地球ドラマチック「スーパーキャットを作れ!〜ネコ科動物 驚異の能力〜」 2014.11.24

素早い身のこなし巧みな忍び足。
ネコ科動物の美しさは私たちを魅了します。
俊敏さと力強さ。
特別な能力を磨き上げ環境に見事に適応してきました。
もしあらゆるネコ科動物の長所を併せ持つ動物を作れるとしたら?それは究極のハンターに違いありません。
史上最強のスーパーキャットの可能性に迫ります。
世界最大級のネコ科動物ベンガルトラ。
体重は300キロ近くにもなるどう猛なハンターです。
アメリカ大陸に生息するコドコドは体重わずか2キロほどです。
ネコ科動物は37種類。
大きさや見た目はさまざまです。
しかし鋭い爪や犬歯。
しなやかな体型といった要素は全てに共通しています。
それぞれの特徴や能力は住んでいる環境の違いによって生じました。
どのネコ科動物にも得意な事と苦手な事があります。
あらゆるネコ科動物から特に優れた能力を選び出しコンピューター・グラフィックスで合成したらどのような動物が出来上がるのでしょうか?ネコ科動物について異なる分野の知識を持った3人の専門家がバーチャル上でスーパーキャットを作り出します。
発案者のバガヴァン・アントルはアメリカサウスカロライナ州の研究施設で野生のネコ科動物の保護と研究に携わっています。
スミソニアン国立動物園のクレイグ・サフォーと生体力学の専門家グレゴリー・エリクソンも加わります。
まずはそれぞれのネコ科動物が最も得意とする能力を洗い出します。
ヒョウの木登りやチーターの走りライオンの強さなどです。
エンジニアの視点でスーパーキャットを作ります。
優れた機能は形から生まれます。
解明すべき疑問はたくさんあります。
ネコ科動物の獲物を捕まえる能力や木登りやジャンプの技はどのような体の仕組みによるものなのでしょうか?究極の百獣の王スーパーキャットには何が必要なのでしょうか?スーパーキャットには驚異的な足の速さが必要です。
どんな獲物でも追いかけてしとめられる能力です。
ネコ科動物で最も俊足といえば…。
チーターです。
動物園が行った実験によればチーターの走りの最高記録は時速98キロです。
野生のチーターは時速100キロ以上のスピードを出し100メートルを3〜4秒で走ると言われます。
野生の世界でチーターが勝負の決め手とするのは加速する力です。
チーターはスタートしてから2秒余りの間に時速80キロまで加速する事ができます。
動物が気配を察知した時にはチーターはすぐそばに迫っています。
もはや勝敗は明らかです。
チーターはどのような体の作りをしているのでしょうか。
見て。
実に無駄のない体型です。
頭は小さく軽量で足はスラリと長い。
足の裏は陸上選手のスパイクのようです。
足先はがっちりと硬く爪は常に出た状態で地面を捉え体を支えています。
チーターの肺と心臓は体の大きさの割に非常に大きく体中に多くの酸素を送り出す事ができます。
チーターは更に鼻の穴が大きい事も特徴です。
多くの酸素を取り込み脳を冷やす事ができます。
しかしチーターの走りの秘密は何よりも背骨の柔軟さです。
チーターは背骨を柔らかくしならせながら走ります。
後ろ足と腰にある強力なバネのような筋肉が背骨を動かしています。
動物がスピードを上げる方法は2つ。
足を速く動かすか歩幅を広げるかです。
体の大きなキリンと小さなネズミが走る様子を比べてみましょう。
ネズミは目にも留まらない速さで足を動かしながら走ります。
一方キリンは歩幅が広く動きはスローモーションのようです。
全速力で走るチーターは歩幅が7.5メートルあり1秒間に4回も足を運びます。
チーターの走りのすごいところは歩幅の広さと足の回転の速さの両方を併せ持っている事です。
トラを連れてきて。
体長がチーターの2倍もあるトラはどのような走りをするのでしょうか?笛と同時にトラを放ちます。
もうすぐです。
(笛)来ました。
