ここ京都の平野神社では毎年4月10日桜花祭が催され数々の神事が執り行われて花見の宴が盛り上がる
その京都から車で2時間のところに若狭湾国定公園の三方五湖がある
(冬木多喜男)桜もええけどな三方町の梅もきれいやで。
ここら一面に咲くんや。
今日は京都の芸者弁護士藤波清香の家族旅行
とは言ってもこの男正式な夫にあらず
もっか彼女と同棲中のカメラマン冬木多喜男である
(藤波公平)あった!ホンマに湖が5つあるわ。
(藤波清香)うわぁ〜ホンマにきれいやな。
京都のお庭もええけどこんなきれいなところへ家族旅行やなんて素敵やわ〜。
はよターキーと結婚せな家族って呼ばれへんよ。
ええがなそんなこと。
パパって呼んでみろや。
そんなん急には呼べへんわ。
なあ?フフフ…。
写真撮っとくぞ。
あっ公平写真。
いきまっせ。
はーい。
はいよ。
へえ〜こんなんあるわ。
なあこれ押してみ。
ここ。
うん!『ふるさと』ターキー!お見事!『ふるさと』お母さん見てみ!ぎょうさん鍵あるわ。
きっと泥棒除けのお守りやわ。
違うて。
誓いの神って書いてあるやろ。
これな誓いを書くの。
誓いの鍵…。
「パパと呼びます」と書いたか?書いた!そこへ掛けとくねん。
あなたの鍵は永遠にこの地に残ります。
(アナウンス)「三方五湖は1つの淡水3つの半淡水そして1つの海水の湖で成り立っています」あれがずっと常神半島であの島が御神島や。
神さんの岬なんや。
そうやな。
なあグラスボート乗ろか?うん!お母さん見てみ。
小さな魚が見えるよ!ホンマ?いやぁ〜ホンマや!おい…!
(カメラのシャッター音)おい…!ターキー何してるの?ねえ魚いっぱいいるよ!おい殺人事件や!何言うてんの!?ホンマやて!えっ?レッツゴー!はい行こう。
いらっしゃいませ。
お世話になります。
はいお待ちしておりました。
こちらにお願いします。
ターキー!うん…。
ターキー。
清香ねえさんについでもらうのええなぁ〜。
ああ…えろうきつう降ってきたな…。
春の長雨やんか!おっ!お前そんな言葉どこで覚えたんや?ホンマのお父ちゃんが言うとった。
あっそう。
いいよ…。
よう降るな…。
怖いわこれ。
(アナウンサー)「三方町で土砂崩れがあり常神に向かう海岸線の道路が通行止めとなっている模様です」「この土砂崩れによるケガ人はありません」「現在復旧作業が行われ明日朝には開通する模様です」危ないとこやったな…。
これさっき走ってきた道やで。
はあ…。
酔ってしもたわ。
色っぽい目になってる。
ちょっと撮っとこ。
はい清香ねえさん。
ナイスショット。
ターキーもう寝よか。
あのなどうしてもあのことが気になってんねん。
やっぱ警察に言うたほうがええかな?そんなん証拠もないのに…。
証拠あるがな。
ちゃんとフィルムに入ってるがな。
けど故意に石を突き落としたかどうかわかれへんねやろ?長雨で崖崩れも多いやろし…。
いや違う。
あれは絶対殺人行為や。
(山岡加奈江)おはようございます。
(中島慎吾)おはよう。
おはようございます。
(藤沢幸次郎)おはよう。
おい大丈夫か?ああ大丈夫。
ターキーいってきます。
はい行っといで。
晩ご飯お願いね。
はい作っときます。
これやっぱり殺しやないか…。
とにかく私としては現在新しい農薬を開発中ともありそれをテコに当社を再建したいと思っている。
ですからそれでは手遅れやと言うてますねん。
銀行かて身売りするんやったら今がチャンスやと進言してるんです。
当社が生きのびる道はそれしかないやないですか。
(清水雅一)副所長大丈夫ですか?
(中島)ああ…。
所長うちを買収したいという三光化学さんですが狙いは開発中の新しい農薬ですか?
(藤沢)もちろんだよ。
副所長!副所長…。
(藤沢)救急車!早く早く…。
あとはお願いします。
はいわかりました。
(救急車のサイレン)ああ…。
今ここで手術なさってます。
(中島尚子)はあ…。
あっ先生!中島の家内です。
残念ですがたった今お亡くなりになりました。
えっ!?えっ…?死因がはっきりしませんのでご遺体はもうしばらく預けていただけませんか?何かご不審な点でも?ひょっとして薬物による中毒死かもしれません。
薬物!?・
(ノック)はい。
清水部長からお電話です。
はい。
ええっ!?亡くなった…?
(やかんが吹く音)・
(ノック)はい。
(浅田圭子)所長の決済お願いします。
たった今副所長が亡くなったそうよ。
えっ?すぐにご自宅に伺って奥様のお手伝いをしてさしあげて。
私が…?あなた奥様のご親戚でしょ?はいわかりました。
圭子さんこちら…。
おおきに。
ありがとう。
圭子さん座布団どうしましょう?じゃあこっちから並べましょう。
圭子さん。
はい。
ちょっと…。
はい。
私会社のことは何も知らないのよ。
主人を目の敵にしてた人って誰かしら?さあ…上のことは私たちにはようわかりませんので。
主人はきっと殺されたのよ。
毒を飲まされて…。
えっ!?所長の藤沢さんかて電話の1本もくれたってええやない。
おかしいわよ!このこと人に言ったらダメよ。
何!?司法解剖?ええもともと中島さんは肝臓に疾患を持っていたそうで薬物による中毒症状は出ていたというんです。
まさかうちで作っとる薬品やないやろな!?いやそれは…。
おはよう。
おはよう!何時やと思てんの?チビもう学校行った?もうとっくの昔。
はよ食べてな。
はい。
(アナウンサー)「次に昨日京都の製薬会社エフエヌ化学研究所で同研究所副所長中島慎吾さん42歳が会議中に突然倒れ死亡するという事件が…」ああ…!どないしたん?いや何でもない。
「警察の発表によりますと遺体を解剖した結果中島さんの体内からヒ素が検出されました」「亡くなった中島さんはエフエヌ化学研究所を設立したメンバーの1人で現在は副所長を務めていました」ほないってくるわね。
ターキー後片付けお願いね。
いってきます!行っといで。
「午前中に行われた役員会議で体調を崩して倒れ…」どないなっとんのやこれ。
殺そうとした奴が殺されてるわ。
「警察は中島さんの交友関係を…」えらい写真撮ってしもた…。
「関係者から事情を聞き捜査を進めています」
(木島)みなさんそのまま!何のご用ですか?京都府警です。
強制捜査なんですよ。
すみません。
座ってて。
(桑山)強制捜査です。
当日の役員会でお茶を淹れたのは誰かわかりますか?私です。
このキッチンを使われたんですね?
