きゃー!
子どもたちの元気な声。
うわー!
今、この声を騒音だと感じる人が増えています。
全国各地で子どもの声がうるさいなどとして住民から保育園への苦情が相次いでいます。
中には住民が裁判に訴えるケースまで出ています。
さらに待機児童解消のため保育園の建設が急ピッチで進められていることもトラブル増加に拍車をかけています。
住民からの苦情を受けて園庭で子どもを遊ばせる時間を制限する保育園も現れました。
なぜ子どもの声が迷惑と受け止められるのか。
トラブルの実態と解決への道筋を探ります。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
子どもたちの声と聞いて皆さんはどんなイメージを抱くでしょうか。
地域や社会の宝ともいわれてきた子どもたちは今や迷惑な存在と捉えられるようになってしまったんでしょうか。
今、保育園を巡るトラブルが増えています。
東京都がことし3月に行った調査では都内のおよそ7割に当たる42の市区町村で保育園などに対し子どもの声がうるさいという苦情が寄せられています。
またNHKの調べでは全国の20の政令指定都市の9割18の自治体に同様の苦情が寄せられていることが分かりました。
東京・練馬区や神戸市では住民側が保育園側を裁判で訴えるなど事態は深刻化しています。
トラブルが増えている要因の一つとして、全国で保育園の建設が急ピッチで進められていることがあります。
政府は待機児童の解消に向けた取り組みを加速化することにしていてグラフを見ていただいても分かるとおり、この5年で1000か所以上が作られ今後さらに増える見通しです。
その結果、住宅街の中に突然多くの子どもたちが集まる施設が出来て、住民との摩擦が生じる事態に発展しているんです。
保育園と住民の間で急増するトラブル。
その実態を取材しました。
今、全国各地で保育園の建設ラッシュが続いています。
東京都では今後4年で4万人分の受け皿を用意する計画です。
中野区の住宅街の一角。
ここで、来年の開園を目指して100人以上の子どもが入る認可保育園の建設が進められています。
しかし、一部の住民の間で不安の声が上がっています。
その一人、50年以上前からここで暮らしている女性です。
建設地は以前、公園でした。
地域のお年寄りが集う憩いの場だったといいます。
お年寄りが多い静かな地域。
そこに大勢の子どもが集まることになったのです。
建設地の近くに住む住民たちは計画を知り、実際にほかの保育園を見に行きました。
そこでたくさんの子どもたちが出す声を聞きその大きさに驚いたといいます。
また朝夕送迎の自転車が殺到し事故が起きるのではないかと心配しています。
区の進め方も反発を強める要因になったといいます。
住民に計画が知らされたのはすでに保育園を作ることが決まったあとでした。
その後、区による住民への説明会が4回にわたって行われました。
しかし、話し合いは平行線をたどりました。
住民側が録音した説明会のやり取りです。
中野区では住民の声に耳を傾けたうえで正しい手続きのもと建設を進めているとしています。
すべての住民たちの理解は得られないまま、保育園は来年4月に開園する予定です。
相次ぐ保育園への苦情。
中には保育のしかたを見直さざるをえない所も出てきました。
去年、都内の住宅地に出来た保育園です。
開園以来、近隣の住民から苦情を受けてきました。
子どもの声がうるさいと言われたため園庭で遊ぶ時間を厳しく制限。
午後5時以降は子どもを出さず苦情があれば日中でも利用させない日があります。
さらに、子どもの姿を見たくないという声を受け日中でもカーテンを閉めています。
窓は目隠し用のシートで覆う念の入れようです。
いくら対策をしてもこの保育園に対する苦情は収まっていません。
失礼します。
住民と保育園のトラブルは保育の在り方に影響を与えているという調査もあります。
専門家が横浜市内の保育施設を調べたところ大声を出さない楽器を使わない、など音が漏れるのを気にしている所が7割以上に上ると分かりました。
こうした遊びを制限することは子どもたちにとってストレスになりかねないと指摘しています。
今夜のゲストは、子どもの視点からのまちづくりについて長年、調査研究を続けていらっしゃいます、千葉大学大学院教授、木下勇さんです。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
住民側、そして保育園側、ともに思いは切実ですよね。
どうしてこんなトラブルになってしまうんでしょうか?
