海辺で遊ぶ3歳の女の子。
代理出産で産まれました。
母親は、がんで子宮を摘出。
海外で広がる代理出産。
今、思わぬ事態が起きています。
先月、タイで日本人の独身男性が10人以上の子どもを代理出産でもうけていたことが発覚。
タイでは代理出産を請け負う女性が増え代理母村と呼ばれる地域まで存在していました。
しかし、トラブルも相次いでいます。
代理母となったこの女性。
流産し、今も後遺症に苦しんでいます。
インターネットを通じて進む代理出産ビジネスのグローバル化。
一方で、悪質な仲介業者による日本人の被害も出ています。
こうした事態を受け日本でも法律を整備し代理出産を認めるべきかどうか議論が始まっています。
広がり続ける代理出産。
その実態と見えてきた課題に迫ります。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
代理出産は、赤ちゃんを産むことができない女性がほかの女性に産んでもらうことです。
10か月に及ぶ妊娠そして出産は女性の体と精神に長期間にわたって多大な影響を与え生命の危険さえ及ぼす可能性があります。
第三者にこうした負担を引き受けさせていいのか。
女性の体を妊娠・出産のための手段として利用するのは許されるのか。
さらに自分の意思を表明することができない産まれてくる子どもの福祉は最優先に考えられているのか。
商業主義、営利目的に発展するおそれもあり代理出産を巡ってはこうした倫理的な問題がいくつも指摘されています。
日本には代理出産についての法律はありませんが日本産科婦人科学会は禁止しています。
国内で代理出産が禁止されている中で現実には外国人の女性にお金を払い代理母になってもらうことで子どもを持つことを選択する日本人が想定外の広がりを見せています。
代理出産は、もともと病気などで子宮がない人のために始まりました。
今、多く行われているのは夫婦の精子と卵子を体外受精させ代理母に移植し出産してもらう方法ですけれども最近では、晩婚化が進み出産適齢期を過ぎる女性も増えているため妊娠の確率を高めようと若い女性の卵子を提供してもらう代理出産も増えてきています。
代理母となるのは多くの場合途上国の女性たち。
日本の依頼者と代理母を結び付けているのは仲介業者です。
代理出産を認めるべきかどうか日本国内での議論が深まる前に急増している代理出産の実態をまずはご覧ください。
来月、代理出産のために海外に渡る夫婦です。
開業医の夫の後を継ぐ子どもが欲しいと2人は4年前から不妊治療を続けてきました。
しかし、年齢とともに妊娠は難しくなるばかり。
その上、妻は高血圧で妊娠しても母子ともに命の危険があると医師から告げられました。
どうしても子どもを諦めきれなかった夫婦。
インターネットで見つけた日本人の業者の仲介で中南米での代理出産に懸けることにしました。
卵子は現地の20代の女性医師から提供を受けることにしました。
まず夫の精子と女性医師の卵子で受精卵を作ります。
それを現地の代理母に移植し出産してもらうのです。
かかる費用は、およそ800万円。
女性医師や代理母仲介業者などに支払います。
およそ40年前、アメリカで初めて行われた代理出産。
今では、20近い国や地域に広がっています。
アメリカでは渡航費なども含め費用は2000万円を超えることもあります。
それに比べ、途上国では数百万円。
依頼者が増え続けています。
中でも最近日本人の依頼が増えているのが近くて医療技術も高いとされるタイです。
バンコクから車で6時間。
タイ北部にある人口850人の地区です。
ここは地元で代理母村と呼ばれています。
20代から30代の女性の実に、5人に1人が代理母を経験しています。
依頼者の多くが日本人だといいます。
その一人に話を聞くことができました。
ブッパーさん、31歳です。
60代の日本人女性の依頼を受け去年、女の子を出産しました。
依頼主の女性は、どうしても子どもを諦めきれなかったと話していたといいます。
2人の子どもがいるブッパーさん。
夫婦で農場で働いて得られる収入は月1万円ほどです。
周囲の女性たちが次々と代理母になり報酬を得ている姿を見て決断しました。
報酬は、およそ100万円。
年収の7年分です。
念願の中古車も購入しました。
さらに3ヘクタールの土地も手に入れトウモロコシを栽培するつもりです。
バンコクで10年前から生殖医療の仲介をしている日本人男性です。
日本人向けに代理出産を手がける業者がここ数年で急増したといいます。
代理出産のビジネス化が進む中でトラブルも相次いでいます。
ことし、代理母を引き受けたクックさんです。
受精卵の移植後、毎月バンコクの病院で検査を受けるよう仲介業者から求められました。
病院まではバスで片道6時間。
妊娠5か月だった先月そのバスの中で急激な痛みに襲われ出血。
救急車で病院に搬送されましたが流産しました。
仲介業者とは、その後連絡が一切つかなくなり報酬も一方的に打ち切られました。
クックさんは今も流産の後遺症で下半身に痛みとしびれがあり病院に通っています。
仲介業者からはその治療費も支払われていません。
代理出産を巡るトラブル。
日本人が巻き込まれるケースも増えています。
30代の夫婦です。
妻には生まれたときから子宮がなく子どもを授かるには代理出産しかないと考えました。
インターネットでたどりついたのはある仲介業者のホームページ。
高い成功率をうたっていました。
複数の受精卵を業者に渡した夫婦。
数週間後業者からメールが届きました。
代理母は妊娠しなかった。
詳しい説明を求めても納得のいく回答はありませんでした。
これまでに振り込んだ金額は230万円。
返金されるはずの費用も支払われず、メールを送っても返信はありません。
今夜のゲストは、不妊治療や出産に長年携わってこられました、日本産科婦人科学会監事の吉村泰典さんです。
タイの村、今見ました村では、5人に1人が代理母、多くの依頼者が日本人であるという現実、ご覧になられました?
