Crossroad <土田康彦> 2014.09.27

イタリア北東部。
世界遺産の街ヴェネチア。
アドリア海の真珠とも水の都とも称えられるその美しい街並みに引けを取らない華やかで格調高い芸術品があります。
1200年以上の歴史を持つ光溢れるヴェネチアを映し出すかのような金や赤の鮮やかな色彩。
クリスタルガラスの透明感。
そして何よりも高度な技術を駆使した多様な造形が時を超えて人々を魅了してきました。
門外不出の秘伝の技をそれぞれの工房が競い合い守り抜いてきたのです。
ともすれば閉鎖的なヴェネチアングラスの世界で活躍する日本人がいます。
日本人で唯一本場の名門工房にアトリエを持つアーティスト。
伝統の世界に革命を起こしたその作品は高く評価されています。
土田さんの軌跡をたどるとともに新たな芸術が生まれる瞬間に密着しました。
人の行く道は一本道とはかぎらない。
突然岐路が現れ進路を選ぶことで旅路は続く。
この人はどんな道を歩むのだろう?アドリア海に浮かぶ島々からなるヴェネチア。
ヴェネチアングラスの工房があるのはヴェネチア本島の隣にあるこのムラーノ島です。
土田さんは毎朝ヴェネチア本島から船で通っています。
あっ今日山が見える。
ヴェネチアでは水上バスが市民の足。
外光できらめく窓をキャンバスにガラスのデザインを練るのが土田さんの日課です。
ムラーノ島まではおよそ20分。
13世紀末技術の流出を防ぐためヴェネチアングラスの工房や職人たちが集められたムラーノ島。
現在も50以上の工房があるヴェネチアングラスの島。
土田さんのアトリエは船着き場のすぐ近く。
名門スキアヴォン工房です。
この奥が土田さんのアトリエ。
ここで生み出された作品は従来のヴェネチアングラスとは大きく異なるもの。
日本の竹をイメージした『バンブー』。
ヴェネチアングラスの特徴である華やかな色彩を一切使用していません。
『イマジン』はガラスの透明性まで排除した純白の作品。
最近手がけた土田さんの作品はヴェネチアングラスの伝統的な技法を使いながらもこれまでになかった新たな美の世界を作り出しているのです。
しかも制作方法も独特。
浮かんだイメージをまず平面に起こします。
『運命の交差点』は帰国したとき日本の祭りで感じたせつない思いを表現したもの。
平面でデザインを固めたらそれを立体にしていきます。
独特な作品を生み出すために大切なのがこのガラスを削る工程。
そして作品が完成するとそれをシリーズ化。
ひとつのテーマでいくつもの作品を生み出していくのです。
伝統的なヴェネチアングラスの職人たちは土田さんの作品をどう評価しているのでしょうか?ムラーノ島の中心に飾られた島のシンボルともいうべきオブジェを制作したマエストロシモーネさんはこう語ります。
土田さんの住まいはヴェネチア本島にあるこのアパート。
どうぞ。
16世紀に建てられたという石造りの建物で家族と暮らしています。
千住さんのガラスの滝。
土田さんは大阪で男5人兄弟の次男として産声を上げました。
小学校時代勉強は苦手だったといいます。
(スタッフ)学校はあんまり好きじゃなかったですか?そうねあんま好きじゃなかったね。
アーティストになるためにはヨーロッパを放浪の旅してそのときに行った先々でアルバイトのため手に職をつけようと選んだのが料理の道。
その後ヨーロッパへ渡りパリを拠点として世界中を放浪しながら絵を描き続けました。
22歳のときたどり着いたのがヴェネチア。
それはベリーニカクテル発祥の店として知られる老舗レストランハーリーズバーで働きたいとの思いから。
オーナーに電話で直訴。
翌日にはスーツケースを2つ抱えてパリからやって来たといいます。
そのヴェネチアでヴェネチアングラスと運命的な出会いを果たしたのです。
キャンバスの上にガラスを接着剤で貼りつけていきはじめたり…。
ヴェネチアングラスに魅了された土田さんは26歳のとき工房の門を叩きます。
それこそ名門スキアヴォン工房でした。
土田さんが弟子入りしたのはスキアヴォン工房の3代目当主12歳にして工房に立った生粋の職人。
ガラスの知識や製法を一から叩き込まれました。
土田さんの作品は当初はまったく認めてもらえませんでした。
そしてこんなことまで。
(スタッフ)何に怒ってたんですか?俺に怒ってたんだと思う…。
厳格な左右対称なものを作るっていうのがマエストロの基準。
僕の目指してるところであって左右対称なものほど不自然なものはないし機械的なものはない。
対極にあった2人の美意識。
しかし土田さんの作品が認められてくるとフランコさんも考えを変えるようになりました。
まったく別に見えて真髄は同じ。
土田さんは伝統の世界に革命を起こしたのです。
存在が認められるなか人生にも大きな変化が。
土田さんは28歳のときイタリア女性と結婚します。
アンナリータ・スキアヴォンさん。
フランコさんの一人娘。
名門スキアヴォン工房の4代目を継ぐ女性です。
2人の間には娘も生まれました。
おっおいしそう。
買ってきてくれたの?優しい。
何?これお豆。
夕食は毎晩土田さんが腕を振るいます。
そう元料理人ですもの。
