(岡崎梨緒)皆さんこんばんは。
『隣のセレブの晩御飯』リポーターの岡崎梨緒です。
今日は東京白金にある3つ星フレンチレストランChezTogawaから生中継でお送りします。
こちらがフレンチ界のカリスマでこのお店のオーナーでもある戸川進一郎さんです。
戸川さん今日はどんなお料理ですか?
(戸川進一郎)えー今日は皆様にうちの倅で当店のチーフシェフを務めている進次が昨年の国際フレンチアワードでグランプリを獲った時の料理をご覧にいれたいと思います。
まあそれは楽しみですね。
それでは早速参りましょう。
はいオッケー!
(梨緒)鈴木君。
(鈴木学)はい。
(松沢順平)進次君!今夜の生放送は我々にとってまたとないチャンスだ。
シェ・トガワブランドの世界進出は進次君君の腕にかかってるよ。
(戸川進次)松沢さん俺の腕疑ってるんじゃないでしょうね?レストランプロデュース第一人者のあなたでも俺の料理には一切口出しさせませんよ。
ハハ!おいおい。
(拍手)では3つ星レストランシェ・トガワチーフシェフの戸川進次さんにお料理のご説明をして頂きましょう。
(進次)本日のスペシャリテは鴨肉とフォアグラのソテーカシスソーストリュフ風味です。
トリュフの風味とカシスの酸味の絶妙なバランス。
そしてやわらかそうな鴨肉とフォアグラの高級感。
本当に美味しそう!ではいただきます。
まずい…。
なんだって!?
(松沢)あんた何言ってるんだ!えっ!?進次君の料理がまずいわけないだろ!!
(鈴木)ちょ…ちょっと…やめてください!うちのタレントに暴力振るわないでください!うるせえな!
(咳)
(戸川亜里沙)あなた!?あなた…大丈夫?あなた…!
(大山聡)テレビで大々的にまずいなんて言われたらこのレストランもたまったもんじゃありませんね。
(宮崎礼子)せっかく作ったお料理をまずいなんて言う人私なら絶対許さない。
(倉持哲也)でもさ生放送中にねあんな事言われたんじゃあさ僕だったらさショックで死んじゃうかもしれない。
(朝日奈耀子)私も同感です。
料理の腕をけなされるのってショックですよね。
朝日奈君ねなんにもろくにさ料理も作れない君とこの僕をね一緒にしないでくれる?はい…すいません。
(女性の悲鳴)美代子さん乙女滝のほうから悲鳴が…。
(佐伯美代子)私ちょっと見てくる!
(美代子)どうかしましたか!?
(女性)あそこ見てください!
(男性)人が倒れてるんです!
(男性)あの人カリスマシェフの戸川進一郎じゃないか?
(女性)え…嘘!?岡崎梨緒にまずいって言われてたお店の人?乙女滝で人が倒れています。
救急車をお願いします。
世界各国の料理にデザート種類も多いしおしゃれで華やかね。
ここに出ているお店は保健所などの許可も取っていますし値段も手ごろなので人気があるのはうなずけますよ。
今日はどうしたの?お弁当を買って食べるなんて。
実はゆうべ妻のサユリとつまらない事でケンカしまして…。
それで作ってもらえなかったの?ハハハ…。
あっ検事あのお店人気みたいですね。
すいません日替わりフレンチ弁当。
(戸川麻衣)はいありがとうございます。
私はフレンチ懐石弁当ください。
(麻衣)はいありがとうございます。
フレンチ懐石弁当…?1コインたったの500円ですよ。
わたくしこれに決めました。
いらっしゃいませ。
いらっしゃいませ!何にしましょう?あの男性は…。
半年ぐらい前にテレビのグルメ番組でまずいって言われた…。
ええ。
(麻衣)ありがとうございました。
(麻衣)いらっしゃいませ。
ご注文は?
(2人)フレンチ懐石弁当を。
(耀子・大山)いただきます。
うん!うん…!高級レストラン並みの本格的な味ね。
500円とは思えない。
検事わたくし当分サユリのお弁当なしでも生きていけそうな気がしてきました。
そんな事言っていいの?ハハハ…。
(西条哲也)あれ?朝日奈検事じゃありませんか?あっ!以前法廷でお手合わせしました弁護士の西条です。
お久しぶりです。
西条先生の法律事務所はこの近くでしたね。
ええ。
ここにはよくいらっしゃるんですか?僕は毎日のように来てます。
だってこのお弁当フレンチの名店シェ・トガワにいたカリスマシェフの戸川進次さんが作ってるんですよ。
(西条)それにこのハンバーグが絶品!奥さんの麻衣ちゃんのオリジナルなんですよ。
(麻衣)西条さん!ん?よかったらどうぞ。
いつも来てくださるお礼です。
麻衣ちゃんありがとう。
(麻衣)熱いですから気をつけてくださいね。
(進次)西条さんうちの麻衣と同じで猫舌だから。
(西条)進次君ひと言多いよ。
んっ熱っ!あっ!フフフ…。
西条さんのお知り合いの方ですか?よろしかったらどうぞ。
あっありがとうございます。
いただきます。
すみません。
いただきます。
あの…失礼ですがお店のほうはどうされたんですか?まさかあのテレビがきっかけで…?実はあの日を境にお客さんが一気に減ってしまって…。
それで店を辞めて妻の麻衣と一から出直す事にしたんです。
(携帯電話)あ…すいません。
はいもしもし戸川です。
ああ!
(2人)いただきます。
はい。
いつか自分たちの店を持つのが夢なんです。
そのためにもまず開店資金を貯めるところから地道に頑張ります。
麻衣ちゃん応援してるからね。
はい。
今警察から連絡があって長野でおやじが転落死したらしい。
自殺かもしれないって…。
なんですって!?テレビ中継の時の俺の料理は完璧だった…。
岡崎さんわざとまずいって言ったんだろ?私のグルメリポートは視聴者からも信頼されてるのよ?わざとまずいなんて言うわけないじゃない!とぼけんなよ!!おかげで店も家族もみんなめちゃくちゃだ!あんた一体何企んでんだよ!待って!私をどうするつもり!?
(鉄パイプの倒れる音)
(警備員)誰かいますか?
(梨緒)助けて…。
大丈夫ですか!?