以前は、代理出産といいますと、アメリカに行ってることが多かったんですが、このように東南アジアに行って、行って、たくさんの人たちが代理懐胎で海外で依頼しているということを、私も聞いてびっくりしましたね。
そもそも代理懐胎というのは、代理出産というのは、医学的な点が非常に大きいんですね。
妊娠・出産というリスクを他人に負わせていいのかという、医学的な問題点、あるいはまた、母体を商品化するという倫理的な問題点もありますね。
そして経済的に弱い立場の女性の搾取につながるのではないかと、子どもの売買にもつながるのじゃないかという、さまざまな問題点があるということですね。
今の様子を見ますと、代理母を引き受けている女性たちが、本当にリスクを知ってるんだろうかという思いにもなるんですけれども、ここまで、各国で代理母たちが、お金をもらいながら、出産をし、そしてまた依頼者が、日本人が各国でそういうことをお願いしているという、ずっと長い間、生殖医療に携わってこられて。
私はですね、初め10年程前は、代理出産は産婦人科医の立場から、本当に反対をする立場にあったわけですけれども、このように、生殖グローバリゼーションの時代になってきて、日本で禁止をしても、海外で行うというようなことが、普通に行われるようになってくるということになりますと、やはり代理出産に関しましては、なんらかのことを、わが国でも決めていかなければならないのではないかという考え方に変わってきましたね。
これも医療といえますか?
それはですね、本当にこれは、本当に医療とはいえないというふうに、私は思うんですけれども、現実に産まれてくる子どもがあるということを考えますと、なんらかの手だては、私は必要なのではないかと思いますね。
まさに商業的な、雰囲気も感じるわけですけれども、日本では法律がない。
産科婦人科学会は禁止している。
現実はどんどん進んでいる中で、議論が進んでこなかった中で、ちょっとこちら、ご覧いただきたいんですけれども、自民党のプロジェクトチームが、議論のたたき台となる案を出してますね。
10年前に、厚生科学審議会。
というようなところで議論されていたわけです。
この10年間、何もされなかった、いろいろな状況の中で、自民党のプロジェクトチームは、病気などで子宮のない人あるいは先天的に子宮を持っていない人、そして卵子とか精子に関しては、夫婦のものを使って、代理出産は行っていいですよということを決めたわけですね。
そしてもう一つ、報酬は無償であるということを決めたわけですね。
これから議論というのは、どの段階からスタートすべきですか?
やはりですね、この是非論からまず、私はいうべきじゃないかなと思います。
それは、国会というような立法府でですね、まず代理出産をしていいのかどうかということを決めていただいて、その後、やはりガイドライン作り、どのような症例に対して、限定的に代理出産を行っていくのかということを決めていくことが、私は必要なのではないかというふうに思います。
報酬を受け取るべきか、無償ですべきか。
そういった点でも、議論というのは大きく分かれるでしょうね。
そうですね。
だからやはり無償で、40週間もの間、代理妊娠・出産をしてくれるのかどうか、ここら辺も非常に大きな問題点に、私はなってくると思いますね。
そうした、まず是非論からスタートすべきだということですけれども、日本はこの代理出産とどう向き合っていくのか。
世界で初めて、およそ40年前に代理出産を行ったのがアメリカです。
そのアメリカでは、医療技術の進歩で、新たな現実に直面しています。
およそ7割の州で代理出産が認められているアメリカ。
代理出産を望む人のための説明会が各地で開かれています。
参加者の中には、独身の人や同性愛のカップルも増えています。
代理出産で子どもをもうけ1人で育てたいです。
代理出産でアメリカ国内で産まれる子どもはこの10年ほどで3倍近く増え年間およそ2000人に上っています。
代理出産を巡るトラブルも増え専門の弁護士まで現れています。
この事務所で扱う代理出産の訴訟や契約手続きは年間450件に上ります。
特に増えているのが胎児に病気が見つかった場合どうするかという問題です。
医療技術の進歩によって胎児の状態が早期に詳しく分かるようになったことが背景にあります。
そうした問題に3年前代理母として直面したヘザーさんです。
シングルマザーだったヘザーさんは生活費を得ながら人の役にも立てると考え250万円の報酬で代理母を引き受けました。
依頼主の夫婦の受精卵を移植したヘザーさん。
妊娠4か月で受けた検査で胎児の脳に重い障害があることが分かり依頼主から中絶するよう求められたのです。
ヘザーさんと依頼主は弁護士を介して話し合ったものの平行線のままでした。
胎児は大きくなり、結局ヘザーさんは男の子を出産しました。
脳に障害があった男の子は依頼主の夫婦に引き取られましたが今、どのように暮らしているか分からないといいます。
アメリカではこうしたトラブルを防ぐために代理母と依頼主の間で交わす契約書が年々詳細になっています。