迫力だね。
いい走りだ。
体が大きくてもトラの歩幅はチーターにはかないません。
歩幅はどのくらいかな?後ろ足が跳び上がってから着地するまでの距離だね。
一番大きい所でおよそ4.5メートルです。
4.5か。
他の実験結果も調べてみましたがトラが走る時の歩幅は最大4.5メートルと見て間違いなさそうです。
トラの歩幅はチーターより3メートルも短い事が判明しました。
トラはチーターほど背骨がしなやかではないからです。
トラのたくましい体には硬くて頑丈な背骨が必要です。
背骨が頑丈でなければ大型の動物をしとめる際の衝撃に耐えられません。
トラは走りよりも力で勝負。
走るスピードではチーターがネコ科動物の中で一番のようです。
スーパーキャットにはチーターのように柔軟な背骨が必要です。
しかしチーターには俊足ゆえの弱点があります。
速いスピードで安定して走るためにチーターの足の骨は膝から足首までの2本の骨が繊維でしっかりと結ばれています。
2本の骨がくっついているためチーターは足首を回す事ができません。
そのため木登りが下手なんです。
チーターの足の構造は走りを優先するあまり足首を回したり木をつかんだりする事には向きません。
そこが難点です。
木登りの技術はチーター以外のネコ科動物に学ぶ必要がありそうです。
ヒョウは木登りが上手な動物です。
ヒョウは肩の筋肉と前足の力が並はずれて強く自分の体の2倍ある獲物を木の上に運びます。
他の肉食動物に奪われないようにするためです。
しかしよほど高く引き上げないとライオンに横取りされる事があります。
ライオンもまた木登りが巧みだからです。
(ほえ声)アメリカ大陸に生息するピューマも木に登るのが得意な動物です。
しかしピューマは木に登るのは得意でも下りるのは苦手です。
木登りの王者は実はもっと小さな動物です。
ネコ科動物の多くは巧みに木を登りますがその中でもずば抜けた技を持つと言われるのが中南米の森に住むマーゲイです。
木登りの技ではマーゲイが一番でしょうね。
中南米の森に住むマーゲイ。
体長が60センチほどのあまり知られていない動物です。
マーゲイの並外れた木登りの能力は足首の柔軟さによるものです。
マーゲイの足首は柔らかく左右に180度動きます。
そのおかげで枝をがっちりとつかめるのです。
木登りが得意なスーパーキャットを作るならマーゲイのような足首が必要です。
これで木登りも完璧です。
ではジャンプする能力はどうでしょうか?ネコ科動物の中には体長の何倍も高くジャンプできるものがいます。
優れたジャンプ力のネコ科動物は長い足強じんな足の筋肉短い胴体を持っています。
地面を蹴って体を引き上げ4本の足を空中に浮かせます。
トラは見事にジャンプしているように見えます。
しかし胴体を長く伸ばすだけで後ろ足は地面から1.5メートルしか離れていません。
体の大きさから考えるとそれほど高くはありません。
体が重いトラはジャンプが得意ではありません。
ジャンプの達人はより小柄な動物です。
ピューマの体重はトラの1/3。
尾を除いた体長は1メートル程度ですが高さ4.5メートルも垂直に跳び上がる事ができます。
しかし更にうわてがいます。
究極のジャンプを見せるのはアフリカの草原に住むカラカルです。
体長は80センチほど。
鳥を襲う際に驚異的な跳躍力を発揮します。
鳥が飛び去ろうとする瞬間跳び上がり空中で捕まえるのです。
ジャンプの王者カラカルです。
まだ生後6か月程度のメスです。
子供でもジャンプは優れていますか?ええ驚異的です。
空中の獲物を捕まえますよ。
ジャンプに適した体つきをしています。
足がスラリと長く筋肉が発達し小柄な割にがっちりした体です。
ジャンプではカラカルこそがスーパーキャットですね。
スーパーキャットの足はカラカルをモデルにデザインする事になりました。
足が速くジャンプ力に優れ巧みに木に登れたとしてもまだスーパーキャットとは言えません。