(パトカーのサイレン)
(西村刑事)あっ岡崎梨緒さんですね?あなたがあの男性を…?違います!刑事さん。
見てくださいこのバッグ。
(梨緒)あの人がいきなりナイフで襲いかかってきて慌てて逃げたら鉄パイプが倒れてきてその場で下敷きになったんです。
これは事故です!私は殺人犯じゃない!山さん次の被疑者は?有名レストランシェ・トガワの元シェフ戸川進次が死亡した事件で殺人容疑で逮捕されたリポーターの岡崎梨緒です。
警察の調べに対し戸川進次が襲ってきたのを避けようとした結果偶発的な事故で戸川は死亡したとして岡崎梨緒は正当防衛で無罪を主張しています。
戸川進次さんの父親も先日亡くなってるわね…。
はい。
7月5日長野県横谷温泉近くの乙女滝で転落死しています。
遺書は見つかっていませんが自殺の可能性が高いと長野県警ではみているようです。
あなたの取り調べをする検事の朝日奈です。
これからあなたの被疑事実について取り調べをします。
ただしあなたには黙秘権がありますので言いたくない事は言わなくて結構です。
はい。
では伺います。
今月10日の夜11時頃港区の撮影スタジオで何があったのか話してください。
(ため息)半年前グルメ番組がきっかけで職を失った戸川さんが自分のお店を出すから資金を出せと私を強請ってきました。
そしてあの日の夜2人で会って話をつけようとしたんです。
(梨緒の声)でも話しているうちに急に怒り出してナイフで襲いかかってきました。
無我夢中で逃げてたら何かにぶつかって…。
(梨緒の声)気がついたら鉄パイプの下敷きになってたんです。
私は自分の身を守るだけで精一杯で…。
これは明らかに正当防衛です。
早く私を釈放してください!7月5日あなたはどこにいましたか?え?なんでそんな事急に…。
7月5日は戸川進次さんの父戸川進一郎さんが長野で亡くなった日です。
そんなの私には関係ありません。
答えなさい。
(ため息)確かその日はオフで一日中都内をドライブしてました。
そうですか。
岡崎梨緒さんあなたの処分はまだ決められません。
7月5日のアリバイを聞かれた岡崎梨緒かなり動揺していましたね。
至急裏を取ります。
今回の事件は本当に正当防衛なのか…。
(西村)あっごくろうさんです。
西村刑事この赤い車は?
(西村)容疑者岡崎梨緒の車です。
そうですか。
では事件の状況を話してください。
(渡辺刑事)こちらです。
(渡辺)戸川進次の死因は鉄パイプで前頭部を強打した事による脳挫傷でほぼ即死の状態でした。
(西村)鉄パイプの崩れ落ちる大きな音が聞こえ警備員が駆けつけたところ被害者は鉄パイプの下で仰向けに倒れ右手に登山ナイフをしっかりと握った状態で発見されました。
死体検案書には「右手の甲に骨折がみられるが生活反応はない」とあります。
右手の甲に鉄パイプが当たって骨折したはずなのに遺体は右手の甲が下になった状態でナイフを握っていた。
つまり何者かが右手の甲が骨折しているとは知らずに死亡した戸川進次にナイフを握らせた。
…という事になるわね。
発見当時の岡崎梨緒はどういった状態だったんでしょうか?岡崎梨緒はあの箱と鉄パイプの隙間に埋もれた状態で発見されました。
事件当時このスタジオには岡崎梨緒以外の…。
第三の人物がいたという事になりますね。
ここから逃げ去った者がいなかったか重点的に捜査をしてください。
了解しました。
警察には何度も主人が岡崎さんを殺すはずないって言ってるんですけどはなから主人が梨緒さんを殺そうとしたと決めつけているみたいで…。
あのテレビの一件でご主人は岡崎梨緒さんを恨んでましたか?いいえ。
むしろ逆で恨むどころか感謝していました。
うぬぼれていた自分にやり直すチャンスを与えてくれた。
だから君とも出会えたんだって…。
私たちが初めて会ったのは半年前の雨の日でした。
(麻衣の声)テレビ番組での騒ぎがあったあと主人がお弁当を売っていた私のところに雨宿りしにきたんです。
これください。
500円になります。
ありがとうございました。
思い出した…。
この味だ…。
美味しいよこれ。
とっても美味しい!ありがとうございます。
(麻衣の声)あの時も虹が出ていました。
虹…ですか?
(麻衣)はい。
私3歳の時に両親に捨てられて施設で育ったんですけどそこで聞いた事があるんです。
虹は会えない人同士を結ぶ架け橋で虹の向こうには会いたい人が待っている。
だからあなたは1人じゃないよって…。
今にして思えば不思議な縁でした。
まるで虹が私と主人を引き合わせたみたいに…。
そういえば主人もよく虹の話をしていました。
進次…!今はお金がないから安物の結婚指輪でごめんな。
でも俺にとっては大切な宝物で死んだ母親の形見なんだ。
(麻衣)虹が見える…きれい。
やっと心を許せる人に巡り合えたのに…また私は1人きりになってしまった…。
麻衣さんご主人は殺害された可能性があります。
えっ誰がそんな事を?ご主人が誰かともめていたとか亡くなる前に何か気になった事はありませんか?そういえば…お義父さんの葬儀の翌日おやじが自殺とは思えないって言って主人が1人で長野に出掛けました。
(麻衣の声)ですが帰ってきた時の様子がおかしくて…。
おかえり。
長野で何かあったの?別に…。
また今度話すよ。
(麻衣の声)そして翌日の7月10日の夜10時過ぎ岡崎梨緒さんからの電話を受けて主人は家を出て行きました。
(麻衣)進次!こんなに遅くにどこに行くの?心配かけてごめん。
でも大丈夫だから…とにかくお前は先に休んでて。
大事な体なんだから。
(麻衣の声)それが主人の最後の言葉になりました。
戸川進一郎の妻の亜里沙です。
こちらは経営コンサルタントの松沢順平さん。
うちのお店のプロデュース全般をお任せしています。
松沢です。
さあどうぞ。
失礼します。
東京地検の検事さんが直々にどんなご用件ですか?7月10日に亡くなられた戸川進次さんですが殺害された可能性があります。
えっ!事故じゃなかった?7月5日と7月10日お二人はどちらにいらっしゃいましたか?検事さんは私たち2人を疑ってるんですか?
