グローバルな人〜世界で生きる“処方箋”〜「中国×パン屋×起業家 羽深剛志」 2014.09.28

突破口はいつも逆説的なもの。
固定観念にとらわれない模索の先にあるのは新たな倫理か次世代の精神か。
ジレンマの意味を問う試みは終わらない。
これでレシピ決定です。
やっと決定しました。
中学の校長先生がよく言ってましたけど。
「何言ってんだコノヤロー」と思ってたんですけどねあの当時は。
ハハハッ…。
中国・天津の一等地。
高層マンションに併設されたレストラン街に羽深さんの店はあります。
中国ではまだ珍しいヨーロッパ風のおしゃれなベーカリー。
パンやお菓子は60種類以上あります。
値段は1つ150円ほどと中国では強気の設定。
日本でなじみの総菜パンも人気です。
外国人や富裕層を中心にわざわざこの店を選んでくる客が後を絶ちません。
4年前には食料品店とレストランを融合した新しいスタイルの店も開きました。
売り上げは年間1億5,000万円。
従業員およそ50人を雇っています。
そう聞くとやり手に見える羽深さんですが20代の頃は結構いい加減だったとか。
大学卒業後に勤めた外食大手の会社は2年で退職。
当てもなくプラプラしていた時父親のひと言で中国行きを決めてしまいます。
「取引先の社長と話してたら中国パン屋がないみたいだよ」みたいな。
「どう?面白そうじゃん」とかっていうおやじも軽い乗りだったんですね。
とにもかくにも行ってしまおうと思いましたね。
そう言うんだったら。
行ってもいいんだったら行っちゃうよっていう感じでしたね。
とりあえず見に行きたいっていうか。
海外で何かやってみたいっていうふうにすぐ思いましたね。
中国語もできないのにとりあえず沿岸部の大都市天津へ。
この街を選んだ理由は父親の知り合いがいるからでした。
天津空港降りてみたら灰色の空が広がって…。
ボ〜ンと匂いが来てみたいな…。
「お〜すごいとこ来たな」って…。
「日本でしょうゆの匂いがする」って外国人は言うんですよね。
降りてきたら。
多分そういう感じなんじゃないのかな。
中国…天津降りて多分スパイスっぽい匂いがバッと来たんでしょうね。
女性がみんなあれですね。
ちょっとどぎつい服が多かったんですね。
特に若い子の…あっあの人!あのヒョウ柄の人!ヒョウヒョウの人!ヒョウの人!…とかですね。
あんな感じの人が多かったですけども。
さて問題はパン作り。
親友の岡田さんに声をかけました。
パン職人ではありませんが無類のパン好きだから誘ったんだとか。
大丈夫か!?前から岡田がパン好きだったのは有名というかものすごいパン好きだったんですね。
ごはんよりパンみたいな。
大学時代。
ほぼ毎日朝から晩まで3食パンみたいな感じでしたね。
ごはんをむしろ食べる方が珍しい…。
(取材者)自信はあったんですか?なんとかなるだろうなっていう。
「やっぱり無理だ」って。
「無理だ」って思いますよ。
やめた方がいいかもって。
そういうふうに…。
勢いがなかったら無理です。
ハハハッ…すいませんそれはちょっと…すねをかじりました。
アハハハッ…。
すねをかじりました。
はい。
全然お金がなかったです。
軽〜い気持ちで始めてしまった羽深さん。
ご想像のとおり多くの苦難が待ち受けていました。
語学を学びながら2年。
念願のオ−プンにこぎ着けます。
ところがいきなり中国ビジネスの先制パンチ。
開店翌日に査察が入り営業停止と15万円の罰金を命じられたのです。
全ての許可が下りる前に営業を始めたのがその原因でした。
実は羽深さん煩雑な中国の行政手続きをある人物に任せていました。
父親の知り合いの王偉さん。
羽深さんは彼のアドバイスに従っていれば問題はないと甘く見ていたのです。
よく中国でその時とかもいまだにそうですけど営業許可が下りる前にみんなやるんですよ普通。
試営業っていう形で。
大体みんなやるんですよ。
大体大丈夫だろうっていう話なんですね。
大体大丈夫なんですよ普通は。
なぜかうちは来ましたね。
許可を待って1か月後に営業を再開。
天津の中心部に古くからある住宅街。
地元の人ばかりが暮らすアパート。
家賃は5万円ほど。
店を開いた9年前に借りました。
商売も軌道に乗りもっとリッチな部屋を借りる事もできますが何となくそのまま。
家に帰っておもむろに始めたのは…。
腕立て伏せ!?本当に毎日同じ事をずっと繰り返してやる能力は僕はかなり低いと思いますね。
まずゴミを毎日捨てる…朝出勤の時に捨てるっていう。
多分普通の人なら誰でもやってるような事から変えようと思って。
このベッドもこういうふうに起きたらきれいにするとかですね。
やれそうでやれない事じゃないですか割と。
いや〜やっぱり根本は直らないんですね。
たまに「あっごめん」みたいな感じでお休みもあるんですよ。
だけどそこで昔だったら終わっちゃう…いわゆる三日坊主…。
三日坊主みたいな感じになってたんですよ。
それを絶対に防ごうと思って。
怠け癖を克服しようと始めたトレーニング。