泳ぎがうまい事も必要な条件です。
ネコ科動物の多くは水にぬれるのが嫌いです。
しかし例外もあります。
水に親しみ上手に泳げるようになったネコ科動物もいます。
中南米の森や沼地に住むジャガーは泳ぎが得意な事で知られます。
そしてトラも水を好みます。
トラは水が大好きです。
水辺でリラックスしたり体を冷ましたりします。
インドの湿地帯に住むトラは獲物を水に引きずり込んでしとめる事があります。
研究施設で飼われているトラをプールで泳がせてみました。
これはめったに見られない眺めだ。
そうですね。
実に面白い。
前足を見て。
本当に泳ぎが上手ですね。
前足の指を広げてかいのように使っています。
犬かきと同じで後ろ足はあまり使っていません。
ええ後ろ足は広げているだけで前足に力を入れてしっかり水をかいています。
見て指と指の間に水かきのようなものがある。
だからこれほど上手に泳げるんだ。
ええ。
すばらしい。
泳ぎがうまい究極のネコ科動物はスナドリネコです。
体長は70センチほど。
東南アジアの湿地帯に生息し魚を取って食べます。
スナドリネコの水かきの付いた足は泳ぐばかりでなく魚をすくって捕まえるのにも有利です。
走る事だけに徹するならチーターのようにがっちりした足がいいでしょう。
でもスーパーキャットは泳ぐための水かきも備えるべきです。
水中でも陸上でも敏しょうなスーパーキャットのイメージができつつあります。
しかしまだ全ての能力はそろっていません。
次は獲物にとどめを刺す能力です。
野生のネコ科動物は肉以外の物をほとんど食べません。
狙った獲物にとどめを刺す能力がなければ生きていく事ができないのです。
ネコ科動物にとって獲物をしとめるのに欠かせないのが犬歯です。
犬歯の奥には裂肉歯というナイフのような歯が並んでいます。
ライオンやトラが頭を横に傾けながら食べる様子を見た事があるでしょう。
あれは裂肉歯で肉をかみ切っているのです。
肉食を極めたネコ科動物は肉を切り裂く歯だけが特別に発達しました。
これらはネコ科動物の骨の標本です。
ライオントラヒョウやボブキャットもあります。
皆歯並びの特徴は似ています。
これはジャガーですが奥にある臼歯が退化して痕跡だけになっています。
植物を食べる動物のように食べ物をすり潰す事はできません。
上下のあごを合わせるととがった歯がかみ合わさり食べ物を切る役目を果たす事が分かります。
歯は左右にスライドできないので食べ物をすり潰すのには向きません。
攻撃力の要である犬歯はどのような形が最も有利なのでしょうか?最も印象的な犬歯があるネコ科動物は100万年前のアメリカ大陸に生息していました。
スミロドンです。
スミロドンの犬歯はあらゆる肉食動物の中でもとりわけ印象的で目立ちます。
しかし実際はかなりもろいものでした。
なぜなら歯に厚みがなく平たいからです。
縦方向の衝撃には強くても横から力がかかると折れる可能性がありました。
今のライオンやトラよりとどめを刺す力はずっと弱かったと思います。
1万年前に絶滅したスミロドンに比べ今のネコ科動物の犬歯は頑丈です。
ライオンやトラの犬歯は円すい形をしています。
これは獲物の首にかみついた時どの方向から力がかかっても持ちこたえられるという利点があります。
スーパーキャットに必要なのはこのような犬歯です。
トラの犬歯は非常に長くとどめを刺す力に優れています。
ライオンやジャガーの犬歯は長いくぎのような形ですがトラの犬歯は研ぎ澄まされたナイフのようです。
(ほえ声)しかし最も強力な犬歯のネコ科動物はライオンでもトラでもありません。
体がずっと小さく謎に包まれた動物ウンピョウです。
中国や東南アジアの森に住むウンピョウは体重がトラのおよそ。
しかし犬歯の長さがトラと同じくらいあります。
ウンピョウは頑丈な犬歯を巧みに使う恐るべきハンターです。
ネコ科動物は通常獲物の喉にかみつきますがウンピョウは頭を狙う事があります。