(松沢の声)進一郎さんが死んだ日も進次君が死んだ日も私たち2人はここにいました。
ただいま。
お疲れさまです。
検事戸川家周辺の関係者を調べました。
まず戸川進次とシェ・トガワのチーフシェフの座を争っていた戸川亜里沙ですが24歳離れた戸川進一郎と6年前に結婚した際10億円にも上る進一郎の財産目当てだと周囲から陰口をたたかれていたようです。
遺言がないから亜里沙は総資産の半分約5億を相続する事になるわね。
7月5日の岡崎梨緒のアリバイは?マネジャーの鈴木学に確認したところ当日岡崎梨緒は一日中オフだったのでどこにいたかは把握出来ていないそうです。
アリバイはないのね…。
山さん明日長野に行きましょう。
わかりました。
(白柳刑事)長野県警茅野署の白柳です。
こちらへどうぞ。
(白柳)戸川進一郎の遺体は横谷温泉近くの乙女滝で発見されました。
死亡推定時刻は7月5日の午前11時頃。
現場の状況からみて自殺と思われます。
遺体の第一発見者から話を聞きます。
横谷温泉旅館の仲居をしている佐伯美代子という女性です。
山さんは戸川進次の足取りを追って。
わかりました。
この方なんですが…。
見かけませんねえ。
そうですか…。
この人なんですけど…。
いや知りませんねえ。
わかりません。
ありがとうございます。
あのちょっとすいません…。
ああ…見ましたよ。
本当ですか?ええ。
(店員の声)年配の男性の写真を見せられて…。
4日前この人見かけませんでしたか?
(店員)さあ…見てないですね。
いらっしゃいませ。
佐伯美代子さんいらっしゃいますか?佐伯美代子ですね。
はい。
えー…。
あっいました。
美代子さん。
7月5日の午前11時頃この橋の上からあそこを見ると男の方が頭から血を流して倒れていました。
それで最初に私がそばに行きました。
その転落死から4日後の7月9日戸川進次さんという方が訪ねてきませんでしたか?はい。
(進次)お仕事中すいません。
先日乙女滝で転落死した戸川進一郎の事でお話を伺いたいのですが…。
ところでこの乙女滝の上のほうへ行く道はありますか?はい。
(美代子)この階段を上がっていくと滝の上の…。
道路に出られます…。
お恥ずかしいんですけど五十肩なんです。
お昼はここのお蕎麦でいかがでしょうか?ええ。
(猪巻)ご注文がお決まりになりましたらお呼びください。
はい。
あっすいません。
あれ…?検事あの写真見てください。
岡崎梨緒です。
しかも日付が7月5日。
戸川進一郎が亡くなった日ね…。
死亡推定時刻は午前11時頃。
あの…ちょっとよろしいですか?はい。
岡崎梨緒さんがこのお店に来たのはこの時間で間違いありませんか?ええ。
確か午前の蕎麦打ち体験が始まってすぐでしたから10時頃ご来店されて12時頃までいらっしゃいました。
岡崎梨緒さんですよね?あの…一緒に写真撮らせて頂けませんか?どうぞ。
戸川進一郎の死亡推定時刻に岡崎梨緒がこのお店にいた…。
何か妙ですね。
ええ。
岡崎梨緒さんは誰かと一緒でしたか?いえお一人でご来店されました。
岡崎梨緒さんがこのお店に来た4日後の7月9日この人が来ませんでしたか?
(猪巻)ええ来ましたよ。
お客さんたちと同じようにその写真を見て驚いていました。
戸川進一郎さんが亡くなった7月5日あなたはどこにいましたか?え…一日中都内でドライブしたって言ったじゃないですか。
あなたがその日現場近くの長野のお蕎麦屋にいた事がわかりました。
待ってください。
私は戸川進次さんの件で勾留されてるんですよね?7月5日のアリバイなんて関係ないじゃないですか。
では戸川進次さんの事件に話を戻しましょう。
戸川進次さんは殺害されました。
手に握っていたナイフは死後に握らされたものです。
あなたは鉄パイプの下敷きになって動けなかった。
ナイフを握らせたのは誰なんですか?一歩間違えばあなたも鉄パイプの下敷きになって亡くなっていたんですよ。
何言ってるんですか!私がお蕎麦屋にいたのが確認出来たのなら進一郎さんが転落した時の私のアリバイは確定したって事でしょ?私は進一郎さんも進次さんも殺してない!これは明らかに不当勾留よ。
弁護士を呼んでちょうだい!弁護士さんあの朝日奈って検事別件で私を起訴するつもりよ。
一体何をしようとしてるのかしら!?
(西条)どうやら検察はあなたと戸川進次以外に第三の人物が事件現場にいたとにらんでいるようです。
あなた本当に誰かそこにいたのか知らないんですよね?知らないわよ!梨緒さん弁護人である私にだけは本当の事を話してください。
隠し事をされると弁護は出来ませんよ。
隠し事なんかしてない!早くここから出してちょうだい!わかりました。
私がなんとかしましょう。
先生。
岡崎梨緒さんの弁護士は西条先生でしたか。
朝日奈検事とこんな形でお会いするとは思いもしませんでしたよ。
車はこちらです。
泳がせて尻尾をつかもうって魂胆ですか?お手やわらかにお願いしますよ。
(エンジン音)
(記者)あっ来た来た来た…!岡崎さんお話伺わせてください!
(鈴木)前開けてくれよ!危ないからどいてくれ!岡崎さん岡崎さん!岡崎さん!長野に行ってきました。
それで何かわかったんですか?ご主人が思っていたようにお父さんの進一郎さんは殺害された可能性が出てきました。
それとご主人の足取りですが遺体を発見した佐伯美代子さんと会っていた事がわかりました。
そうですか。
いただきます。
あ…。
主人の料理を再現しようと思ったんですけど私には無理でした。
普通のお弁当しか作れない女に主人のような料理は作れません。
お弁当に入っていたパプリカのハンバーグ麻衣さんのオリジナルですよね?とても美味しかったのに。
(麻衣)あれは私のオリジナルじゃなくてある人のレシピをまねしたんです。
ある人?