(加奈江)はい。
鑑識さん!念のために流しのパイプも調べてくれんか?はい。
お茶っ葉はどこですか?あそこです。
ああ結構です。
こちらでやりますから。
コーヒーと紅茶がありますね。
ええ。
当日会議で飲んだ人は?いえみなお茶でしたから。
とにかくここにあるものすべて証拠品として押収します。
君!・はい。
あの…。
警部!科警研の結果が出ました。
ご苦労さん。
科警研とは科学警察研究所のことである
エフエヌ化学研究所の秘書室にある流し台のパイプの中からヒ素が検出されたという報告が届いたのである
よし家宅捜索の令状をとってくれ。
秘書の山岡加奈江の自宅だ。
(チャイム)・
(加奈江)はーい。
ただいまから家宅捜索を開始します。
警部!ちょっと…。
亜ヒ酸!?山岡さん。
はい…。
ちょっと来ていただけませんか?この白い粉は?さあ…。
ファンデーションがこぼれたのかしら…。
ほう…。
ちょっと着替えていただけますか?
秘書の山岡加奈江はこの場から任意同行され取り調べを受けることになった
亜ヒ酸が検出されとるんだ!違います。
私じゃありません。
ハンドバッグから出てきた白い粉末はまぎれもなく亜ヒ酸だったのである
だが山岡加奈江は頑強に犯行を否認するのだった
知らんのです。
信じてください。
刑事さん!
(電話)はい藤波伊東法律事務所です。
私ですが…。
その事件のことなら新聞やテレビで…。
それで被疑者のお名前は?はい。
山岡加奈江さん。
わかりました。
それでは一度お話を伺ったうえで。
失礼いたします。
(伊東節子)エフエヌ化学研究所の事件ですか?相変わらず鼻が利くわね。
どうせなら男性のことで鼻が利くといいんだけど。
クンクンクン…。
そのうちいい人が見つかるわよ。
私出かけてきます。
いってらっしゃい。
どっかにいい男いないかなぁ。
どうもすみません。
社内ではゴタゴタしていましてゆっくりとお話ができないものですから…。
いいえ。
所長お出かけですか?ちょっと…。
警察で何を訊かれたんや?主に山岡君のことを。
まあ詳しいことはお戻りになられてから。
じつはまだ公表したわけではないんですが彼女と今年の秋結婚する予定でした。
結婚を?お恥ずかしいんですが私まだ独り者でして…。
でも結婚をこの秋に控えていた彼女がなぜこのような事件を?とても考えられないんですがあえて言うならこの私のことを思て…。
具体的に言いますと?現在うちの研究所を売却する話が持ち上がっていまして…。
それを推進していたのが副所長の中島君でして…。
中島さんというのは今回の事件の被害者ですね。
ええ…。
ですが私はそれには反対してきました。
たしかに経営状態は行き詰っていましたが現在開発中の新しい農薬をよその社に渡すことは研究者である私には耐え難いことです。
しかし中島君は他の役員を抱きこんで私を追い落とそうと…。
わかりました。
明日にでも山岡さんと接見してきます。
弁護士さん!信じてください。
私神に誓って中島さん殺したりしてません!私誰かにはめられたんです。
はめられた!?でもあなたのハンドバッグの中から亜ヒ酸が出てきたのよ。
ですから誰かが…!あなた心当たりがあるんじゃないの?誰なの?もしかしたら所長さんが…。
藤沢さんが?すべて見せ掛けの愛情やったんよ…。
すっかりその気にさせといてこっそり私のハンドバッグに亜ヒ酸入れたに違いない。
所長さんやったら簡単に亜ヒ酸手に入れることができるんです!