体力もついて一石二鳥ってとこでしょうか。
この日は中国に来て世話になった人との食事会。
お相手は開店手続きの一切を任せたあの王さんです。
査察に入られたあとも羽深さんは関係を深めてきました。
これ僕ですよ。
ハハハッ!やっぱり会社の責任は僕が始めた事なんで王さんの責任ではないじゃないですか。
だからどれだけ何て言うんですかね…いざという時に自分ができない範囲をどれだけ消していくかっていうのはすごい重要かなとは思いましたね途中から。
自分が分かってない事を人に任せてそれをそのままに流していって大丈夫だろうという仮定で仕事をしていくと大概駄目ですね。
コネ社会とも言われる中国。
しかし人脈を頼ってばかりでは痛い目を見ます。
辛抱強く築き上げる信頼関係。
それが中国流のビジネス作法です。
出ばなはくじかれたものの当初のねらいどおり店は順調に売り上げを伸ばしました。
しかし新たな問題が発生。
従業員を雇っても長続きせず慢性的な人手不足に陥ったのです。
手っとり早く人を集めるため訪れたのは路上の職業案内所。
仕事を求め農村から来た出稼ぎ労働者たちがたむろしています。
格差社会の中国では都市の人間が嫌う単純労働のほとんどを彼ら農民が担っています。
天津の人口の3割は出稼ぎといわれるほどです。
企業…こういう白いA4ぐらいの紙でパンパンパンパンって貼ってあるんですね「募集中募集中募集中」。
当時は車で行くともうブワ〜ッて車に寄ってきて。
…みたいな感じでした。
ブオ〜ッと来て「はいはいはい…」みたいな。
その場で「君来る?」みたいな。
「とりあえず面接しようか」とかっていう…。
安易に集めた出稼ぎ労働者たちが思わぬ事態を引き起こします。
何時頃だったか…6時とかそういう早い時間だった気がしますけどね。
確か…。
朝電話があって…売り場の方から。
「キッチンの子たちパンを作ってる職人の子たちが来てない。
出勤してません」みたいな。
…で「分かった」って。
賃金引き上げを求める従業員のストライキ。
平均的な給与は渡しているはずでした。
引き金となったのは清掃のチェック表など日本なら当たり前に行われる規則の導入でした。
「面倒くさい面倒くさい」みたいな。
「堅苦しい」みたいな反発があって。
「じゃあ給料上げろ」ですねやっぱりそこで。
ボイコットのあとの要求は。
不満がありそうな雰囲気は感じてましたけれども。
出稼ぎなんですあくまでも…頭の中が。
ここは稼ぎに来ている土地であって住む土地ではないと思ってるんですね。
だから「いつかは帰る」「結婚したら帰る」とか「子どもができたら帰る」とか。
教育をそんなに受けてない人たちばかりで下手すりゃ字も若干読めないっていう人間もいますから。
「はいやれ!」みたいな感じの事が多かったんですね昔。
こちらからの要求。
それができない事に対して僕はこう…怒ったりですね。
従業員は単なる労働力。
給料を払っているんだから会社の言うとおりに働いて当然と考えていた羽深さん。
仕事に対する意識の差に全く気付いていなかったのです。
いわゆるこれもよく言う人もいると思うんですけど…重要性を感じてなかったですね当時は。
そういうコミュニケーションをとるっていう事に関して。
羽深さんは従業員との接し方を抜本的に見直します。
まず取り入れたのは昇給制度。
働きぶりに応じて最大15%の給料アップを約束しました。
その査定のために月に1度話し合いの場を持ちました。
彼らのやる気を上げるとともに不満や要望を聞きもっと分かり合おうと考えました。
どうすれば理解を深められるのか。
試行錯誤の末羽深さんは社員との面談にある工夫をしました。
田舎の農村から来たこの男性は配送の担当。
羽深さんいわく少々見えっ張り。
工夫その1。
従業員に自分の仕事ぶりを自己採点させる事。
日本人よりも高めにつけるのは想像どおりだと思います。
最初始めた頃とかっていうのは面白いように…。
「お前全然できてないのに」っていうのが「555555…」みたいな。
オール5みたいなのはいましたけど。
逆にそれがよかったんでしょうね。
「本当お前できてると思ってたんだ」みたいな感じになったりですね。
工夫その2。
ほかの従業員によい点があったら報告させる事。
提出すれば昇給の査定アップ。
自分の事だけを考えがちな従業員に周りを見る目を養い長所は見習ってほしいと導入しました。
日本語でスマイル報告っていう。
比較的欠点ばっかりみんな言う見えるんですね。
だけどこういういいところっていうのはなかなか人ってあんまり言わないじゃないですか。
だって見えないじゃないですか。
そういうのを養おうっていう。
工夫その3。
昇給した時にその対価として何をしてほしいかを明確に話す。
この男性はちゅう房のチーフ。
羽深さんの会社で働いて6年になります。
給料の件っていうのは触れたりする事はよくあるんですけども何で多いのか何で少ないのかっていうのはやっぱり分からしてあげた方がいいと思いますね。