長い犬歯を獲物の頭に突き刺すのです。
スーパーキャットが備えるのはウンピョウのような鋭い犬歯です。
しかしただかみついただけでは大型の獲物を倒す事はできません。
とどめを刺すには強力なあごも必要です。
ライオンのあごの力は骨の回りにある太く大きな筋肉によるものです。
獲物にかみつく際この筋肉があごの骨を引っ張って口を閉じさせます。
頭の骨を見れば動物のかむ力はおおよそ推測できます。
小さなボブキャットが犬歯でかむ力はおよそ11キロです。
体長およそ80センチ。
ウサギなどの小動物をしとめます。
そしてアメリカ大陸で最も大型のネコ科動物ジャガーの場合犬歯の先端にかかる力は110キロほどです。
ジャガーは驚異的なあごの力で小型のワニの頭蓋骨に歯を突き刺します。
更に大型のネコ科動物ライオンやトラになると犬歯でかむ力は180キロもあります。
大型の獲物もしとめられる力です。
しかし強いあごを得る代わりにネコ科動物はあるものを犠牲にしました。
脳の大きさです。
一つ面白い事が分かります。
小さなボブキャットは体の割に脳が大きめですが大型になるにつれて脳が相対的に縮小しています。
荒々しい力と引き換えに知能を犠牲にしてきたかのようです。
例外はトラです。
かむ力はライオンとほぼ同じですが脳の大きさはライオンを平均で16%も上回ります。
トラの方がライオンより知能が上だとは意外かもしれません。
群れで生活する動物の方が単独で生きる動物より利口だと思われがちですから。
私の経験から言うとトラはライオンよりも知能が高いと思います。
問題を解決する力や集中力が勝っています。
強いあごと知能の両方を得るためにはスーパーキャットの頭の骨格はトラをヒントにするのが良さそうです。
多くのネコ科動物は暗闇の中で獲物を捕らえる能力を磨いてきました。
闇に紛れて行動すれば相手に悟られにくく狩りの成功率も高くなります。
多くの捕食動物と同様ネコ科動物は両方の目で奥行きや距離感を捉える事ができます。
これは獲物を襲う際に欠かせない能力です。
更に夜行性のネコ科動物は暗闇での視力が人間の6倍もあると言われています。
狙われる動物にとって夜は恐ろしい時間です。
ヨーロッパオオヤマネコはネコ科動物の中でも暗闇での視力が最も優れていると言われます。
オオヤマネコの目に光を当てると驚くほどきれいに反射します。
オオヤマネコの目はたくさんの光を集められる構造をしています。
目から取り込まれた光は眼球内を通り光を反射する層に当たって跳ね返ります。
オオヤマネコの目が輝いて見えるのは反射して戻る光が多いためです。
ヨーロッパオオヤマネコの目は瞳孔がとても大きく眼球の表面のほとんどを占めるほどです。
大きな瞳孔から光を最大限に取り込んでいるのです。
レンズの役割を果たす角膜と水晶体は眼球の前の方にあります。
瞳孔が大きいオオヤマネコは水晶体も大きく厚みがあります。
そのため眼球がやや前方に突き出ています。
暗闇の中で狩りをするには理想的な目だと思います。
日中オオヤマネコの瞳孔は点のように収縮し取り込む光の量を制限しています。
ネコ科動物は赤い色を感知できないため全てが青みがかって見えますが狩りをするのに支障はありません。
オオヤマネコは70メートル以上先にいるネズミを見つける事ができます。
暗闇でも難なく狩りをするオオヤマネコの視力こそスーパーキャットにふさわしいと言えるでしょう。
しかしまだ足りないものがあります。
獲物の音を聞き分ける聴力です。
ネコ科動物の耳には30以上の筋肉があります。
人間は6つしかありません。
人間はせいぜい20キロヘルツの周波数までしか聞こえませんがネコ科動物は100キロヘルツまで音を聞き取る事ができます。
人間よりも複雑な音の世界に生きているのです。
聴力に優れたネコ科の代表選手はサーバルです。
サーバルはアフリカに生息する体長70センチほどのネコ科動物。
