年々深刻度を増す地球温暖化。
昨年報告書を発表したIPCC気候変動に関する政府間パネルでももちろん二酸化炭素が最も重要視されてはいますが急速に注目度を高めているダークホースが雲です。
全く新しい観測や実験が次々に行われ詳しいメカニズムが明らかになりつつあります。
中でも専門家たちが注目するのが長生きする雲。
でも雲のままでいるとどうなるんでしょうか。
え〜!?それは大変だ。
調べてみるとこの雲は海のしぶき煙など非常に身近なあるものと深い関係があったんです。
明らかになり始めたメカニズムから将来の気候予測まで雲の不思議な世界に迫ります。
(テーマ曲)長生きする雲って何なんでしょうね。
やっぱり大雨を降らすような雲は怖いですけど雨を降らせないようならそんなに恐れる事もないのかなって。
…って思うでしょ?ところが少し分かってくるとこれが意外と怖いかもしれないんですよ。
そうなんですか?という事で今日のテーマは雲。
いろいろありますね。
一番高い所にあるのがはけで描いたようになってるでしょ。
これが…筋雲ともいいますね。
それからこちら…何か綿菓子みたいでよく見かけますよねこういうの。
そしてこちらにあるのがおなじみの…これは通称雷雲。
豪雨をもたらす非常に怖い雲ですよね。
これはよく知ってますよ。
夏によく現れる雲ですよね。
その積乱雲がどのようにしてできるのか見ていきましょう。
まず空気が暖められますと上昇気流が発生しますね。
小さな雲ができます。
更に上昇気流がやって来て雲が成長します。
このように雲は大きくなって重くなりますと雨になって落ちていきます。
更に上の方は蒸発して消えてしまいます。
実際の積乱雲がこちらです。
あっ積乱雲が発生しましたね。
上昇気流があるって事ですよね。
上の方にずっと広がっていってだんだん暗くなってきてそして雨が降り始めました。
本当だ雨だ。
真っ暗だ。
一生があるという事はその始まりがあるって事ですよね。
始まり?さっき上昇気流があると雲ができるといいましたが実は…お〜!それでは上昇気流と水で雲を作ってもらいましょう。
気象庁の研究所に雲を作る最新鋭の装置があるんです。
こちら気象研究所が独自に開発した…温度と圧力を制御し上昇気流の中の環境を再現。
雲が生まれる過程を上昇気流と同じ速さのエレベーターに乗っているような感覚で観察できます。
それを実現したのがこのチェンバーの構造。
中は2重構造になっていてその間には冷却装置が張り巡らされています。
チェンバーを丸ごと冷やす事でこれまで難しかった気温−100℃まで再現できるようになりました。
中には特殊なセンサーがあり雲の粒子を一粒ずつキャッチ。
更に隣のカメラでは雲の粒の姿を鮮明に捉えるんです。
チェンバーを開発した研究員…それでは早速ですがこれで雲を作って下さい!はい分かりました。
今回は筑波市の秋の大気を再現します。
地上の気温は15℃。
上昇気流は標準的な秒速5mに設定しました。
(田尻)はいじゃあ開始します。
実験スタート。
高度が上がるとともに気温と気圧が下がっていきます。
9分後。
高度2,800mを通過。
気温は−10℃です。
雲できてますか?富士山より高い4,000mを超え−20℃。
気圧は0.6気圧を下回りました。
チェンバー内にはまだ何も見えません。
一体どこまで上がったらできるんですか?あれ?水だけじゃできないんですか?雲を作るには何かが足りないんですよ。
えっ何が足りないんですか?これです!雲の種?早速雲の種とやらをチェンバーに流し込みます。
すると…。
画面の真ん中にご注目。
何やら赤くキラキラするものが見えます。
これこそが雲の粒です。
チェンバーのカメラも雲の粒の姿を捉えています。
今度は雲の粒の計測データを見てみましょう。
高度がどんどん上昇していくと4,000mを超えた所でデータの様子が大きく変わります。
画面左側ほど大きな粒。
青や赤はその数が多い事を示しています。
大きめの粒がたくさん雲の種のおかげでできました。
でも雲の種って一体何?雲ができるためにはエアロゾルっていうのが必要だったんですね。
でもそれ何なんですか?あら。
エアロゾルもいろんな種類があるんですがさっき実験で使っていたこの雲の種。
この正体はですね…。
これはなんと砂漠の砂なんですね。
砂?この砂を顕微鏡で見るとこのようになっています。
非常に小さいんです。
ほかにも塩。
これは海の波のしぶきから発生します。
細菌なんていうのもあります。
それから人の活動によって生まれているエアロゾルとして硫酸塩すす。
だけど砂とか細菌とかは雲の中にあったなんて全然知らなかったですね。
ちょっと汚いんですね。
ねえ。
ちょっとね。
えっここでできるんですか?はい。
こちらが…え〜これでできるんですか?このフラスコの中に少量の水が入ってます。
という事は水蒸気も入ってるって事になります。
それではまずエアロゾルを入れてみましょうか。
ここに線香があります。
煙が見えますか?出てます。
この煙をフラスコの中に入れてみます。
123と。
はい入りました。
そしてポンプで気圧を下げると…。
あっ白いのが出てきた!でしょ?出てます出てます。
そして逆に気圧を上げると…。
あっ消えちゃった。
ね?ちょっとやってみますか?あっいいですか?曇った曇った。
曇った。
結構あっという間に出て…。
面白い。
これが雲ですか?これは水の粒が種とくっついて雲の粒になったんですね。
へえ〜。
じゃあ今度はエアロゾルなしでやってみましょう。
気圧を下げます。
う〜ん!全然できないですね。
全く変わらないですね。
どうしてエアロゾルがないと雲ができないのでしょうか?大気中には水蒸気つまり水の分子が浮遊しています。
湿度が100%を超えると水分子同士の衝突が激しくなりとても小さな水の粒の芽が形成されます。
これがどんどんぶつかれば大きな水の粒になってくれるはずです。
ところが水の粒は成長するだけではなく表面から蒸発もしているんです。
蒸発は水の粒が小さいほど激しくなります。
そのためごく小さな水の粒の芽は極めて蒸発しやすく大きくなれないんです。
400%ってそんな事あるんですか?ではエアロゾルがあったらどうなるでしょうか?えっどうして蒸発しにくくなるんですか?エアロゾルがあると実は水滴の中にエアロゾルの成分が溶け込むんですね。
そして蒸発を邪魔しちゃうんですね。
水の分子が衝突して大きくなる効果は変わりません。
だから水の粒が成長できるという事なんですね。
なるほど。
そのエアロゾルが雲の塊を作っているという事が象徴的に表われている画像があるんです。
人工衛星が海の方を捉えたものなんです。
何か編み目のような。
縦横に線が入ってますよね。
これ船が出す煙に含まれるエアロゾルが種になって雲ができた航跡雲といいます。
面白いですね。
船が通った跡が…。
この雲に実は今大きな異変が起きているんです。
なかなか雨にならない長生き雲が増え始めているんです。
それにもやはりエアロゾルが深く関係している事が最近分かってきました。
26年にわたり雲の研究をしてきた…普通と違う成長ってどんな雲なんでしょう。
こちらにあるのがカメラシステムです。
中島さんは全国3か所に定点カメラを設置。
一年を通じて雲を観測しています。
24時間5分置きに空を撮影。
画像は研究室に送られます。
東京で撮影したひつじ雲。
はるか上空で一面に広がっています。
画面の下の方に見えるのは積乱雲。
分厚いので灰色に暗く写っています。
そして今後の気候変動の鍵として注目しているのがこちら。
これが問題の長生き雲だというのですがそんなに特別な雲には見えませんよね。
ところが特殊な人工衛星で内部を観測するとこの雲の異常な側面が見えてくるんです。
こちら8年前にアメリカで打ち上げられた人工衛星…高度690kmの周回軌道から雲に向けて電波を発射。
はね返ってくる時間や強さを測定して雲の表面だけでなく中の方の粒の大きさや状態まで観測できるんです。
こちらがその断面。
雲の粒の大きさで色分けされています。
青い部分は粒が小さく緑や赤になるほど大きい事を示しています。
普通の雲は成長とともに中心部の粒が大きくなっていく様子が分かるんです。
一方この人工衛星で中島さんが注目している長生き雲を見てみると…。
あれ?全面青一色。
小さい雲の粒しかありません。
小さい粒だけでできた長生き雲。
エアロゾルとの関係は?エアロゾルのせいで成長できない?でもエアロゾルは雲の種でしたよね?ところが本当なんです。
スーパーコンピューター京でのシミュレーションをご覧下さい。
エアロゾルの量の違いでできる雲がどう変わるのかを再現しました。
まずは普通の条件です。
雲はぐんぐん上に向かって成長。
その後次第に雨になって落ちていき消えてしまいました。
でもここからが不思議なところ。
エアロゾルを5倍に増やしてシミュレーションすると…。
確かに雲はたくさんできています。
ところがよく見ると雲は上に向かってあまり成長していません。
そして雨もほとんど降っていないんです。
雲の種が多いと雲が成長できずに雨が降らないって一体どういう事?え〜っ。
エアロゾル多いのに成長しない?ちょっと変ですよね。
さっきはエアロゾルがないと駄目だったのに多くても駄目なんですかね。
ちょっと話が違うぞ。
エアロゾルがどうして雲の成長のしかたを変えてしまうのか専門家に伺いましょう。
九州大学でエアロゾルと雲のシミュレーション研究をされている竹村俊彦さんです。
雲の種であるエアロゾルが多いのにどうして雲の粒子が成長できないんですか?雲の種であるエアロゾルが増え過ぎるとどうなるかっていうと一個一個の雲の粒が得る事ができる水の量ですねこれが少なくなってくるんですね。
取り合いになってしまってる感じですか?
(竹村)そうなんですね。
そうするとなかなか雲の成長がしにくくなってしまう。
その結果雨にまで成長する事ができなくなって雨の量も少なくなってくると。
という事でずっと空気中に雲として漂ってる。
これが長生き雲の原因なんです。
エアロゾルの量というのはどれくらい寿命に影響するんですか?例えばですね…そういう試算があります。
エアロゾルが多いと雲の成長が遅くなる。
その証拠となるような画像があるんです。
(竹村)こちらは人工衛星のデータを解析した画像なんですがエアロゾルがどれぐらい大気中にあるか示した図なんですね。
黄色とか緑とかそういった地域にエアロゾルの量が多いという事を示しています。
日本の周りはエアロゾルの量が多いんですね。
(竹村)そうですね。
経済活動も活発で石油石炭もいっぱい使いますから硫酸塩とかすすといった物質が非常に多い地域なんですね。
今度こちらは雲の粒子の大きさを表していまして…日本の周りは粒子が小さいですね。
(竹村)そうですね。
これらを2つエアロゾルの量と雲の粒子の大きさを併せて見てみると…。
実際エアロゾルの量が多い所が雲の粒子の大きさが小さいって事が分かりますね。
(竹村)そういう事ですね。
その事が更にはっきりと表れている写真があるんです。
このように青空が見えてる日もあるんですが最近このような日が増えているんですよ。
一面雲ですね。
ちょっと薄暗い感じがしますね。
(竹村)どんよりしてますよね。
これはこの地域では近年バイクが増えたりだとか工場が増えたりだとか排出されるエアロゾルの量が増えているという事があります。
それから山に囲まれていますから空気がよどみやすいという地域でもあるんですね。
そうするとエアロゾル自体で太陽の日射を遮られるという事と先ほど出てきました長生き雲の影響によって更に日射を遮られるという事が起こりやすくなっています。
そうすると作物の収穫量とかも低くなってしまうとか人間の生活に影響が出てきてるという事です。
この長生き雲による影響実は特定の地域にとどまる話ではないんです。
昨年開かれたIPCC気候変動に関する政府間パネルの総会です。
数千人の専門家たちの研究を集め最新の知見を取りまとめています。
今回発行の第5次報告書に気候変動に影響を及ぼす要因として大きく注目されたのが雲とエアロゾルです。
IPCCで取り上げられたのが産業革命以降の気温の上昇。
150年で平均0.85℃上昇しています。
でもエアロゾルなどの効果を除き温室効果ガスだけを考慮してシミュレーションすると…。
温度上昇は1.3℃にもなってしまいました。
つまりエアロゾルが増えた事で0.45℃もの気温の差を生んでいたんです。
え〜っエアロゾルが地球の温暖化をちょっと抑えてくれてるって事ですか?そうなんですね。
ただエアロゾルというのは…ですから…ここで皆さんに見てもらいたいデータがあります。
それぞれの要素が温暖化にどのように影響しているか。
それを示したグラフなんです。
二酸化炭素ですとかメタンガスは温暖化に働きますよね。
一方のエアロゾルは温暖化とは逆ですね。
冷やす方向に働くという事が分かってきた訳です。
でもこれ実際に測定されたデータではありません。
更に見て頂きたいものがあるんです。
エアロゾルの冷やす効果の推定値こんなに幅があるんです。
うわ〜ほかの要素より幅が大きいですよね。
(竹村)そうなんですね。
どうしても推定の幅に大きな不確実性がまだあるという事なんですね。
大きなものとしてはエアロゾルの地球規模での分布というのが非常に偏りがある。
つまり…
(竹村)それからもう一つ大きな事としては…特に…そこであの雲生成チェンバーでもエアロゾルに関する詳細な研究が始まっています。
エアロゾルの種類によって雲の粒のできる条件がどう変わるのか。
気象研究所が雲生成チェンバーで7年間かけた調査の結果が昨年発表されました。
調査したのは天然にあるものや人間活動によって出された9種類のエアロゾル。
中でも注目すべきは…これらが作る雲の粒が大きく成長する温度を観察すると驚きの結果が出たんです。
こちらのグラフ横軸気温の低下に合わせて縦軸エアロゾルが雲の粒になった割合を示しています。
いち早く雲になったのは細菌。
−10℃です。
砂は−18℃。
そして人間活動によって排出が増えているすすでは?先ほどカトマンズでもこれが原因で雲たくさんできてましたよね。
ところが結果はなんと−35℃。
しかも雲になったのは投入したエアロゾルのうちごく僅かでした。
意外にもすすは雲を作らない結果になったんです。
あれ?すすがあるから雲ができていたんじゃなかったんですかね?…って思ってましたよね。
結構意外な結果ですよね。
すすって本来はこんな格好してるんですね。
一つ一つが丸い小さな。
ところが実際に大気中を浮遊してるすすは格好が変わるんですよ。
ほら。
全然違いますね。
(竹内)全然違うでしょ?何かへんてこな格好ですよね。
これを特殊な分析にかけるとこの黒い部分がすすなんですよ。
つまり何かに取り込まれちゃってるみたいです。
こうなると簡単に雲になっちゃうらしいんですよ。
へえ〜。
純粋なすすは大気中に浮かんでいるうちにいろんな物質をくっつけてしまってどんどん性質を変えてってしまうんですね。
そうしてる間に雲粒になりやすい性質を得てそれで雲の種になっていくという変化が出てきます。
もともと雲になりにくくてもなりやすいやつに変わっちゃうって事なんですね。
そうですね。
そういう事です。
今後雲エアロゾルどういったところを特に注目していきますか?トータルな環境問題として考えた場合にはエアロゾルは温暖化をいくらか消してくれるという効果はあって何かよさそうに聞こえるんですが一方で健康影響を引き起こす大気汚染物質でもある訳ですよね。
ですからエアロゾルをどれをどれぐらい減らしたらいいかという情報を提供するために研究を進めていきたいというふうに考えています。
竹村さんどうもありがとうございました。
それでは「サイエンスZERO」。
次回もお楽しみに!2014/11/01(土) 12:30〜13:00
NHKEテレ1大阪
サイエンスZERO「雲のニュータイプ出現!エアロゾルが気候変動を支配する」[字][再]
気候変動に影響が大きい雲のタネ・エアロゾルに注目。人間活動で増加していて、雨を降らせにくいニュータイプの雲を生んでいる。雲をリアルに再現する世界初の装置も。
詳細情報
番組内容
気候変動に大きな影響を与えるとして注目されているのが、1μmに満たない極小の粒、エアロゾルだ。エアロゾルは雲の粒の核となる物質。人間の活動でエアロゾルが増えていて、雨を降らせにくく寿命の長いニュータイプの雲を生んでいる。こういった雲が、グローバルな気候にもすでに大きな影響を与えているというのだ。雲をリアルな環境で再現する世界初の装置での最新研究も紹介する。9月7日放送分のアンコール放送。
出演者
【ゲスト】九州大学准教授…竹村俊彦,【司会】南沢奈央,竹内薫,【キャスター】江崎史恵,【語り】中山準之助
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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