(ウィスパー)人の悪い心にとりつく妖怪です。
ケータ君今こそ妖怪ウォッチを!
(ケータ)うん!セットオン!今ゲームやアニメで子供たちに大人気の「妖怪ウォッチ」。
何ですかもう…。
ジバニャン!・「ゲッゲッゲゲゲのゲー」更に「ゲゲゲの鬼太郎」まで日本人はとにかく妖怪が大好き!でもこうした妖怪なんてしょせんみ〜んな作り話だと思っていませんか?ちょっとお待ち下さい。
数多くの妖怪が実際に目撃されている場所があるんです。
それがここ岩手県の遠野です!今からおよそ100年前遠野に出没する妖怪たちを描いた一冊の本が世に出ました。
川に住むいたずら好きのカッパ。
家に幸せをもたらす座敷わらし。
子供をさらうという恐ろしい雪女まで。
「遠野物語」に出てくる怪しくも不思議な妖怪たちの世界へご案内しましょう。
「遠野物語」に登場するのは妖怪だけではありません。
神さまや妖怪に驚き恐れるそれらの人々は皆当時実在した人物です。
「遠野物語」は妖怪と出くわした人たちが語った…登場人物の子孫を訪ね今も生々しく伝わる不思議な目撃談を語ってもらいます。
今日は「遠野物語」をガイドに妖怪と日本人の心をめぐる不思議で懐かしい旅へと出かけましょう。
岩手県の中心に位置する遠野。
1,000m級の山々に囲まれた自然豊かなこの地がさまざまな妖怪にまつわる言い伝えを育んできました。
遠野を代表する妖怪が現れるという場所にご案内いたしましょう。
こちらカッパが出るという「カッパ淵」です。
行ってみます。
90年ほど前近所の男性がここでカッパを目撃した事からその名が付いたカッパ淵。
「カッパおじさん」こと運萬治男さんがカッパ目当てに訪れる観光客のガイドをしています。
キュウリはね重くて水に沈むの。
中でも人気はカッパの好物キュウリを使った…まだみたい。
(運萬)ほらほらほら!あれ?えっえっ?いたいたいた!あそこ!そこ!あれそうじゃない?速くなってるから。
いたいたいた!捕まえた?一回上げるぞ!うん!あれ〜?逃げた。
釣りの結果はさておき…遠野には本当に妖怪を見たという人が数多くいます。
「遠野物語」はそうした不思議な目撃談を119編の話にまとめたもの。
一つ一つの物語に妖怪や神さまが人々の暮らしと深く結び付いている様子が描かれています。
こちらの広大な敷地。
今は何もありませんがかつては村一番のお金持ちの屋敷があったと言われております。
実はここも物語ゆかりの地。
「遠野物語」によって全国的に有名になったある妖怪にまつわる舞台なんです。
遠野に山口孫左衛門という男が住む立派なお屋敷がありました。
家族と使用人で20人以上。
大層裕福な家でしたがそれは家を栄えさせる座敷わらしが住んでいるからだと言われていました。
ある時その家の使用人が小屋でたくさんの蛇を見つけ面白半分に殺してしまいます。
その直後同じ村の男が不思議な体験をしました。
ありゃ誰だ?見慣れねえ面っ子だな。
出会ったのは見た事のない二人の女の子。
どっから来たった?おら山口の孫左衛門のところから来たった。
これからどこさ行ぐ?別の村の家さ行くんだ。
男が見たのは孫左衛門の家を出る座敷わらしの姿でした。
その後孫左衛門の家がどうなったのか。
その恐ろしい結末が今も遠野に伝えられています。
孫左衛門の使用人が二十何人ぐらいいたんですよ。
生き物をむやみに殺した罰だったのでしょうか。
座敷わらしに見捨てられ一家は滅亡したのです。
一方「遠野物語」には妖怪や神さまが幸せをもたらす話もあります。
その一つが遠野の土淵に住む阿部家の物語です。
(かしわ手)安部さんの家では代々オクナイサマという神さまを祭ってきました。
一家に御利益をもたらす家の守り神です。
阿部家が一家総出で田植えをしていた時の事。
その日は人手が足りず猫の手も借りたいほどの忙しさ。
するとどこからか小さな男の子がやって来て言いました。
おらも手伝う!ありがたい申し出に早速手伝ってもらう事に。
一日よく働いてくれて夕方には田植えも無事終了。
お礼に晩御飯でもごちそうしようとしたところなぜか男の子の姿が見えません。
首をかしげながら家に帰るとあら不思議。
小さな泥の足跡が縁側から部屋の中へと続いています。
更にたどると…足跡は部屋の奥に祭っていたオクナイサマの神棚まで。
しかも像は泥まみれ。
人手不足を見かねてオクナイサマが田植えを手伝ってくれたのです。
なんとまあありがたい事。
安部さんの家ではこの話を大切に語り継ぎ今も毎朝の祈りを欠かしません。
今度9月に…やっぱり拝まないと…もう一つ遠野で人々の深い信仰を集める神さまをご紹介しましょう。
それはオシラサマ。
「遠野物語」はその誕生にまつわる悲しい物語も紹介しています。
ある農家に馬を愛する美しい娘がいました。
娘は馬を愛しく思うあまりついに夫婦となってしまいます。
ああ…愛しい人…。
ところが…。
馬と夫婦になるってのは絶対に許さねえ!お父さんやめてけれ!うるせえ!目を覚ませ!こうしてやる!ああ!