大きな円すい形の耳が特徴的です。
まるでレーダーのような耳です。
左右別々に自在に動かす事ができます。
かすかな音を聞き分け小動物をしとめます。
これこそスーパーキャットにふさわしい耳です。
サーバルの耳は確かにすばらしいが見た目はカラカルの方が魅力的ですよ。
アフリカや中東南アジアにいるカラカルは耳の先端に長い特徴的な毛があります。
スーパーキャットには大きくて自在に動く耳を与えましょう。
これで体の主な構造が決まりました。
狩りにたけたネコ科動物は忍び足で獲物のそばに近づき奇襲攻撃を仕掛けます。
狩りには相手に見つかりにくい特別な外見が必要です。
周囲に溶け込んで見える毛の色や模様です。
地面がむき出しで樹木が少ない環境では斑点やしま模様は目立ちます。
ライオンやカラカルのように毛色が一色である方が有利でしょう。
一方ジャングルの中では柄の多い方が目立ちません。
ただしチーターは日中草原で狩りをするにもかかわらずなぜか鮮やかな模様があります。
スーパーキャットにふさわしい全身の柄は斑点でしょうか?しま模様でしょうか?もう一つ特別な選択肢があります。
それは暗闇での狩りに理想的な全身黒の毛並みです。
厳密にはクロヒョウという動物は存在しません。
たまたま黒い毛を持って生まれたヒョウやジャガーやピューマがいるのです。
これはオスの黒いヒョウです。
一見黒一色の毛で覆われているように見えますがよく見るとまだら模様がある事が分かります。
ヒョウ特有の斑点は残っているのです。
毛の色が黒くなるのは黒化と呼ばれる遺伝現象です。
これまで15種類のネコ科動物に黒化の例が確認されています。
ある研究によれば黒化をもたらす遺伝子はウイルス感染に対する抵抗力を増す傾向があります。
熱帯の森で生きるには黒い毛の動物が有利かもしれません。
暗闇を制するためにもスーパーキャットは黒い色にしましょう。
体の色は黒。
ではたてがみは必要でしょうか?あった方がいいに決まっています。
しかしたてがみにはどんな役割や機能があるのでしょうか。
たてがみは相手を威嚇し身を守るのにも役立ちます。
ライオンのオスはネコ科動物で唯一たてがみがあります。
その理由にはさまざまな説があります。
生死に関わるケガを負わないよう首の回りを保護しているのだとも言われます。
オスのライオンはしばしば非常に激しく争います。
たてがみには首を狙われにくくする効果があるのでしょう。
たてがみがメスをひきつけるのに役立つという説もあります。
ある研究によれば色の濃い長いたてがみのあるオスはそうでないオスよりもメスをひきつけるそうです。
また立派なたてがみのオスほど男性ホルモンの一種テストステロンが多く群れを守る力が強いとも言われています。
しかし長いたてがみは体温を上昇させる要因になります。
体に負担をかけてでも周囲に誇示するという意味ではヘラジカの角やクジャクの羽と共通します。
長く濃い色のたてがみはオスのライオンにとって強さの象徴と言えるでしょう。
最強のスーパーキャットには長くて色の濃い立派なたてがみがいいでしょう。
スーパーキャットは全身が黒い毛並みに覆われ頭には立派なたてがみがあります。
残る要素は鳴き声です。
(ほえ声)広大なサバンナに住むライオン。
オスのほえる声は何キロも先にいる仲間に届きます。
縄張りを守り群れで暮らすライオンにとって鳴き声は重要なコミュニケーションの手段です。
スーパーキャットも群れをなして生きるとすればライオンを圧倒できる声が必要です。
(ほえ声)一般に小型のネコ科動物は喉を鳴らし大型の動物はほえます。
しかし聞いただけではどの動物か分からない声もあります。
(鳴き声)何だろう?怒ってますね。
(鳴き声)分かりません。
(鳴き声)分からないが野外でこいつと遭遇したくないですね。
(鳴き声)分かった…トラだ。
いろんな変わった声があるんですね。
全てのネコ科動物の中で最も迫力のある大声を出すのはライオンとトラです。
