お葬式で会いましょう 2014.09.27

留守電
(男性マネージャー)「心配してんだ。
電話に出ろって。
どこにいるんだ?勇!」。
留守電
(アナウンス)「メッセージは以上です」。

(大田黒勇)え…。
(案内人)勇さん…ですよね?はい。
お待ちしておりました。
急で驚きました。
そうでしたか。
そうですよね。
もう何が何だか…。
はい。
心中お察しいたします。
どうぞどうぞ。
一体どういう事ですか?
(大田黒純一)おいネクタイ!ネクタイ曲がってるぞほら!兄貴…来たんだ?来ないわけいかないだろう。
母さんの…母さんのお葬式なんだから。
でもさあこれ…。
でどうなんだ?最近は。
まあそこそこいろいろボチボチ忙しくやってるよ。
忙しいんだか忙しくないんだかさっぱり分からんぞ。
相変わらず言葉にうるさいねえ。
お前来年三十路だろ。
子いわく「三十にして立つ」。
お前もいいかげん大人になれ。
ん?兄貴もいい年なんだから婚活頑張れって。
(金光綾子)あら〜どうも〜お久しぶり〜!2人勢ぞろいでお元気?どうもご無沙汰してます。
いやだ純一ちゃん!しばらく会わない間に随分と老けたわね〜。
まだ50にはなってないわよね?33です。
アハッ!子供の頃美少年だったのにね〜。
「少年老い易く少年老い易し」。
綾子おばちゃん元気そうだね。
元気じゃないわよ!来年還暦よ〜!寄る年波には乗り切れなくてもう大変なんだから!まだ株でひともうけしてんの?そこそこいろいろ何だかんだね〜。
まあ専ら目まぐるしくそれなりにやってるわよ。
もう大変なんだから!爆破寸前よ!学成り難し!はい?「少年老い易く学成り難し」ですから。
相変わらず日本語が破綻してますね。
ん〜もう〜他人行儀はよして純一ちゃん。
親戚なんだから。
てか綾子おばちゃんさあこれって何か知らされてた?
(綾子)あらどうも!
(案内人)純一さん勇さんどうぞお入り下さい。
どうぞ。
てかうちだし。
(綾子)ほんとにお久しぶりねえ!
(笑い声)お前希衣子さんは一緒じゃないのか?ああ…あいつ今日仕事あるって。
最近は区役所も休日出勤多いしな。
ここんとこ残業も多いし公務員も楽じゃないよな。
そうか…。
大変だな希衣子さんは。
嫌みなところも相変わらずだね〜。
何が嫌みなんだ?事実を述べただけだろ。
(綾子)あらあらこらまあ〜!どうも久しぶりじゃないねえ〜!
(大田黒希衣子)すいませんどうもご無沙汰してます。
(綾子)キリコちゃんよ〜。
希衣子です。
(親戚たち)あらま〜!お久しぶりです。
あっどうもお兄さんご無沙汰して申し訳ございません。
すいません勇君なんですけど急に仕事の連絡があって参列できなくな…。
う〜ん…。
勇!?何で居るわけ?お前こそ何でだよ!そうだ。
2人も姉さんから?これ…ほら。
ええ。
(親戚たち)「これでしょ?」。
「みんなもらってるよ」。
「これこれこれ」。
「みんな一緒?」。
(案内人)皆様おそろいのようですね。
ご案内いたします。
(案内人)どうぞ。
藤十郎様はこちらに。
希衣子様。
本日はご参列頂きまして誠にありがとうございます。
ただいまより大田黒靖恵様の生前葬を開式いたします。
それでは故人の入場です。
おふくろ?か…母…。
姉さん!
(桂子)やっちゃん!
(親戚たち)「靖恵さん…」。
「姉さん…」。
まず最初に本日のルールを申し上げます。
ルール?大田黒靖恵様は故人です。
ここにはおりません。
したがってルールその1「故人は見えない」。
その2「故人としゃべれない」。
その3「故人に触れない」。
お守り頂けない方は退席して頂きます。
(どよめき)おふくろいい年こいて何バカな事やってんだよ。
勇様ここには誰もおりませんよ。
誰がどう見たっているだろ?ルールをお守り下さい。
故人は見えないんです。
バカバカしい。
おふくろ!何だよ!離せよ!くそ…!兄貴。
こういう時こそ兄貴の出番だろ。
黙ってないで何とか言えって!いや見えないな。
うん見えない。
ルールなんだからしかたないだろ。
母さんがそう決めたんなら俺は守る!熱でもあんのか?お前も大人ならルールを守れ!大人なんだから変なルール守るなよ!見えない。
うん私も見えないわ!おばちゃんまで?だって面白いじゃない。
ねえ!
