今東京国立博物館に国宝が大集合しています。
過去2回で120万人。
記録的な観客を動員した「日本国宝展」が14年ぶりに開催されているのです。
縄文時代の土偶に始まり…。
本物さながらの奈良時代の五重塔。
ぜいを尽くした平安貴族のお経。
そして今にも動きだしそうな鎌倉の仏像など時空を超えて輝く極上の美。
今回その会場を案内してくれるのが日本美術ライターの橋本麻里さん。
平安時代の貴族の気持ちに私たちがまさになってしまうのがこの作品を見る時の楽しさなんですよね。
雑誌や書籍で日本美術を分かりやすく解説。
国宝に秘められた物語に触れると美術の世界がどんどん面白くなると言います。
今日は肩の力を抜いて国宝の楽園へ!「日曜美術館」です。
さあ今回は「日本国宝展」の会場から橋本麻里さんと一緒にお伝えします。
(一同)よろしくお願いします。
日本の国宝が会する「日本国宝展」は14年ぶりで久しぶりなんですよね。
ほんとに久しぶりですね。
もうこの入り口まで重厚な空気が降りてきているような…。
期待が高まる入り口ですよね。
橋本さんにとって国宝に惹かれるというか注目する理由は?これから日本美術を楽しもうと思ってる方にももう既に日本美術が大好きでずっと見ている方にも楽しめる。
つまりそれぞれの時代にそれぞれのジャンルで一番上澄みのいいところだけがギュッと集まってるのが国宝なので誰が見てもそのよさが伝わりやすいしかつその奥行きが見れば見るほど分かってくる。
そこがまた面白いところじゃないかと思います。
今回は国宝入門を橋本さんに教えて頂くそんな回にもなりそうですよね。
そうですね。
僕も日本美術ファンの一人として今日は日本の美術の上澄みの部分ちょっとちゃんともう一度学び直したいなとも思ってます。
待ちきれません。
行きましょうか。
よろしくお願いします。
今回もちろん国宝も存分に楽しみたいと思うんですがせっかく展覧会を楽しむ達人の橋本さんと一緒ですので今回の「日本国宝展」の楽しみ方橋本さん流教えて頂けますか?もちろん展覧会ですから学芸員の方がきちんと構成はされてるんですけれどもその展示の中から自分なりのテーマを見つけ出すとか作ってしまうとかそういう見方は面白いのかなと思っています。
ですから今回最初にご紹介したいテーマの一つが「ハイテク」なんですけれども。
「ハイテク」ですか!はい。
国宝ですけどハイテク。
どうでしょう?行ってみましょうか。
その理由はどこに…。
何だろう?この面白い大きさ!いやでも大きい!大きいですよね。
細かい部分まで造られてますよ。
高さ5.5メートル。
本物の五重塔のの大きさです。
今から1,300年前奈良時代に造られました。
これは…建物になるんですね。
部屋の中にあるんですけど。
これよく見てるとほんとに屋根瓦の見立ててる部分のあの円い突起が先だけクッと曲がってたりとかすごいですよね。
細かいですよ仕事。
屋根の先の飾りには繊細な金工の技。
塔のてっぺんにある飾りは火事に遭わないようにと水しぶきを表しています。
圧巻は屋根を支える複雑な木組み。
本物の五重塔と見まがうほどの完成度です。
その美しさに目を奪われますが見逃してしまいそうなところにハイテクの極みがあるといいます。
見て頂いてる外側だけではなくてこの内側の構造ですね。
構造も全て本物と同じように造られてるんですね。
だから…見て下さいこの中に心柱まで造られてるんです。
あっ見えますね。
ありますでしょ。
五重塔は中心に「心柱」と呼ばれる長い柱が通っています。
心柱は一番上の屋根に固定されている以外どの骨組みとも接していません。
それによって大きな地震がきても揺れの影響を最小限に抑え倒壊を防ぐ事ができます。
こうした技術は東京スカイツリーにも受け継がれているまさにハイテク!6世紀の半ばに仏教が伝来した時に仏教の教えだけではなくてそういう大陸それから朝鮮半島の進んだ技術が教えと一緒にその周辺を飾るものとしてものすごい量で渡ってきたと思うんですけれどもこの塔は言ってみれば仏教の教えとそれからテクノロジーの結晶っていうふうに見る事もできるんだと思います。
一つ疑問なのがどうやって運んできたのか素朴な疑問が…。
私も運んでるシーンは実際には見てないんですが伺ったところによるとこれ実は一層ごとに分解できる。
