本日、財務省から7-9月の法人企業統計が発表されました。*1
製造業回復、非製造業は経常利益・設備投資に弱さ=法人企業統計 | Reuters
経常利益と設備投資の長期推移をグラフにします。方向性の違いが見て取れます。
脇田成は次のように指摘していましたが、
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以前は①企業利潤が上昇後、
- ②人件費を先導に、③企業純資産、④設備投資の3者がバランスよく上昇していたが、
- 98年度以降、経験法則が崩れ、優先度が②純資産、③設備投資、④人件費の順になった
全産業、製造業、非製造業別のグラフにすると、「利益の伸びに続いて設備投資が伸びてくる」関係が、2010年以降弱まっていることが鮮明になります。
人件費の伸びも低調です。
1997~98年の金融危機は、企業行動を「増益でも人件費抑制」に変えましたが、2008年のリーマンショック(さらには2011年の東日本大震災)は、それに「増益でも設備投資抑制」を追加したことになります。
量的・質的金融緩和のシナリオ「日銀当座預金激増→予想インフレ率上昇→実質金利低下→設備投資増加→力強い景気拡大」が実現しているか否かの判断はお任せします。
スティグリッツ教授の経済教室―グローバル経済のトピックスを読み解く
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デフレが続く限り政府は金利を低く抑え続けるとわかっていれば、市場参加者は、長期実質金利がやがて低下することを確信して、消費や投資にもっとカネを使う気になるだろう、とインフレターゲット論者は主張する。日本の場合のインフレターゲット論の問題点は、それが短期的に間違った変数に注目することにあり、インフレターゲット政策へのコミットメントが信用できるものだとすれば、そのために金融当局は間違った戦略を長期にわたって推進することになる。
金融政策は実質金利(インフレターゲット論者はこれに注目する)よりも、むしろ信用のアベイラビリティ(可用性)を通じて景気に影響を及ぼすのである。金融当局が景気をどの程度刺激しているかは、今現在の実質金利(あるいは長期実質金利)よりも信用供給の拡大に注目したほうが正しく測定できる。
日本経済の足を引っ張る企業の要塞化(極度の慎重化)が解消する兆しはまだ見えないようです。