(金光徹忠)ああ…見えない!
(金光久美子)見えない!
(親戚たち)「見えない!」。
「見えない見えない」。
皆様ご理解頂けましたでしょうか?この生前葬が成功するか否かは皆様の演技力にかかっております。
泣いたり感極まったり悲喜こもごもお願いいたします。
演技力…。
(綾子)ちょっと小っ恥ずかしい。
(案内人)式の最後には靖恵様から重大発表がございます。
(綾子)重大発表って何?遺産かしら?
(峰岸桂子)遺産よ遺産!
(金光義忠)おい姉さん!
(峰岸速雄)黙れ!よしじゃあつきあってやるか。
それでは最初に大田黒靖恵様61年の人生を皆様と一緒に振り返りたいと思います。
大田黒靖恵様は昭和27年6月6日銚子市で本屋を営む金光靖男さんと好恵さんの長女として生まれました。
靖男さんと好恵さんから一字ずつ取って靖恵と名付けられ「やっちゃん」の呼び名でご近所から親しまれていました。
元気で明…。
平成3年に夫・星史郎さんを不慮の事故で失い…。
地元の干物工場海波水産に就職しました。
平成8年秋の大運動会では余興でカラオケを披露しすばらしい歌声で「工場長特別ナイスサバ賞」を受賞されました。
また20年連続皆勤賞の金字塔を打ち立てこの前人未到の記録はいまだ破られる事なく…。
長いわね〜!長い!長いよ。
(案内人)靖恵さんは後輩の面倒見も良く同僚からは「靖ねえさん」と呼ばれて慕われました。
仕事も早くて正確。
開発から携わったキンメダイの開きは海波水産の大ヒット商品となりました。
工場長から大変信頼を置かれ主任として定年まで働き続けました。
靖恵さんはこのようにまじめに仕事に打ち込む一方で…。
プッ!プププッ!
(徹忠)勇!バカ!
(案内人)春にはピクニック夏には海秋にはバーベキュー冬にはお餅つき近所の人たちも交えてかつて自分が育った…。
キコリちゃん!おトイレ?えっすいませんキコリじゃなくて希衣子です。
おトイレ鍵壊れてるからドアノブ押し下げながら開けるのよ。
こう押し下げながらよ。
(親戚たち)「押し下げるのよ」。
「コツがいるのよ」。
分かってます。
失礼します。
(ドアをこじあける音)はあ〜。
希衣子。
勇。
どういう事?何で居るわけ?休日出勤じゃねえの?勇だって仕事じゃなかったの?俺は…。
現場でいろいろあってさ。
てか何でウソついたわけ?希衣子!お母様は何で生前葬を開いたのかしら?「何で」って言われても…。
あの司会の男ちょっと怪しくない?ちょっとどころかかなり怪しいだろ。
はっ!もしかして…。
何?さっきお母さん勇とお兄さんを見比べたでしょ?あれってつまりどっちがお母さんの事をより思ってるか見ますよって事なんじゃないかしら?で?それを知っておふくろはどうしたいわけ?親孝行の方により多くの遺産を譲る気なのよ!は?そりゃないだろ。
絶対そうよ!だって最後に重大発表よ?他に考えられる?確かに。
だからあんなところで笑っちゃ駄目!そうなのか…。
ここの土地と建物売れば素人計算だけど3,000万くらいにはなると思うんだ。
マジか…?本気出してよね!今はお兄さんが一歩リードよ!何をおっしゃる希衣子さん。
俺が演技で負けるわけねえじゃん。
うふ!もう〜!