彼の名前は小倉良平
京都地検の検察官であり芸者弁護士藤波清香の別れた夫でもある
(小倉良平)どうかね?被疑者の単独犯行ではなく藤沢所長との共犯の線は考えられんのかね?仮にそうだといたしましても実行犯は被疑者の山岡加奈江に間違いないと確信いたしております。
勾留期限は?今夜の0時です。
いいでしょう。
被疑者の身柄をこちらに移してください。
はい。
あっ…。
経営コンサルタントの津村優介氏は応接室に来てもらっています。
研究所買収の実態については検事さんから直々にお尋ねになっていただければ…。
うん。
どうも。
(津村優介)津村優介です。
ご足労をおかけしました。
小倉です。
どうぞ。
すみません。
早速ですがあなたが三光化学さんからの依頼を受けてエフエヌ化学研究所の買収に動かれたのですね?ええ。
そのとおりです。
具体的にはどういう方法をとられました?まず中島慎吾さんに私から話を持ち込みましてね。
中島さん大変乗り気でしていくつかの条件を提示されましてね。
それらを受け入れてくれるんやったら買収に応じてもええいうことでした。
その条件というのは?大きなとこでは所員すべてを新会社へ採用すること。
中島さんご自身については代表取締役として迎え入れてほしいということでした。
うん…。
それで実際にはどの程度話が進んでいたのですか?中島さんからの最後の報告では役員1人を抱きこんだのでもうひと息やいうことでしたね。
なるほど。
これで買収の件は一応立ち消えですか?ええ…。
現在はそういうことに。
藤波清香は公判に備えて被害者の中島慎吾がどんな人物だったのかを知るため彼の妻を訪ねることにした
(市村健)コラーッ!早く出て来んかい。
いてんのわかっとるんやぞ!社長がわざわざ出向いとんのや!どうしたんですか?誰やあんた!?弁護士の藤波清香です。
弁護士!?弁護士が何の用事あんねんな。
(遠田守)こら!失礼な口きいたらアカン。
遠田商事の社長遠田守です。
じつは生前中島さんにお金を融通してましてな。
ところが返してくれまへんので往生してまんねやわ。
そうですか…。
「そうですか」やおまへんで。
まだ1000万から残ってまんねや。
名刺をいただけますか?とにかく頼みますわ。
弁護士さんの言うことやったらききますやろ。
どうぞ。
ホンマに頼みまっせ。
今日のところはお引取りください。
ではよろしゅう頼んます。
(チャイム)
(尚子)「はい」今回の事件を担当している弁護士の藤波清香です。
帰ってください。
主人を殺した山岡加奈江の弁護人に用はありません。
「奥さん奥さん…」はいただいま。
何や見てしもたんか。
何で隠してたん?いや隠してたってまさかキヨが事件の弁護引き受けるとは思わへんがな。
そやからやね…。
そやから?週刊誌の友達に売ってもう少し小遣いにしようかなと思って。
余計悪いやないの。
出来心でした。
けどホンマやったんやね…。
見てみ。
殺された中島が岩を落としてるやろ?だから事故を装って藤沢を殺そうとしたんや。
それが逆に殺されてしもた。
やっぱり藤沢所長が復讐したんと違うやろか?ということは山岡加奈江はシロや。
藤沢にうまいことはめられたんと違うか?せやろか…。
初夏の風物詩として親しまれている京都薪能はライトアップされた平安神宮の朱塗りの社殿をバックに上演され見るものを幽玄の世界へと誘う
その翌日京都地裁では第一回の公判が開かれた
婚約者である研究所保存派の藤沢氏に対し売却を推進する被害者を疎ましく思い次第に殺意を抱いていったのであります。
このような状況の中で被告人は平成11年4月12日午前9時30分頃秘書室において役員会に出すお茶を淹れ6個ある湯のみ茶碗の1個に微量の亜ヒ酸を混入しそれを会議室に運び被害者中島慎吾氏の席に置いたのであります。
人殺し!静粛に。
同日午前10時頃知らずにお茶を口にした同人は急に発汗し嘔吐に襲われまもなくその場に昏倒し救急車で病院に運ばれるも手当てのかいなく午前11時31分ヒ素中毒により死亡したものであります。
罪名及び罰条殺人刑法第199条。
ただいま検察官が朗読した起訴状についてあなたの考えを述べてください。
私にはまったく覚えがないことです。
弁護人意見があれば述べてください。
はい。
被告人の無罪を主張いたします。
公平は元気にしてる?ええ。
近頃あなたに似てきたわ。
会いに行って構わないかな?前からいつでもどうぞって言うてるでしょ。
そうだったね。
僕が怠慢なんだ。
そうよ。
・よっ!元ご夫婦。
あっターキー。
またふざけて。
場所わきまえてよ。
いやぁ久しぶり。
相変わらず仲がよさそうだね。
あんたもはよええ相手見つけて再婚してくださいよ。
ハハハ…。
だったらいい人紹介してくださいよ。
(咳払い)2人ともいい加減にしてよ。
何言うてんの?ハハハ…。
じゃあ失敬。
どうも。
やっぱりええ男やな。
気がもめるで。
もう怒るよ!?行こう。
うん。
(パトカーのサイレン)はいご苦労さん。
ご苦労さんです。
はいご苦労さま。
ああ…外傷はなさそうだな。
これが…。
ああちょっと…。
警部…。
どこにあった?遠田守…?すぐ当たってみてくれ。
はい。
誰やお前ら?
(木島)警察や!ああ…いや私ら何も悪いことしてないですよ。
お前らんとこの社長が死んだんや。
えっ!?どんな商売してんのや?ここは。
どんな商売いうたかて…いろいろお仕事させてもろてます。
主に金貸しとデート業の斡旋かい!?知ってんのやったら訊きなはんなや。
昨夜社長どないしとった?金受け取りに行きました。
金額は?1000万。
1000万!?はい。
社長黒いバッグ持ってなかったか?ええ持ってました。
で金を受け取りにどこへ行ったん?旦那も知ってますやろ?中島の奥さん。
ヒ素で殺された中島!何やて!?それで遠田さんに自宅まで来てもろて1000万手渡したと?ええ…。
それ何時頃ですか?夜の7時頃だったと思います。
ところで1000万もの大金よう都合つきましたな。