(いななき)父親は馬を殺してしまいました。
(泣き声)馬の死を深く嘆く娘。
やがて娘は馬と共に天に昇っていってしまったのだといいます。
娘の魂を慰めるために娘と馬をかたどった小さな像が作られました。
それが後に人々の幸せを守る神さま「オシラサマ」になります。
毎年正月遠野の人々はオシラサマを祭る家に集まり娘と馬の魂をしのびながら一年の健康と無事を祈ります。
オシラサマとかオクナイサマとか座敷わらしとか…そういうところが「遠野物語」にはあると思います。
それにしても一地方の妖怪の物語がこれほど有名になったのはなぜなのでしょうか。
日本は富国強兵を掲げ近代化を推し進めていました。
政府は妖怪伝説や庶民信仰が近代化の障害になる迷信でありよこしまな教え「邪教」だとして厳しく禁止します。
更に学者は…妖怪が科学的に解明できる幻想だと説きました。
日本中から妖怪たちが次々と姿を消していく中世に出たのが「遠野物語」です。
妖怪や神さまを身近に感じながら生き生きと暮らす遠野の人々の姿は世間に大きな反響を巻き起こしました。
合理性を追求する近代化の中でふと立ち止まり日本人が大切に受け継いできたものに目を向けよう。
「遠野物語」はそう語りかけています。
「遠野物語」の作者は柳田国男。
後に「民俗学」という新しい学問を打ち立てた人物です。
しかし「遠野物語」を執筆した当時柳田は東京で役所勤めをしていました。
ここは柳田国男が遠野を訪れた時泊まっていた旅館です。
実際に宿泊したお部屋がありますので拝見しますね。
お邪魔します。
あぁ12畳と聞いてますけれどもこの広〜い空間に一人でゆ〜ったりと身を休めていらしたんでしょうか。
落ち着いたいいお部屋ですね。
それにしても一体なぜ遠野に縁もゆかりもない柳田が「遠野物語」を書いたのでしょうか?「歴史秘話ヒストリア」。
「遠野物語」誕生の背景にあったもの。
それは柳田国男の愛と悲しみの物語です。
柳田国男のふるさと…明治8年柳田は小学校の先生をしていた父のもとに生まれました。
幼い頃から本が大好き。
成績も優秀で真面目な優等生だったと言われます。
19歳の時東京の第一高等中学校現在の東京大学教養学部に進学。
エリートの道を歩み始めました。
ところが勉強一筋だった柳田の人生を大きく揺さぶる出来事が起こります。
こちらが柳田国男が田山花袋に宛てた明治29年の手紙で…7つ年下の少女「いね子」に恋をしたのです。
いね子は柳田の知り合いが開く裁縫教室に通ってくる美しい女性でした。
しかしその恋は柳田の片思い。
お帰りですか?はい失礼いたします。
思いを告げる事もできません。
柳田は3年もの長い間少女に恋心を抱き続けます。
その苦しい胸の内をこんなふうに書き記しました。
片思いの男の魂がウグイスになって愛する少女に飼ってもらうというなんとも甘い内容です。
愛する人を遠くからただ見つめる事しかできない柳田。
せめて魂だけでもそばにいる事を想像し熱い恋心を慰めていたのです。
しかしそんな柳田の人生が突然暗転します。
そして更なる悲劇が…。
当時は特効薬もなく安静にして回復を待つしかありませんでした。
いね子は遠く離れた親戚の家で療養する事になります。
もはやその姿を目にする事さえできなくなった柳田。
(泣き声)そして程なくいね子の死を人づてに知らされました。
(泣き声)いね子を失った直後に詠んだと見られる歌です。
別の世に行ってしまったいね子とはもう二度と会う事ができない。
その悲しみに柳田は打ちのめされました。
やがて柳田は亡くなった人の魂の行方について真剣に悩むようになります。
決して答えの出ない疑問を抱えたまま柳田国男はその後の人生を歩みます。
農商務省に入省し役人として働きだしました。
それから8年後の明治41年柳田に大きな出会いが訪れます。
遠野出身の学生佐々木喜善と知り合ったのです。
遠野の川にはいっぺ〜カッパが住んでらのす。
佐々木はふるさと遠野の人々が目撃したという妖怪や神さまについてのさまざまな物語を語ります。
それは柳田が長年抱き続けていた疑問に一筋の光を当てるものでした。
昔長者の娘が恋人と一緒に山に行ったところ急に恋人の姿が見えなくなってしまいました。
夜まで探しても恋人は見つかりません。
一体どこへ行ってしまったのか。
必死に探し求めるうちについに娘は鳥になってしまいます。
(鳴き声)鳥の名は…鳴き声が「オットーン」と夫を呼び求めるように聞こえるのだそうです。
(鳴き声)娘の魂は鳥になって永遠に愛する男を探し続けている。
かつて魂がウグイスとなり愛する人のそばにいると書いた柳田の話と不思議なほど重なる物語です。
更に佐々木は死んだ者の魂がどこへ行くのか具体的な物語も話しました。
松之亟しっかりせえ。
死んでは駄目だ!ある時菊池松之亟という男が重い病を患います。
ふと気が付くと体が空中に飛び上がりやがて先祖代々の墓がある近所の菩提寺にやって来ました。
・トッチャ…。
そこで出会ったのは以前亡くなった息子。
遠い世界へ行ってしまったと思っていた息子の魂は意外にもすぐ近くの菩提寺にいたのです。
今来ては駄目だ。
息子から帰れと言われ引き返したところ…。
松之亟!ようやく目を覚ましました。
死者の魂は遠くへ行ってしまうのではなくごく身近な場所にいる。
柳田はこうした魂の行方の物語をどう聞いたのでしょうか?それはどうしてかというと…しかし佐々木喜善の話は岩手県の遠野ですね。
つまり自分と同じ考えが岩手県の遠野にもあると。
自分だけの考えではないと。
…というふうに彼としては位置づけたんだと思います。
そして2年後。
119の物語を一冊の本にまとめます。
「遠野物語」は愛する人の魂を探し続けた柳田国男の悲しみから生まれた作品でもあったのです。
柳田国男が愛した遠野の風景。
柳田が目にした当時の暮らしをそのまま伝える場所があります。
それがこちらの建物。
江戸末期遠野に建てられた庄屋の家を移築したものです。
中に入ってみるとなんとそこは馬屋。
家の中で馬を飼っているんです。
遠野の多くの家では…同じ屋根の下で共に暮らしていたのです。
遠野では馬は農耕を手伝ったり重い荷物を運んだりと暮らしには欠かせない存在。
馬と娘の神さまオシラサマへの深い信仰はこうした馬との身近な暮らしから生まれてきたんですねえ。
一方こちらは人の住む母屋です。
お邪魔します。
こちらにも馬との絆を表すものがあるんです。
お邪魔いたします。
はいこんにちは。
こんにちは。
よくお出っておくれし。
どうも。
はいお邪魔いたします。
今お茶っこあげるからなす。
お茶っこありがとうございます。
こちらではこのように訪れる観光客のためにご近所の方々が交代でおもてなしをして下さるんですね。
今これはわらで何をしてらっしゃるところですか?そして神々がみんなこの馬に乗って…遠野の馬は人々の五穀豊穣の願いまでをも引き受けてくれるのです。
自然に寄り添いながら静かで平和な暮らしを続けてきた遠野。
そして「歴史秘話ヒストリア」。
未曽有の大惨事が人々を襲います。
遠野から車で1時間半。
岩手県沿岸にある…3年前東日本大震災による津波で大きな被害を受けました。
ここは実は…その時起きた悲劇が「遠野物語」に描かれています。
(波の音)東北の太平洋側三陸海岸一帯に巨大な津波が押し寄せました。
津波はすさまじい轟音とともに三陸沿岸の村々を襲います。
数分間隔で押し寄せた津波によって…「遠野物語」第九十九話に描かれたのは山田町田の浜で被災したある家族の物語です。
主人公は遠野から婿入りしてきた福治。
お代わり!よく食うなあ。
子供にも恵まれ愛する妻と幸せな日々を送っていました。
しかし一家を悲劇が襲います。
突然奪われた家族。
福治はいまだ妻を失った現実を受け入れられないでいました。
そんなある月夜の晩奇妙な体験をします。
浜辺で一組の男女を見かけた福治は女を見て驚きます。