(麻衣)私が育った養護施設にボランティアの人が来てハンバーグを作ってくれた事があるんです。
それがとっても美味しくて見よう見まねで作ったハンバーグが私の初めての料理でした。
パプリカって加熱しても栄養が壊れにくいんです。
あのホクホクの食感を出すのにつなぎには卵じゃなくユリ根を使って。
ご主人を感動させたお弁当をもう作らないんですか?これレシピじゃない…。
「長野県茅野市乙女滝」「横谷温泉旅館」「遊楽庵」…。
(麻衣)佐伯美代子さんですか?私に何かご用ですか?突然すいません。
先日戸川進次という者があなたに会いにきましたよね?ええいらっしゃいましたが…。
戸川進次は私の主人です。
お義父さんがここで亡くなった5日後に東京で亡くなりました。
恐らく主人はお義父さんが自殺ではない事をここで知りそれがもとで何者かに殺されたんです。
ぬれぎぬを着せられて殺された主人の無念を晴らすためにもあなたが何を話したのか教えてください!警察に任せたほうがいいわ。
警察なんか信用出来ません!主人の無実を証明するためなら私どんな事だってするつもりです。
あっ危ない!あなた…。
ごめんなさい…。
東京から1人で運転してきたので少し疲れただけです。
あまり無理したら体によくないわ。
今夜よかったらうちの旅館に泊まらない?でも…。
お部屋は私がなんとかするから少し休んだあとでゆっくりお話ししましょう。
ありがとうございます。
もう一軒寄ってから旅館に伺います。
じゃあ待ってるわ。
無理しないでね。
ありがとうございました。
あなたにお話ししたい事があります。
今日は横谷温泉旅館に泊まるので明日東京で会えませんか?わかったわ。
話をつけましょう。
火事だ!火事だ!誰か!火事です!大丈夫ですか!大丈夫ですか!おいちょっと誰か消防車!誰か消防車呼んで!火事だ火事だ!
(渡辺)警察です!下がって下がって!
(西村)離れて!みんな離れて!岡崎梨緒が行方をくらましたそうです。
どういう事?岡崎梨緒のマンション近くで放火騒ぎがありその隙に車で逃走した模様です。
岡崎梨緒の行方を全力で追って!
(フロント係)お客様。
当館自慢の黄金の湯はあちらです。
ごゆっくり。
ありがとうございます。
(従業員)お客様。
アクセサリー類は温泉の成分で変色する恐れがありますので外してからご入浴ください。
はいわかりました。
私…人を殺しました。
後頭部に鈍器による殴打痕。
凶器は特定出来ましたか?現在捜索中ですがまだ見つかっていません。
何かしら?この丸い形。
(白柳)死亡後に出来た痕のようです。
地面に落ちていた丸いものが遺体の重さで押しつけられて皮膚に丸い形が残った。
山さん指輪貸してくれる?あっはい。
どうぞ。
ありがとう。
形は似ていますが大きさが違いますね。
あっ私の指輪9号ですけど…。
同じ大きさね。
岡崎梨緒さんは東京で起きた戸川進次さんの事件の重要参考人です。
あなたはなぜ岡崎梨緒さんを殺害したんですか?実は私7月5日の午前11時頃乙女滝で戸川進一郎さんを突き落として逃げる岡崎梨緒を見てたんです。
それで口止め料を強請ろうと思ってゆうべ大岩の祠に呼び出したらもみ合いになって…。
気がついたら彼女死んでました。
岡崎梨緒さんに戸川進一郎さんは殺害出来ません。
7月5日の午前10時から12時の間岡崎梨緒さんは乙女滝近くのお蕎麦屋さんにいた事がわかっています。
そんなわけありません。
確かに逃げるのを見たんです!遺体の背中に直径1センチほどの丸い痕がありました。
この痕が何かわかりますか?大きさや形は女性の指輪の痕のようにも見えます。
そんな事知らないわよ!とにかく私があの人を殺したの!さっさと起訴してください!落ち着いてください!あっああ…。
右腕に力が入りませんね?たまに…。
手のひらを上にして。
腕を上げます。
このままにしてください。
わかりました。
口を開けてください。
「あー」と言ってください。
あぁ…。
わかりました。
病院で検査は受けていますか?ただの五十肩です。
病院なんて大げさです。
頭痛の症状も出ていますね。
別の病気の可能性が考えられます。
MRI検査の手配をお願いします。
はい。
岡崎梨緒が殺されたって本当なんですか!?佐伯美代子って容疑者の目的は一体なんなんです?現在捜査中ですのでお答え出来ません。
失礼します。
ここです。
犯行現場から走って逃げてくる佐伯美代子が目撃されたのは旅館と霧降の滝の間にあるこの橋です。
遺体はこの大岩の祠の陰に仰向けに倒れた状態で発見されました。
鑑識さん。
はい。
この周辺で指輪のような丸いものは見つかってませんか?いえそのようなものはありませんでした。
ありがとう。
妙ですね検事。
遺体の下にあった丸いものを何者かが持ち去ったという事でしょうか?
(鑑識)凶器が見つかりました!