返済にもだいぶ困ってはったそうやないですか。
保険金がおりましたので。
旦那さんに生命保険かけてはったんですか?私ではなく本人がですけど。
差し支えなかったら金額を教えていただけませんか?そんなことまで言わないかんのですか?ええ。
奥さんが渡したという1000万遠田さんのバッグから消えてしもうてたんですわ。
えっ!?木島。
(木島)はい。
遠田の解剖結果が出たぞ。
やっぱり殺しですか?睡眠薬を飲まされて眠ったまま川に放り込まれたんだ。
明らかに1000万を狙った犯行ですね。
当分の間中島の奥さん張ってくれ。
はい。
しかしねこの頃カタギの主婦ちゅうのは何やらかすかわかったもんやないな。
とにかく中島さんが借金した明細書がありましたら見せてください。
おい!あれ…明細書警察持って行きよった?ああ…写しなら残ってますわ。
(市村)見したげて見したげて。
まあかけとくなはれ。
これ?ああこれこれ。
これですわ。
先生あの日ね…。
先生が中島の奥さんと話決めてくれはると思ったから私ら引き上げましてん。
何とかしてもらわな困りますよ。
借金の総額が3000万!?ああまあ…。
いろんなところに借りまくってたんやろね。
5年間の間に…。
それを1か所にまとめておたくの会社が引き受けたんですね。
そうそう。
うち整理屋みたいなこともしてますさかいな中島とうちの社長と取り決めてそうしたんですわ。
そのうちの2000万は返してるわね。
私ね思いまんねけど何かええ金づるでもつかんだんちゃいます?どうも。
いや…「どうも」やおまへんがな!まだね利子も含めて1000万も残ってまんねんで?でも奥さんは返したって言ってるんでしょ?保険金がおりて…。
あのねあんた何を言うて…。
そんなもんあかりまっかいなあんた!あんたもねこれに首突っ込んだ以上はちゃんときっちり話決めてもらわな困りまっせ。
見当違いなことは言わないでください。
それでは失礼いたします。
いや失礼…。
ちょっと!待てコラ!なあ?いかんなぁそれは。
この時期にそんな事件が起きたんでは。
ですがその…現在行われている公判に直接影響が及ぶことは…。
そうはいかん。
被害者である中島の妻が関わっている以上何が飛び出してくるかわからないじゃないか。
たぶんそんなことはないとは思うがもしも保険金目当てに中島の妻が夫を殺していたとしたら公判は根底からくつがえるからね。
はあ…。
保険金の額はわかっているのかね?5000万です。
そうか…。
ところで藤沢所長についての捜査はどうなってる?まとめてきました。
ご覧ください。
うん。
それにしても事件がとんでもないところに飛び火したものね。
当然警察は奥さんを疑ってるわね。
近頃女性の犯罪が多いし夫婦の絆なんてあってないようなものだしね。
結婚しなくてよかった…。
でも旦那さんはどうして3000万も借金をしたのかしら?そうよね…家を新築したわけでもないのに。
一度調べてみてくれる?任しとき!おかあさんいってきます。
(藤波江里子)いっといでやす。
おきばりやす。
へえ。
行きまひょ。
はあちょっと蒸すなぁ。
へえそうどすなぁ。
こんばんは。
藤波どす。
おおきに。
(長唄)
(拍手)よかったえ。
おおきに。
ああ向こう座り。
へえ。
さあさこちらさんにお酌をして差し上げて。
大事なお客さんやから。
さあさおひとつどうぞ。
いやぁもう僕はこれで失礼するよ。
何を言うてますねや。
まだ話の途中やないですか。
いやぁそない嫌わんといておくれやす。
うちら立つ瀬がおへん。
清香ねえさん怒らせはったらホンマ怖おすえ。
何言うてんがな…。
さあどうぞお話し続けておくれやす。
いやいや僕は飲めないんでこれで結構。
そんなこと言わんと。
清水さん何とか話に乗ってくださいよ。
決してご損はさせませんから。
所長説得できるのあんたしかおれへんやないですか。
会社のためにも何とか頼んます。
いやいや私なんかにはとても…。
えらい難しいお話どすなぁ。
もっと楽しいやりまひょ。
痛い!ああかなわんなぁ。
足の指重ねてへんさかいしびれるのえ。
フフフ…。
・こんばんは。
どなたはんどす?多喜男です。
お邪魔します。
えろう遅うに。
どないしはりましたんえ?清香を迎えに来ました。
そらまご親切に。
おかあはん何か食い物ないですかね?腹ぺこですわ。
私の分どすけどなおあがりやす。
ええんですか?いただきます。
それよりあんたらいつまで同棲続けはるつもりどす?清香がそう言うたら明日にでも。
あんたさんのほうから切り出しはったらどないどすの?考えときますわ。
ホンマどすな?はい。
おかえりやす。
・アホ!出さんかい!何もたもたさらしとんねん!おたくらどこぞと間違えはったんと違います?うちは藤波どすけど。
ドアホ!わかっとるわそんなこと。
まあ待てや。
その藤波清香に用事がおまんね。
はよ出さんかい!聞こえてましたやろ。
あんたも男やったら何とかしておくれやす。
こんばんは。
何ぞご用でしょうか?何ぞご用ですか?はい。
何を眠たいこと言うとんの!ムチャしたらいかんわ。
話したらわかるでしょ。
やかましい!コラ!人の玄関先で何さらしとんねん!何やと!?にいちゃんどこのもんや知らんけどわてを誰やと思てんねん!ねえさんどこの組の方でしたかいな?忘れた言うんかい!?しっかり目開けてよう見んかい!そうか…。
思い出さへんのやったら言うたろか!?いや…それには及びません。
えらいついうっかりしまして。
申し訳ございません。
清香に何の用や?言うてみ。
はい。
あの…先生にですね中島さんとこの奥さんの話をきっちり決めてもらいたいなと思いまして。
よっしゃわかった。
人の玄関先で大声張り上げるもんやないで。
よう覚えとき!すんまへんでした。
すんまへん…。
おい誰やったかいなあのねえさんは…。
さあ…?せやろ?おかあさん見直しましたわ。
すごい!そのスジの方は迫力が違いますね。
何言うてはんの?芝居どすがな。
ああ…。
ちょっとはよ手貸して。
あかんうち腰抜けた…。