とってもいいですよね。
イタリア料理と日本料理も作ってもらえるし2人ともとても嬉しいです。
(スタッフ)お父さんと土田さんの間に入って大変だったんじゃないですか?頭かたいでしょ2人とも。
この話になると土田さんは無口になります。
朝時間のあるときは舞鹿ちゃんを夫婦で小学校へ送っていきます。
おじいちゃんとおばあちゃん待ってるかな今日も。
チャオチャオ。
娘が生まれて間もなく土田さんはフランコさんから1冊のノートを譲り受けました。
ガラスのレシピみたいなもので赤色を作るためにはソーダが何g…書かれてて。
フランコさんがお父さんから受け継いだスキアヴォン家秘伝のガラスレシピです。
親父がこれで仕事をしてたわけなんですけどその汚れが染み込んだこういうレシピをもらえるっていうことは僕にとってはすごく重いことでしたね。
そして作り上げた作品があります。
新たなる古典。
スキアヴォン家が代々得意としてきたガラスを突起させる技法を駆使したもの。
伝統を担う使命を受け止めた土田さん入魂の一作です。
ムラーノ島の工房にはそれぞれが得意とする秘伝の技法があります。
この日訪ねたのは400年続く老舗の工房。
当主は18代目のダヴィデさん。
現在手がけているのはアフリカをモチーフとした作品。
独特の模様はこの工房に代々伝わるムッリーナとよばれる技法で作られています。
色ガラスを組み合わせるこの技法を作品に取り入れている土田さん。
それぞれが門外不出の技術を誇る別々の工房がコラボすることは従来ムラーノ島ではありえないことでした。
工房の壁を超えて貪欲に美を追求する土田さん。
ムッリーナ技法の色ガラスを自分なりに組み合わせて1,300℃の窯で溶かします。
それをダヴィデさんが巻いていくと華やかな花瓶に。
同じ技法を使いながらも新たな作風に仕上げるのが土田さんの真骨頂。
このコラボから生まれた窓をテーマにしたウィンドウズシリーズ。
土田さんはこの20年間常に新たな美を追い求めてきました。
ということも薄々感じている。
知らない世界を知りたい。
7月土田さんの姿は沖縄にありました。
ヴェネチアからはるか9,000数百キロ。
琉球ガラスの普及発展のための施設です。
常に新たな美を追い求める土田さん。
この夏ここで琉球ガラスとのコラボに取り組みました。
ヴェネチアングラスの技法も伝授。
(スタッフ)ビックリしました?今回のコラボは琉球ガラス村の依頼によるもの。
土田さんとのコラボを通して土産物からアートへと琉球ガラスを飛躍させたいというのです。
この間土田さんの拠点は那覇市内のアパート。
(スタッフ)こんにちは。
いいですか?どうぞどうぞ。
土田さんは琉球ガラスの魅力を生かすべく新たなテーマを探していました。
だんだんそういう気持が湧いてきて…。
沖縄に来て2か月。
この日足を運んだのはすでに一度見ている首里城。
更に詳しく知るために専門家に案内を依頼したのです。
よろしくお願いします。
サンゴっていう意味なんですけれども。
この赤とオレンジの間くらいのこの色で何か作品を作れないかなと思って。
うわっすごい。
かっこいいよね。
そうですね。
こういう部分とか…。
さらりと見せてる感じが興味深いっていうか…。
首里城の赤と石組みの美。
琉球の民族性をテーマに制作をスタート。
赤い模様を施したクリスタルの棒を輪切りにして石垣のように箱に敷き詰めました。
レンガのように中心に縦がきてまた横がきて縦がきてじゃなくて少しずつずれ合いながらも最終的にはきれいな長方形を出すっていうのが僕が招かれてのコラボはプレッシャーも大きいという土田さん。
沖縄での初作品が1週間後に焼き上がります。
(スタッフ)どうですか?感触は。
1週間後窯出しの日。
焼き上がった作品に磨きをかけていきます。
それも琉球ガラスでは考えられないほど丁寧に時間をかけて。
磨くことで生み出されたヴェネチアングラスのような重厚な質感。
加えて琉球ガラスならではの魅力も生かされています。
赤色っていうのはカドミウムっていう鉱物を入れるんですけどその焼き具合によってっていうのは僕にとって大きな魅力ですし。
(スタッフ)それはヴェネチアン…。
グラスでは起きない現象ですよね。
数日後琉球ガラス村の関係者に土田さんの新作が披露されました。
すごいおもしろいです。
今のところおそらく25%から30%くらいの仕上がりになってますので今後90%そして100%までに仕上げたいと思います。
ヴェネチアングラスの聖地とも言うべき場所があります。
ムラーノ島の墓地には有名工房の主から無名の職人までヴェネチアングラス1200年の歴史を支えてきた人々が眠っているのです。
名も残さずに歴史の闇の中に消えていった人のほうが多いですけどこういう人たちが1人でもいなかったら今の僕がないような気がするし。
マエストロとしてのリスペクトも込めて丁寧に完成度を上げなきゃいけないなって思いますよね。
ヴェネチアングラスの伝統を受け継ぎつつ新たな美の世界を切り開く土田康彦さんを応援します。
2014/09/27(土) 22:30〜23:00
テレビ大阪1
Crossroad <土田康彦>[字]