それで運んできたみたいです。
そこもまさにハイテク。
ハイテクですよね。
奈良から運び出す時の様子です。
五重小塔はもともと一層ずつ解体できるように造られていました。
何のために造られたのかっていうとこですよね。
いろんな考え方があるんですが今言われているのは当時聖武天皇が国分寺とか国分尼寺とか仏教を国に広めるためにたくさんのお寺を造りましたが…やっぱり建築模型の一種ではないかと言われてるんですね。
でも模型の域をもうちょっと超えちゃってますよね。
これをもとに10倍にした塔が日本の各地に建っていたかもしれないんですよね。
法隆寺に伝わる…高さ2.3メートル。
仏像や経典を納める最古の工芸品です。
作られたのは7世紀の飛鳥時代。
この時代の建築は現存するものがないため当時のハイテクを今に伝える貴重な国宝です。
翼を広げたような屋根は「錣葺」と呼ばれます。
上の段のやぐらがおもしとなって下の屋根の美しい曲線を保つという高度な技が使われています。
よく見ると透かし彫りの金具の内側に妖しい輝き。
「厨子」の名前の由来にもなった斬新なアイデア。
現在も2,500枚以上確認できます。
仏像を納める宮殿の壁や扉の内側には数え切れないほどの小さな仏の姿。
「押出仏」と呼ばれ薄い銅の板から仏を打ち出し金メッキを施したもの。
数は4,500近くに及びます。
国宝「玉虫厨子」。
飛鳥時代のハイテクの面影を今に伝えています。
次の橋本さん流テーマが「祈りのカタチ」だそうで。
仏教美術とか神道の美術とか今回の国宝展にいろんな信仰に関わる作品が出てますけれどもなんとか菩薩とかなんとか如来みたいな話ばっかりだともう皆さん大変だと思いますのでまず一番シンプルなところから。
祈る時にポーズって皆さんどんなふうに…。
あっもう答えを出しちゃった。
まあやっぱり…。
やっぱこれですよね。
手を合わせますね。
これって仏教なのか神道なのかどこがそのオリジナルか分からないんですけど今日いろいろなところでこの合掌のポーズが登場しますのでそのポーズを追いながら作品を見ていきたいと思います。
でこちらの作品ですね。
もういきなりまさに祈ってるカタチですけれども。
京都・三千院の阿弥陀如来。
その両脇を飾る2体の菩薩。
向かって右側の観音菩薩と…。
左側の勢至菩薩が今回の国宝展に出品されています。
穏やかな面持ちの勢至菩薩。
両手をぴったりと合わせた合掌のポーズです。
美しいですね。
ほんと静けさを感じるというか下半身がたっぷりとしてるじゃないですか。
安定感があるのでこちら側にいる人にはなんか安心感を感じさせるというか。
そういうとなんかどこかフェミニンなというか女性的なというかとても穏やかな美しい像ですよね。
横から見るとほんの少し前かがみに座っています。
この姿勢にあるメッセージが込められていると橋本さんは言います。
何をしにこう前かがみになってここにいるのかっていう事なんですけれども…この観音菩薩の方ですけれども手の上にハスの花の容器をささげ持ってますがここに亡くなった方の魂をのせて極楽浄土へ連れていこうと。
「来迎」と言いますけれども迎えにきている像なんです。
菩薩の合掌は死にゆく人々に救いの手を差し伸べる祈りのカタチだったのです。
視線を変えて眺めてみると菩薩の思いをより深く実感できるといいます。
今私たちこうして立って見てますけれども実はやっぱり祈る時ってひざまずいて下からこういうふうに拝んでまさに助けて下さいという気持ちを込めて拝んでると思いますけれどもこれもそうやって下から見て頂くとちょっと見える感じが変わってくる。
お寺で…参拝者と同じような目線で見てみるっていうのもひとつ見方かなと思うんですね。
今見ているこの仏を見ている自分が現実のものなのかそれとも夢の中で仏と会っているのか分からない。
そういった感覚がより強くこの下から見上げる姿だと感じられるのかなという気がします。
確かにこう下から見るとお顔が目が合うのかなと思いきや…。
決して合うわけではないんですよね。
そうですね。
私たちの事を見て下さっているのかどうかさえちょっと分からないけどきっと見守って下さってるというその浮遊してる感じが…。