芝居ですか?しっかり…。
おかあさん清香より大きいですね。
そらお母さんかて40年も商売してるんやもん。
キモが座ってるわ。
そのお母ちゃんの子やさかいうちかて怒らしたら怖いえ。
なんちゅう親子でしょう。
コーヒー飲むか?うん。
あっターキーちょっと頼みたいことがあるんやけど。
何でしょうか?この人見張ってほしいねん。
津村優介経営コンサルタント。
うん。
研究所買収のためにいろいろ仕掛けてるらしいんよ。
お座敷で会うたんか?うん。
狙われてるのはたぶん役員やと思うんやけど清水っていう男は乗り気やなかったみたい。
うっかり乗って中島みたいに殺されたらかなわんもんな。
とにかくその男がどんな動きをするか…。
事件の真相が見えてくるかもしれへんやろ。
わかった。
やってみるわ。
頼むわ。
ああ。
ごめんごめん。
遅うなって悪かったね。
いえ…。
君僕のこと覚えてくれてた?いえ…。
そうか…ほな。
いつやったかな…。
中島副所長とお茶飲んでるときに君喫茶店に書類か何か届けに来たことあったやろ。
ああ〜。
あのときの。
思い出してくれた?はい。
じつはあのときもな研究所身売りする話しとったんやけどなそれがあの秘書のおかげでぽしゃってしもてな…。
中島さんも無念やったと思うわ。
研究所を存続させるためにはそれしか方法はないからね。
それで今日はうちに何の用ですの?君中島さんの親戚やいうて聞いたし僕の仕事手伝ってくれへんかな?手伝う?今君のところの清水部長にアタックしてんねけどなかなか「うん」て言うてもらわれへんのや。
それをうちがやるんどすか?そうやなくて…。
オフィスラブちゅうか清水部長と仲良うなってほしいねや。
本気でそんなこと!?本気や。
君のためになごっつい金用意してあんのや。
ここで人生変えてみる気ないか?そんなん…そんな怖いわ。
怖いことあれへん。
清水部長と仲良うなるだけやねんから。
(カメラのシャッター音)
(圭子)「ごついお金て何百万!?」
(津村)「君意外にケチくさいこと言うんやね」
(圭子)「もっと上?何千万!?」
(津村)「君の人生で…」まんまとはめられとる。
(圭子)「急にそんなこと言われたかて…」「はあ…しばらく考えさせてください」
(津村)「そらええけど…。
けどなるだけ早いほうがええな」えげつない男やろ?この人の名前は?わからへん。
でもマンションは突き止めた。
ひょっとしてこの男が中島副所長を殺したんと違うやろか?そらないやろ。
相棒殺してしもたら研究所買収できへん。
けど会社の買収て裏で大金が動くんよ。
トラブルはつきものやし。
ようもめてるわな。
うん…。
あ〜あ。
何や怪しい人がいっぱい現れてわけわかれへんわ。
所長の藤沢さんも臭うし副所長の中島さんの奥さんも臭いし…。
それにこの津村。
情けないこと言うてんとしっかりしてや弁護士さん。
はい…。
夏越祓とは京都の暑い夏を健康で無事に過ごすためのならわしであり人形流しなどが行われる
その翌日…
証人が被告人と婚約したのはいつのことですか?今年の3月25日です。
では3月8日の月曜日研究所内で何がありましたか?話していただけませんか?中島君と私の間でちょっとしたトラブルが…。
何をするんや!
(藤沢)勝手なことをするな!君いう男は…!あんたみたいな研究ボケの人間にはこの会社は任せられへんのや!会社を売り飛ばすような男が何を言うとんのや!落ち着いてください。
ケンカの直接の原因を詳しく話していただけますか?中島君のデスクから研究所を売却するための覚書が出てきたんです。
つまり被害者の中島さんと経営コンサルタントの津村優介氏の間で取り交わされた覚書ですね。
はい。
その覚書を見つけ出したのは誰ですか?
(藤沢)山岡君です。
証人が被告人に探し出すよう命令したのですか?いいえ。
被告人が自ら持ち出してあなたに提出したのですね。
はい。
被告人は被害者に対して日頃から個人的な恨みを持っていませんでしたか?それはわかりません。
覚書を証拠として提出し尋問を終わります。
弁護人反対尋問をしてください。
はい。
4月11日証人と被害者は三方町の常神で磯釣りをしていましたね?ええ…。
ケンカをし合った2人が連れ立って磯釣りをするというのはどういうことですか?仲直りをする意味もありましたがじつは京都を離れて2人きりで今後会社をどないするか話し合うのが目的でした。
どちらが誘ったんですか?中島君のほうから話はありました。
2人共昔よく行ってましたから。
ここにそのときの写真がありますので見ていただけますか?まさか…。
同じものを用意してありますので裁判官検察官にも見ていただきます。
証人は被害者の手によって殺されかけたわけですが石が落ちてきたときどう思われましたか?何でそんな嘘をつくんですか!?ひどいやない!傍聴席からの発言は禁じます!証人は答えなさい。
たしかあのときは…。
大丈夫?その瞬間どう思われましたか?やっぱり…。
「やっぱり」ということはそのときに殺されるかもしれないと感じたんですね?殺される前に殺してやろうという気持ちにはなりませんでしたか?大丈夫ですか?藤沢さん!大丈夫ですか!?藤沢さん!いったん休廷します。
中島さん。
奥様むごいようですが事実ですのでこの写真をご覧になってください。
どうしてこんなことを…。
7年前藤沢さんと会社を創ったときは2人の頭文字を取ってエフエヌ研究所と名付けて一生懸命頑張ってたのに…。
奥様誤解なさらないでください。
たしかに私は山岡加奈江さんの弁護をしています。
ですが一方では事件の真相を究明することが仕事だと思っております。
そしたら誰が真犯人なんですか!?夫は誰に殺されたんですか?それが知りたくて私は法廷に足を運んでるんです。
公判が重ねられるにつれてきっと真相がわかってきます。
私まで警察に疑われてもう疲れました。
失礼します。
(北村仙吉)1000円ポッキリで!にいさん寄ってらっしゃい!隅から隅まで見てちょうだいっての!1000円ポッキリさあいらっしゃい!