(ほえ声)ライオンやトラは桁違いに大きな音量でほえる事ができます。
何キロも先までとどろく声です。
(ほえ声)実験で鳴き声を測定したところ114デシベルを記録しました。
30メートル頭上を飛ぶジェット機のエンジンとほぼ同じ音量です。
大音量の声の秘密は喉の奥にある声帯の構造にあります。
トラの喉の中を見てみましょう。
ネコ科動物には珍しいやや角ばった形の声帯です。
声帯はとても柔軟で少しの空気でもよく響く低周波の声を出す事ができます。
声を出すのに空気をあまり必要としないので割れんばかりの大きな鳴き声を長く出し続ける事ができるのです。
(ほえ声)スーパーキャットはトラのようにほえる事にしませんか?賛成です。
見る者を圧倒するスーパーキャット。
それは完全に私たちの想像の産物です。
しかし実は今自然界には存在しなかった巨大なネコ科動物が誕生しています。
動物の世界ではときに予期せぬ現象が起こります。
シマウマとウマの間にゾースが生まれます。
そしてライオンとトラを交配させるとライガーが生まれます。
ライオンとトラはおよそ700万年前に進化の過程で分かれましたが遺伝子的には今なお類似性を保っています。
野生の世界でライオンとトラが出会う事はまずありません。
しかし人間の管理のもとでなら交配させる事が可能です。
これはライガーのゼウスです。
ゼウスの父親はライオンで母親はトラです。
体は巨大で体重がおよそ400キロ体長は3メートル以上もあります。
なぜゼウスは親よりはるかに巨大なのでしょうか?通常の動物は両親から体の特徴を受け継ぎますがライオンとトラの間に生まれたゼウスはそうではありませんでした。
ライオンは父親の遺伝子が体の成長を促し母親の遺伝子が過剰な成長を抑制します。
その結果子供は巨大化しません。
しかし両親が同じ動物でないとバランスが崩れます。
ライガーのゼウスは母親から体の成長を抑制する因子を与えられず過剰に成長したのです。
こちらにいるのは大人のオスのベンガルトラ。
体重は230キロあります。
しかしどうです?ライガーの隣に並ぶと大人のトラでさえ小さく見えますね。
ライガーの頭のサイズはベンガルトラのおよそ2倍あります。
太くて大きな骨格とたくましいアゴの筋肉実に巨大です。
よ〜しいい子だ。
こちらがトラ。
隣がライオン。
そしてライガーです。
トラとライオンの犬歯の力はおよそ180キロです。
ライガーはあごの筋肉の大きさから考えて犬歯でかむ力が450キロ以上あると思われます。
その意味では間違いなく最強のスーパーキャットです。
ライガーこそが現実の世界でスーパーキャットに最も近い存在なのでしょうか?しかしライガーには体が巨大であるがゆえの限界があります。
この子に「獲物を捕ってこい」と言っても無理です。
体が重くて走れないし性格ものんびりしすぎです。
体が大きすぎると効率的に走れません。
心臓に負担がかかり心停止する危険性もあります。
体重30キロのチーターは数百メートルを全力疾走します。
しかしすぐに体温が40度まで上がり体を冷やす必要があります。
より大きなライオンは100メートルを走るのが精いっぱいです。
体重が400キロもあるライガーは50メートルも走ったら倒れてしまうでしょう。
ライガーは体が重すぎてスーパーキャットの理想形にはほど遠いようです。
完璧なスーパーキャットを目指すなら大きすぎてもいけないし小さすぎてもいけません。
サイズでいえばピューマが理想的です。
野生のピューマはたくましく狩りの能力に優れジャンプ力も抜群。
山道も自在に走ります。
しかしピューマは走りにおいてはチーターにはかないません。
強さではトラにかないません。
木登りではマーゲイの足元にも及びません。
なぜ全てに秀でたスーパーキャットがこれまで現れなかったのでしょうか?物理的な問題です。
チーターの背骨はトラのように大きな頭を支えられません。
