歴ログ -世界史専門ブログ-

世界史専門ブログ。おもしろい歴史のネタをまとめています。

【なぜ消えた?】歴史の彼方に消えたキリスト教異端派7選

 

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/f/f1/Chora_Anastasis2.jpg/1024px-Chora_Anastasis2.jpg

 キリスト教が世界宗教となるまで拡大する要因になった理由はいろいろありますが、

要因の一つとして「その時々の為政者が時と場合によって解釈を変えていける普遍性と汎用性があった」ということがあります。


つまり、教えがかーなりざっくりしてた

 

時代が変わっても、その都度その時代、またその国・地域に即した解釈ができる柔軟さを持っていたってことですね。

 

 

ローマ・カトリック、プロテスタント、ギリシア正教はじめ、主なキリスト教の流派はみなさんご存知の「三位一体説」をもって絶対としています。

神は一つの実体と、「父なる神」・「イエス・キリスト」・「聖霊」の三つの位格を持っている、とされています。

トーシロにゃあよく分かりませんが、聖書解釈や人民統治の諸問題をクリアするには、

これが一番都合が良かったんでしょう、きっと。

 

キリスト教2000年の歴史の中でも様々な宗派が興り、今でも増え続けていますが、

その中で異端として三位一体説に破れて歴史の彼方に消えていった、キリスト教異端派7選を紹介します。

1. アリウス派

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/7/7f/Baptistery.Arians06.jpg/800px-Baptistery.Arians06.jpg

史上名高い「ニケーア公会議」で異端とされた。

何が異端かというと、いわゆる「三位一体説」を否定し、

「イエス・キリストは尊いけど、神の創造物であって神性はないよ」と言っているとこ。

イスラム教では、アラーは唯一神でマホメットは予言者である。と言っているけど、それと同じ発想。


公会議で異端判定された後、北ヨーロッパや中東に波及した後、徐々に消滅していった。
6世紀以降イスラム教が爆発的に中東に普及したのも、アリウス派の下地があったからだという説もある。

2. アポリナリオス主義

アポリナリオスさんによって唱えられた主張で、

「キリストの肉体は人間だけど、理性は人間じゃなくて神様だったんだよ」

という主張。

つまりキリストはイタコみたいなものだった!ってことですかね。

なんか、幸福が科学しそうな感じですが、

「ヒトの心を救うのはヒトの心であるため、キリストが神の心を持っていたなんて論理的に破綻してる!はい、ウソ〜〜!」

って感じで、コンスタンティヌス公会議において異端認定されてしまった。

うむ、よく分からん。

3. ネストリウス派

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/d9/Museum_f%C3%BCr_Indische_Kunst_Dahlem_Berlin_Mai_2006_061.jpg/640px-Museum_f%C3%BCr_Indische_Kunst_Dahlem_Berlin_Mai_2006_061.jpg

ネストリウスさんが唱えた説で、

「キリストは神様だけど、神格と人格の2つが宿っていて、十字架に張付けられて亡くなったのは人格の部分だよ」

ってところが主流とは異なりこれもエフェソス公会議で異端判定されてしまう。


異端判定後は東方に波及し、中国では唐の時代に景教という名前で大流行
その後、モンゴル帝国の支配者層でも熱心な信者が現れるなどしたが、徐々に埋没していった。

ちなみに、ネストリウス派キリスト教は日本にも伝わっていて、真言宗や浄土真宗にも影響を与えた、という説もある。(真偽は不明)

4. ドナトゥス派

基本的には主流派と考えは同じだが唯一違う点は

「いったん他宗派に浮気した人間が行うサクラメント(儀式や礼典)は無効」であるとした一点。
公会議での議論の結果、「他宗派に行こうが、人と神様の間に仲介する人間がどうであろうとサクラメントには影響なし」ってことで異端判定されてしまう。


いったん4年生大学卒業しちゃったら、新卒というラベルがなくなって入れる企業が極端に減るとか、よく分からない純粋性というものを求めるのは昔も今も変わらないのか。

現実問題、純粋性を追求すると宗教でも民族でも何でも、衰退する運命にあるのは歴史が証明している。そこのところ、カトリックは柔軟であった。

5. カタリ派

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/e/e4/Cathars_expelled.JPG/800px-Cathars_expelled.JPG

別名アルビジョワ派とも呼ばれる。南フランスのアルビ地方に多くの信者を抱えた。彼らの信仰を一言で言うと、「現世否定」。

この世の全てはサタン(悪魔)によって想像されたものであり、結婚、生殖、現世の生活すべてを罪であると考えた。


そのため、禁欲的な生活を送ることが天国であるあの世に近づく最善の方法であるとし、菜食主義者で卵やミルクも口にしなかった。

最終的には、フランス王の異端十字軍によって滅ぼされてしまった。

そりゃ、そうだよな。こんな連中が多数派になっちゃったら国の経済崩壊するもん。

6. ソッツィーニ派

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d4/FaustusSocinus.jpg

17世紀に主にポーランドで展開された。

三位一体説やキリストの神性を否定して、「模範的人格者」としてのキリストを評価しようとする一派である。

あらま。むかーし異端視されたアリウス派と似てるじゃあないか。

この一派は啓蒙主義運動の走りと見なされ、近代国家建築のための理論として影響を与えたようだ。

7. 地球平面協会

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/3/3f/Flat_Earth_Society_Logo.png/640px-Flat_Earth_Society_Logo.png

その名の通り、「地球は平面である」ということを主張する一派

驚くなかれ。この協会ができたのは何と1950年代。


・地球は球ではなく、平面な円盤状である
・北極が円盤の中心にあり、円盤の外側は45メートルの高い氷の壁で囲まれている


と主張している。もはや何がしたいのか我々には理解しがたいが、

聖書を馬鹿正直に理解しようとすれば、もしかしたらそういう発想に行き着くのかもしれない。もはや意地ですね。

この協会、いまだ健在だが、活動を行っているかどうかは不明である。