(リカ)おっちゃんえらいきばってるやんか。
リカちゃんのためならえんやこらだもの。
ほな終わったら一緒に帰ろな。
うん。
リカちゃん頑張って〜!さあいらっしゃい!1000円だよ。
1000円でポッキリ見てって…。
えっ?何だよ。
金でも落としたの?おいおい爺さんダメだよ商売の邪魔しちゃ。
ほら向こう行け向こう行け。
はーいいらっしゃい!にいさん寄ってらっしゃい。
寄ってらっしゃい。
さあ爺さんも寄ってらっしゃいよ。
なあホンマか?今言うたん。
何が?「爺さんも」て今言うたやん。
だけど無理だべ?いやいや大丈夫。
1時間前に1錠飲んできたから。
それでさっきからうろちょろしてたのか。
じゃあ試してみっか?おっちゃんとここれきくか?はあ?地域振興券。
しっかりしてんねー!はよ…。
さあバイ爺の爺さんご案内ー!いらっしゃーい!おっちゃん久しぶりやな。
おっちゃん久し…。
あらら。
元気か?いや元気ですよ。
簡単にくたばってたまっかや。
アハハ…。
なあおっちゃん今入ってった「バイ爺」って何のこと?いやぁ女の子がなバイアグラ飲んでくる爺さんのことをバイ爺って言うんだよ。
この頃めっぽう多いんだこれが。
ちょっとおっちゃん手伝ってほしいことあんねん。
何?やばいことダメだよ俺は。
大丈夫やって。
まっとうな仕事してるんだ。
いいから手伝って。
いや本当に…。
おっちゃん。
うん?カメラのぞいてみ?うん。
おっ!若いおなごだな。
その女のところにな男が訪ねてきたらシャッターを下ろしてほしい。
何か企んでるな?やるのかやってくれへんのかどっちやねん?いや俺さやらせるってことはやばいことだべ。
ちゃうちゃう…。
これなもう3日目や。
もう眠うてしゃーないからちょっと休憩しよ思て。
ほんで交代。
ああそうかい。
ならやってやんべよ。
あっ!来た来た!いやぁー!おっちゃん来たんか?静かにしろってんだ!いや聞こえへんて向こうには。
はよシャッター下ろさなあかん。
シャッターってどこ触んの!?ちょっと…。
どきってもう…。
よっしゃ。
(カメラのシャッター音)あっ。
何?これおっちゃん見たら気絶するで。
何?よしできた。
はっ?できたって…。
おしまい。
おしまいってことねえべ。
俺全然見てねんだよ。
ああそうか。
手伝ってもらったわりに無報酬ってわけにもいかないからな。
そりゃそうだ。
これでタバコでも買うて。
何だよ500円だけか?おい。
垢抜けねえ!とうとう津村の餌食にされてしもた。
名前わかったん?総務課に勤めてる浅田圭子。
これからは津村の言いなりになんねんな。
清水部長の愛人にもなろうって…。
しがないOLが男の甘い言葉に乗せられて人生を変えるときを迎えたということやね。
中島副所長の二の舞にならへんかったらええけど…。
もうちょっと見張ってみる。
ほな頼むよ。
隣におるからな。
突然何を言い出すのかね?君なんかの口出すことじゃない。
研究所の身売りの話はもう終わったことなんや。
こんなとこまで人を呼びつけて上司を何だと思ってるのかね!?うち部長さんのことが好きです。
浅田君…。
このままやったら研究所は潰れます。
そうなったら部長さんとも別れんならん…。
せやさかいうちは清水の舞台から飛び降りるつもりでこの話を受けてきたんです。
そんなこと言われても僕にも立場ってものが…。
けど三光化学さんでは研究所の買収がすんだら部長さんを新会社の所長にすると言うてくれてます。
所長!?私を…?はい。
これを頼まれて来ました。
部長さんに渡すようにと…。
うちは部長さんのためを思て…。
所長にならはったら定年もあらへんし。
ごめんなさい。
うちが悪かったんです。
諦めます。
なかったことにしてください。
わかった。
やってみる。
怖いわねぇ。
最近の女の子ときたら男を買うなんてこれじゃ逆援助交際じゃない!私も買ってみようかな…。
大丈夫ですか!?藤沢さん!大丈夫ですか?節子さん私ちょっと出かけてきます。
どちらへ?藤沢所長に会ってきます。
いってらっしゃい。
『最新司法化学』…。
「ヒ素中毒として急性中毒の典型的なものは服用して2〜3時間から数日後嘔吐発熱下痢などの非常に激しい中毒症状がみられる」「慢性中毒の場合は毛髪や爪を用いて毒物を検索し肝臓は検体としてもっともよい臓器である」・どうぞ。
いらっしゃいませ。
あの先ほどお電話した藤波ですが。
少々お待ちください。
弁護士の藤波さんがいらっしゃいました。
そちらからどうぞ。
やあいらっしゃい。
さあどうぞ。
あの…藤沢さんは?体調崩して入院なさってます。
入院?ええ法廷で倒れられてからどうも様子が思わしくなかったようで…。
昨日の役員会で勇退なさいました。
ということは研究所の売却が決定したんですか?ええまあそういうことでして近く新会社としてスタートすることに…。
(ノック)・
(藤沢)はい。
藤波先生…。
大丈夫ですか?お加減はいかがですか?たった今医師からとんでもないこと言われました。
とんでもないこと?慢性のヒ素中毒やそうです。
えっ!?前から時々診てもろてたんですけど…。
今回毛髪と爪を調べた結果わかったそうです。
何か心当たりは?山岡君を疑いたくはないんですが私も盛られたんですかね…。
ところであれほど研究所を手放したくないとおっしゃってたのにどうして勇退なさったんですか?勇退だなんてとんでもない!役員会で緊急動議が出て清水に追い出されたんですよ。
あれほど信頼していたのに…。
でもおかしいですね。
所長さんが慢性のヒ素中毒で副所長の中島さんが急性のヒ素中毒でお亡くなりになるなんて…。
何か思い当たることはありませんか?じつはさっきからそのことを考えていました。
もしかしたらあのときに…。
あのときと言いますと?中島君と釣りに行ったときのことです。
あの夜民宿で話し合ってると彼が突然大量に血を吐きましてね。
吐血を?ええ。
あの夜は風雨が強いうえに土砂崩れがあって身動きがとれませんでした。
ところが幸いなことに三方町の診療所に勤務するお医者さんが常神の実家に来てはってすぐに診てもらいました。
(藤沢)どうなんですか?血圧が低くなってますね。
貧血がちょっと心配ですな。
輸血が必要なら私の血を採ってください。
そんな簡単にいわれましてもね。
血液型は同じなんです。
以前私が病気をしたときに彼から献血をうけたことがありますから…。
とにかく私の家へ患者さんを移しましょう。
それで輸血はしたんですか?ええ。
すると中島君の顔に赤みが差してきて吐血もどうやら治まって翌朝道路も開通したんですぐに京都に戻りました。
その足で役員会に出られたんですね?役員会は日を改めてもええんやから静養するようにと再三言うたんですが…。
と言うことはやな中島副所長の体内にヒ素が入ったのは藤沢所長からの輸血が原因やったってことか?つまり中島さんは殺されたわけやなかったんや。
何や拍子抜けやな。
けど藤沢所長は殺されかかったんよ。
ちびちびとヒ素を盛られて慢性の中毒になったんやから…。
それやったらやな藤沢所長を殺そうとした犯人は中島副所長が死んでしもてびっくりしてるわな。
びっくりしてるか笑てるかわかれへんけど…。
結果的には警察の目をごまかせたんやもん。