(案内人)笑顔を絶やさずどんな時も前向きに生き抜いてきた靖恵さん。
この61年間を振り返り感謝あるのみだと言います。
以上大田黒靖恵61年の全記録でした。
ご清聴ありがとうございます。
(拍手)
(案内人)それでは靖恵さんをしのんで歌って頂く親族合唱です。
ご起立下さい。
あっ痛っ!あっ無理!無理って…。
・「千の風に千の風になって」・「あの大きな空を吹きわたっています」・「あの大きな空を」・「吹きわたっています」
(案内人)ご斉唱ありがとうございました。
平成19年靖恵様が5回目の「ナイスサバ賞」を受賞した思い出の一曲。
きっと靖恵様も千の風になってどこかで聴いているにちがいありません。
それでは続きまして弔辞を賜ります。
弔辞って…弔辞!?弔辞です。
純一さん勇さんお願いいたします。
息子が弔辞なんて聞いた事ないわねえ〜。
そうですよ。
いきなり弔辞って言われても…。
そういう事は事前に言ってもらわないと。
ここは長男の純一さんから。
(親戚)そうだな。
ほら兄貴!時間かけてる場合じゃねえよ!考えずにパッパカやっちゃえば?人前でしゃべるの得意でしょう?どれくらい本格的にもってったらいいのかなあ?バランスが問題なんだよな。
バランスが難しいんだよ。
(案内人)それでは純一さんお願いいたします。
タイトルは「私の6歳の誕生日」。
えっタイトルあるの!?はい。
いやいや…お題ふられる弔辞なんてあるのか?しかも6歳の誕生日なんて覚えてるわけないだろ!靖恵様のリクエストです。
もう母さんいいかげんにしてくれよ〜。
あっルール破った!うるさい!純一ちゃん!フンッ!
(親戚)やれ。
ほら早く。
失礼いたしました。
え〜今私は母に…別れを告げようとしています。
あれは27年前そう私の6歳の誕生日でした。
え〜6歳の誕生日の時…。
確かあの時母は私の大好物のエクレアを買ってきてくれたのです。
しかし大喜びして箱を開けてみるとエクレアは1つしかありませんでした。
隣では2歳の勇が意地汚い顔でエクレアを物欲しそうにジーッと眺めています。
(笑い声)え?何俺?母は悲しげに「売り切れて1個しか買えなかったんだ」って言いました。
それを聞いた私はエクレアを半分こにして勇と食べました。
あの味は今も忘れない。
忘れないよ母さん。
今多感な年頃の中学生を担任している私が彼らに常日頃口にしているのは「喜びも苦労も時には絶望も友達と半分こにしよう」です。
母はあの日人生にとって大切なものそう慈愛の心を教えてくれたのです。
母さんどうぞ安らかに眠って下さい。
また天国であなたとお会いできるその日までお別れです。
(親戚たちのすすり泣き)
(拍手)「一杯のかけそば」のような切なさから入り軽く笑いでつかんで巧みな例え話を交えつつ最後は泣かせる。
なんてスピーチ上手なの!さすが国語教師!勇!負けてられないわよ!勇?思い出したぜ。
最高のエピソードを。
勇!それでは勇さんお願いします。
タイトルは「母とチャップリン」。
え?え?待ってくれよ!「6歳の誕生日」じゃないのかよ!いえ「母とチャップリン」です。
「母とチャップリン」って…。
靖恵様のリクエストです。
勇往生際悪いぞ。
早く始めろ。
感動したらおひねり投げるから頑張りなさい。
(親戚たち)「やんなさい」。
「頑張って頑張って」。
「期待してるわよ」。
(拍手)母さんとチャップリン…。
母さんとチャップリン…。
そうか母さんはチャップリン…。
皆さんご存じでしたか?おふくろはかの喜劇王チャールズ・チャップリンが大好きだった事を。
もちろんお茶の子さいさいよ。
おふくろがチャップリンの映画を見る時だけは僕も遅くまでテレビを見ていられました。
兄貴に邪魔をされずおふくろを独り占めできた事が子供ながらうれしかったものです。
あっそうだ…そうだった!数ある名作の中でもおふくろ様は「街の灯」が大のお気に入りで。
その昔おふくろ様から「完璧主義のチャップリンは『街の灯』では花売り娘とのたった3分間の出会いのシーンに342回ものNGを出した」と教えてもらったものです。
正直僕はその意味はよく分かりませんでしたがおふくろが「街の灯」を見る度にその話をするんでそう!先生や友達に同じ話をして自慢したもんだ。
子供は無邪気それは遠い遠い少年時代の思い出。
そうあのころには戻れない〜!おふくろはチャップリンを見てはいつも楽しそうに笑ってたな。
そんなチャップリン大好きのおふくろに…おふくろに…俺は…俺は〜!俺は〜!何よ?これからも元気で笑って暮らしてほしい!以上。
どうだった?さすがプロ!ちょっとシェークスピア入っちゃったかな?最高だったよ。
最高だったけど…。
(綾子)へたくそな芝居よねえ〜!
(親戚たち)「大げさなんだよ!」。
「くさいんだよ」。
「最近の子役の方が上手なんじゃない?」。
お前弔辞の意味分かってる?は?弔辞というのは故人との永遠の別れを惜しむ言葉。
それなのに未来への願望を述べてどうする。
早く教えてくれよ!ごめん。
私感動の方が先走っちゃって。
(希衣子のすすり泣き)
(親戚)あ〜おいしそう!