内面をとてもうかがい知る事のできないはるか彼岸の存在であるっていう事も感じられるしだからこそ救いにつながってるんじゃないかという気がします。
確かにこちら側の心の中をこうのぞかれてるというか見られてるようなそんな目線というか表情というか。
これ具体的には実際にはどのような時代の時に造られたものなんでしょうか?平安時代の中頃なんですけれどもまあ平安時代って言ってしまうと平安で平和で豊かで穏やかな時代だったって思ってしまうんですが実際のところ平安時代長く200年以上続いた時代ですが実は非常に不安な時代だったんですね。
平安時代幾たびもの戦乱が起こります。
疫病や飢饉震災も相次ぎました。
貴族たちの間ではこの世の終わりが来るとうわさされ大きな不安が時代を覆っていたのです。
苦しみばかり多い現世から逃れて確実に浄土へ往生する。
六道輪廻から切り離されて往生するにはどうしたらいいかっていう事を貴族の人たちがみんな考えていた。
ものすごく真剣に考えてたんですね。
そのための準備の一つとして京都のまさに洛中でたくさん仏像が造られたんですけれどもその後の戦乱で平安時代の仏像って本当にたくさん失われてしまったんですね。
ですからこれはそこから少し離れた…しかも状態がよく作品としてもほんとに美しい。
それがまさにこれが国宝たるゆえんじゃないかと思いますね。
さあ「祈りのカタチ」のテーマ次見る作品が…わあ!こちらです。
会いたかった。
「祈りのカタチ」2つ目は…振り返りながら合掌のポーズを決めています。
去年国宝に指定されたばかり。
作者は鎌倉時代の名仏師…祈りのカタチは同じですよね。
さっきと同じ合掌ポーズをしているのになんか突然生き生きとっていうか…。
そうですね。
してきちゃいましたよね。
もうほんとここにいるようななんか話を聞いてる…。
聞いてますよね私たちの…。
動きだしそうですね。
この髪型も当時はやってたんですかね。
おだんご。
かわいいですよね。
両耳の上で髪を丸め角髪という少年の髪型をしています。
目には水晶のレンズ玉眼。
潤んだ優しいまなざしが生きているかのようです。
あのキラキラしたまなざし。
もう見てますよね相手をね。
「何でしょうか?」って。
後ろから見るとほんとにヒラッとしてるし今こう動きだしたというか風が通り抜けたのかという。
今言っていた衣の表現…衣もとてもきれいなんですけれどもそこに彩色がよく残ってますよね。
かなり残ってますね色が。
肉眼でよく分かります。
赤緑白っていう色が今でも見えますよね。
文様も細かく残ってますね。
金色に輝く線は金箔。
龍でしょうか。
幅が1ミリにも満たない細い金箔を貼り付ける截金の技法でさまざまな文様が描かれています。
奈良・安倍文殊院の本尊。
獅子にまたがり大海原を渡ろうとする文殊菩薩。
その一行を先導しているのが善財童子です。
この像は文殊菩薩の方を振り返ったまさにその一瞬を捉えています。
そのリアルさがどこからくるのかっていう事なんですけれども時代が動いているっていう事もやっぱりあるんじゃないかと思いますよね。
実力のあるものが天下を握って政治を動かす。
そういう「実の時代」にふさわしいリアルな動きとか実在感とかこの表情このまなざしっていう表現なんだと思います。
時代が変わったんだっていう。
すごく如実に分かると思います。
だからさぞ出来た当時は華やかな少年アイドルのような姿だったんじゃないかと思います。
平安から鎌倉へ。
時代のうねりの中で祈りのカタチも移り変わっていきました。
さあ橋本さんが次は究極の祈りのカタチではとおっしゃるのが…。
この土偶ですね。
「祈りのカタチ」最後は…青森県八戸市で出土しました。
縄文時代後期今から3,000年以上前に作られたと考えられています。
一気に遡りましたね。
遡りましたね。
もう仏教も神道もない時代なんだけれどもやっぱり何か切実な思いを伝える形でこの合掌というポーズを選んでいるのがとても不思議ですよね。
確かにそうですよね。
自然にやっぱり手を合わせてしまう。
祈り。
何に対して…。
何に対してどんな事を祈ってこの形を作ってるのかってすごく考えちゃいますよね。
ポーズだけでなく全身を覆う文様も不思議です。
一体何を表しているのか謎に包まれています。