3年前、代理出産で双子をもうけたロミンスキーさん夫妻です。
この仲介業者のもとで契約書の内容を1年かけて9回、書き直しました。
胎児に病気や障害が見つかった場合、どう対応するか。
母体に危険が迫るなどどのような状況になったら子どもを諦めるのか。
項目は、60以上に及びました。
出産を第三者に託すことの難しさを痛感した夫婦。
最終的に子どもにどんな障害があっても受け入れると決めたといいます。
アメリカでは、この10年で3倍に代理出産が増えて、年間2000人、産まれているということですけれども、それとともに、いろんなトラブルが、代理母と依頼者との間で産まれている。
出生前の検査ができるようになってくると、中絶を強要するとかですね、要するに引き取らないとか、いろんなことが起こってきている中で、こういった契約をされる、代理出産の契約をされるときに、障害のある子も、ちゃんと育てるんだと、そういうようなことというのは、初めに契約を取り交わすということも、私は意味のあることではないかなというふうに思いますね。
依頼する側は、深く考えさせられますよね。
そうですね。
要するにこのプロセスを大切にするということにつながっていくと思いますね。
代理母を頼むということは、どういう責任を、また自分も負うのかと。
そうですね。
やはり、リスクがあるということをやはり教育、啓発することがすごい大切だというふうに思うんですね。
やっぱり倫理的な問題、医学的な問題、双方において大きな問題があるということを、やはり代理出産をする前に、クライアントの夫婦、あるいは代理出産をしていただく方に、教育していくことが、私は大切なのではないかというふうに思いますね。
やっぱり妊娠というのは予知できない危険がありますから。
そうなんですね。
やっぱりリスクというのは、予知できないということが非常に大きな、代理出産では問題となってくると思いますね。
これから日本でも、是非から議論が始まっていくわけですけれども、議論をしていくうえで、最優先に考えていかなければならないことはなんでしょうか?
そうですね、クライアントの出産、クライアントの夫婦が出産するということに対しては、クライアントが納得すればいいわけですから。
依頼する側ですね。
そうですね。
しかし、産まれてくる子どもということは、産まれてくる子どもは、代理出産の場に立ち会うことはできないわけですね。
要するに代理出産をするときに立ち会うことができない。
そういうことになってくると、社会が子どもの利益というものを代弁してやるということが、私は大切なんではないかなというふうに思いますね。
権利を主張できない子どもの新しい命ですね。
これに対してどう向き合っていくかということを、代理出産も考えるよい機会になるのではないかなというふうに思いますね。
子どもの立場からということになりますと、思いつくのは、一体誰が自分の母親なんだろうかということも出てきますよね。
やはり、それはそういった問題点もあります。
ですから、やはりこれは、産んだ女性が母親であるということを、まず法的な地位を安定させてあげるということが、私は子どもにとって大切なことではないかというふうに思いますね。
そういった議論も、これから併せて、行っていかなければならない?
ですからやっぱりこういった事態が招いたというのは、女性が25歳から35歳という、生殖年齢で子どもさんを産めるような環境作りということも、社会も考えていく必要があるように、私は思います。
生殖医療がどんどん進んできて、出生前診断もできるようになって、そういった中で、こうした重い倫理問題を抱えている代理出産というものが、グローバルに広がってしまった、その大きな要因には、社会的問題があるということですか?
私はそのように思いますね。
社会もそういったことを、どうしてこういった問題が起きてきたかということを、考える必要が、私はあるように思います。
それにしても一体何人のお子さんが、海外で代理母のもとで産まれているのか。
統計も?
ありません。
実態は全く不明ですね。
ですから、この辺も大きな問題だと思いますね。
2014/09/30(火) 19:30〜19:58
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「急増 代理出産〜規制と現実のはざまで〜」[字]
先月、日本人男性がタイで十数人の子供を代理出産でもうけたとする問題が発覚。本来は子宮のない人などのための技術だが、急拡大し想定外の事態も。内外の最前線に迫る。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】日本産科婦人科学会監事…吉村泰典,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】日本産科婦人科学会監事…吉村泰典,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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