のうのうとしてるはずやわ。
やっぱり津村やで犯人。
とにかく被告人に会ってくるわ。
えっ!?所長が?藤沢さんは毎日何を飲んでたの?紅茶です。
それはあなたが淹れてたのね!?他の人が淹れるっていうことは?ありません。
大体10時と3時に私が所長と副所長に淹れていたんです。
副所長の中島さんも紅茶を?コーヒーです。
ブラックで…。
藤沢さん紅茶にお砂糖は?入れてました。
どんなお砂糖を使ってたの?紙袋のものです。
グラニュー糖が6グラム入っている。
その紙袋入りのお砂糖はあなたが買ってたのね。
ええなくなったらコンビニから。
改めてお訊きします。
あなた中島さんではなく藤沢さんを殺そうと思ったことは?そんな!これでも一度は真剣に結婚を考えたんです。
殺そうとするやなんてそんな…!ただいま。
ああちょっと!驚かないでよ。
とうとうやったわよ!彼氏が見つかったん?いや〜んもう彼氏やなんて…。
違うわよ。
つかんだのよ。
つかんだ?中島さんの借金!総額3000万をちょっと超えてるけど裏にとんでもないことが隠されてたわよ。
(電話)はい。
藤波伊藤法律事務所でございます。
いつもお世話になっております。
はい少々お待ちください。
お母様。
はい。
今夜どすけどなお座敷ひとつ頼まれてほしいんやけど…。
「もう何言うてんの。
忙しいの!」耳おかしなるやないの。
忙しいのはわかってます。
けどご指名やし…。
誰やの?「経営コンサルタントの津村はん」津村さん!?わかった。
じゃあね。
呆れたわね…。
こんなに怖ろしいことが…。
(長唄)おおきに。
さすが名妓さんや。
おねえさんきれいやわぁ。
けどお化粧落としたらどんな顔が現れるかわからしまへんえ。
そやな…いっぺんすっぴん拝ませてもらいたいな。
一緒に枕並べて…。
嫌やわぁ。
点汚ばっかり…。
あっもう8時や。
行かな…。
どこ行くねや?なあおねえさん。
ちょっとあっちに行っててくれはる?へえ。
何や?三光化学さんから出ましたんやろ?忘れとったわ。
これだけ?これだけって…いくらもらえる思うとったんや?けどこの倍出ましたんやろ?三光化学さんから。
あほなこと言うてんとはよしまっとき。
おねえさんもうええよ。
こっちおいで。
よろしゅうおすか?ほなお先に…。
おねえさんさいなら。
構しまへんのんか?構わへんのや。
ほっといたらええねん。
ほな2人でゆっくり飲み直そか?へえおおきに。
説明するまでもなく京都でもっとも豪華勇壮な祇園祭
その翌々日第三回公判が開かれる
いよいよ山場をむかえることになった
(裁判長)じゃあ弁護人尋問をどうぞ。
はい。
証人は旧エフエヌ化学研究所に勤めて何年になりますか?6年です。
名前をもう一度はっきりとおっしゃってください。
浅田圭子です。
証人は浅田茂子さんを知っていますか?浅田茂子?いいえ。
浅田理恵さんは?いいえ。
浅野京子さんはどうですか?いいえ!浅井ゆりさんは?何なんですかそれ?からかわんといてください。
本当に知らないんですか?そんな人知りません。
これを見てください。
全部で125人。
この5年間であなたが偽名を使った名前です。
これでも知らないとおっしゃるんですか?それがどうやと言うんですか?あなたがどういう女性だったかもっとはっきり見せてあげましょうか?これは消費者金融があなたに発行したカードです。
いいえ。
あなたが偽名を使って消費者金融をだまして発行させたカードです。
ゆうに50枚を超えています。
何もこんなとこで…。
裁判長ひどいやないですか?プライバシーの侵害です。
本件審理のうえで必要な尋問であることを認めます。
続けてください。
はい。
証人はこの5年間でいくら借りたか覚えていますか?忘れました。
3000万です。
(ざわめき)そんなにありましたか?証人はどうしてそんなにお金が必要だったんですか?マンションの頭金やらローンの支払いです。
それだけですか?ブランド品など贅沢な買い物をしていますね?証人はあちこちから集めたその3000万を整理屋である遠田商事に持ち込むにあたって誰に相談しましたか?今年の1月のことですよ。
忘れたんですか?本件の被害者である中島副所長ではありませんか?いけないんですか?副所長に相談したら…。
しかも中島副所長はあなたのために自分の借金として処理していますね?うちが頼んだわけやありません。
でも3000万という借金をどうして中島副所長は肩代わりしたんですか?中島副所長と親密な関係をもっていたからではありませんか?圭子さん!?証人はこれに見覚えがありますか?いいえ。
所長の藤沢さんは紅茶を飲むときにこれを1袋ずつ使っていたそうですね?そうですか。
では副所長の中島さんはどうでしたか?秘書の仕事ですから私は知りません。
中島副所長が砂糖もミルクも使わずブラックコーヒーを飲んでいたことはご存知のはずでしょ?はい。
証人はどうですか?お砂糖は?ブラックです。
この砂糖はあなたのマンションの向かいにあるコンビニで購入したものですがよく買われるそうですね?誰がそんなことを?あなたをよく知っている女子店員です。
使いもしないのに何で買うんですか?人違いでしょ?どこまでとぼけるつもりですか?この袋に亜ヒ酸を混入したのはあなたでしょ?弁護士さんムチャ言わんといてください。
殺されたのは中島さんですよ。
砂糖の袋に亜ヒ酸が混じっていたとしても中島さんの口に入るわけないやないですか。
ブラックでコーヒー飲んでたのに。
それともお砂糖だけなめてたんやろか?フッ…。
いいえ。
あなたが殺そうとしたのは中島副所長ではなく所長の藤沢さんよ。
そんなバカな。
中島副所長と愛人関係にあったあなたは早くから研究所買収の情報をにぎっていてその成功報酬として何千万というお金が中島副所長の懐に入ることを知っていたはずです。
でもなかなか話が進まず業を煮やしたあなたは売却を反対する藤沢所長さえいなければと殺害計画を練ったのよ。
話にならんわ。
話になるかならないかは最後まで聞くことね。
藤沢所長をひと思いに殺しては怪しまれると思ったあなたはごく微量の亜ヒ酸を砂糖に混入してじわじわと殺そうとした。
でもせっかく立てた殺人計画もあなたの知らないところで崩れていった。
藤沢所長と中島副所長が京都を離れて三方町の常神の民宿で話し合いをした夜肝臓に疾患を抱えていた中島さんが大量の吐血をしたのよ。
緊急処置として輸血が行われたわ。
藤沢さんは自分が慢性のヒ素中毒に侵されているとも知らずかつて中島さんから輸血を受けたことがあったから自分の血を使ってくれと申し出て輸血が行われた。
結果的には藤沢さんの血液の中に含まれていたヒ素が中島さんの体内に入り疾患を抱えていた肝臓が悪化して急死する原因となったのよ。
(ざわめき)
(裁判長)静粛に!あなたは自分の欲望を満たすために直接的ではないにせよ1人の男性を殺しそしてもう1人を死の淵に追いやったのよ。
勝手にほざいたらええわ。
私はやってないんやから。
裁判長。
重大な事態が発生しましたのでご相談したく暫時休廷をお願いします。
30分間休廷とします。
では再開します。
弁護人尋問をどうぞ。
はい。
今度は私からお尋ねします。
証人は傍聴席にいる経営コンサルタントの津村さんを知っていますか?