胸には乳房のようなものがあり女性だとも言われていますが定かではありません。
更に謎を深めるのが膝などのつなぎ目。
接着して直した跡が残っています。
実は土偶のほとんどが壊れた状態で出土します。
しかも明らかにわざと壊してから埋めているのです。
しかし合掌土偶はほぼ完全な形で発見されました。
一度壊してから修復する。
そこには何か特別な意図があったと推測されています。
あるいは何かもっと自然全体が回復されるような事を祈ったのか分かりませんけれどもそういった祈りを込めて作られた形なんですよね。
今回奇跡的にきれいな形で発見された5つの国宝土偶が全て集結します。
長野県茅野市で出土した…豊かなお尻と膨らんだおなかに多産への祈りを込めたと考えられています。
同じく茅野市で出土した…お墓らしき場所に埋められていました。
死者へのささげものだったのかもしれません。
北海道で出土した…中は空洞でとても薄く作られています。
全身に複雑な文様が施され縄文人の高い技術がかいま見えます。
山形県の「縄文の女神」は高さ45センチ最大級の土偶です。
大胆にデフォルメされた顔。
空を仰ぐような姿に縄文人はどんな祈りを託していたのでしょうか。
橋本さんは土偶の顔にも注目しています。
土偶って縄文の草創期からほんとに初めの頃から作られてるんですけれども最初の頃ってはっきりした顔がないんですよね。
その顔のない時代がずっと続いていってある時縄文時代中期ぐらいから顔が出来てくるんですけどもそこから一気に造形が豊かになる。
だから何か顔を作るのを禁欲していた時代があってでやっと顔が作れるようになってからこうした祈るカタチを含めたさまざまな造形が生まれてきたんですよね。
表現できるのがうれしくて唇ももう…。
そうですね。
当時のなんかこう喜びまで残ってる…伝わるような。
言ってみれば人の歴史の中での祈りのほんとに原点ですよね。
でもこの時代はそれこそ自然と共に生きてる。
まあ時には嵐があったり地震があったりして傷つける事もある自然に対して何か祈ってるのかなって思わせられる。
でもほんといろいろ想像が膨らみますよね。
顔が円いし上を向いてるからこう太陽に対してなのか…。
やっぱりその時も太陽という存在は間違いなく絶対だったりとかしていてとはいえ手を合わすっていう。
どうしてこの形になっちゃうんだろうって思いますよね。
何か願いや祈りの時はこう手が合わさってしまう。
すごく根源的な…。
カタチなんですね。
国宝土偶。
はるか縄文の人々が残した祈りのカタチです。
さあ橋本さん次のテーマが…。
次が「国宝でタイムスリップ」です。
タイムスリップ。
何がタイムスリップかというとですね平安時代の貴族の気持ちに私たちがまさになってしまうのがこの作品を見る時の楽しさなんですよね。
平安の貴族が作らせたという…扇形の紙に法華経の経文が書かれています。
金箔や銀箔を散らした紙に平安の人々の生活が色鮮やかに描かれ当時の風俗を知るうえでも貴重な国宝です。
このお経に関していえば必ずしもお経の文句お経に書かれてる内容とは関係のない絵が描かれてますよね。
これよく見て下さいね。
お経の中身が描いてあると思うじゃないですか説明が。
全然違うんですこれ。
大人の男性女性がいてそれで右の隅の方を見て下さい。
スズメがいますよね。
このスズメを捕らえようとしている。
どっちかっていうと貴族っていうよりも庶民の風俗なんでしょうか。
貴族のお姫様のもとへ届けられるためのスズメを捕ってるところかもしれません。
ある意味ちょっと身近な世界を…。
そうですね。
日常の世界…まあその日常と地続きの世界を描いている。
やっぱりこの扇面っていう形に合わせて文字も上の方が大きくて下に向かって小さくしていく。
デザイン的にもちゃんと考えてるんですよね。
なんでこんなデザインのはっきりしたお経を作っているのかっていう事なんですがそこが今回の見るポイントなんですが平安時代の貴族って…。
さっきも大原の三千院の仏像のところでお話をしましたがその時代にさまざまに起こった災害飢饉におびえていた不安な時代の貴族たちですよね。
彼ら不安な時代の貴族たちが極楽にどうやって往生するか。
方法としていろんな手段があったんですけれども一つはああやってお寺を造って仏像を納める事。
