったんですね。
屋久島の海にすむゴマモンガラ。
ふだんはのどかで穏やかな暮らしをしていたのに…。
ある日突然凶暴な魚にひょう変!半径15メートルのエリアの中心を守っているようです。
果たしてエリアの中心には何があるのでしょうか?いよいよその核心に迫ります。
攻撃を受けた次の日。
再びあのゴマモンガラのもとに向かいます。
半径15メートルのエリアにさしかかりました。
あ気付かれました。
あれ?今日は襲ってきません。
体調でも悪いんでしょうか?でも何を守っているのかを探るには絶好のチャンス。
行ってみましょう。
この辺りがエリアの中心。
ゴマモンガラはずっと下を向いて何かをしています。
石をくわえて近くに置きました。
また石を運んでいます。
しきりに石をどかしてくぼみを作っています。
このゴマモンガラよく見るとおなかが大きく膨らんでいます。
卵を抱えたメスです。
このメス卵を産むための「産卵床」を作っているようです。
大切に守っていた半径15メートルのエリアの中心にあったものはこれだったんですね。
今回の取材で凶暴になって襲ってきたのは主にメスであることも分かりました。
ちょっと待った!今度は何です?ヒゲじい。
いやいやあの〜メスが産卵床を守っているのは分かりました。
でもなんで今日はおとなしかったんですか?やっぱり体調が悪かったんですかね?いえいえ体調不良じゃないんです。
実は今回の観察で初めて分かったんですがゴマモンガラは凶暴になったりおとなしくなったりを繰り返していたんです。
え〜あそうなの?はい。
それでね凶暴になるスイッチも突き止めたんですよ。
へえそりゃすごい!で何だったんでしょう?それはズバリ海水の温度でした。
ゴマモンガラは25度だとおとなしく…。
ふむふむふむ。
28度の時には急に凶暴になったんですよ。
へえ〜あそうなんだ。
でもなんで海水の温度が高いと凶暴になるんでしょうね?はい。
研究者によるとゴマモンガラは水温が低いとおなかに卵を持っていても産卵しないそうなんです。
ほうほうほう。
そして産卵は生んだ後の発育がいい28度以上になると行われます。
この時凶暴になるのは間もなく迎える産卵に備え敵を近づけないようにしているからなんです。
ほ〜なるほど!我が子を守るために凶暴になるというわけですな。
母の愛をマザマザ〜と見せつけられました。
なんちゃってね。
この日は朝から水温が28度を超えていました。
ずっと観察していたメスの産卵床を訪ねてみると…。
卵のかたまり。
今朝産んだばかりのようです。
もっと詳しく撮影しようと更に近づいた時。
来ました!今までに増して強烈な攻撃!見て下さいこの大きく開けた口。
確実に攻撃力はアップしています。
一方守るエリアはぐんと狭くなっています。
半径2メートルほどでしょうか。
卵から離れて広い範囲を守ることができない代わりに近づいてきたものには徹底攻撃する構えです。
カメラマンは少しずつ離れてお母さんを刺激しないギリギリの距離で撮影することにしました。
じ〜っと動かず観察していると…。
お母さんは卵の世話に集中し始めました。
口と胸ビレを使って卵に新鮮な海水を送り続けています。
そうしないと十分な酸素が届かず卵は死んでしまうそうです。
午前10時。
オスが来ました。
お母さんの様子を見に来たんでしょうか。
でもすぐにどこかに行ってしまいます。
オスは縄張りのパトロールに大忙し。
他のメスたちの産卵が近いかどうか様子を見に行っているのかもしれません。
卵の世話はメスに任せっぱなしです。
ゴマモンガラの場合卵の世話をするのはお母さんだけなんです。
午後2時。
卵の世話を続けるお母さんの向こうに何かがいました。
トラギスです。
大切な卵を狙っているようです。
近寄るトラギス。
追い払うお母さん。
でもトラギスはなかなか諦めません。
攻防は延々と続きました。
時刻は午後7時。
産卵から13時間が過ぎました。
あれ?お母さん何だか元気がないようです。
無理もありません。
もう半日以上何も食べずにずっと1匹だけで卵の世話をし続けているんです。
ふだんだったらもう寝ている時間。
眠いのを我慢して世話を続けているんでしょうか。
あれ?お母さんの動きが止まりました。
そして卵から離れていきます。
卵は無防備な状態。
お母さんは?あこんな所でぐったりしています。
眠ってしまっているようです。
もう体が言うことを聞かないのかもしれません。
でも卵は大丈夫なんでしょうか。
あ卵のかたまりが崩れていきます。
そして辺りには小さな赤ちゃんたち。
わずか半日でふ化を迎えていたんです。
一度に生まれる兄弟たちは10万匹ほど。
次々に卵から飛び出していきます。
赤ちゃんたちがふ化する瞬間を待ってお母さんは眠りについていたんです。
できるだけ速く成長できるように水温の高い日を選んで産卵し半日かけて世話をしたお母さん。
本当にお疲れさまでした。
わずか3ミリほどの赤ちゃんたち。
潮の流れが大海原へと運んでくれます。
ある日小さなゴマモンガラを見つけました。
大きさ4センチほどの子どもです。
小枝に付いた生きものを食べているんでしょうか。
まだ小さな子どもは物陰に隠れながら成長していきます。
そして生き残ったわずかなものだけが次の命をつないでいくのです。
屋久島の海でダイバーに恐れられる凶暴魚ゴマモンガラ。
しかしその陰には大海原へと我が子を旅立たせるための母の深い愛が秘められていたのです。
(官兵衛)この黒田官兵衛2014/11/02(日) 19:30〜20:00
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「凶暴魚ゴマモンガラ!体を張って大接近」[字]
世界自然遺産・屋久島の海に暮らす70cmほどの魚、ゴマモンガラ。夏、突然凶暴化しダイバーを襲撃!一体どうして?「サメよりも怖い」と恐れられる凶暴魚の素顔に迫る!
詳細情報
番組内容
世界自然遺産・屋久島の海に、「サメより怖い!」とダイバーたちから恐れられる魚がいる。カワハギの仲間、ゴマモンガラだ。夏の一時期、突然凶暴化し、体当たりやかみつき攻撃でダイバーを襲う。ところが、その時期以外はおとなしく、人を見ると逃げていく。普段はシャイ過ぎて、凶暴時は危険すぎて、観察は困難。「なぜ凶暴化するのか?」はまったくの謎だった。そこで取材班は突撃取材を敢行。凶暴魚の秘密に迫る!歌:平原綾香
出演者
【語り】首藤奈知子,龍田直樹,豊嶋真千子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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