そうですね。
最初の例のように、なんか住民が悪いように捉えるとまずいなと思って見たんですが、背景にはいろんな理由があって、あの場合には、プロセス、もちろん、待機児童対策と、今いろんなところで自治体、建設ラッシュで、いきなりトップダウン的に、しかも桃源郷のような、みんながより所にしている広場にいきなり、そういうものが建設、有無を言わさず建設っていうのは、それはなんでも反対するだろうというような、事情も感じますね。
だから2番目の例も含めて、その背後にはいろんな理由があると思うんですが、まず一つには、そういう社会の変化において、そして、待機児童対策と、建設ラッシュ、プロセスに一つは問題があると。
それから、2番目には、2番目の例のように、その背後には、どういう理由があるか分かりませんが、そこの住民側が、子どもたちを見たくないというような、また見られたくない、その関係が分断されているような、なんかね、そこに現代社会の、いろんなかみ合わない問題を感じますね。
子どもが見えなくなっている。
それからそういうのがいきなり出てきて、異質なものが入るように、お年寄りと子ども、異質な関係なのかっていう、そういう現代の問題があると。
だけど子ども自身が悪いわけじゃない。
子どもに罪はなくて、子どもはちっちゃいときに大声出すのは、これは発達のためには重要なことです。
そういうのも、なんか問題に上がってくるっていうところに、現代のちょっと、変化の問題があるような気がします。
子どもたちの声に、実際問題、苦しんでいるっていう方もそれはそれでいると思いますし、保育園になかなか通わせることができないといって苦しんでらっしゃる方もいらっしゃる。
ただ、その一方で、お互いがかみ合わない、なかなか分かり合えないのはなぜか、その背景についてなんですけれども、こちら、東京・世田谷区の住宅地で、木下さんが調査をされた、それぞれの世代の、年代ごとの遊び場の場所を示したマップなんですが、ここに、これを見るといろいろ分かってくる、背景がということなんですが?
正確にはこの前にも、1世代前もやってるんで、4世代なんですが、ここでは1960年代からの変化を示しています。
遊んでいる場所を色で塗っております。
各世代20人ぐらいに聞いた結果です。
60年代は?
空き地、原っぱやなんか、結構遊んでますね。
こういう中で群れて遊んだり、地域の催しが行われたりしてる場です。
80年代、この時代も道路ありましたが、主に道路だけになっている。
原っぱは消えています。
道路で遊ぶようになっているんですね。
これは60年代、オリンピックが開かれてきて、高度経済成長で立て込んできて、…。
経済成長が行われて。
原っぱは消えて、自然が失われてきた。
だけど道路は子どもたちの遊び場であった。
2000年代になってきますと、ほとんど道路の遊びが消えています。
本当ですね。
主に、小学校、それからこういう商業施設。
大きいなと思ったらこれ、商業施設なんですね。
そうです。
ほとんど一番多いのは、子どもたち家の中、次が学校。
で、週末なんかは家族で。
昔のように群れて、町の中で遊ぶ、そういう姿が見られなくなりました。
これは、先ほど言いましたように、子どもが見えなくなった、街から。
それが。
地域で子どもたちの遊ぶ声が、これで聞こえなくなったというのはよく分かりますね。
一方、これは大人の生活の変化も示しているということですが。
私たちは社会の変化を子どもの遊びから、見てみようとしました。
それでこの時代、どこでどんなふうに遊んでいたのか。
その中に、昔ほど、大人が登場してくる、いろんな大人、おもしろい大人、地域の催し。
空き地には大人もいた?
関係の、見えない関係の網でこの生活、皆の生活の関係の網の中にいました。
子どもは社会化していた。
この時代もまあ、道路で遊ぶ、道路で遊んでる所は近隣関係も出来ていて、中には異年齢の遊びも。
私たちはこの時代に子どもたちにヒアリングするのが、一番楽でした。
通りで声を頼りに遊んでいる所に行き、子どもらを見つけて、私たちが借りている小屋に連れてきて、1時間、2時間話を聞くと。
今、そんなことをしたら警察が飛んできます。
それが2000年代になると、つまり、子どもたちの姿が見えなくなると同時に、それはここの、要するに子どもたちの生活と大人の生活というのが、完全に分かれてしまった。
完全に分かれています。
そして、もちろん今、そんな通りで子どもたちを捕まえて話を聞いたりしたら、警察が飛んでくる。
もちろん、セキュリティーの面で、通りで遊んではいけない、道路交通安全の面でも、遊んではいけないというようなことで、また知らない人と口を聞いてはいけない。
子どもと大人の関係も分断されたと。
分断されていく。
そういった背景の中で、今回の問題が起こってきているということなんですが、ではどうしたら子どもたちと、そしてほかの大人の世代との関係を結び直すことができるのか。
木下さんが、この遊び場マップを作った世田谷区の住宅地では、保育園側と住民側が対立を乗り越えたケースが生まれています。
戦前から住宅地として長い歴史を刻む東京・世田谷区の太子堂地区。
この住宅が密集する地域に3年前新しく保育園が作られました。
おはようございます!
おはようございます!