キョウ!それはなんと亡くなったはずの妻。
しかも驚いた事に妻は別の男と一緒でした。
今はこの人と夫婦になってらの。
男は福治と結婚する前に妻が好きだったと聞かされていた相手。
福治はショックを受けます。
そのまま立ち去る二人。
津波で妻を亡くしたうえに再会した妻の幽霊は別の男と一緒になっていた。
このやりきれない悲しい物語がなぜ「遠野物語」に収められたのでしょう?それから120年近くたった…実はここに福治の子孫がいます。
いろんなものが山の方に向かって押し出すように流れましたんでこの辺りにあるのはもう当然家なんてなかったですし。
勝さんは今回の東日本大震災による津波で自宅を流されました。
同時に母親の亨さんを亡くします。
偶然にも先祖と似たような境遇に置かれたのです。
別れを告げる事もできず突然突きつけられた母親の死。
勝さんは当初その理不尽さに怒りにも似た感情を抱きなかなかその死を受け入れる事ができませんでした。
しかし一年後一つの体験が勝さんを変えます。
夢の中で勝さんは台所に立つ亨さんに話しかけました。
あっ俺母さんと話したわって。
あ何だ何か話したって。
何かねうれしかったと言えば変なんですけども。
それは震災前のいつもの家での風景。
この夢が勝さんの救いとなりました。
夢から覚めた時勝さんは母親の死に対する怒りが薄らいだ気がしたと言います。
母親の夢を見てその死を受け入れた勝さん。
福治もまた妻の幽霊を見る事でその死を受け入れる事ができたのではないかと考えたのです。
そういう感じで私は受け止めてます。
更に妻が昔の男と一緒にいる事を望んだのも実は福治自身ではないかと思うようになりました。
突然愛する家族を奪われた時人はどうやってその死を受け入れるのか。
「遠野物語」は今を生きる私たちにも深く訴えかけてくるそんな時代を超えたメッセージなのです。
今宵の「歴史秘話ヒストリア」。
最後は…そんなお話でお別れです。
遠野に伝わる物語を1年に1つ覚える取り組みを行ってきました。
身近な物語から地域の歴史と生きる知恵を学び取ってほしい。
そんな地元の願いが込められています。
(長根)お父さんお母さんご先祖様…。
「遠野物語」で妻の幽霊と出会った男の子孫…勝さんは今娘の璃歩さんに長根家の事を積極的に伝えようとしています。
妻の幽霊を見た先祖の話から母親の亨さんの思い出まで。
「遠野物語」と不思議な縁で結ばれた長根家の物語を次の世代に伝える事が自分の責任だと感じています。
これからも守って下さい。
また繰り返しながら調べて…愛する家族の思い出や愛着のある地域の歴史。
人は誰でも心の中にそれぞれの物語を持っています。
それを伝えていく事の大切さを「遠野物語」は語り続けているのです。
2014/10/29(水) 22:00〜22:45
NHK総合1・神戸
歴史秘話ヒストリア「妖怪と神さまの不思議な世界〜遠野物語をめぐる心の旅〜」[解][字]
美しい田園風景が広がる岩手県遠野。カッパや座敷わらしを見たという話が数多くが伝えられている地だ。名作「遠野物語」をガイドに、いざ妖怪と神さまの不思議な世界へ!
詳細情報
番組内容
美しい田園風景が広がる岩手県遠野。「遠野物語」は、ここで目撃された妖怪や神さまにまつわる119編の物語をまとめたものだ。遠野には今も物語に登場する不思議なスポットが数多く残る。座敷わらしから見捨てられた金持ちの屋敷跡を訪ね、カッパふちでは名物・カッパ釣りに挑戦!さらに未曽有の大津波で犠牲となった人々の心に深く響く、遠野物語の知られざるメッセージとは?いざ妖怪と神さまの不思議な旅へでかけよう。
出演者
【キャスター】渡邊あゆみ
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
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