(カメラのシャッター音)女将さん佐伯美代子さんはいつからこちらで働いていらっしゃるんですか?美代子さんが来てから15年になりますね。
あんなに優しい性格の美代子さんが殺人だなんていまだに信じられません。
こちらに来るまでどんな暮らしをしていたのかご存じありませんか?病院や養護施設を回って手料理を振る舞うボランティアをうちに来る前から2年前に辞めるまで続けていたそうです。
そのボランティアはなぜ辞めたんですか?それは知りません。
美代子さん指輪をする事はありましたか?いえ。
仕事の邪魔だからと一切していませんでした。
そうですか。
お仕事中ありがとうございました。
あっいえ…。
ではどうぞごゆっくり。
ありがとうございました。
検事…。
鑑定の結果先ほど発見された石が岡崎梨緒の殺害に使われた凶器だと断定されました。
石の重さは6キロ。
指紋は検出されなかった。
岡崎梨緒に強い殺意を抱いていた人間。
一体誰なんでしょうか?この旅館の駐車場の防犯カメラを調べたところ岡崎梨緒の死亡推定時刻に戸川麻衣がこの旅館に来ていた事がわかりました。
戸川麻衣が?はい。
お願いします。
はい。
まず午後4時40分戸川麻衣が車から降りて旅館に入っていく映像です。
そしてあちらをご覧ください。
お願いします。
はい。
午後8時20分岡崎梨緒も車でやってきています。
山さん…。
はい。
助手席に誰か乗ってるように見えない?画像を解析して詳しく調べます。
次お願いします。
はい。
そして岡崎梨緒の死亡推定時刻である午後9時から15分後…。
戸川麻衣が車でこの旅館を後にしています。
検事。
戸川麻衣は岡崎梨緒殺害に関与しているとみて間違いありませんね。
戸川麻衣を任意で取り調べるよう白金署に連絡して。
わかりました。
MRIの検査結果が出ました。
あなたの右腕の症状は脳腫瘍によるものです。
脳腫瘍?舌咽神経に発生した腫瘍が次第に大きくなる事で脳幹を強く圧迫し右腕の脱力を引き起こしています。
さらにその腫瘍が味覚障害を起こしている可能性があります。
味覚障害…。
あなたは病院や養護施設で手料理を提供するボランティア活動を2年前に辞めていますね?あんなのはただの暇潰しです。
飽きたから辞めただけです。
私が岡崎梨緒を殺害した事とはなんの関係もありません。
凶器は6キロの石です。
あなたに持ち上げる事は出来ません。
私が岡崎梨緒を殺したんです!早く私を起訴してください!一昨日夜9時頃岡崎梨緒さんが殺害された大岩の祠にあなたもいましたね?はい。
(麻衣)一昨日は夫の残したメモを頼りに車で横谷温泉に行きました。
そこで7月5日に岡崎梨緒さんが来ていたと知り…。
あなたにお話ししたい事があります。
今日は横谷温泉旅館に泊まるので明日東京で会えませんか?
(麻衣の声)でもその夜梨緒さんから大岩の祠で待っていると連絡があって大岩の祠に行ってみると梨緒さんが死んでいたんです。
私が殺したんじゃありません!左手薬指にはめていた指輪はどうされたんですか?それは…。
なくしました。
これを左手の薬指にはめてもらえますか?はい。
この指輪に似たものが岡崎梨緒さんの遺体の下にありました。
私の指輪は露天風呂の「黄金の湯」に入ってる間に脱衣所のカゴから盗まれたんです。
きっとそれを盗んだ人が私に殺人の罪を着せようとしたんです!美代子さんに岡崎梨緒さんを殺害する事は出来ません。
麻衣さん。
ご両親はあなたが幼い頃に失踪したんですよね?検事さんまさか…美代子さんが私の実の母だとお考えなんですか?DNA鑑定をさせてもらえませんか?DNA鑑定…。
消えた指輪の大きさと遺体についていた丸い痕は一致した
状況証拠は戸川麻衣が岡崎梨緒を殺害した事を示している
なぜ美代子は麻衣をかばおうとしたのか…
すいません。
耀子さん何か心配事?いえ…。
なんでもありません。
検事DNA鑑定の結果が出ました。
佐伯美代子と戸川麻衣は親子ではありませんでした。
DNA鑑定の結果佐伯美代子さんはあなたの母親ではありませんでした。
そうでしたか…。
でも彼女は岡崎さんを殺害したのは自分だと頑なに言い続けています。
うっ!大丈夫ですか?はい…。
麻衣さん…あなた妊娠していますね?はい。
だから私は生まれてくるこの子のためにも主人の疑惑を晴らさなければならないんです!
(携帯電話)はい朝日奈。
「検事」横谷温泉旅館の防犯カメラの映像を解析した結果岡崎梨緒の車にサングラスをしたもう1人の人物が乗っていた事がわかりました。
現在白金署が鈴木マネジャーの事情聴取に向かっています。
(渡辺)鈴木さん!警察の者ですが。
警察?ちょっとお話伺えますか。
かっこいいサングラスしてますね。
一体なんの用です?俺が何かしたっていうんですか?マネジャーの鈴木は岡崎梨緒と長野へは行っていませんでした。
そこで岡崎梨緒の交友関係を洗い直したところ梨緒のマンションの住人が半年ほど前に松沢順平の姿を目撃していました。
(女性)梨緒さん!こんにちは。
今日も寒いですね。
(梨緒)そうですね…。
失礼します。
サングラスの男は松沢…。
梨緒と松沢が…。
(チャイム)
(西村)警視庁白金署の者ですが…。
松沢順平さん。
戸川進一郎さん進次さんならびに岡崎梨緒さん殺害容疑で署までご同行願えますか。
いきなりなんですか。
変な言いがかりはやめてください。
岡崎梨緒さんが殺害された日の夜彼女の車の助手席に乗っていたサングラスの男はあなたですよね?違いますよ…。
これは私じゃない!なんで私があんな女の車に乗らなきゃいけないんですか。
松沢さんあなたと岡崎梨緒は男女の仲だったそうじゃありませんか。
岡崎梨緒は私がプロデュースするシェ・トガワを破滅に追いやった張本人ですよ!?なんであんな女と手を組まなきゃいけないんだ!絶対にありえない!
(渡辺)岡崎梨緒の車の助手席から男性の毛髪が発見されました。
(西村)あなたの毛髪を提出して頂けませんかね?任意なんでしょ?断る。
帰ってくれ…。
帰ってくれ!!あーっおしまいだー!ああーっ!!キャー!
(西村)通報を受けて駆けつけた時には松沢はこのロープで首を吊り死亡してました。
死亡推定時刻は昨夜の10時頃と思われます。
首筋に引っかき傷…。
死ぬ間際にロープを解こうとして首を引っかいたとしたら自殺ではない可能性がありますね。
遺体の第一発見者は?戸川麻衣です。
戸川麻衣?現在署で事情を聞いてますが戸川麻衣は今朝戸川亜里沙から電話があり相続の件で呼び出されたと供述してます。
しかし戸川亜里沙はそんな電話はしてないと否定してますね。
あっ…。
ちょっと失礼します。
検事…。
「遺書」と書かれていますね。
(松沢の声)「私は戸川進一郎戸川進次岡崎梨緒の3人を殺害しました」「私の狙いは時価総額10億円にも上るシェ・トガワブランドの乗っ取りでした」「そのためにまず進一郎の妻亜里沙に近づき店の経営に参加する権利を得ました」「その一方で岡崎梨緒にテレビの生放送で店の評判を落とす発言をさせた上で進一郎から安く買い上げようと計画」「ところが想定外の事態が発生しました」「梨緒の発言にショックを受けた進次が店を辞めてしまったのです」一流シェフへの道をそんな簡単に諦めるのか?もう決めたんだ。
俺は1人で一からやり直す。
(進次)店はおやじと亜里沙さんでやればいい。
進次!