(桂子)3本ぐらいで…。
うんいいんじゃない?すいません。
ありがとうございます。
(大田黒藤十郎)そうこれ!落花生の炊き込み御飯!
(大田黒光代)純一ちゃんも勇ちゃんも大好物だったわよね〜。
(峰岸速雄)確か勇君食べ過ぎて鼻血出さなかったっけ?あったねありました!確か三回忌の時です。
(親戚たち)そうそう!こいつ昔から食い意地張っててほんとお恥ずかしい。
落花生食べ過ぎても鼻血出ないから。
それ間違った豆知識ね。
(綾子)あら〜!これよこれよ勇ちゃんのデビュー作!11年前に大ヒットしたドラマ「愛星」!
(桂子)「愛という名の星を一つ探すのは君!」。
(親戚たち)「キャー!」。
「見たい見たい!」。
「見なきゃ見なきゃ」。
「早く早く!」。
(親戚)来るわよ。
「ナオミ待ってくれよ!」
(親戚)見た見た〜。
はやったわよね〜。
「ダン吉…」。
(綾子)びっくりたまげちゃったわよね〜。
高校卒業してすぐ連続ドラマのオーディション受かって準主役でしょう?銚子の白雪姫ボーイね勇ちゃんは。
だって。
はいどうも。
「白雪姫」じゃなくて「シンデレラボーイ」ですね。
「お前にハートブレーク」。
(桂子)このころの勇ちゃんはかっこよかったわよね〜。
(久美子)完全に主役食ってたもんね〜。
鼻高々だったわよ。
一世を風靡したわよ時の人だったわよ。
日本中大感染よ。
日本列島に猛威を振るったじゃない。
そんな大した事じゃないって。
「大感染」ってインフルエンザじゃないんだから。
ほらほら出るわよあの名ゼリフ!「君が僕の星を見つけてくれたんだ。
ありがとう。
夜空に埋もれた…」。
(親戚たち)「えっあれ?ちょっと!」。
「勇ちゃ〜ん」。
「ちょっと〜」。
勇ちゃん今のとこもう一回やってよ。
勘弁して下さいよ。
いいじゃない減るもんじゃないんだし。
さっきの下手っぴな弔辞の名誉挽回よ。
そうよ。
勇ちゃんやってよ!
(親戚たち)勇ちゃん勇ちゃん勇ちゃん!君が僕の星を見つけてくれたんだ!ありがとう。
夜空に埋もれた僕の星を見つけてくれて。
(綾子)あんたがやってどうすんのよ〜。
私もこれ見て勇君の大ファンになったんです!
(綾子)はいはいそうですか。
ごちそうさまでした。
(桂子)ねえねえその次に勇ちゃんが出たドラマって…。
(金光直子)あれタイトル何でしたっけ?
(綾子)猫?犬…。
「犬吠埼ギャッツビー」。
(綾子)さすがキリンちゃん!希衣子です。
(綾子)だけどそのあとあんまり見かけないけど。
(桂子)たまにちょい役で見るけど。
(久美子)あれ?辞めたんじゃなくって?
(綾子)そんなんで生活大丈夫なの?はいご心配なく。
(コップを置く音)あのね俺ぐらいのクラスになると脇役でも一日拘束されればこれぐらいは保障されるわけ。
1万?100万!100万!?それに今でも出演オファーは無数にあんだけど俺は本当に面白いと思ったドラマや映画にしか出ない事にしてるわけ。
まあ…でも来年はハリウッドで撮影予定だしここらで活動の拠点を足立区からロスに移そうと思ってんだ。
お前が出演するハリウッド映画ならタイトルは…「BORDMAN」じゃないのか?「ボードマン」?ボードは板「板男」「痛い男」…な〜んてな。
フッ。
まあお前には痛々しくて笑えんか。
そんなウソつくなら役者なんて辞めろ。
何が一日100万だ何がハリウッドだ。
中二病か?いやお前の精神年齢は中学生以下だな。
俺の教え子たちなんか何千倍も利口だぞ。
実際問題希衣子さんが区役所勤めで稼いでくれてるからお前は好き勝手に役者をやっていられる。
そんなんでいいのか?お言葉ですがそれは私たち夫婦の問題なんで。
僕はこいつの兄貴です!弟に問題があれば兄として口を出すのはトーゼンの事です。
いいか?今のお前はな喜びも苦労も半分こどころか希衣子さんにおんぶにだっこじゃないか。
そんなんじゃ母さん死んでも死にきれないぞ。
(綾子)死んでないから。
人の嫁心配するより自分の嫁探し心配しろよ。
何だと!そんなカッカしてると鼻血出んぞ!痛っ…くないよ。
フンッ!