1200年以上の歴史を持つヴェネチアングラスの本場、ムラーノの名門工房にアトリエを持つアーティスト・土田康彦が登場。新たな芸術が生まれる瞬間に密着しました。

詳細情報
出演者
【ナビゲーター】
原田泰造
番組内容
イタリア世界遺産の街、ヴェネチアで新風を巻き起こしている日本人がいる。土田康彦、45歳。1200年以上の歴史を持つヴェネチアングラスの本場、ムラーノの名門工房にアトリエを持つアーティストで、伝統の世界に革命を起こしたその作品は高く評価されている。そんな土田のクロスロードに迫るとともに、新たな芸術が生まれる瞬間に密着しました。
番組概要
様々な分野で活躍する、毎回一人(一組)の“挑戦し続ける人”を紹介。彼らが新たなる挑戦に取り組む今の姿を追う。挑戦のきっかけになったもの、大切な人との出会い、成功、挫折、それを乗り越える発想のヒントは何からつかんだのか?そして、彼らのゴールとは?新たにどこへ向かおうとしているのか…。そんなCrossroad(人生の重大な岐路)に着目し、チャレンジし続ける人を応援する“応援ドキュメンタリー”。
ホームページ

http://www.tv-tokyo.co.jp/official/crossroad/

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – その他

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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