美の巨人たち 横山大観『紅葉』 2014.09.27

なだらかな稜線を借景に悠然と広がる枯山水の庭。
どうですか思わず唸ってしまいますね。
この庭はアメリカの日本庭園専門誌『ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング』でとはいえ実はここ美術館の敷地の中。
四季折々豊かな移ろいを見せる庭園はまるで一幅の絵画のようです。
その美術館に至宝ともいえる絵があるのです。
燃えるような赤。
鮮やかな群青。
そして輝く白銀。
描いたのは日本画の巨匠。
本日はその絢爛たる色彩の世界へ。
おや?鳥が飛んでいる。
古代出雲の神話が息づく町足立美術館は広大な日本庭園とおよそ1,500点にのぼる近代日本画のコレクションを持ちとりわけ大観作品は120点にも及びます。
その中で年に一度木々が色づく頃に必ず展示される絵があります。
この作品は大観作品の中でも…。
今日の作品。
六曲一双の屏風に描かれた秋の渓谷です。
左隻には色づいた楓の大木が画面いっぱいに枝葉を広げています。
太い幹は折れ曲がりまるで水の調べでも聞いているかのような佇まい。
深くえぐれた木のほら。
苔むす肌。
風雪に耐えた長い年月を感じさせます。
はらりと落ちた葉の切なさ。
この絵の最大の魅力は色彩の見事さ鮮やかさ。
色づいた楓は赤や黄色そして茶と微妙に色を変えていきます。
葉脈は金色で引かれています。
背後を静かに流れる川。
眼の覚めるような群青に沸き立つさざなみ。
その緻密さしなやかさ。
穏やかな情景は右隻で一変します。
小さな段差を流れ落ちた水がほとばしっています。
自然がみせる一瞬の美しさ。
湿潤たる空気は微細な箔をちりばめキラキラと輝いています。
その中を飛び立つ一羽の鶺鴒。
白と黒のコントラストが画面を引き締めています。
『紅葉』は横山大観が還暦を過ぎてから描いた渾身の一作です。
絢爛たる秋の情景に画家はある思いを込めていたのです。
いったいどんな…。
皆さんご無沙汰しています。
私は去年京都の造園会社で働くことを決めた庭ガールです。
一人前の庭師になるには10年は修業に励めってことで今はひたすら草引きと掃除の日々。
実はこの間親方にって聞かれたんだけどうまく答えられなくて…。
そうしたら親方休みをやるから庭を見てこいって。
それで勉強を兼ねた小旅行に行くことにしたんです
なんでもこの安来には11年も連続で日本一になってる庭があるらしいんです。
親方にとにかく広いからしっかり勉強してこいって言われたんだけどそこ美術館みたいなんですよね
あここだ。
でも美術館の庭がそんなにすごいのかな…
えっ嘘…。
目の前に5万坪の庭が広がっていました。
枯山水庭をはじめ趣向を凝らした6つの庭園が…
すごい!親方疑ってごめんなさい
あ…私この庭好き。
白い砂松の緑なんてみごとなコントラスト。
えっ大観の庭?ここは『白砂青松』という絵をモチーフにした庭なんだ
大観って教科書によく載ってる横山大観?大観の言葉です。
今日の作品は大観の心の芸術の集大成ともいえる傑作です。
80年以上も前に描かれたにもかかわらずまったく色褪せていないのです。
輝きも変わらないのです。
なぜなのか…。
その技法に挑んでみると…。
伝統の技を駆使しながらも新しい日本画を生み出そうとした大観の崇高なる決意が見えてきたのです。
一羽の鶺鴒に込めた切なる願いとはいったい何か?横山大観作『紅葉』は絢爛たる色彩の調べです。
大観はあるとき京都でみごとな朱色の岩絵具と出会いこの絵を描こうと思い立ったといいます。
そしてその朱を最大限に生かすため輝く水しぶきに驚くべき技巧を凝らしたのです。
そこには革新を続けた画家の切なる願いがありました。
近代日本画の歴史を語るうえで避けて通ることのできない場所です。
今からおよそ100年前。
ここに…。
日本画の俊英たちが集いました。
大観たちは日本美術院をこの地に移設し都落ちと揶揄されながらも独自のスタイルを求めていったのです。
朦朧体もそのひとつです。
空刷毛という新たな手法により描いた作品は日本画の伝統でもある線描をなくした斬新なものでした。
更に室町から桃山にかけてのやまと絵の彩色法や江戸期の琳派の装飾表現などさまざまな技法を取り込みながら新たな日本画を追求。
画壇の頂点へと上りつめていくのです。
大観はですね斬新な発想力ですとか豊かな表現力で伝統的なものを生かしつつも新しい日本画を生み出した画家です。
70年以上画業がありますけども画風がずいぶんと変わってます。
本当に1人の画家が描いたのであろうかというくらい雰囲気が変わっていまして新しいものに取り組んでいったという姿勢はよくわかるかと…。
この庭の朝は早い。
美術館がオープンする前に庭の掃除をすべて終わらせなければならないからです
これだけ広いと手入れだって大変よね。
庭の造形を変えないように大きくなりすぎた木は随時入れ替えてるらしいんです。
そのために松のストックは常に200本以上あるんだとか。
この滝も大観さんの絵がモチーフらしい
水を流したり石や木を動かしたりして新たな世界をつくる庭師の仕事って画家が構図を決めるのと似てる気がする。
あっ!まるで掛軸みたい
あれ?
もしかして親方庭を見せたかっただけじゃないとか…。
そういえば紅葉も見てこいって言ってた。
季節が合わないのに変だなって思ってたんだけど…
あっ!今日の作品は大観芸術の集大成ともいえる傑作です。
あざやかに色づくもみじの朱色。