(徹忠)ほらこんな時にけんかするんじゃない!
(親戚たちの制止する声)申し訳ございません。
ごめんなさいごめんなさい!ハッ!何?マジか…うそだろ?お母さん病気なのよ多分。
多分って推測か?お前な言っていい事と…。
最後まで聞いて。
それでねお母さんは勇とお兄さんに仲直りをしてほしいのよ。
は?何で?だってあなたたち会う度にけんかしてるじゃない。
このままだとお母さん安心して逝けないでしょ?つまりお母さんは仲の悪い息子2人を引き合わせるために生前葬を開いた。
弔辞を読ませたのもお母さんがわざわざ手料理を振る舞ったのも2人に昔を思い出して子供の頃のように仲よくしてもらいたかったから!さっきも何かひらめいた話してなかったっけ?今度こそほんと!よいしょ!希衣子?見て下さい!うわ〜これって純一お兄さんですか?あっ隣にいるのもしかして勇君ですか?うわ〜2人ともとっても仲よしだったんですね。
ねえねえ勇。
これ見て。
2人手ぇつないでる。
とっても仲よかったんですね。
普通でしょ普通。
うわ〜!これ見て下さいよ。
純一お兄さん勇をおんぶしてるじゃないですか〜。
わ〜本当だ〜俺おんぶされてる〜。
仲よかったんですね。
昔はね。
今はけんかばっかだけどね。
そんな事ありませんて。
そうそうこれこれ勇ちゃんこれ見なさいよこれ。
何これ?あぁ俺これチャップリンやってたんだ。
だから黒い格好してるんだ。
よく勉強の邪魔してくれたよね。
その度にヘッドロックしたくせにな。
これはスリーパー…。
あっこれどこの公園ですか?あれ?どここれ?近所の公園じゃないよな。
見た事ないなあ。
これ旅行行った時かな?行ったっけどっか?箱根かな?ねえキリギリスちゃん。
希衣子です。
やっぱり結婚式の写真がないのは寂しいんじゃない?すいません。
姉さん独り身だし母としてはやっぱり子供の結婚式って人生のフィナーレ?ファンファーレ?メリーゴーラウンド?違うメインイベントだと思うわけ。
今からでも遅くないから結婚式挙げなさいって。
あんたたちもそんなんだし純一ちゃんワンフィンガーだから姉さんしびれ切らしてこんな訳の分かんない式挙げちゃったのよきっと。
ワンフィンガーはウイスキー。
はい?ワンフィンガーはお酒の飲み方!独身って意味じゃない。
何言ってんの。
ワンフィンガーは独身ツーフィンガーは夫婦34がなくてフィンガー5は大家族って。
いやいやいや全くのデタラメですよ。
どこで教わったんですか?そんな事どうでもいいのよ。
私が言いたいのは…。
あれ〜?どうしたの?何?えっ?うわっ!何?そんな突拍子もない声上げて。
わわわ〜!
(親戚の人たち)何何?見せて見せて。
あっうわっ!皆様大事なお話がございます。
どうぞお座り下さい。
お足を崩して下さい。
私の名前は入口…入口慢太郎と申します。
小説家です。
そうなの?
(入口)小説家といいましても40年前に少し売れただけで。
へえ?つまりプロの作家じゃないって事ですか?