(松沢の声)「チーフシェフを失った店の評価はガタ落ちしそれに追い討ちをかけるように今度は進一郎が店を閉めると言い出しました」「その進一郎が思いつめた様子で出掛けるのを見て胸騒ぎがした私は岡崎梨緒と2人であとを追いかけました」「横谷温泉に着くと梨緒を近くの蕎麦屋で待たせ進一郎は旅館を出てから亜里沙に電話をし…」亜里沙か?東京に戻ったら店を閉める。
もう決めた事だ!今までの儲けは全て寄付する。
(松沢の声)「このままでは計画が丸潰れになると思った私は隙を見て乙女滝に戸川進一郎を突き落とし殺害しました」「しばらくして進一郎が自殺ではないと気づいた進次が梨緒を追及してきました」「そこで私は梨緒と2人で進次の口を封じる事にしました」
(梨緒)私が戸川進次をこの鉄パイプの下におびき寄せあなたがこの鉄パイプを倒した瞬間にこの箱のところに逃げればいいのよね。
これで邪魔者もいなくなる。
俺たちの思うつぼだ!
(松沢の声)「ところが処分保留で釈放された梨緒が…」戸川親子殺しの真相をばらされたくなかったら…5億ちょうだい。
フフフ…。
冗談だろ?私は2人の殺害に直接手は下してな〜い。
全部あなたの犯行よ。
梨緒…。
お前俺を裏切る気か?裏切ったのはあなたのほうでしょ。
あなた私を殺すつもりだったでしょ!
(松沢の声)「だから私は梨緒も殺すしかないと決めました」「ちょうど麻衣が梨緒に話があると言ってきたのでそれを利用して麻衣に梨緒殺しの罪を被せようと考えました」「まず梨緒のマンション近くで放火騒ぎを起こして梨緒を長野に連れ出し麻衣に罪を着せるのに必要だと言って麻衣の所持品を梨緒に盗ませてから…」
(梨緒)大岩の祠にいるからすぐに来て。
(殴る音)ああっ!
(松沢の声)「梨緒を殺しました」
(松沢の声)「麻衣の指輪を遺体の下に隠し麻衣の犯行と見せかけた上で…」やあっ!
(石が川に落ちる音)
(松沢の声)「電車で東京に戻りました」「しかしついに捜査の手が私に迫ってきました」「もう逃げ切れません。
死んでお詫びします」「松沢順平」内容に矛盾はなさそうですがなぜ戸川麻衣の指輪が消えたのかについては依然謎のままですね。
まだ乾ききってないわね。
香りもないし油分もない…。
鑑識さん。
あの染みの分析をお願いします。
はい。
昨夜10時頃あなたどこにいましたか?自宅に1人でいました。
それを証明する人は?「いません。
私はいつも1人ですから」
(ノック)失礼します。
検視の結果松沢順平の首に角度の異なる索条痕が2つ見つかりました。
犯人は背後から水平方向に首を絞めて殺害したのち天井に吊るしたロープで垂直方向に遺体を引き上げたとみられます。
戸川麻衣には松沢を殺害する動機があります。
昨夜のアリバイもありません。
十分犯行は可能です。
検事さん…。
昨夜の10時頃松沢さんが亡くなりました。
あなた昨夜の10時頃どこにいましたか?事務所にはいましたけど9時には家に帰っていました。
それを証明出来ますか?それは…。
あなた今朝麻衣さんを松沢さんの事務所に呼び出しましたね。
松沢さんが亡くなった事をあなたは知っていた…。
今朝私が彼の事務所へ行くと松沢さんはすでに死んでいました。
だから私に容疑が向かないように麻衣さんを電話で呼び出しました。
今すぐ来てくれる?でも私は松沢さんを殺してはいません。
信じてください検事さん!あっお疲れさまです。
あら。
サユリさんと仲直り出来たのね。
ええ。
また今日からいつものお弁当生活です。
あの…ご心配をおかけした検事の分もサユリが作ったそうなんでよろしければ…。
そんなに気を使ってくれなくていいのに…。
いいえ。
どうぞどうぞ。
はいどうぞ。
ありがとう。
じゃあ…。
あら。
「ゴメンネ」…。
あっ!あ〜それわたくしの分なんで!すいません。
失礼しました!検事はよろしければこちらをどうぞ。
ありがとう。
すいません…。
わたくしお弁当ほど作り手の気持ちが食べる人に伝わるものってないと思うんですよね。
仕事でミスをして落ち込んだ時なんかサユリのお弁当に案外癒やされたりもするんです。
私が育った養護施設にボランティアの人が来てハンバーグを作ってくれた事があるんです。
山さん戸川麻衣が育った養護施設を調べて。
それと…もう一度DNA鑑定を。
(子供たちの声)
(立川正人)ここだな…。
(北野留美)いきましょう。
麻衣さんと美代子さんのお二人を繋ぐ接点が見つかりました。
麻衣さんがいた埼玉の養護施設に美代子さんがボランティアとして一時期来ていたんです。
麻衣さんの思い出のハンバーグは美代子さんが作ったものだったんです。
DNA鑑定の結果美代子さんは戸川進次さんの母親と判明しました。
美代子さんは進次さんのためそして麻衣さんのお腹にいる赤ちゃんのために麻衣さんをかばったんです。
味覚障害になる前に作った手料理の味を進次さんが愛した麻衣さんを通してお孫さんに伝えてほしかったんですよね。
(麻衣)美代子さん…。
麻衣さん…今まで黙っててごめんなさい。
私は進次の母です。
でも…進次さんは自分が幼い時に母親は亡くなったって言ってました。
夫の戸川が進次にそう話してたんです。
写真や私に関するものは全て処分し進次の前から私の存在を消し去ったんです。
35年前出会った頃の戸川と私はお互いに料理の道を極めようと技を競い合う若きシェフ同士でした。
やがて私たちは一緒に暮らし始め夫婦同然の生活を始めました。
(美代子の声)病弱だった進次のため私はシェフの夢を捨て自然の食材を使った健康料理を作るようになりました。
中でも進次はパプリカとユリ根を使ったハンバーグが大好きでした。
美味しい!よかった〜。
でも戸川は私とは正反対の道を歩んでいました。
(美代子の声)若くしてフレンチ界の天才と呼ばれ続けた戸川は次第に期待と重圧に押し潰されその反動で私に手を上げるようになりました。
(美代子)やめて!何をジロジロ見てるんだ!進次にだけは手を出さないで!