お経を納めたりあるいは仏画を納めるのもいいんですけれども…それが仏像であればいいっていうんじゃなくて「美しくないといけない」っていう価値観が出てくるんですよね。
平安時代貴族たちは来世で極楽浄土に行くために仏へのささげものを作りました。
しかも美しければ美しいほど極楽が近づくと信じて美の追求にいそしんだのです。
つまりポイントがどんどんたまって…。
「ポイントをためて極楽へ行こう」じゃないですけれどもカードにポイントをためるようにこういったお経とか仏像を非常に美しく作っていったんですね。
それをたくさん作るっていうのがこの時代の極楽への行き方…パスポートだったわけなんです。
へえ〜。
そして書かれているお経が法華経である事にも大きな意味があるといいます。
法華経が支持された重要なポイントが…。
当時の仏教ではずっと「男性しか成仏できない」。
そういったそれまでの成仏できない女性の置かれた立場に対して…貴族の女性たちは雪崩を打つように法華経に帰依しそれを書写するっていう事を行っていく…。
ですからこのお経も…この扇を模した形ですとか描かれてる絵の美しさとか見ているともしかすると女性の貴族が自分の極楽往生を願って作らせたものなんじゃないかなっていうふうにも見えてくるんですよね。
女性たちの…。
いやすごく合点がいくというかだって見てとても普通にきれいだなかわいいななんかすてきって思うのは女性たちがなんとか必死になってアイデアを出し合って描いたのか…。
当時の女子力の結集でしょうか。
女子力。
フフフ…。
ほんとにそういう感じですよね。
男性から見てどうでしょう?引き算がないというかほんとその思いと思いを全部足していってるっていう…。
全部盛りって感じですよね。
はい。
なので類を見ない美しいものを作りたいっていうそういうすごい強い思いを感じますね。
「ポイントをためて絶対極楽に行きたい」。
平安の女性たちの熱い思いが伝わってくるかのようです。
「国宝でタイムスリップ」。
次に橋本さんが注目するのが…こうした絵は位の高い人々にとって人生で一番大切な時になくてはならない必需品だったそうです。
雲に乗ってやって来た菩薩。
そして山の向こうには人々を極楽浄土へと導くために現れた阿弥陀如来。
背後の円は神々しさを添える満月でしょうか。
この絵が使われるのは臨終の時。
北枕に横たわり極楽浄土がある西側に置かれました。
そして五色の糸で阿弥陀の手と亡くなる人の手を結びます。
その証拠に阿弥陀の親指には糸を通した穴を後に塞いだ跡が残っています。
当時の人々はこうして阿弥陀を眺めながら心安らかに極楽往生を願ったのです。
さあこちらが今回の最後の作品です。
去年ユネスコの世界記憶遺産にも登録された…常長は伊達政宗の家臣。
西洋風の服を着ていますが腰には刀を差し…。
頭はまげを結った侍の姿です。
1613年政宗の命を受け貿易の交渉のためヨーロッパへと渡りました。
この絵はローマで描かれたと言われています。
初めて日本から世界へ…今で言う外交のような事をヨーロッパで初めてした日本人ですよね。
侍ですよねまさに。
だから表情がほんとに力強いですよね。
自分が請け負った…。
託された目的を。
「目的を果たすんだ」っていう力強い表情ですよね。
口元や目も。
これはキリストの磔刑像に対してここでも手を合わせている絵なんですけれども。
ですから見てのとおりこれは…彼はスペインに渡った時に洗礼を受けてクリスチャンになってるんですね。
そういう身分にならなければこのあとの交渉もうまくいかないだろうという事で洗礼を受けてるんですけれども。
日本に帰ってきて…1620年ですがもうそのころには数年前に徳川幕府によって禁教令が出されていてキリスト教は禁じられていますし仙台の藩の中でも禁教令が出されて「キリスト教を信仰する事はまかりならぬ」という事にもなりましたし実際に彼が行ったヨーロッパでの交渉も不調に終わって結局この壮大な試みはある意味失敗に終わってしまうんですけど。
なぜ伊達政宗は常長をヨーロッパに派遣し貿易を実現しようとしたのか。
最新の研究で新たな事実が見えてきました。
常長が渡航する2年前マグニチュード8を超える慶長三陸地震が起きました。
三陸地方は津波に襲われ5,000人の命が失われたとも言われています。
実はその震災の復興のために領内の復興事業として貿易を行い船を造り国際的な貿易港を造って…。
そうすると長崎のように繁栄するわけですよね。
そういった望みを託されて常長はヨーロッパに派遣されたんじゃないかという見方が出てきてるんです。
しかし常長の帰国後仙台藩でもキリスト教が禁止されこの絵は悲しい運命をたどります。
それを物語るのが絵の真ん中を縦に走る折れ目です。
この常長自身も戻ってきてから間もなく亡くなってしまうんですけど…この絵も評定所と呼ばれる裁判所のような場所で長い間折りたたまれて誰の目に触れる事もなくずっと保存されていた…。
それでこの縦線が入っている。
縦と…横にもあるんですか。
だから多分4つに折りたたんで。
折りじわが。
人の目に映らない場所でずっと保存されていた。
とはいえ破壊されずに…。
誰かがこれは残しておくべきだろうと思ったんでしょうか残されてきたわけなんですね。
ほんとに大事な肖像画をこう折りたたんでまでも残していきたいというそういう強い思いも感じますね。
それこそ…だからこの祈りは決してキリスト教の神だけにささげられた祈りではなくてやっぱりそこに生きる多くの同胞に対してささげられた祈りだったんじゃないかなっていうふうに思うんですよね。
その話を聞きますとあのまなざしの強さがまた更に優しさをも感じるようにも見えてきますね。
ですから「国宝」っていうと日本で制作された日本の美術っていうふうにとりあえず直感的には思ってしまうんですけれどもある意味国も超えて宗教も超えて今こうして日本で大事にされているあるいは日本美術に影響を与えてきた作品全てを私たちは国宝にしてきた。
そういった日本美術のある意味懐の深さを教えてくれるのが今回の「日本国宝展」じゃないかなと思ってます。
国宝というものはその時代にほんとにいざなわれるというか「超えて」というよりもその時代に自分がいてしまうという…。
ここ東京国立博物館だけれども平安のその描かれたその時に時空を超えて行けるというその力っていうんですかその力の強さというものをほんとに実感させられた今回でした。
ほんとにもうどっと…。
時間旅行した感じですか?フフフ。
はい。
行ったり来たりして心地よい疲れが…感じています。
橋本さんにとってはこの「国宝」というものを一体どのように…?もちろん美術ってそれを見てそのものと対するっていうのも大事なんですけれども同時に作られた時の政治であったり宗教であったり経済であったりってさまざまな文脈を知っている事でそれぞれの作品まるで違うように見える作品のつながりが見えたりあるいはその歴史の深いところに連れていかれたりそういう力があるのが国宝だと思いますので平安に行ったり鎌倉に行ったりもうサーフィンのようにあちこち旅できたんですけれどもその楽しさがやっぱり第一かなって思いますね。
今回は本当にどうもありがとうございました。
楽しい旅でした。
また是非行きましょう。
お願いします。
ありがとうございました。
2014/11/23(日) 20:00〜20:45
NHKEテレ1大阪
日曜美術館「国宝が、好き!〜時空を超える“美”の物語〜」[字][再]
この秋、国宝が熱い!現在開催中の「日本国宝展」。縄文の土偶や、鎌倉時代の仏像など、美を極めた傑作が大集結。背景に秘められた物語とともに国宝の魅力を堪能する。
詳細情報
番組内容
これまで2回の展覧会で120万人を動員した「日本国宝展」が、14年ぶりに東京国立博物館で開催されている。その名の通り全てが国宝。縄文の土偶や、奈良時代の五重小塔、鎌倉の仏師・快慶の仏像など、時代を代表する傑作たちだ。今回、「日本の国宝100」の著作で知られる日本美術ライターの橋本麻里さんをゲストに迎え、展覧会場を巡る。人々が“美”に託してきた想いとは。秘められた物語とともに国宝の魅力を堪能する。
出演者
【出演】文筆業(明治学院大学非常勤講師)…橋本麻里,【司会】井浦新,伊東敏恵
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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