地域の人たちから親しまれている元気な園児たち。
しかし、実はこの保育園でも5年前に建設を計画したとき地域住民の反対の声に直面しました。
こんにちは。
はじめまして。
当時、激しく反対していた一人、吉田昌史さんです。
議論がこう着する中区と住民に対して粘り強く話し合いを続けることを呼びかけた人がいます。
長年、地域のまちづくりの中心メンバーだった梅津政之輔さんです。
梅津さんは住民の気持ちを理解する一方で地域のために保育園を受け入れる必要性も感じていました。
かつて梅津さんは千葉大学の木下教授が行った遊び場の調査に協力。
子どもが地域から阻害されることは将来の町の担い手が育たないことにつながると思い立ったといいます。
地域のためにも保育園の建設問題を議論するべきだと考えていた梅津さん。
話し合いに際して、区には計画の詳しい説明や住民たちの要望をできるかぎり聞いてほしいと求めました。
一方、住民たちには不安や不信感を素直にぶつけることを提案しました。
話し合いを続けること1年。
回数を重ねるうちに合意点が見いだされていきます。
子どもたちの声がうるさいという意見に対しては当初、道路に面していた園庭の位置を変え声が外に直接響かないように変更しました。
日当たりが悪くなると訴える住民のためには敷地を掘り下げ建物の高さを抑えることで日当たりの確保にも努めました。
こうした変更点は実に7か所にも及びました。
住民たちは自分たちの意見に耳を傾ける姿勢に好感を持ち始めたといいます。
さらに住民たちの心を動かしたのは話し合いの場に建設予定の保育園の園長や保育士が率先して参加していたことでした。
園長の栗田怜子さんです。
栗田さんは保育園を建てたいという思いだけでなく建てたあとに、地域の仲間として迎え入れてほしいと訴えるため参加を希望したといいます。
子どもたちは地域の中でこそ育まれると訴え続けた栗田さん。
その真剣さに吉田さんたち住民も個人的な反対意見を言うのではなく地域の将来像について話し合うようになっていったといいます。
わっしょい、わっしょい!
保育園は住民の合意を得て3年前に開園。
今では地元の祭りに参加するなど地域の重要なメンバーになっています。
地域住民と保育園との話し合いの道筋をつけた梅津さん。
保育園の建設問題はあらゆる年代が共存する町への一歩だったと考えています。
これ、今、トラブルを抱えていらっしゃるほかの地域の皆さんにとって、VTRでご紹介した地域から、参考になるのは、どんな点でしょうか?
そうですね、VTRに表れてましたように、話し合いの場をしっかりと反対の理由を一つずつ吟味しながらも、当事者がずっと話し合って、変更を加えてきたということ。
その真摯な対応に反対の人たちも、だんだん好感を持てるとありました。
その中で、吉田さんのように、吉田さんは大きな声で反対と、声を上げるって、反対っていうのは、私は日本では、なんかネガティブに捉える、そういう空気があることをちょっと懸念しているんですが、それは問題をみんなで共有するきっかけであると思うんです。
で、吉田さんの語るように、待機児童ですとか、少子化っていうのは、大事なことだけど、自分のところには静かな環境にある。
だけど、話し合い、それから園長さんの話の。
地域の中に入っていきたい。
そういう思いが、異なる立場で話し合いをしているうちに、だんだん人って分かり合う。
そして最後にはおみこしのように担いでいく。
そういう中で、地域の将来図も見えてきている。
吉田さんもああいう中で、だんだん反対して、悪い人、そうじゃなくて、そういう地域の今度は次の、そういういろんなまちづくりの担い手になっていくっていうこともあるんですね。
反対運動の中から。
反対をしていらっしゃる人の中から地域の次を担っていく人材も育っていく可能性があると?やっぱり、地域を担っていく人の存在というのは、大事なわけですよね。
そうです。
そういうきっかけはこの反対運動から起こってくるかもしれない。
その反対の理由を一つ一つにはいろんな理由、私は先ほどの3世代、遊び場マップの変化で、生活が見えなくなっている。
みんな効率化して、みんな悩んでいる生活を。
反対は子どもの声が騒音って言うけど、それはきっかけにして、背後にはいろんな高齢化の問題とか、住環境の問題、住まい作りの問題。
そういういろんなものが、絡んでいる。
そういうものを、わたくしたちはこれから関係が分断されている中で、もう一度つむぎ合わせていくか、編んでいくか、そういうことが今、日本の現代社会の中では問われている。
子どものことの問題だけではなくて、高齢化の問題も絡んでる。
そういう問題解決を、地域の中でも行なっていくということが、非常に重要になってくる。
そういうきっかけに反対の声が上がったところから、始めていく、そういうことにできるかと思います。
子どもたちの声っていうところに、表れた問題は、高齢化の問題であり、地域の問題であり、この問題を解決していく一番のヒントはどこなんでしょう?
一番のヒントは、やはりさっきから何度も言いますが、話し合いをすること。
話し合いをすること。
当事者が話し合いながら、その生活のことやなんかを含めて、地域の将来、高齢化、このままいったらどうなる。
少子化、子どもたちが地域で育つっていうのは、どういうことだ。
その話し合いの中で、個々の生活も含めて、具体的なリアリティーを持って語られてきたときに、なんらかのビジョンが。
そういうみんなが話し合ってる中で、だんだん一つの舟に乗っている感覚が出来てくる。
そうすると、方向性なりがなんらかが見えてくる。
いきなり大きなことはできない、いろんな問題も積み残しているかもしれないけど、しかし、方向、かじ取りができて、みんなでろをこいでいく。
2014/10/29(水) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「子どもって迷惑?〜急増する保育園と住民のトラブル〜」[字]
「子どもの声がうるさい」と保育所などの施設と地域住民の確執が全国で広がっている。子どもを排除する背景に専門家は地域社会の寛容力の低下を指摘。原因と解決策を探る。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】千葉大学大学院教授…木下勇,【キャスター】真下貴
出演者
【ゲスト】千葉大学大学院教授…木下勇,【キャスター】真下貴
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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