(圭子)ええ。
今回の研究所買収について津村さんからどんな指示を受けましたか?何も。
ではあなたはまったく動いていないと言うんですね?当たり前よ。
新会社ができたのかて新しい所長が身売りを決断したからでしょ?私みたいな一介のOLに何ができるって言わはんの?ではあなたは津村さんから1円の報酬ももらっていないのね?もらってません。
(節子)確かですね?しつこいわね!証人に重ねてお尋ねします。
5000万円受け取っていませんか?
(ざわめき)
(圭子)5000万!?どっからそんな話が出てきたんですか?みなさんも驚いてはるやないですか。
ハハ…。
あほらしいて開いた口がふさがりませんわ。
そんなこと言うた人の顔見てみたいわ。
・嘘ついたらあきまへんえ。
あんた…。
そらあんたはたしかに一介のOLにすぎひんかもしれまへん。
けどうちがだまされたように副所長の中島はんもそこにいてはる津村はんかてみんなあんたの裏の顔見抜けなんだ。
5000万もの小切手をいかにも不満気にしまいはったあんたの顔うちはゾーッとしましたえ。
芸者なんかに言われとうないわ!でしゃばらんと引っ込んどり!芸者弁護士藤波清香。
なめたらあきまへんで!潔う白状しなはれ。
5000万もの小切手はマンションの残金支払いに当てられてましたなあ。
クソーッ。
芸者やと思て侮ったうちの負けや。
フッ…。
ホンマによう調べたもんやわ。
何もかもあんたが推察したとおりや。
けど砂糖にヒ素を混ぜるときだけはさすがのうちも手が震えたわ。
亜ヒ酸の致死量が0.1〜0.3グラム。
中毒量は0.005〜0.05グラム。
毎週10〜15本ほど作ってそれを会社へ持って行き…。
山岡さんがトイレに立った隙を狙うて秘書室にある砂糖とすり替えたんや。
ところが副所長の中島さんがヒ素中毒で死んだと聞いて警察が動き出す前に秘書室に置いてある亜ヒ酸入りの砂糖は回収して捨てました。
被告人のバッグに亜ヒ酸を入れたのもあんたやね?どんなことで警察の目がうちに向けられるかわからへん。
早いとこ犯人をでっち上げたほうが安全やし…。
フフッ…。
それにしても狙うてた藤沢さんやなく中島さんが死ぬやなんてホンマにびっくりしたわ。
えらい計算違いどしたな。
けど女やったら誰でもええ服着てええ靴履いて高いアクセサリー身に付けて高級車に乗って億ションに住んでみたいって思うてんねや。
贅沢して何が悪いんよ!終わります。
検察官証人に尋ねたいことがあればどうぞ。
証人は遠田商事の社長遠田守さんを知ってますね?知ってたらどうしたん?君の逮捕状が出てるんだよ。
観念してすべて話しなさい。
知ってるんやったら訊かんかてええやないの。
ふざけるんじゃない。
うちが遠田に教えてやったんよ。
中島さんの奥さんに5000万の保険金が入ったこと。
遠田…借金が取れる言うて大喜びやった。
けどあいつうちが中島さんを殺したやろってカマかけてきよったんで…。
あとあとやばいことになりそうやし睡眠薬で眠らせて1000万取ったんや。
そのあとどうしたのかね?夜中の3時頃…。
眠りこけた遠田を車で運んで川にほかしただけや。
津村さん。
あんた5000万ですんでよかったなぁ。
フッ…。
桑山君。
はい。
終わります。
かくて一件落着
芸者弁護士藤波清香の面目躍如であった
(拍手)この間三方五湖の鰻食うてへんやろ?ものすごうまいらしいぞ。
うわーはよ食べたいわ!いただきます。
おいしい!うまいやろ?うん。
何ややばそうなおっさんやな!?うん?はよ食べて次行こう。
いやあここの鰻で精力つければチョーかわいい赤ちゃんが産まれるかもね!?うん。
おっちゃんやないか!?おっちゃん!?いやあ多喜男さん。
いやいやこれは先生しばらくでござんした。
お元気そうで…。
おっちゃん…。
何?どちらさん?ほらリカちゃんだ。
ヘルス嬢の…。
こんにちは。
こんにちは。
いやおらたちもようそっちを見習って同棲してるの…。
同棲!?ハハハ…。
おっちゃん大好き!
(北村)いやあまあ見事いい子だやぁ〜!頭クラックラするな…。
イヒヒ…。
特上鰻2つ!ハハハ…お座り。
なんちゅう年寄りよ。
そろそろ行こか?そうしよう。
行くで。
ほなごゆっくり。
ああ幸せ!アハハ…。
2014/10/30(木) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
京都の芸者弁護士