その朱をより美しく見せるため大観が強くこだわったものがありました。
川面を覆う銀色です。
この輝きは薄くのばした金属である箔をちりばめたもの。
箔師の遠藤さんにこの技を再現していただきました。
蒔絵という日本美術に欠かせない技法です。
なぜ通常使われる銀ではなくプラチナだったのか?今日の作品をよく見ると蒔かれた箔にはいくつかの形があることがわかります。
粒のような砂子。
四角い切箔。
そして細く切られた野毛。
それぞれに役割があります。
挑んでいただくのは箔の表情豊かなこの部分。
最初に蒔くのは砂子です。
まずは箔をふるいに入れ1ミリにも満たない砂子ができました。
蒔くためにまんべんなく塗り蒔いていきます。
これが1回目の絵肌。
しかし一度では終わりません。
絵に空気感を与えるプラチナの輝き。
竹刀で小さな角辺を作ります。
そして砂子と同じように筒に入れ蒔いていきます。
切箔は絵により奥行きをもたらす効果があります。
そのため筒も網の目の異なるものを用意しだんだんと大きな切箔へと変えていくのです。
意表をつくのが野毛。
野毛とはその名のとおり毛のように細く切った箔のことです。
幅わずか1ミリほど。
その細さゆえにコントロールできない思いがけない形が絵に躍動感を与えるのです。
最後に大きな切箔を置き画面にアクセントをつけます。
砂子の空気感。
野毛の奔放。
切箔の作り出す奥行き。
大観は蒔絵の繊細な技を駆使し絵に鮮烈な輝きと躍動感を与えたのです。
うわっ…。
なんてきれいなんだろう…
最も絢爛豪華な作品です。
実はそこに画業のすべてを注ぎ込みこの作品を画家の最高傑作としなければならない理由があったのです。
ヒントはローマで撮られたこの写真。
横山大観なぜか不機嫌。
その訳は?1930年4月。
日本画壇の長として指揮を執ったのが…。
出品画家は80名。
出品数は177点。
大観は六曲一双の屏風に闇夜に浮かび上がる幽玄な夜桜を描きました。
日本人の心情を叙情豊かに謳い上げ世界の人々に日本画の美を見せつけたのです。
展覧会は大成功。
大観はその栄光とみなぎる自信を胸に凱旋したはずでした。
しかし…。
大観はローマ展のあとにこんな檄文を書いています。
会場で作品を見てマンネリ化停滞というものを感じていまして…。
大観自身が常に日本画を変えていくという気持を持っていましたのでその他の画家が挑戦をしていないと感じたのかと思われます。
強烈な檄を画壇に叩きつけた大観は自らその答えを求めるように筆をとりました。
そして生まれたのが今日の作品です。
絢爛たる色彩の調べのなか苔むした大木はたらし込みという技法で描きました。
川の飛沫や一面を覆う霞は蒔絵の技法を使いました。
自らが持つ技を駆使し日本美術が連綿と受け継いできたあらゆる描法をこの絵に注ぎ込んだのです。
これが心の芸術だと。
進むべき道だと。
親方がこの絵を見て来いって言った意味がよくわかりました。
なんて心地いい水の流れなんだろう。
岩の配置も絶妙だし。
なんといっても楓の枝振りがすばらしい!あぁ私もいつか日本の心を庭で表現したいなぁ
大観先生ありがとうございます。
勉強になりました。
ん?でもなんでこの楓枯れ始めてるんだろう。
他はキラキラ輝いてるのに…
あれ?もしかしてこの大木…。
もう一度この絵をよく見てください。
もしもこの楓の大木が大観自身の姿だとしたらどうでしょう?背後の川は日本画壇が紡いできた長い歴史と美意識の流れに見えないでしょうか?それをじっと見守る老いた楓の大木。
羽ばたく鶺鴒こそ日本画の未来を託した若き画家の姿。
大観はこう記しています。
それこそが大観がこの絵に込めた願いだったのです。
別名大観美術館。
決して色あせることのない『紅葉』がここにはあります。
絢爛たる六曲一双の屏風に漂う湿潤な秋の気配。
命を燃やすように真っ赤に色づくもみじ。
キラキラと輝く水しぶきの中一羽の鶺鴒が羽ばたいていきます。
横山大観作『紅葉』。
革新を求め続けた男の燃える秋。
心で描く。
2014/09/27(土) 22:00〜22:30
テレビ大阪1
美の巨人たち 横山大観『紅葉』[字]

毎回一つの作品にスポットを当て、そこに秘められたドラマや謎を探る美術エンターテインメント番組。今日の作品は、秋の情景を描いた絢爛豪華な世界、横山大観作『紅葉』。

詳細情報
番組内容
今日の作品は、日本画の巨匠・横山大観作『紅葉』。島根県の足立美術館で木々が色づく頃に展示される屏風です。左隻には、枝葉を広げた色づく楓の大木、色鮮やかな秋の渓谷など穏やかな情景。一方、右隻はほとばしる水、湿潤たる空気の中を一羽のセキレイが飛び立ち、白と黒のコントラストが画面を引き締めています。描かれた大木やセキレイが意味するものとは?また絢爛豪華な世界が、時を経ても色褪せない理由も明らかに!
ナレーター
小林薫
音楽
<オープニング・テーマ曲>
「The Beauty of The Earth」
作曲:陳光榮(チャン・クォン・ウィン)
唄:ジョエル・タン

<エンディング・テーマ曲>
「オーシャン・ブルー 〜ORCA〜」
高嶋ちさ子
ホームページ

http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/

ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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