速さと強さは両立しないのです。
ネコ科動物は生き残るために能力を磨いてきましたが全てに秀でる事は不可能です。
何かを得るには何かを犠牲にします。
環境への適応とはそういうものです。
架空の産物スーパーキャットだけは能力の限界を知りません。
最後の設定はどこでどのように生きていくかです。
ライオンのような群れでの生活を想定すると食料の豊富な縄張りが必要です。
スーパーキャットはサバンナでライオンと獲物を取り合う関係になるのでしょうか?ジャングルはトラのように単独で行動するネコ科動物だけが生息し群れには適しません。
一番の問題は人口の爆発によって地球上でネコ科動物が生息できる場所がどんどん減っている事です。
アフリカに生息するネコ科動物は9種類。
そのうちの6種が絶滅の危機にあります。
アジアやアメリカ大陸でもネコ科動物は追い詰められています。
激減する動物と同じ運命をたどらないようにスーパーキャットはもう一つ新たな能力を求められます。
それは人間が住んでいる場所に適応する能力です。
人口爆発の地球で生きるためにはスーパーキャットは都市の環境に適応する必要があります。
大型のネコ科動物の中で実際に人間が住む場所に接近しているのはピューマです。
北アメリカでは町の郊外にしばしばピューマが現れるようになりました。
アメリカ大陸に住むピューマは一時は絶滅が心配されるほど数が減少していました。
しかし近年ピューマの個体数はアメリカの西部では安定していると言われています。
ピューマが山から下りてきたのは都市郊外に増えるシカなどを狙うためです。
ピューマは人間の縄張りの近くで生きる術を磨いている最中なのかもしれません。
しかしネコ科の中には更に人間社会に深く入り込んでいるものがいます。
「家ネコ」です。
与えられた環境に適応し人間に飼われていてもいなくても都会で生きる術を十分に身につけています。
スーパーキャットは都会で生き抜くために家ネコから多くを学ぶべきかもしれません。
高い能力があるスーパーキャットは都会的な環境にも適応し縄張りを築いて群れで生活するでしょう。
しかし必要な食料をどのようにして得るのでしょうか?町の中にうようよいる動物といえば私たち人間ではないでしょうか?もしあらゆるネコ科動物の能力を結集できたなら最強のハンターが出来上がる事は間違いありません。
跳躍力俊敏さ知力を備えた最強の動物。
見てみたいですね。
実在したら向かうところ敵なしです。
スーパーキャットは私たちの想像の動物でしかありません。
もし実在したとしたら暗い夜道で決して出くわしたくない相手となるでしょう。
2014/11/24(月) 00:00〜00:45
NHKEテレ1大阪
地球ドラマチック「スーパーキャットを作れ!〜ネコ科動物 驚異の能力〜」[二][字][再]

スピード、パワー、優雅な身のこなし…多くの人を魅了するネコ科動物。様々なネコ科動物の長所を合わせ持つ最高のネコがいたとしたら?「スーパーキャット」の姿とは!?

詳細情報
番組内容
ライオンやトラから南米に生息するコドコドなどあまり知られていないものまでネコ科の動物は35種類以上。それぞれにスピードやジャンプ力、泳ぎなど得意とする能力がある。スピードではチーター、木登りではマーゲイなど様々なネコ科動物を比較しながら、最も優れた能力のある動物を特定。身体的な特徴を分析し、架空の動物「スーパーキャット」をバーチャルで作る。ネコの優れた能力の秘密が明らかに!(2012年アメリカ)
出演者
【語り】渡辺徹

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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英語
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