給料の違いっていうのはやはりどれだけ責任を負う範囲が大きいかで決まってくるもんであって…。
会社全体の事を考えられる社員には高い給料を払う。
ちゅう房を任せている彼の給料は入社当初の6倍です。
従業員が定着し始めた4年前羽深さんは新しい店を始めました。
1階は輸入物が中心の食料品店。
2階はレストラン。
単に食材を売るだけでなくその楽しみ方も伝えようとしています。
例えばレストランの客は1階の売り場で実際に手に取りワインを選べます。
値段も小売り価格で提供されるため通常の半額以下。
このコンセプトが共感を呼び店は連日にぎわっています。
新たな展開とともに羽深さんが力を入れ始めたのが従業員の教育です。
彼らの多くはこれまでワインを飲んだ事すらありませんでした。
要するに僕たちが当たり前だと思ってるような知識も知らないっていうか。
例えば彼女なんかはエレベーターの使い方分からなかったんです。
乗った事ない最初。
…というような何て言うんですかね僕らが本当に普通にやってるような事が知らないので。
羽深さんが根気よく教育を続けるのには理由がありました。
う〜ん…根本的に違いはないとは思ってますね。
人間として。
コミュニケーションをしっかりとってコツコツと教育をしたりとかですね。
最終的には国籍はあまり関係ないと僕は思ってます。
およそ50人が働く羽深さんの会社。
幹部は出稼ぎからのたたき上げ。
従業員には大学を出た人もいますが会社全体の事を考えられる人材を選んだ結果です。
従業員との関係を深める中で羽深さんの意識も変わってきました。
僕がこう…何気に話した事をパッと見たらみんなすごい必死こいてメモしてるのが分かったんですね。
これって僕がちょっと何かをやるだけでこの子たちに影響力があるって思ったんです。
って事はこの子たちの責任が僕には…。
この人たちの時間をとってるというか…人生の中の。
それを感じたんですねすごい。
昔とはかなり変わってきた考え方ですね今。
自分の周り最低でもいる人たちだけにでもいい影響を与えれるようにならなきゃいけないというのは思ってますね。
単なる労働力から共に働く仲間へ。
うまく会社が回り始めた頃羽深さんに最大の試練が襲いかかります。
日本政府の尖閣諸島の国有化をきっかけに中国全土で起こった反日デモ。
多くの日系企業が打撃を受け撤退する会社も相次ぎます。
羽深さんもこれにはさすがに参りました。
嫌でしたよはっきり言って本当にあの時の生活は。
ちょっとうん…。
指はさされないですけどヒソヒソヒソヒソ「ああ日本人だ日本人だ」みたいな。
あとは酔っ払いにケンカ的になりそうな雰囲気は何度か…2回ぐらいあったかな。
確かにあれをきっかけに若干中国で生活するのに疲れを感じましたけどね。
日本に帰るとかどっかほかの国に行くのかとかそういう事を真剣に考えるようにはなりましたね。
中国でまだふんばろうと思わせてくれたのは従業員たちでした。
軽い乗りでやって来た中国。
うまくいく事よりも失敗する事の方が多いけどその経験が大切な事を教えてくれました。
日本人であったりとか中国人であったりとか国境であったりっていう訳ではなくて自分の影響してるコミュニティーっていうものを非常に大切にするっていう事が僕はやっていきたいというかそれが必然であると思ってるんですね。
僕が言ってるコミュニティ−で僕長になろうとも思ってないですよそれ。
僕はリーダーにならなくてもいいと思ってる訳ですね。
もしも僕より能力が高い人がいてですよ僕はその参謀でいいならそれでもいいんですよ。
それは本当です。
根は面倒くさがり屋なんで。
ハハハッ…!羽深さんにちょっと見せたい場所があると誘われました。
従業員が独立して始めた居酒屋です。
国を越え文化を越え幸せになる秘けつ。
それは少し肩の力を抜いて一歩を踏み出してみる事かもしれません。
無計画である事を恐れずでもやると決めたら根気よく。
それが羽深流のグローバルな人。
ニーハオ!
(2人)ニーハオ!2014/09/28(日) 01:00〜01:29
NHKEテレ1大阪
グローバルな人〜世界で生きる“処方箋”〜「中国×パン屋×起業家 羽深剛志」[字][再]

「グローバルな人」ってどんな人?世界で生きる日本人に密着取材。その言葉から、幸せに生きる秘けつを解き明かす。今回の主人公は、中国でパン屋を起業した羽深剛志さん!

詳細情報
番組内容
「グローバルな人」ってどんな人?世界で生きる日本人に密着取材。その言葉から、幸せに生きる秘けつを解き明かす。今回の主人公は、中国でパン屋を起業した羽深剛志さん!9年前やや無計画にはじめたパン屋。今では、年商1億5000万円に!!従業員のストライキに反日デモ。悪化する日中関係を乗り越えた秘けつとは?
出演者
【語り】江藤泰彦

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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