(入口)そういう認識をされても致し方ありません。
2人のなれ初めは3年前荒川区から引っ越してきた私が近くのコンビニでアルバイトを始めた時靖恵さんに声をかけられました。
(綾子)姉さんなんて積極的なの?そうではありません。
靖恵さんは私が40年前に書いたデビュー作「昭和48年のビンボール」を愛読してくれていて私の若い頃の面影を覚えていたんです。
私もそのような事は何十年ぶりの事で舞い上がってしまい店長にないしょであんまんをプレゼントしました。
あっもちろんお金は後で払いましたよ。
それから靖恵さんはなんと私の新作を自費出版してくれたのです。
更には2人で車に乗って全国の本屋を回り飛び込み営業まで始めるようになって…。
おふくろがそんな事まで…。
(入口)あれよこれよという間に一緒に暮らすようになったわけです。
「現実は小説より奇なり」です。
ねっ。
それではこれより予定より早くなってしまいましたが靖恵様からの重大発表を読み上げさせて頂きます。
「そんなわけで私の貯金は一切ありません。
出版費を捻出するためこの土地と建物も担保に入れました。
そんな私たちですが結婚します。
認めなくても結婚するからよろしくね」。
生前葬の本当の目的は…。
結婚…報告だったって事か?親孝行も余命も兄弟の仲直りも関係ない…。
遺産ゼロ。
なんじゃそりゃ。
ふざけんな!こんな詐欺師みたいなやつと結婚するなんて俺は絶対に認めねえぞ!ちょっと落ち着きなさいよ。
だってこんなやつ許せねえだろ!自分はろくに稼ぎもせずにバカな夢のためにおふくろから金巻き上げてるんだぞ!なるほどな。
それはひどいな。
そうだろ。
大体一度売れたからって何年前の話だよ!過去の栄光にしがみついてんじゃねえよこのヒモが!本当だなお前とそっくりじゃないか。
昔売れて人の金で食ってる。
お前はこの人を責めただろ。
つまりお前がお前自身の事をいいと思っていないわけだ。
いいかげん目を覚ませ。
結局兄貴はさ俺が羨ましいんだろ。
はぁ?好きなように生きてる俺が羨ましいからそうやって顔合わせるたんびに文句言うんだ。
窮屈だらけの聖職者のひがみだな。
何だと?ふん!俺はお前が信じられんよ。
よくそんな生活が続けられるな。
お前の自堕落は母さんに甘やかされてきたからか?
(親戚)きゃあ!またひがみか。
まあ兄貴はおふくろに何でもイエスのお利口君だったもんな〜。
だったら思いっきり甘えりゃよかったんだよ!お…お前ばっかり母さんに甘やかされてさ〜俺の入り込む余地なんてなかったじゃないか〜!
(綾子)いつのひがみをほじくり返して兄弟げんかしてんのよ!勇!勇!危ないわよ!
(けんかする声と制止する声)いいかげんにしなさいよ!今姉さんの結婚問題でしょ!ちょっと!よく言うよどうせ目当ては他にあったんだろ?
(綾子)はあ?どういう意味よそれ。
俺知ってんだよ。
20年前株で失敗して焦げ付いたって。
そん時おふくろがかなり援助したって。
(綾子)ちょっとそんなわけないでしょ。
誰から聞いたのよ。
親戚内じゃ周知の事実でしょ!今更ごまかすなよ。
何よ借金だってとっくの昔に返済してるんだからね。
くだらない詮索してんじゃないわよ!このへっぽこ大根役者!あぁ〜!
(親戚の人たち)キャ〜!大根上等!どいつもこいつも俺をバカにしやがってよ〜!おい!おっさん。
あんたおふくろと結婚したら次は生命保険で豪華な装丁本を自費出版する気か?停止…停止。
止まって…停止。
希衣子?止まって停止停止…お願い止まってよ!
(綾子)何してんの?もう見てらんない!停止!正気か?どうかしちゃったのか?分かんないよ止まんない。
分かってる止まんないの分かってる。
勇。
人生はリモコンみたいに巻き戻らないんだからね。
すいません!勇は過去の栄光から一時停止したままじゃん!お金ないのにスター気取りで飲み代おごったり脇役嫌がったりして仕事失ってる。
私はさ勇と勇の芝居が好きだから応援してきたけど時々分からなくなるの。
ねえ勇。
勇は何で役者を続けてるの?また有名になって世間を見返したいから?脇役だっていいじゃない。
通行人だっていいじゃない。
主役だけじゃドラマはできないでしょ。
分かってんだよ。
分かってないだろ!だから話を最後まで聞け!私のいる区役所だってそう。
自分なんて単なる小さな歯車の一つでしかないと思ってもその小さな歯車があって初めて全体が回るものだと思うの。
一緒にすんじゃねえよ!同じよ!才能が何よ!才能なくても頑張ってる人はいっぱいいるでしょ?トップにいなくてもそれぞれの場所で頑張って輝いてる人たくさんいると思う!希衣子よ〜く分かったよ。
勇?要は俺に才能がないって事だろ?バカにすんな!勇そうじゃない!お前だけは俺の味方だと思ってたのにさ。
ああそうだね。
お前の言うとおりだね。
才能なんてねえよ。
あったの運だけだよ。
俺もう生きてる意味ねえよ。
いっそ殺してくれ!希衣子!
