クローズアップ現代「“人を想(おも)う”〜映画俳優・高倉健さん〜」 2014.11.20

映画のクランクアップ直後の高倉健さん。
9年前、2か月に及ぶ密着取材で俳優人生を支えてきた思いを語りました。
あー、ちきしょう。
不器用で寡黙な男。
鉄道屋を…全うしようとしている。
高倉さんは半世紀を超える俳優人生で一途な男を演じ続けてきました。
ありがとう。
圧倒的な存在感。
数々の名優にも大きな影響を与えました。
東京に帰って何があるんですか。
量が多いですから、先どうぞ。
いえいえとんでもない。
日本中を魅了し続けた映画俳優、高倉健。
不器用ですから。
貫き通した映画そして人への思いに迫ります。
11月10日、83歳で亡くなった高倉健さんは、日本を代表する映画俳優です。
俳優生活およそ60年。
生涯で205本の映画に出演した高倉さんは、映画俳優を志してなったわけではなく、生活をしていくために、映画の世界に足を踏み入れました。
映画俳優として特別な訓練を受けたことがなかったことに対して、コンプレックスを抱き、映画俳優を、初めはそれほど誇れる職業とは思えなかったと言っています。
数多くの仁きょう映画に出演し、男の中の男といわれるトップスターになりましたが、40代半ばからは、苦悩を内に秘める、不器用で誠実な生き方をする男の姿を演じるようになりました。
きぜんとした中ににじみ出る、繊細な優しさ。
俳優はプライバシーを見せたら、映画のイメージが変わってくるので見せてはいけないとして、私生活を厳しく律していました。
そして俳優にとって、何よりも大事なのは、自分の感性。
感じられる心を大事にすることだとしていた高倉さん。
意識的に感動できる小説や音楽、絵画に触れ、旅をして、見知らぬ人々や風土に触れて、感受性を磨き続けていました。
何かを感じられる人と共に仕事をし、自分が好きになれる人を演じる。
映画俳優、高倉健として生き抜き、人々を魅了し続けた演技を支えたその想いに迫ります。
13年前クローズアップ現代に出演した高倉健さん。
当時70歳。
映画への情熱を支えているものについてこう語っていました。
あのやっぱり誰かを好きになるっていうことが一番やっぱり強いと思いますね。
そうなんですか。
僕はやっぱり自分が一番ぴっとするのは好きなスタッフに見つめられるときやっぱりぶるぶるっとしますですよね。
それは本当にもう口に出して言ってもなかなか分かってもらえないと思います。
自分が心で感じることですから鳥肌が本当にこう、立つんですね。
高倉さんが大切にした人を想う気持ち。
それは長い映画人生を通じて育まれたものでした。
あたくし関東竜神一家、橘真一という駆け出し者でございます。
先夜のお礼にまいりました。
高倉さんがデビューしたのは1956年、25歳のときでした。
数多く出演した仁きょう映画。
義理と人情を重んじる役柄は多くの人々の心をつかみます。
湯浅…死んでもらうぜ。
高まる一方だった人気とは裏腹に高倉さんは悩みを深めていました。
高倉さんの映画のポスターを手がけ親交を深めていた美術家の横尾忠則さん。
当時、高倉さんから悩みを打ち明けられていました。
ゆうさん、ほら、見てみろ!
転機となったのは1977年映画、幸福の黄色いハンカチ。
ほらちゃんとあったじゃないの。
演じたのは仁きょうものではなく不器用な生き方しかできない一本気の男。
高倉さんは目の色を変えて役作りに励みました。
しょうゆラーメンとカツ丼ください。
特に力を入れたのが刑務所から出所したばかりの男が久しぶりに町なかで食事をするシーン。
高倉さんは特別な準備をしていました。
この映画で共演していた武田鉄矢さんです。
その後、社会の荒波の中で懸命に生きる男を演じるようになっていった高倉さん。
人を思いやる主人公の姿にみずからを重ねていきました。
普通の人っていうんでしょうか。
そういう役が多いですね。
これはどうしてそういうふうになっているのか自分では分かりません。
自分がきっとなんかそういう人になんかを感じるようになっているのかもしれないですけど。
感じられないとやらないというふうに決めていますから。
なんか笑ってちょっと色っぽくてああ、いいな、生きてるのいいなそういうのに出たいっていつも思うんですよ。
本日、供与した弾薬はすべて実包である。
その3年後に出演した映画、動乱。
高倉さんは、昭和初期に起きた226事件の首謀者となった将校を演じます。
私は…。
その妻を演じたのは吉永さゆりさん。
私を許してくれ。
時代に翻弄されながらも互いを想い絆を確かめ合う夫婦を共演しました。
私は幸せです。
ことし9月吉永さんは高倉さんと共演したときのことをこう振り返っています。
演技の幅を広げた高倉さんは数々の映画賞を受賞していきます。
映画俳優として不動の地位を築いていったのです。
さまざまな役を演じる中で高倉さんは主人公の生き方にさらにみずからを重ねていきます。
常に追い求めていたのは人を想う生き方を演じることでした。
68歳で出演した映画鉄道員では雪深い北国で働く鉄道員を演じました。
そりゃお父さんぽっぽやだもん。
死んだはずの娘に再会するこのシーン。
台本には書かれていない涙が自然に流れてきました。
悲しみとか喜びを受けたときに自然に出るのが涙なんですね。
だからやっぱり感激してたっていうことなんだよね。
涙って、目薬をメーキャップさんがさして涙出なくても出てるように映画やドラマの場合はそういうこともできますよね。
出すつもりがなくて困ったと思っても出ることがあるんでね。
年齢を重ねるにつれ演じることが、高倉さんの人生そのものになっていたのです。
