またね黒川さん。
千葉県市川市にある小さな老人ホームです。
入居しているのは9人。
貧しく頼れる家族もいないお年寄りたちです。
大丈夫ですか?起きれますか?スタッフが24時間交代で見守ります。
・「空は水色秋の風」認知症の女性です。
2人の子どもとは連絡が取れません。
路上生活をしていたこの男性はかつて家族を捨てたため頼れる人はいません。
今生活保護を受ける独り暮らしのお年寄りは61万人。
(笑い声)孤独で貧しいお年寄りたちの終の住みか。
千葉で生まれた新たな試みを見つめます。
都心から電車で20分。
47万人が暮らす千葉県市川市です。
千葉の社会福祉法人が今年7月お年寄りたちの最後のセーフティーネットとして作りました。
(ノック)森さ〜ん。
個室の数は12。
は〜い定時のお見回りです。
そうですか。
大丈夫です。
生きてます。
(笑い声)大丈夫ね?何かあれだったら言ってね。
じゃあどうぞゆっくり休んで下さいね。
どうもありがとうございます。
見守るのは生活に行き詰まった人たちを支援してきたNPOのスタッフです。
ホームに寝泊まりし家族のように寄り添います。
お食事で〜す。
毎月の費用は家賃や食費など合わせて11万円余り。
生活保護費や年金で賄えます。
食卓はみんなで囲みます。
ホームでは入居者を孤立させない事を目指しています。
小林さんが何でも食べてくれるんです。
かつては路上で暮らしていました。
酒で体を壊しぜんそくも患っています。
ここに来てからは毎日スタッフが薬を手渡し体調を管理しています。
はいお疲れさまでした。
はい楽しみなやつ。
(笑い声)小林さんの唯一の楽しみがたばこです。
吸い過ぎないようにこちらは1本ずつ。
家族と別れて以来小林さんは荒れた生活を送ってきました。
小林さんは九州出身。
中学卒業と同時に故郷を離れ工事現場や食品工場で働いてきました。
3人の子どもにも恵まれましたがいつしか酒とギャンブルに溺れるようになります。
妻に暴力を振るい職を失ったあげく家を飛び出してしまいました。
小林さんには悔やんでも悔やみきれない事があります。
苦労をかけ続けた妻の事です。
4年前に亡くなった事を後から知りました。
ホームの運営に携わるNPOでは月に3回市川市で路上生活者の見回りをしています。
どうもこんばんは。
変わりないですか?どうも。
お握りや薬を配り体を壊していないか声をかけます。
生活を立て直すためにまずは安いアパートを紹介しています。
路上からアパートに移り住んだ人はこれまでに400人を超えます。
黒川さん。
しかしアパートでの独り暮らしがままならない人もいます。
ここ数年急激に体が衰え人とのつきあいも拒むようになりました。
こうしたお年寄りに安い金額で安心して暮らせる場を用意したい。
そんなNPOの思いがホームの建設につながったのです。
あっこっちだよ。
こっち。
1週間後黒川さんがホームに入居してきました。
独り暮らしは限界だとNPOが判断したのです。
部屋に入った途端ベッドに横たわってしまいました。
痛いという叫びは気にかけてほしい時の合図だといいます。
(ノック)黒川さん失礼します。
食事。
食事?ええ。
部屋で?ここで。
ここで。
分かりました。
入居者との交流を避け一人で食事をとる事に。
はいどうぞ。
一人きりになると再びスタッフを呼びます。
病院で何度検査しても痛みの原因は見つかりません。
また来ます。
しかしまた一人になると…。
人と触れ合う事で少しでも状態がよくなればとNPOでは考えています。
(歌声)長年保育士として働いてきた杉本豊子さん80歳です。
ピアノが得意で子どもたちと一緒に歌う事が大好きでした。
夫と離婚し2人の子どもとは連絡が途絶えたままです。
何買ってきてくれた?今日はね…。
杉本さんは2年前認知症と診断されました。
有機納豆?そうよ。
あとバナナね。
これでおなかすいた時ね。
日常生活に支障を来すようになり7月に入居しました。
買ってきたもの。
買ってきたもの。
バナナ。
バナナ。
バナナ。
ヘルパーが買ってきたものを書き留めておきますがじきに忘れてしまいます。
認知症の症状が進み自分の感情を抑える事もできなくなりました。
こっそり外に出ようとして…。
はい。
何勝手な事してるの?どちら行かれるんですか?いやどちら行かれるかだけ…。
どちら行かれるかだけ…。
いやいや…。
勝手でしょ!嫌だっていうの!迷子になる事を心配したスタッフに激しく食ってかかります。
何?見かねて隣の部屋の入居者が声をかけました。
この人すごい悪い事するから!嫌だ!危ないっていうのは…。
おいでおいで。
行こう。
部屋へ行こう。
連れてって外に!お散歩!いつもの。
じゃあ行こう!はい。
結局女性が連れ添う事に。
いやそうは聞こえるでしょ。
うん。
私最初は。
行かなかったの?別に行こうとしてなかった。
ふ〜ん。
うん…。
話を聞いてもらい少し落ち着いた杉本さん。
10分後ホームに戻ってきました。
う〜ん何て言うの?ホームが出来て3か月。
トランプやろうほら。
はい。
じゃあトランプ。
トランプやんの?うん。
やりたい。
やろうやろうほら!やろうじゃあ。
一緒に過ごす時間が少しずつ増えていきました。
最初はグーじゃんけんぽん!お気に入りはばば抜き。
この人!
(笑い声)えっ2枚でしょ?はい。
待たないよ。
わ〜!
(笑い声)おじさん面白いな!これかな?あっないや!あった!え〜これ合ってるじゃん。
私1番だ。
あら合ってんじゃん。
あ〜あ1番だよ。
1番!あ〜あ2番だ。
1番やった〜!俺3番。
(笑い声)家族への後悔の念を抱く小林さんです。
今心待ちにしている事があります。
月に2回娘と一緒に診療所に行く日です。
家を飛び出したあと子どもたちとは連絡が途絶えていましたがNPOが間に入り再会する事ができました。
「お父さんを許してあげて」。
妻の遺言が小林さんと子どもたちを結び付けてくれました。
迎えに来たのは隣の町に住む次女です。
仕事の合間に診療所へ付き添ってくれます。
行ってきます。
酒に溺れ家族を捨てた父への思いは複雑です。
一緒に暮らす事は考えていません。
あんまり…はっきり言って…だから何かこう…頂きます。
次女は面と向かって小林さんを責めたりはしません。
その事に一層負い目を感じます。
食べる?うん。
はい。
いい?ここ置いて。
(笑い声)それでも一緒にいると気持ちが和らぎます。
ああ?お酒?うん。
(笑い声)
(笑い声)行こう。
娘と会えた喜び。
自分のしてきた事への後悔。
そんな思いがよぎります。
今月初め。
また一人お年寄りが入居してきました。
重い糖尿病を患っている77歳の男性です。
頼れる身寄りはありません。
仲間が迎えてくれました。
久しぶりに味わった人のぬくもり。
じゃあ行ってきます。
気を付けてね。
年を取り一人きりになっても最後まで穏やかに暮らしたい。
そんな思いを守るための終の住みかです。
2014/11/23(日) 08:00〜08:25
NHK総合1・神戸
目撃!日本列島「たどりついた終(つい)の住みか〜貧困・孤独な高齢者は今〜」[字]
蓄えも家族との絆も失った高齢者が集う老人ホームが千葉県市川市にある。入居者には路上生活を経験した男性や引きこもりを続ける人も。孤独な高齢者の、ついの住みかに密着
詳細情報
番組内容
生活保護を受ける一人暮らしの高齢者は全国で61万人。10年前の2倍近くに急増。今年7月、千葉県市川市に生活に困窮する高齢者向けの老人ホームができた。入居者は老後の蓄えもなく家族との絆も失った人たち。路上生活の末に体をこわした男性。お金を管理できずに浪費する女性。対人関係がきずけず引きこもりを続ける人もいる。決して順風満帆ではなかった半生を経てたどりついた、高齢者たちの終(つい)の住みかを見つめる。
出演者
【語り】岸部一徳
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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