(勇の泣き声)兄貴の言うとおりだよ。
分かってんだ。
自分がどれだけ希衣子に甘えて迷惑かけてるかって。
(勇のすすり泣き)はぁ…はぁ…。
あ…あっお母さん。
大丈夫ですか?すいません。
(荒い息)大丈夫です。
お母さんあの…。
どうして分かったんですか?3か月なんです。
報告が遅れてすいません。
実は勇君にもまだ伝えてなくって。
子供が生まれれば今までのようには働けないかもしれないし収入が不安で…。
今日出席したのも相続の話があるなら少しでも取り分を多くしてもらおうと思ったからなんです。
ごめんなさい。
生まれてくるこの子のためにも勇君には…。
でも勇には役者を続けてもらいたいんだよな。
ほんとは私就職してすぐ田舎に帰るつもりだったんです。
仕事とか人間関係とかいろいろうまくいかなくて。
そんな時「愛星」をテレビで見てあの時の勇の芝居に励まされて仕事を辞めるの思いとどまったんです。
私今でも勇の芝居を見ていると元気になるんですよ。
だから今まで頑張ってこられたんです。
だけど…。
すいません。
話したら少し楽になりました。
ああ出産予定ですか?8月です。
8月か〜その子には会えそうもないな。
えっ?お母さんまさか…。
病気の事は2人にはないしょよ。
(綾子)あらきりたんぽちゃん。
希衣子です。
わざと間違えてませんか?
(綾子)姉さんもどこ行ってたの?心配したわよ。
希衣子。
うん。
話があるんだ。
私も話がある。
じゃあ希衣子から。
ううん勇から。
いや希衣子から。
分かった。
私これからも…。
ちょっと待って。
やっぱり俺の話を先に聞いてくれ。
何?俺役者辞める。
今まで迷惑かけてごめんな。
勝手に辞めないでよ。
これ以上お前に甘えるわけにはいかない。
これからも役者続けてほしいって言おうと思ってたのに。
何でだよ?何でそうなんだよ。
何が?お前に喜んでもらおうと思って役者辞めるって言ってるのに何で続けろって言うんだよ。
勇こそ何で私の気持ちをくみ取ってくれないでそうやって勝手に突き進もうとするわけ?俺はお前の気持ちを思ってだな…。
何で人の気持ちが分からないかな〜役者でしょ?だからセンスがないから辞めるって言ってんだ。
今日だってほんとはな現場に行ったら俺の役なくなってたんだ。
俺なんて誰からも必要とされてないんだよ。
そんぐらいでへこたれないでよ。
いいから役者続けなさい!この分からず屋!
(砂嵐画面の音)これ父さんのお葬式?「やめろって」。
「勇!」。
「席についてなさい」。
「あっ!」。
「コラッ!」。
「アハハハハもう駄目…アッハッハ」。
「お母さん」。
「なあに?」。
「僕役者になる」。
「うん。
ママずっと応援するからね」。
あの日ねお父さんが亡くなってどうしたらいいんだろうって途方に暮れてたんだけど勇がチャップリンのまねをしてくれてお母さんを楽しませてくれた。
だからあのあと何度もくじけそうになったんだけど頑張ってやってこられたんだ。
おふくろ…。
俺もあの日のお前を見て決めたんだ。
兄貴…。
母さんを悲しませないって。
勉強も友達も部活も受験も就職も母さんに余計な心配かけないようにやってきた。
俺とお前はあの日同じ事を考えてたんだな。
(綾子)やってきた事は逆だけどね。
(笑い声)だけどお前すごいな。
6歳の約束守ったんだから。
大したもんだ!勇。
これ全部勇が出演した作品だよ。
お母さんどんなに小さい役でも全部見ててくれたんだよ。
テレビの端っこでも私がずっと見てる。
お母さんもずっと見てたように私も絶対に見続ける。
売れる売れないじゃなくて精いっぱいやってほしい。
どんなに小さな役でもいいの。
それでも私は必ずあなたを見つけるから。
だって勇は私のドラマの主人公なんだから。
そうだった。
俺大切な人を喜ばそうと思って役者になったんだ。
希衣子。
俺…。
ちょっともう音切ってないの?おぉ切れてる。
切ってある?ごめんマネージャーでした。
(綾子)ちょっと〜いいとこなのに。
もしもし勇です。
えっ?ドラマの撮影ですか?はいその日は大丈夫です。
どんな役ですか?ワンシーンでセリフは…ひと言ですか。
いいえ誠心誠意やらせて頂きます。
キャー!
(歓喜の声)おいうるさいよ!はいありがとうございます。
失礼します。
よし。
いいぞ!お父さんになるんだから頑張りなさい!えっ?あっ…。
えっ?ごめんなさい勇み足。
それはつまりその…。
うん。
そういう事。
わあ〜!お〜!おっ!キャー!ちょっといきなり大声出したらおなかの子がおったまげのオッペケペーじゃない!ねえ希衣子ちゃ〜ん。
はい希衣子です。
(綾子)まあ!