(美代子の声)戸川の暴力に耐え切れず…。
私は進次を連れて家を出ようとした矢先に脳腫瘍が見つかり入院を余儀なくされました。
どうしてお別れしなくちゃいけないの?お母さん。
進次…。
ちょっとだけ会えなくなるけどお母さん頑張って元気になるから。
待っててね。
嫌だよお母さん。
僕も一緒にいたい。
進次ほら見て。
虹だ!虹はね会えなくなった人と人とを繋いでくれる架け橋。
だから進次がお母さんに会いたくなった時はこの指輪を見なさい。
虹の向こうにはいつだってお母さんがいるんだから。
(美代子)寂しくないでしょ?わかった。
でもいつかちゃんと帰ってきてね。
約束する。
お母さんも頑張ってくる。
(美代子の声)そして進次は戸川のもとで暮らす事になりました。
進次…。
放射線治療を受け脳腫瘍はいったん治まって退院する事が出来ました。
それから進次を取り戻そうと毎日のように戸川の家に足を運びましたが…。
(美代子の声)進次は戸川の厳しい指導にもめげず一生懸命料理の道を突き進んでいました。
進次上達したな。
本当?天国のお母さんにも食べさせてあげたいな。
よーし続けて。
はい。
(美代子の声)そんな2人の間に私の入る隙間はなくなっていました。
今さら進次の前に母だと名乗り出るわけにもいかず…。
私は1人ひっそりと暮らし始めました。
そんな中寂しさを紛らわせようと料理作りのボランティアに参加するようになったんです。
(一同)お誕生日おめでとう麻衣ちゃん。
(拍手)どうぞ。
おばちゃんこのハンバーグすっごく美味しい!ありがとう。
(麻衣の声)両親の顔を知らない私にとってあのハンバーグは…。
一生忘れられないお母さんの味でした。
麻衣さん…。
そんな美代子さんの唯一の心の支えを2年前に味覚障害が襲ったんですね。
ええ…。
それで私は料理を作る自信をなくしボランティアを辞めました。
もう自分の料理で人を笑顔にする事は出来ない。
そう諦めていた私の前に麻衣さんが現れたんです。
私が?
(美代子の声)進次がテレビ番組の一件でお店を辞め町中でお弁当販売を始めたって聞いた私はその様子を見に行きました。
ありがとうございました。
はい。
いらっしゃいませ。
いらっしゃいませ。
こっち1つください。
あっはい。
(女性)うわあ〜美味しそう!
(美代子の声)進次と麻衣さんのお弁当の中身を見て驚きました。
それは私が昔幼い進次や麻衣さんに作ってあげたハンバーグにそっくりだったからです。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
いらっしゃいませ。
(美代子の声)それから半年が経ち戸川が突然私を訪ねてきました。
進次の弁当を食べてようやくわかったよ。
進次が追い求めてきたのは究極のフレンチ料理などではなく素朴なおふくろの味だった。
私は愚かだった。
もう店を続けていく自信はなくなったよ。
店は畳んで全財産を君のやっているボランティア活動に寄付させてもらえないか。
進一郎さん…。
君には迷惑ばかりかけてすまなかった。
(美代子)そのあとすぐに戸川は乙女滝で亡くなりそれから数日後今度は息子の進次が現れました。
(進次)お仕事中すいません。
先日乙女滝で転落死した戸川進一郎の事でお話を伺いたいのですが…。
僕何かおかしな事言いましたか?あっいえ…。
あの…確かあなたは…。
有名なシェフの方ですよね?ああ…それは過去の事です。
今は妻と2人でお弁当を売っています。
あの一流レストランには戻らないんですか?もう戻りません。
僕がずっと作りたかった料理は全然違うものだと最近気づいたんです。
全然違う料理?妻の作ったハンバーグです。
その素朴な味は僕が小さい時に亡くなった母の手料理そのものだったんです。
養護施設で育った妻は年に1回誕生日会で食べたハンバーグの味が今でも忘れられないと言います。
心の込もった料理には悲しみを乗り越える力がある。
食べた人からそういうふうに言ってもらえるような料理人になりたいと僕は一からやり直す事にしたんです。
(美代子)その2日後に進次は死にました。
そして私は決めたんです。
進次が愛した麻衣さんそして生まれてくる赤ちゃんをどんな事をしてでも守っていこうと。
麻衣さんに旅館に泊まるように勧めたのは全てを打ち明けようと思ったからです。
でもその前に…。
(美代子の声)麻衣さんがただならぬ様子で旅館から出て行くのを見てあとを追いかけました。
私が大岩の祠に着くと麻衣さんは遺体の前で立ち尽くしていました。
私は麻衣さんが殺害したと思いとっさに身代わりになろうと決めました。
麻衣さん!?殺人犯の身代わりになろうだなんてまともじゃない事はわかってました。
でも本当は私が自分の手で殺したいくらいだった。
早く行きなさい!はい…。
(美代子の声)麻衣さんをその場から逃がしたあと遺体の下にあの指輪が落ちている事に気づきました。
(美代子の声)この指輪が警察に見つかればいずれ麻衣さんに捜査が及ぶ。
そう思った私はとにかくその場から離れようと必死に走りました。
(美代子の声)でも逃げ切れませんでした。
捕まる前に指輪をどこかに隠さなければと思いましたが…。
その指輪は私にとって進次との思い出の品だったんです。
(美代子の声)ですが私はいつかまた巡り合えると信じて指輪を林の中に投げました。
私…人を殺しました。
麻衣さんにだけは捕まってほしくなかったんです。
美代子さん…。
虹は会えない人同士を結ぶ架け橋で虹の向こうでは会いたい人が待っている。
幼い麻衣さんにあなたはそう話したそうですね。
ええ…。
でも私は進次との思い出が詰まったかけがえのないものを自分の手で捨ててしまったんです。
美代子さん麻衣さんの指輪を投げたのはこの辺りですね?
(美代子)はい。
検事…。
これを見てください。
これです。
これは…。
松沢順平さんは自殺ではなく他殺でした。
松沢さんを自殺に見せかけて殺害したのはあなたですよね?西条さん。
最近眼鏡を新調されましたね。
ああ…これは前のをどこかでなくしましてね。
岡崎梨緒が殺害された現場近くの林の中で小さなガラスの破片が見つかりました。
それはあなたがなくした…いえ壊してしまった眼鏡の一部ですよね?その破片を分析した結果角膜移植後の乱視を矯正するレンズの一部と判明しました。
あなたは去年角膜移植を受けてますね?移植をしたあと医師から処方された免疫抑制剤の目薬を常用してますね?松沢順平の事務所のソファについていた染みからあなたの目薬と同じ成分の目薬が検出されました。
西条哲也さん。
あなた9歳の時に3週間ほど埼玉の養護施設にいた事がありますね?施設の資料にあなたと麻衣さんの名前があります。
旧姓奥村哲也奥村麻衣。
私と麻衣は6つ違いの兄妹です。
両親が失踪して残された幼い私たちは施設に引き取られました。
(西条の声)ですがひと月もしないうちに私は西条の家の養子になり病気がちだった麻衣は施設に残されました。
ですから麻衣は自分に兄がいる事を知りません。
1人で寂しい人生を歩んできた麻衣に私はずっと負い目を感じ続けてきました。
だからいつか麻衣を助けてあげられたらと猛勉強して弁護士になりました。
(西条の声)私は毎日のように進次君と2人で頑張る麻衣を見守ってきました。
ああ〜しまった!昼前に急に仕事が入っちゃって出遅れちゃった。
(進次)大丈夫ですよ。
はい。
西条さんの分ちゃんと取ってありますよ。
(麻衣)はい。
ああ…。
麻衣ちゃん進次君ありがとう。
(西条の声)それからしばらくして進次君が亡くなりました。
(西条の声)今度こそ麻衣を守ろうと思っていたのに何も出来なかった自分に心底腹が立ちました。
だからあえて岡崎梨緒の弁護を申し出て相手の懐に飛び込む事で彼女たちの企みを暴こうと考えました。
(西条の声)麻衣の車を尾行して長野まで行った私は…。
(西条の声)赤い車に乗ってきた松沢と梨緒を見ました。
(西条の声)ですが帰りは松沢が1人だけでしかも車を置き去りにしていきました。
(西条の声)何かよからぬ事が起きたに違いないと思い私は山道を登っていきました。
(人々の話し声)
(人々の話し声)うわっ!
(眼鏡の割れる音)あっ!
(西条の声)その後東京に戻った私は松沢に会いに行きました。
岡崎梨緒の弁護士先生が一体私になんのご用件ですか?実は私大岩の祠から逃げ出すあなたを目撃してるんですよ。
なんだって?でもどうかご安心ください。
私は金次第でどんな弁護でも引き受けます。
現に岡崎梨緒だって釈放してみせたじゃないですか。
実は…。
(西条)私は松沢からこれまでの犯罪の一部始終を聞き出しました。
ですが松沢は最後に私が一番許しがたい事を言ったんです。
全ての容疑を麻衣に被せて偽装自殺させる!?そういう事。
ハハハハ…ハハハハハ…。
俺が用意したこのロープで。
協力してくれれば店の一軒や二軒君に渡してもいい。
悪くない話だろ…ああーっ!ぐっ…何するっ…くっ…!うわーっ!ああっ…!麻衣を殺そうとする奴は俺が許さない!俺が絶対に守る!
(西条の声)気づいた時には松沢は死んでいました。
私は松沢が自殺を図ったように見せかけるためパソコンで遺書を書きロープで天井から吊るして逃げました。
私は麻衣を陰からそっと見守っていけたらそれだけで十分だった。
そんな私の小さな希望を…。
朝日奈検事あなたは打ち砕いた。
あなたは…鬼だ。
法律家には冷酷な判断を下さなければならない時もあります。
西条さんどんな理由があってもあなたにだけは人を殺めてほしくありませんでした。
弁護士でありながら法を犯した以上私はどんな罰でも受ける覚悟はあります。
ただ1つだけお願いがあります。
麻衣には私が兄である事を黙っておいて頂けませんか。
犯罪者の兄がいるとわかるより自分には家族はいないと思っていたほうが麻衣は幸せなはずです。
西条さん。
あなたが殺人まで犯して守ろうとした麻衣さんへの思いがどれだけ切なくつらいものか私にもわかってるつもりです。
でも私はあなたを許さない。
許すわけにはいかないんです。
弁護士でありながら罪を犯したあなたを。
そしてどれだけ妹の麻衣さんを思っていたのか伝えずに逃げようとするあなたを。
西条哲也さん。
あなたを松沢順平さん殺害の罪で起訴します。
この指輪を取りに行かなかったら西条さんが捕まる事はなかったかもしれません。
西条さんが私の兄だったなんて…。
麻衣さんごめんなさい。
どうか私の事は忘れて元気な赤ちゃんを産んでください。
美代子さん。
あなたはお料理を通じていつも私たちのそばにいました。
私は1人きりじゃなかったんです。
美代子さんの腫瘍は右腕に症状が出るほど大きくなっています。
難しい手術が必要ですが必ず治ると信じてください。
希望を捨てずに頑張ってくださいね。
ありがとうございます。
お腹のお子さんを大事にしてくださいね。
ありがとうございます。
早くよくなってもっとたくさんお料理を教えてくださいね。
お義母さん。
麻衣さん…。
あっ検事。
虹が出てきましたね。
あっ…。
(大山サユリ)すいません。
娘が覚えたてのハンバーグを皆さんに食べてもらいたいからって厨房までお借りしちゃって…。
いいえ。
うちは全然構わないですよ。
美穂ちゃんさなかなか筋がいいね。
誰に教わったの?
(大山美穂)ママに教わりました。
美味しい手料理食べさせておけばパパはすぐに機嫌が直るって。
ハハハハ…。
おいサユリ娘に余計な事を吹き込むな。
山さん。
仲直りしたばか2014/11/22(土) 12:00〜13:55
ABCテレビ1
検事・朝日奈耀子