俳優という仕事はとっても嫌な仕事だと思ってでも生きていくためにこれしかないと。
好きな、ほれた女の子と一緒になるには一緒に暮らすのにはもう俳優しかないと思ってなったんですがもしかすると人の小説や音楽とまた違う本当に映画でなければできないある思いを伝えるジャンルなのかなとどこかでちょっとそういう気が起きているのかもしれません。
もう小田剛一よりも高倉健のほうがはるかに長くなりましたからどっちが本当の自分だか分かりません。
多くの映画で共演した女優の三田佳子さん。
高倉さんは人生のすべてを懸けて映画俳優、高倉健を演じていたのではないかといいます。
日本を代表する映画俳優の高倉さん。
2005年、国境を越えて、新たな映画作りに挑みます。
中国で撮影した映画、単騎、千里を走る。
病気で倒れた息子との約束を果たすため、単身、中国を旅する父親の物語です。
高倉さんは、映画の役と同様に付き人も伴わず、たった一人で中国に渡りました。
NHKでは、このときの様子を密着取材していました。
メガホンを執ったのは、世界的な映画監督、チャン・イーモウさん。
俳優歴50年の高倉さんに対し、チャン監督は、あえて中国の農村で暮らす普通の人々を共演させました。
実は高倉さんは、中国全土にその名を知られています。
改革開放以降、初めて入ってきた外国映画が、高倉さん主演の日本映画だったからです。
日本の大スターを前に、素人の出演者たちは、緊張を隠しきれません。
NGを繰り返し、困り果てる青年もいました。
高倉さんは緊張を解きほぐそうと、気を配ります。
3時間かけて、ようやくOKが出ると、青年は高倉さんのもとへ歩み寄りました。
高倉さんの通訳を務めた張景生さん。
高倉さんの気遣いは、中国の人々の心を揺さぶったといいます。
一方、中国の人たちと撮影を続けていく中で、高倉さんの心にも、変化が生じていました。
映画の中で、仮面劇の役者が、生き別れた息子に一目会いたいと、想いを吐き出すシーン。
この役を演じていた農民は、実際に離れて暮らすみずからの息子を想い、涙を流しました。
なぜ、役者ではない農民の演技が、これほど心を打つのか。
芝居とは何かを、改めて突きつけられました。
巻き込まれますよね。
やっぱりお芝居じゃない何かを感じる。
非常に新鮮ですね。
お芝居ってなんだったのかなって思いますよ。
今頃になって、ちょっと遅いんだけど。
やっぱりなんか、強烈に伝わってきますね、生きてるってこと。
ラストシーンに入ります。
高倉さんのラストシーン。
ああ、ちきしょう。
ことばも文化も違う人々との交流。
高倉さんは、人を想うことの大切さをかみしめていました。
そして、2012年、人生最後の作品となった、あなたへの撮影に臨みます。
自分の骨をふるさとの海に散骨してほしいという、妻の願いをかなえようと、一人、旅に出る男の物語です。
NHKの密着取材には、共演者やスタッフへの気遣い、撮影に協力してくれた人々と触れ合う姿が記録されています。
船に乗ってらっしゃるんですか?
いえいえ。
乗ってない?
昔はね。
サインしに来たの?走ってきたの?走ってきたんだから、なんかちょっと書かないと、書かないと悪いような気もするけど、いっぱい、一枚だけね、じゃあ。
せっかく走ってきたからな。
やっぱり出会う人でしょうね、一番大事なの。
どういう人に人生で出会うか。
そこで決まるんじゃないですかね。
やっぱりいい人に出会うと、いろんなものをもらいますよね。
半世紀を超える俳優人生。
出演した作品は205本。
映画、そして高倉健を愛する人々と共に歩んだ83年の人生でした。
これやらないと食ってけないと思ってやりだしてから、もう五十何年たつのかね、二百何十本もやってきて。
まだ分かりませんよ。
まだ分かんないんですけど、分かんないからやりたいんでしょうね。
出演した映画の封切りが近づくと、制作したスタッフとの別れが近づき、寂しくなって、機嫌が悪くなると、高倉さんは言っていました。
一本一本の作品が重くなった。
もうこれが最後かもしれないという想いで演じていると、13年前のインタビューで語っていました。
ご覧いただきましたように、誰に対しても優しく、気づかいを欠かさなかった高倉さん。
その人柄が、演技ににじみ出ていたのではないでしょうか。
どうすれば、あなたのような人になれますか?という若者の問いかけに対して、いい人に出会うこと。
人に優しくなるためには、きつい風にばかり吹かれていてはなれない。
いい風が吹きそうな場所に、意識して自分の体、そして心を持っていかなくてはならないと、ことばを選びながら語っていた姿が心に残っています。
どうかいい風に吹かれながら、安らかにお眠りください。
♪〜2014/11/20(木) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「“人を想(おも)う”〜映画俳優・高倉健さん〜」[字]

映画俳優の高倉健さんが亡くなった。不器用だが誠実に生きる男を演じ世代・性別を問わずに愛された。最期まで自分流の生き様を貫き通した高倉さんがのこしたものを見つめる

詳細情報
番組内容
【キャスター】国谷裕子
出演者
【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
映画 – その他

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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