(笑い声)もしもしパパですよ。
驚かしてごめんよ。
それでは最後にご挨拶を純一さんお願いいたします。
いやここは僕じゃなく勇に。
えっ最後は長男が締めないと!いいから!お前がやれ。
なっ。
(入口)では勇さんお願いします。
ふう…。
え〜皆さん本日はお忙しい中おふくろの生前葬にご参列頂き本当にありがとうございました。
久しぶりに皆さんにお会いできてよかったです。
正直言うと会うのがおっくうだったんです。
でも今はもっと早くに会っておけばよかったなあって。
まだまだ至らない2人にチビが増えて3人になります。
皆さん今後ともご声援のほど何とぞよろしくお願いします。
分かりました!それから兄貴。
今までごめん!これからも俺の兄貴でいて下さい。
よろしくお願いします。
おう。
それからおふくろ。
おふくろ。
ありがとう。
たくさんいっぱいありがとう。
ありがとう。
ありがとう。
これから俺テレビ映画舞台って出まくるからこれからも全部見てくれよ。
どんなに小さくてもず〜っと俺を探して下さい。
お願いします。
えっとでは皆さんえ〜本日は本当にご愁傷さまでした!こらっ!使い方おかしいぞ!そうだよ!
(笑い声)日本一!勇ちゃん!
(拍手)
(親戚たち)「日本一!」。
「パパ!」。
いやいや「パパ」やめて下さい。
「パパ」…。
(親戚たち)パパパパパパパパ…。
(靖恵)フフフ…そんな事考えてたんだ。
はいすいません。
でも全部当たってたじゃない。
私が生前葬をした理由。
そういう事になりますね。
お体大丈夫なんですか?うん。
子供たちには折を見て私から話すからね。
何かあったらすぐに連絡下さいね。
うん。
(綾子)姉さんお疲れさま。
は〜い。
本当に葬式した気分になったわ。
たまに東京に遊びにいらっしゃいよ。
ありがとう。
ララバイ。
バイバイ。
ごちそうさま。
またね!
(親戚たち)「明日明日また組合の事で…」。
「帰りに何か買っていくか?」。
「駅前で天ぷら食べていかない?」。
「え〜また食べるの?」。
(入口)あっ…。
さっきはすみませんでした。
いいえ。
お互い頑張りましょう。
はい。
母をよろしくお願いします!こんなイベントでもないとみんななかなか集まれないしまた誰かにやってもらおうか生前葬。
それも悪くないな。
堅物の兄貴が珍しいじゃん。
(笑い声)あっそろそろ最終バスよ。
乗り遅れたら大変よ。
ほんとだ。
じゃあ行くよ母さん。
うんありがとう。
またね。
じゃあね。
失礼します。
(入口)気を付けて。
あっ白菜送ってね!
(靖恵)はいはい。
好きだねほんとに。
(入口)さあ!
(靖恵)さあ!よいしょっと。
さてと…。
おふくろ!うん?今度は子供連れて3人で来るから。
あっ…そうね。
楽しみに待ってるわ。
おふくろも元気でな。
うん。
じゃあね。
(戸が閉まる音)靖恵さん。
希衣子。
うん?ありがとな!うん!はあ…。
はあっ。
(笑い声)夏も終わり秋到来!いよいよ食欲の季節。
という事で…。
2014/09/27(土) 00:10〜01:20
NHK総合1・神戸
お葬式で会いましょう[解][字][再]

田舎の母から「生前葬」の案内が届いた勇は久しぶりに実家へ帰るが…おかしくてちょっと切ない家族の物語。作・池谷雅夫 出演・満島真之介 井浦新 市毛良枝ほか

詳細情報
番組内容
売れない俳優・大田黒勇のもとに、田舎でぴんぴんしているはずの母親から突然「生前葬を開くから来い」としらせが届く。久しぶりに実家をだずねると、謎の案内人や、仲の悪い兄や、うるさい叔母が勢ぞろい。このメンバーで生前葬が無事に終わるわけがない!「ちょっとだけ不思議な葬式」で起きるてんやわんやと、家族のきずなの再生を笑いと涙で描く。【作】池谷雅夫【出演】満島真之介、平岩紙、井浦新、市毛良枝 ほか
出演者
【出演】満島真之介,平岩紙,井浦新,余貴美子,石丸謙二郎,市毛良枝
原作・脚本
【作】池谷雅夫
音楽
【音楽】鳥山雄司

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:2266(0x08DA)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: